2025/04/14 のログ
ご案内:「常世公園」に武知一実さんが現れました。
武知一実 >  
常世公園のベンチに腰掛け、オレは今日も暇を持て余す。
別にやる事が無い訳じゃない、今日はバイトが入ってる日だった。
けれどまあ、春から新たに入学、あるいは転入してきた生徒が新たに人員として増えたから、人手が足りてるっつーことでバイトのシフトを譲った。
生活が切羽詰まってるわけじゃねえし、シフト変更自体は別に構いやしねえんだが……。

「……暇、になんだよな」

こういう時、普通の男子生徒って何してんだろうか。
まあ別に普通の男子生徒じゃなくてもいいんだけどよ。誰か有意義な暇の潰し方を教えてくれ。

「……いや、勉強するなり部活するなりあるだろうがよ」

自分に論破されてちゃ世話ねーな。
そんな一人漫才を脳内で繰り広げながら、何か面白いもんでも起きねえもんかと公園のベンチでただただ時間を浪費しているのである。

ご案内:「常世公園」に都姫うずめさんが現れました。
都姫うずめ > 神社はデカケモさん(仮称)がいるかもしれないし、
さりとてちょっと落第街に趣いて練習するという気持ちでもない。
そんな気持ちから選んだのは常世公園だった。
適度な広さもあるし、楽器の練習をしている人を見たこともある。
ギターケースと背負い、コロ付きスピーカーを引っ張って公園を訪れる。

辺りを見回して、一番人が少なさそうなところに目をつけた。
一応音を立てるわけだから、あの人にきちんとことわりを入れておけば良いだろう。
ベンチに腰掛けている男子の方へと歩いていき、そっと声をかけた。

「すみません、演奏の練習してもいいですか?」
うずめは礼儀をわきまえている。 私服以外は。

武知一実 >  
そういや釣りも最近行ってねえな、最後に行ったのは年末前だったか。
もし、今後こうやって暇を持て余して死にそうになる時はいっそ海辺に行くのもありかもしれない。
……そんな事を考えていたら、声を掛けられて我に返る。

「演奏? ああ、別に構いやしねえけ……ど」

ど……どうしよう、なんかすげえカッコの奴来ちゃった。
面白いもんでも、とは確かに、確かに思ったけどな、限度ってもんがあるだろ。あと面白いの方向性が違ェ。

―――いやいやいや、人を見かけで判断しちゃいけねえ。オレだってそれで不良だなんだとレッテル貼られたりしてんじゃねえか。
パーカーの上に制服の上着とかいかにも、とか言われたじゃねえか。服装で判断すンのは良くねえよ、うん。

「演奏すンのは構いやしねえけど、感想とか求められるとちと困っちまうからよ。それだけ頭に置いといてくれや」

流行の歌とか曲とか、全然知らねえもんで。
だからオレからも一言断りを入れておく。今のどうでした、って訊かれても、音楽だなとしか答えらんねえ。

都姫うずめ > 「ありがとう。 うるさかったら教えてね。 ボリューム下げるから。」
優しい人で良かった。 胸を撫で下ろす。
少し離れた場所にスピーカーを置いて、ギターケースからギターを取り出す。
真っ赤な傷だらけのストラトキャスターは、持ち主よりも長い時を生きてきたと言わんばかりのそれだった。
ケーブルとスピーカーを接続して、軽く音量チェック。
べいん。 音を聞いて小さく頷く。

ベンチの男子に向かって、ぺこりと頭を下げた。
これから演奏します、という意思表示である。

「っす――――――――――」
息を吸い、ピックを構える。
スピーカーに片足をかけるようにして、一心不乱にギターを掻き鳴らした。

もにょぺろまおねろみにょふごんぽりょ―――――――おぉぉん(ディストーション)

唖然とするような音が響く。
料理で言えば美味しい美味しくない以前の、
『なんの料理だかわからない』レベルの代物だった。

本人の真剣な表情とから、真面目に、一生懸命やっていることはわかるだろう。
しかしながらその音色はあまりに、そして圧倒的に奇妙だった。

武知一実 >  
―――言われて下げンなら、最初からそんなに上げとかなきゃ良いんじゃねェか?
思わず喉元まで出掛かったのを辛うじて堪え、飲み下す。
そんなんだからボケの波状攻撃とか食らうんだぞ、大抵のことはスルーしろスルー。

