2024/07/04 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 悠薇 >
無事退院できた。
入院中、お見舞いに来てくれたひとたちに、メールでありがとうございました、とみんなに懇切丁寧にし。
退院した、その足で。
「お姉ちゃん、甘いもの食べない?」
そう声をかけて、甘えるように。
荷物持ちをしてくれている姉を連れて入店。
「なにたべよ。お姉ちゃん、オススメある?」
きっと、来ているだろうから。
そう、訊いてみた。
■伊都波 凛霞 >
「今日はほどほどにするから、悠薇が食べたいもの食べていいよ~」
眼の前の姉は、にこやかだ。
色々と思うところも、蟠りもある。
でも、今日は妹が無事に退院できた。
それを素直に喜ぶべきだし、祝うべき。
退院祝いに奢ってあげる。とうわけで。
「んー、おすすめ?おすすめはねぇ…」
白くきれいな指がすいすい、とメニューの上を滑る。
指し示したのは、季節スイーツ、レモンタルトと、定番のパンケーキセットだ。コーヒーもついていてリーズナブル。
「お見舞い、来てくれてたみたいだね。お友達?」
そう言ってにこやかに、一緒にいなかった時のことを問いかけて。
■伊都波 悠薇 >
「全部食べたことあるんだ」
流石の甘いもの好き。つい、笑みが零れた。
そういうところが可愛いのだ。
「お姉ちゃんはどれにするの?」
あえて、訊いてみて。
「黒條さん。お姉ちゃんも知ってるでしょ?」
誰かを口にすればそう、告げて。
「あとは、病棟で友達になった人とか、辛いラーメン、食べに行った友達、とか……たくさん」
指で数える程度、でも自分には、多すぎるほどの。
「いっぱい、無心で送っちゃったから。心配をかけちゃった」
■伊都波 凛霞 >
「一人でもたまに来ちゃうからね」
苦笑。
甘いものには目がない姉。
新作が出るたび足を止めては迷った末にカフェに入る姿はよく目撃されている。
「あー……黒條さん…」
あー……。
そういえばあの後、謝れてなかった。
思いっきり取り乱したというか周りも何も見えてなかったとはいえ、突き飛ばしてしまった彼女。
正式に渋谷分署に菓子折り持っていかねばなるまい。
妹の口から次々に出てくる、それらを耳にすると姉は実に心穏やかそうに、笑みを浮かべてそれを聞いていた。
「心配してくれたり、お見舞いに来てくれるのは良い友達だよ。目標、少しは近づいた?」
物怖じしてしまう、引っ込み思案な妹が学園に入る時に決めていた、目標。
たとえ少しずつでも、その目標が完成に近づいていっている様子に、姉は心底嬉しそうにしている。
■伊都波 悠薇 >
「黒條さんと、なにかあった?」
きょとんとしながら、届いたお冷やを手で、弄る。
落ち着かないから。
注文は、姉とは別のやつにしようと思いつつ。
「うん。最近は、話せる人、増えてきてるから」
目標。友達100人。
今は、それだけじゃないけれど。
「お姉ちゃんはどう? テンタクロウさんのほう、うまく、収まりそう?」
■伊都波 凛霞 >
「ううん。こっちの話。ちょっとみっともないところ、見られちゃって」
苦笑が深まる。
妹のことがあったとはいえ、流石に自分があれほど冷静でいられないとは思っていなかった。
後から思い出せば溜息ばかりである。
それじゃあ、私はこれで。と甘夏のチーズアルトとパンケーキセットを注文。
はい、と妹にメニューを差し向けて。
話せる人が増えた、という妹。
姉の視点から見ても、少し変わったように見える。
元々、姉妹の間ではおどおどすることもなく話していた妹だけれど。
そう、例えば。
以前だったらこうやって食事やお茶に来ても、注文は『お姉ちゃんと一緒の』だった。
「んー……多分。
っていうのも、同僚の皆にしばらく休んでって言われちゃって。そっちはちょっとお休み…」
その原因は無論、妹。
機界魔人の時も、紅の怪異についても。
