2024/07/14 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に橘壱さんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に夜合 音夢さんが現れました。
■橘壱 >
常世学園 某日。
炎天下の昼下がりではあるが、この辺りは冷気空調が聞いているエリアだ。
特殊な霊石を機材で刺激し、周囲の空気を冷やしているらしい。
おかげでこのテラス席においても悪くない快適な状態を約束してくれる。
実際、かなり効いているらしく、店の前を通る人々もなんか生き返った顔をしている。
「…………。」
日差しについてはパラソル一つで何となる。
そんな快適なテラス席に座ってタブレット端末を操作する少年が一人。
無数のケーブルがテーブルに置かれたトランクに繋がれており、モニターには無数の英数字の羅列。
自ら扱う兵器の電子面でおいての調整。
プログラムにおける操作パターンやデータを組み込んでいる最中だ。
橘壱という戦闘経験の浅い少年が、戦闘者と変わらない動きが出来るのは此のデータ補正が大きい。
特に此処は技術の最先端、様々な異能者や超人が集まる学園だ。データを集めるには事書かない。
レンズに映るデータや英数字を画面操作一つで次々操作しつつ、テーブルにあるカップを口元へと持っていく。
「……うっ。」
苦い。思わず顔を顰めて口を離した。
気になって頼んでみたブラックコーヒーだが、少年の口は合わないようだ。
「先生のコーヒーも、こういう味なのか……?」
なんて一人ぼやいていた。
■夜合 音夢 >
―――暑い。どこへ行っても暑くてうんざりする。
エアコンの効いた自室から出たくはなかったが、残念ながら寮に野生動物はいない。
日課の餌やりをどうにか済ませ、死にそうな顔で帰路についていた。
そんな折、ふと どこからか冷気が漂ってくる。
「…………!」
もし少女に獣の耳があれば、ぴん! と欹てていたことだろう。
きょろきょろと周囲を見回し、程なくして冷気の出所を見つけ出す。
通り沿いにあるカフェテラスの一角。パラソルの下に極楽はあった。
誘蛾灯に誘われる羽虫のように、ふらふらと歩み寄っていく。
「すずしい……」
フェンスに寄り掛かり、テラス席から漂う冷気を肌で感じて目を細める。
当然そこに座る先客からは丸見えで、何事かと思うことだろう。
加えて、こちらは涼むことに夢中で先客の顔にまで気が回っていない。
■橘壱 >
とりあえずもう一度飲んでみた。
口の中に広がるのは黒くて苦い液体が喉を通っていく。
うげぇ、と顔をしかめながらゆっくりとカップをソーサーへと置いた。
「此れくらい飲めないと話には……ん?」
タブレット端末に手をかけた時に、ふと視線に入ったフェンス越しの人影。
出会ったのは一度だけだが、その顔は良く覚えている。
"共犯者"、年代的に自分の先輩に当たる女子生徒。
「夜合先輩?気の抜けた顔で何してんすか……。」
あの時公演であった女子生徒に違いない。
随分と生き返るような顔付きしているが、まぁ此の炎天下なら仕方ないか。
普段の口調とは違う、慣れない年上用の口調だ。
訝しげに彼女を見ながら、カチャリと眼鏡を軽く上げる。
「こっち、席空いてますよ。涼むなら一杯位奢るけど……。」
■夜合 音夢 >
「んぅ? ……あ、橘くんだ」
聞こえた声に顔を上げれば、会ったことのある人物だった。
以前、公園でハトの水やりに協力してくれた"共犯者"。
こうして会うのはあの時以来だが、他者の顔を覚えるのは得意な方だ。
「ん、公園帰り。暑かったから」
怪訝な視線を向けられてもどこ吹く風。
奢ってもらえると聞けば、立ち上がって向かいの席に腰掛ける。
「お言葉に甘えて……ところで、これ何?」
それから、テーブルの上に置かれたトランクとその中身を見て首を傾げた。