トンチk……個性的な服装とは違って、スピーカーといいギターといい本格的……で合ってるか?
まあ、真剣に取り組んでる証左だろう。形から入るタイプだったら?まあ、それでも真剣にやってる事にゃ変わりねえ。
それなりに値が張るからな、ああいうのって。

こっちへ頭を下げるのを見て、適当にひらひらと手を振って返す。
別に好き勝手やってくれりゃ良いってのに、律儀な奴……。
まあこれも何かの縁だ、どうせ暇だし練習風景を眺めてんのも悪くな―――――


な ぁ に こ れ ぇ

……ギターってこんな音するもんなの? え、何か違くねェ??
いや、でも、オレが知らんってだけでこれはこれでそういう演奏……なんじゃねえか?
ヤバイ、分からん。なまじ普通のギターの演奏を知らんから変だとも断じれねえ。でも違和。すっげぇ違和。

何かホッキョクウサギが立った瞬間みたいな……そうなってるからにはそうなんだろうけど、何か違くねえかお前、みてェな。

都姫うずめ > 今日はノっている!
指がより激しく動く。

音を聞きつけのだろう、犬が遠くで吠えているのが聞こえる。
近くの樹で休んでいたカラスも、ぎゃあと一声喚いて飛び去った。
一天にわかにかき曇り、それが苦悶するかのようにゴロゴロと唸り始めた。
子どももちょっと泣いてる。 音が大きすぎたのかも。 集中しなきゃ。


指がもつれそうになる。 歯を食いしばり気力で抑え込む。
そのまま演奏(?)を続けて、最後……。

ふにょお!!!という、エレキギターが逆立ちしても出せなさそうな音で一曲が終わった。

「っは――――――――…。」
やり遂げた、と言わんばかりの顔で天を見上げる。
さっきまで唸っていた空は快晴だった。
犬の鳴き声子どもの鳴き声もなく、カラスも戻ってきていた。

ぽたぽたと垂れる汗をタオルで拭いながら深呼吸。
持ってきていたペットボトルをぐいっとあおる。

「……」
男子の方を見やる。力強く親指を立てた。

武知一実 >  
素人も素人、ド素人なオレから見ても(聞いてもか?)違和感アリアリなんだが、演奏してる本人は至って真剣そのものだ。

……真剣そのものか? ちょっとトリップしてねえか?
いや、流石に本当に真剣にやってたら失礼かもしれねえな……真剣であって欲しい。
………、うん、よし、真剣!そういう事にしよう!
どのみちギターみてえな楽器で音が出せる時点でオレより腕は達者なんだ、素人がとやかく考えるもんじゃねえ。

うん、うん、きっと、オレみたいな素人には想像もつかんような奏法なんだろう。多分。そうであってくれ!

もう演奏の感想なんだかオレの願望なんだか分からねえ思考が、気の抜ける様な音共に終わりを迎える。

……もう、本人が満足してんならそれで良いンじゃねえか?
オレはそう結論付けて、こちらへ親指を立てる女子へと拍手を送った。すごかった、込めた意味は色々あれど、すごかったのには違いない。

都姫うずめ > 相手の拍手に目を丸くした。 
少し手が震えているから、少し落ち着いてからにしよう。
ギターをその場において、ベンチの方へ向かった。

「拍手されたの、初めて。
 今までは悪童王通りで練習してたんだけど、
 あそこの人たちには言われまくってたからね。」

嬉しいという調子でもなく、どちらかといえば不思議と言わんばかりの調子で相手に話しかける。
落第街で練習しているときは、周りが腕前を理解しているからこその、手厳しい指摘・意見だったということもあるのだろう。 
今回、この男子は初めての…自分を知らない聴衆だったのだ。
その聴衆が拍手をしてくれたということは、自分の演奏を気に入ってくれたのだろうか。
それとも、自分の労力に拍手をしてくれたのだろうか。

ウウムと小さく唸ってから、ベンチに腰掛ける。
感想は聞いたりしない。彼との約束だから。