妹の負傷や事故が絡んだ時のこの姉の取り乱しっぷり、心神喪失っぷり、怒りっぷり。
普段の印象とあまりにも違うその姿を見て、周りが心配しないわけがなかったのだ。
■伊都波 悠薇 >
注文を確認すれば、自分は。
レモンタルトにした。
そして、休みと聞くと、表情に陰りが出た。
「……私の『せい』。ごめんね、お姉ちゃん」
メニューをことりと、置いて。
「私が、子供だから。ごめん、ね……」
■伊都波 凛霞 >
「もう、いいよ」
こうやって今は無事に退院できたのだし。と眉を下げ笑う。
やや言い難げに口にしたのも、それに水を差したくなかったから。
「…私は悠薇が心配だからつい、口を出しちゃうけど」
「悠薇には悠薇の足があって、もう自分で歩いてるんだから、
私がいつまでも歩幅に口を出しちゃいけないよね」
絶対ダメだと釘を差したのに、妹は機界魔人に会いに行った。
もう危険なことをしないでと哀願したのに、退院間もなく警邏に復帰していた。
そのどちらも、妹が自分で決め、自分で選択したこと。
「だからお姉ちゃんももう悠薇が決めたことにあーだこーだ言わないようにする!
もしかしたら、自分で選択して選んだ道が間違ってたとか思うこともあるかもしれないけど、それを正解にするために、頑張って」
受け売りだけどね、なんて。やや気恥ずかしげに微笑んだ。
■伊都波 悠薇 >
「うん」
見放された。そう、思っていたかもしれない。昔なら。
でも、今はーー
「その話、したかったんだ」
ふーっと息を吐いた。
「私も。お姉ちゃんの憧れるの、やめる」
ずっと、そう、思っていた。
憧れていたいと、追い付きたいと。
隣でいたいと、ずっと、思っていた。
でも、それは。
姉を苦しめているのを、ちゃんと。
ちゃんと。理解したから。
「私、お姉ちゃんを、ちゃんと『みる』、ね」
■伊都波 凛霞 >
「…私達は姉妹で、家族で。同じ血を引いているけど…。
それでも、お姉ちゃんと悠薇は一人の人間じゃない。
ごめんね。私のほうが妹離れ、できてなくて」
子供の頃を思い出す。
自分の後をついてくる妹が可愛くて仕方なくて。。
お姉ちゃんなんだから妹が誇れるような立派な人間にならないと。
お姉ちゃんなんだから妹を守らないと。
お姉ちゃんなんだから妹が憧れるような存在で在り続けないと───。
天秤──。
人間二人分の才能と伸び代を以って成長したのが、今の自分。
伊都波の家は、きっと才覚に恵まれた家だろうと思う。
それが、二人分。
知らぬまま、妹を非才に追いやり自分が完璧と呼ばれる成長を遂げていた。
───それを知った時は本当に辛かったな。
「…案外ぽんこつな姉なもんで、じっと見られると恥ずかしいかも」
■伊都波 悠薇 >
「ううん。そんなことないよ」
姉の姿が、いつまでも綺麗だった。
いつまでも、強かった。
いつまでも自分の前で。
その後ろに、隣に、いることが。
見えて、そうありたかった。
でも。
「私が、お姉ちゃんを、ちゃんと。お姉ちゃんじゃなくて、一人の人間として、見てなかったから。
私が、謝るべき」
もう、やめる。
憧れるのを、もう、やめる。
私は。
「お姉ちゃんが、好きだから。ちゃんと、お姉ちゃんを、好きでいたいから。だから、お姉ちゃん」
わかったつもりも、もう。
「ちゃんと、話して。私にお姉ちゃんを、教えて?」
■伊都波 凛霞 >
当たり前のように一緒にいた。
ひとつ屋根の下に住んで、同じ朝食や夕食をとって。
お互い、知らないことなんてないんだ。
わかっているつもり、そんな風に思ってしまうことはもしかしたら自然なことだったのかも。
妹の言葉にちょっと驚いて、眼を丸くする。
「お姉ちゃんの、こと…?」
もちろん、自分に起こったことや日々の出来事全てを妹に伝えているわけじゃない。
学園に入ってからは、以前ほどは姉妹の時間もなかったかとは思う、けれど。
「う、うーん…難しいこと言うね…?
