2025/04/30 のログ
ご案内:「常世公園」に青霧在さんが現れました。
ご案内:「常世公園」から青霧在さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に青霧在さんが現れました。
青霧在 > 常世島は果てしない。
物理的にも、社会としても、未知としても。
広く、深く、見通せない。

だからこそ、飛び交うトピックも広く、深く、見通せない。
季節の行事の報せに始まり、各委員会からの発表、指名手配、異邦人問題、行方不明、殺傷事件、国際情勢。
研究成果の公表、部活開発の新ツール発売、未開拓地域での珍しい発見、新たな品種の開発、発見。
その他、下らない噂話。

毎日飽きる隙など与えぬほどこれらは飛び交い、咀嚼され、解釈され、新たなトピックへと変化していく。
絡み合い、干渉し合い、食らい合い、島へ新たな変化を及ぼす。
ほんの些細な事項でも、多感な者(学生)らを少しずつ動かし、新たな世論へとつながる。

故に欠かせない。日々のトピックには目を通さなければならない。
この島の風紀を司る機関に所属する一人として、これは欠かせない。

当然、今日もその時間を確保…するつもりだった。
本来、この作業は屋内で行う。
その方が落ち着くし、意識すべきものも少なくて済む。
しかしながら、今日はそうもいかなかった。

暖かみのある陽は仄かにオレンジ色への移ろい始め、衣替えはまだ少し早かったかと思わせる風が首筋を撫でる。
学生街、常世公園。一人ベンチに腰かけ、オモイカネ越しにトピックに耳を傾ける。
ある程度周囲への意識こそ向けているが、安全地帯で警戒の必要など無い。
殆どの意識をトピックへと傾けていた。

青霧在 > 情報の咀嚼は様々な事象に彩りを与える。
話題、知恵、物事への選択肢、意志。
時事を取り入れるかそうでないかが思考に及ぼす影響というのは、軽率に考えてはならない。
あらゆる面で不安定なこの島において、知らぬは命取りとなり得る。
最前線に立つ者として、戒めのようにそう感じている。

「例年通りか……」

この島での生活も5年目に突入した。
そして、毎年見るトピックが新入生絡みのトラブル。
その内容はおおよそ3つ程度に分けられると考えている。
……その中で最も意識を引くのは、居住区外と歓楽街(落第街)における事件、事故。

風紀委員会は年中注意喚起を出している。
歓楽街、落第街、山や未開拓地域などに軽率に近づいてはならないと。
風紀委員会のみではなく、他の委員会もそういった注意喚起は怠らない。
新年度や長期休暇前といった時期は特に厳しく忠告するものだが、毎年こういったトピックは出て来る。

「……バカなことを……」

嘲りなどでは決してなく、呆れ……よりももっと別の何か。
小声、しかし重々しく吐き捨て、深く息を吐く。
ゆっくり吸い直し、意識を整えようと目を瞑った。

青霧在 > 慣れとは、気のゆるみとは、恐ろしいものだ。
学園都市常世は法治された都市であり、安全に暮らせる場所だ。
悔しいことだが、完全に安全であるとは言い切れない、とはいえこの都市ほど安全な場所は今の世界にどれほどあるのだろうか。
存外己が無知なだけで、海外はもっと安全なのかもしれないが、知る限りではこの学園都市は世界有数の安全な都市の筈だ。

「……どうしてに出てしまうのか……」

しかし、保証された安全の外に出るのであれば、その限りではなくなる。
落第街と呼ばれる区域、路地裏、未開拓区域。
場所に限った話ではない。居住区での戦闘行為や犯罪行為、異能や魔術の無断行使。
こういった規則から外れた行為もまた、保証から外れる行為だ。

風紀委員会はこれら外れた行為へ対処、取り締まるが仕事だ。
しかし、そもそも事前に防止するのが理想であり、望ましい。
故に、誰かがへと出てしまったというトピック自体、胸の内に何かが刺さったような感覚に襲われる。

青霧在 > 無論、少なからず全ての学生の行動を統率するような行いを為せるなどと考えてはいない。
如何に強大な組織であっても、思想や行動を統率し誘導するのは至難であり非現実的だ。
それを為そうとするのは傲慢だろう。

しかし、そんな真実は関係ない。
俺たちの仕事は非現実を為すことだ。
不可能だと分かっていても、可能な限り極限まで非現実を為すべく動く。
それが風紀委員としての定め……と、自分だけで勝手に思っている。
共感は求めない。強要もしない。
自分はあくまでそう思っている、ただそれだけだ。


オモイカネの画面上部にポップアップが表れる。
輸送車両が出発したという報せだ。
この後の任務に向けて自分も乗る予定の車両である。

「まだあるか」

委員会街からここまで、まだ少し時間がかかる。
今日は昼に予定を捻じ込まれた都合で委員会街まで戻れず、この公園で輸送車両に拾って貰うことになっている。

もう少しトピックを眺めているかと、意識に空白が生じた。
そこでとあることに気付く。

「……何を食べたんだったか」

朝食を摂った後、何を口にしたか。
何も、という訳ではないが…飲料のみ。
一度意識してしまうと空腹とは煩わしいものだ。
腹部に手のひらを当て、少し俯きながら思案する。

青霧在 > 「買いに行くのも……微妙な時間だな」

何か固形物を口にした方が良いのだろうが、今から何か買ってきて食べるには半端過ぎるタイミングだ。
妥協してジュースで糖分の補給だけでもするべきか。
オモイカネをズボンのポケットに突っ込んで立ち上がり、斜め前方の自販機に歩み寄る。
固形物と代替可能なエネルギー補給に適した飲料……
少しばかし不健康だが……

悶々。