2024/07/01 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に如月 槐徒さんが現れました。
如月石熊 > 「それで、お土産はいかがでしたか?槐徒”せんせい”?」

午前10時ごろのカフェテラス。
正面に座り険しい表情をする男を見上げる。
テーブルの上には注文したアイスコーヒーと、お冷。
ここのアイスコーヒーは美味しいのだ。これのお陰でたまの訪問も楽しめている。

如月 槐徒 > 「…量が多かったのでまだ配り切れていません。ですが、あてはあるので大丈夫です」

正面に座る俺よりも頭二つも小さい女。
夏で室内だというのに大きな帽子をかぶる彼女がこちらを見上げながら不快な笑みを浮かべている。

この女は数か月に一度この島を訪れ、俺を呼びだす。
決まってこのカフェテラスだ。
おかげで生徒に見られて「まさか先生の恋人?!」なんて言われた事もある。

この女が恋人?冗談じゃない。
憎んでいるというほどではないが、この女とは出来る限り顔を合わせたくない。
この女と顔を合わせる時は決まって”あの話”をするときだ。

「出来ればもう少し量を減らして下さい。欲しい人がいつだって現れる訳ではないのですから」

出来る限り冷静に努めて返す。
こんなことを言っても、聞き入られることは無いのだが…俺にだって不満を言いたい時はある。
相手がこの女なら、それも多少は許されよう。

如月石熊 > 「本家の”好意”を無下にするつもりですか?せんせい?
今の発言は黙っててあげますね♪」

この男は私に会うたびにこうやって不快で仕方ないと言った表情を見せる。
本人はそんなつもりはないって言うのだから笑ってしまう。こんなに露骨に嫌そうにして、何故バレないと思っているのか。
バレバレだというのに。

「ああ、でも残念なお知らせもあるんですよ~。次のお土産までは少し時間が明くみたいなんです。
残念ですね~」

ニコリと笑いかけながらアイスコーヒーをストローで吸う。
あ~美味しい。この身体に良くない味がいい!こんなものは中々飲めない!

如月 槐徒 > 「!…そうですか、それは残念ですね。」

一瞬揺らいでしまったが、少し落ち着いて返す。
しばらくお土産がない。それはとてつもなく喜ばしい。

…お土産というのは、本家からの仕事の事だ。
この常世学園で教師として活動するうえでの条件。逆に言えば、常世学園で任務を行う上での隠れ蓑が教師という立場とも言える。

教師になるのは、俺の夢だった。
今も変わらないし、教師を続けられることは何よりも喜ばしい。だが、代わりにやらされる任務の数々は…
やりたくない。

如月石熊 > 「えぇ。ざ~んねんですね」

一瞬明らかに嬉しそうな表情を見せたのを見逃さない。
バレバレだよ。まあ、別にいいのだけど。
この男は教師を続ける為に指示に従い続けるほかないのだ。

だから、正直その感情とかはどうでもいい。
従わないならまた別の使い方を探すだけだろう。
…まあ、霊薬の研究者辺りにされるだけだろうけど。そんなひどい話でもないね。

「ん~それじゃあ私は帰るから。頑張ってね、せんせい♪」

コーヒーを飲み干して席を立つ。
支払いはしてあげよう。この男もそれほど裕福ではないだろうし。
しばらくこのコーヒーを飲めないのは残念だけど、手続きとかも面倒だしいいか。

如月 槐徒 > 「ええ、お気をつけて」

無事を願うのも癪に思うが、あの女が仮にいなくなったとしても、別の人間があてがわれるだけだ。
それなら、比較的見慣れた顔を見続ける方がまだましだ。

…彼女はそれほど悪人という訳でもない。本家の人間だし嫌味な事を言うが、彼女は俺の不満を本家に伝えたことは無い様子だ。
彼女なりに俺の立場を理解してくれているのだろう。彼女も所詮は使い走り。石熊の名を生まれながらに与えられた子だ。

「はぁ…」

彼女の姿が見えなくなったことを確認し、小さくため息を溢す。
こんな姿は生徒には見せられないが、店内はガラガラだ。今ぐらいは良いだろう。

「…」

時々分からなくなる事がある。
教師になる代わりに任務をやらされているのか、任務の為に教師にされたのか。
後者の筈だ。俺は本家の指示で教師として送り込まれた。

だが、本家が俺の願望を知っていたとすれば?

…俺が教師になりたいことを理解していたとすれば…。

「考えるだけ無駄だ…」

一口も飲んでいなかったお冷を一気に飲み干す。
どのみち、本家は俺を利用している。
そこは紛れもない事実だ。
そして俺は教師にされた。なりたかったとかは良い。

やれることをやればいい。

如月 槐徒 > 「午後から授業だったな。早く戻らないとな」

席を立つ。
支払いは彼女が済ませてくれている。いつもの事だ。
善意なのか、気まぐれなのか、哀れみか。
その辺りは分からないが、何にせよ感謝しておこう。
…別に俺は何も頼んでいないが。

「ごちそうさまでした」

店員に声をかけて店を後にする。
まだ半日も経っていない。
残りの一日、気を引き締めていこう。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から如月 槐徒さんが去りました。