逆に、何かお姉ちゃんのことでわからないこと、ある?」
妹を気遣って言葉に布を被せることは、ある。
でも偽り騙したことなんてないし、聞かれたことにも特別な理由がなければ隠すことはないような…。
妹に話すまでもなくて話さなかった情報…なんかはもしかしたらあったかも。
小さく首を傾げつつ問い返して。
■伊都波 悠薇 >
「うん」
注文した品が届く。
美味しそうだ。
姉が、好きなもの。
甘いもの。
「知ってることも。もういちど。
私が、そうであってほしいと、そう思ってしまっているところもきっとあるから。
お姉ちゃんを、ちゃんと、見たいの。理解、したいの」
■伊都波 凛霞 > 「(何この可愛いすぎる生物)!!!」
■伊都波 凛霞 >
思わずそんな声が飛び出そうになった。
いくら姉の真の姿といえど、まわりに迷惑をかけるわけにはいかない。
危ない。危ない。
配膳されたスイーツにいつもだったらきゃーっ♡となるところなのに、
今はもっともっと視界に修めたい存在が目の前にいるから…霞むッッ。
「わかった。それは多分、お姉ちゃんも一緒。
せっかく私もしばらくお休みもらってるし、うーんと悠薇とお話しよう!」
学校でも、お家でも、道場でも。
朝学園に登校する時も下校の時も。
妹の成長を見守る意味でも出来ていた距離。
我慢しなくていいのなら、言われるまでもないのである。
「案外ダメなお姉ちゃんでもがっかりしないでよ?」
食べよっか、と。
冷房の聞いた店内で酸味が食欲を掻き立てる冷静スイーツをいただこう。
■伊都波 悠薇 >
「ううん、ダメなところも全部知りたいから」
柔らかく、微笑んだ。
「私も、全部ちゃんとお話、するから」
焦っていたこと。
少しでも近づきたくて、話すことを挑戦したこと。
理解するには、話すことが大切であるのを学んだこと。
『分かった顔』をするのは、『なめている』と、知ったこと。
そして、自分がこんなにも。
ーーどうしようもなく、姉に嫉妬していたこと
それを、全部。
話した。
スイーツは、半分くらいしか。
食べれなかった。
■伊都波 凛霞 >
一緒にいるのが当たり前の姉妹で、こんなにたくさん話したのは久しぶり。
そんな風に思うくらいには、たくさんおしゃべりした。
妹の抱えていた、自分への嫉妬。焦燥。
知っていると思うが故の、怠慢…。
ちゃんと、妹が持っていた『人間一人分の感情』だった。
だから、姉も話す。
これまで妹には話していなかったこと。
学園で男の子に告白されたこと。
時に今断る理由がないクセに、理由も伝えずそれらを断って、悩んでいたりもしたこと。
妹が自慢に思えるような姉でいようと頑張っているのは、今も続いていること。
そして、妹が傷つき、倒れた時に…周りから心配されるぐらいに取り乱して。
お医者さんや看護師さんにまで喰ってかかって迷惑かけてしまったこと──。
最近あったことから、そうじゃないことまで…。
「他にまだ、あったかなぁ…。…ん、おいしくなかった?」
半分ほど残った妹の前のスイーツを見る。
s9おれとも、病み上がりだからかな…なんて。
■伊都波 悠薇 >
「ううん」
そういうわけではない。
ちゃんと美味しい。でも、自分を口にすればするほど、スゴく、食欲がなくなって。
食べれなかっただけ。
「お姉ちゃん、食べる?」
聞くだけ、訊いてみて。
「うん。やっぱり、いろいろ、すれ違ってたんだね」
少しずつピントが合っていって。
今、目の前の姉を正面から見据える。
ーー今までより鮮明で。
そして。
ーー同じくらいの場所に、いるのが、わかった。