■橘壱 >
「覚えていたようで何より。まぁ、確かに暑いだろうけど
格好にも問題があるんじゃあないっすか……普通に暑そう……。」
此の時期にマフラーだけでも結構熱がこもりそうだ。
一応、冷却用の魔法道具も配られたりするが、それこみでも普通に暑そう。
それを言ったら自分だって白衣だから一言は言えないけれども。
やれやれ、と思いながら対面に座る彼女を見やった。
「久しぶりですけど、相変わらず変わりないようで。
また公演のハトに無断に餌でも与えてたりしてたんすか?」
相変わらずマイペースなようだが、その辺りは気にしない。
久しぶりに出会ったし、二度目の邂逅だが特に変わりはないようだ。
少年自体が外見こそ変わりはしないが、何処となく前よりは丸くなっている。
ぶっきらぼうで人を寄せ付けない刺々しさはなく、マイルドなものだ。
「これ、どうぞ。別に金額に忖度はしないんで、何でも頼んでください。
……ああ、これは仕事道具。主に風紀で使うための兵器っす。」
とんとん、とタブレット端末を二回叩くと、宙へと表示される立体映像。
人型の機械。無骨な鋼鉄の兵器Assault Frame「Fluegele」の名前と姿が表示された。
■夜合 音夢 >
「薄着だと暗……玩具とか餌が持てないから」
何かを言いかけて目を逸らした。
少しはだけたコートの中には猫じゃらしやらチューブ状の餌やらが大量に仕込まれている。
「ん、無断じゃないよ。ハトに頼まれた」
人それを無断という。
「……そっちは前より優しくなった気がする?」
前回も飲み物を奢ってもらった覚えはあるが、なんとなく態度に違いを感じた。
何かあったのかな、と思いつつメニュー表を見て、注文したのはアイスココア。
ミルク多めで生クリームのトッピング付きという遠慮の無さだ。
「風紀委員ってこんなのも使うんだ。
……すごい、見てても何も分からない」
仕組みなどは全く分からないので、表示されたホログラムにただ「おー……」と感心している。
それが何に用いられるものかは、なんとなく察せたけれど。
■橘壱 >
「……ん?今何か……うおっ……。」
言いかけたかって言おうとしたが、その言葉は大量に仕込まれた装備に遮られた。
猫じゃらしにチューブ状の餌。此れ全部動物用なのか。
思わずぎょっと目を丸くした後、過る疑念に訝しげに顔をしかめた。
「……もしかして此れハト以外にも上げてないか???」
動物を思う心自体は立派だが、相手は野生生物。
用途を守らない野生生物への餌やりは人の営みを害する結果に成りかねない。
どうなんですか?とちょっと机から身を乗り出してじとり、と碧の双眸が相手を睨んだ。
「…………。」
が、そう言われるとすぐ表情は緩んで、気恥ずかしそうに目をそらした。
「まぁ、色々在ったもんで……他人に興味はないって言った手前
色々と人と関わり持っていく内にこう、人への興味というか、まぁ……。」
要するに人と付き合っていく内に絆され、軟化されていったようだ。
思えば、彼女の出会い頭にも随分と冷たい態度を取った気もする。
思い返せば其れこそ黒歴史のように気恥ずかしい。
何処か気まずそうに、申し訳無さそうにちらりと相手を見やって。
「最初在った時は、その、すんません……生意気っした……。」
おずおずと謝罪した。
店員さんは空気を読まずにアイスココアを持ってきてくれた。
どかっと此れでもかと盛られた生クリームはとても遠慮がない盛りっぷりだ。
「……まぁ、使ってるのは今のところ僕以外見たことはないけど
このパワードスーツ自体は戦闘用でなければ市販でも売ってたりはするっす。」
「僕のは戦闘用、それも"専用"にチューンされたものでして……。」
眼鏡くいっ。オタク得意分野になると話が長い。
この話は興味がなければ、ココアとともに流してしまうのが最善だ!
■夜合 音夢 >
「あげてるよ。野良猫とか、カラスとか。
異能で助けてもらってる恩返しというか……手向け?」
あっけらかんと言う。
しかし、それはまた意味合いが違ってくるのではなかろうか。
「もちろん、節度は弁えてる。無暗にあげてるわけじゃない」
生態系に大きな影響を及ぼさない程度に加減はしている。
助長して人間社会に害為すようなら、咎めるのもまた彼女の務めだ。
「私は気にしてないよ。初対面だったし、私も大概だし。
でも、人に興味を持てるようになったなら、良かったのかな」
運ばれてきたココアの上に鎮座するクリームを付属のスプーン型ストローで溶かしながら微笑む。
表面的な無愛想さで言えば自分も彼といい勝負だと思う。
それでも、こうして同じ卓を囲めるのだから、人というのは案外 気軽に接せるものなのかもしれない。
「ぱわーどすーつ……なんか凄そう。
戦闘用ってことは、これに乗って戦うってこと?」
純粋な好奇心と、どこか活き活きした様子に触発されたのか、促すように質問を投げて。
■橘壱 >
「異能……動物と会話できるとか、操れるとかそういうの?」
成る程。そういうことであれば普段持ち運んでいるのも納得がいく。
ある意味親しみ深い隣人というわけだ。
そうなれば、餌やら何やらでコミュニケーションを取るのもおかしくはない。
「まぁ、別にそれならいいんだけど、そう言うなら本当なんだろうし……、……。」
此処で下手に疑い、刺激しない辺り少し丸くなったのだろう。
ただ、それでも疑問にもう事がある。少年は勘がいい。
厚着の理由は理解したが、ただ餌だけ、遊び道具だけというのも考えづらい。
じーっとレンズ越しに視線が上に下へ。決していやらしい視線ではないが、向けられる側はどう感じるか…。
「いや、僕だって初対面でああなら似たような対応をすると思う。
先輩が悪いわけではないっす。……まぁ、正直わからないことばかりではあるけど……。」
「良いことは増えたと思う。」
それだけははっきりと言える。
それ自体に悪いことじゃない。そう言い切る少年の顔は清々しい。
自分のブラックコーヒーと違いクリーム全盛りなアイスココア。
……女性は甘いものが好きと聞いたことあるけど、凄いな。あれ全部食べるのか。
「乗る、というか"着る"って感じかな。勿論動かすためにある程度体は鍛えること前提だけど
着込めば専用の兵装に人工筋肉、後はプログラムされた動きがAI補助して…それこそ"超人"みたいな動きが出来る。」
「僕はAFの扱いには自信がある。入学理由も、宣伝活動みたいなものだしね。
非異能者でも、こういった変容後の時代の最先端でしっかりと活躍出来るんだってね。」
ただ着込めば強くなるほど簡単なものではないが、非異能者の凡人を超人に近づける鉄の外部装置。
少年が風紀にいる理由、最前線で活躍する才能。非異能者であり、天才的パイロットは企業にとって正しくマストな人材だった。
■夜合 音夢 >
「ん、大体そんな感じ」
餌付けの動機さえ伝わればいいので、細かい説明は省いた。
視線を動かせば、先程まで炎天下を歩いていたせいで汗ばんだ制服が目に入る。
厚着なので変な物が(怪しい物も含めて)見えることはないが、果たして直視に耐えうるかどうか。
ちなみに、当の本人は視線に鈍感なのか気にしている素振りは一切ない。
「私もルームシェアするようになってから、寮に帰るのが楽しみになった。
お互い、いい縁が巡ってきたってことだね」
クリームが少し溶け込んだココアを一口飲んで満足げに。
それから、AFとやらについての説明に耳を傾ける。
「着る装備……だから体を鍛えてたんだ。
これがあれば異能に頼らなくても戦える……なるほど」
言うなれば、外付けされた鋼の肉体。
純粋な力だけでなく、運動性能も補えるとくれば、確かに夢のような話だ。
異能を持たない物の戦う手段として注目されるのも納得と言える。
正直、機械やプログラムについてはサッパリだが……ひとつだけ解ったことは。
「橘くんの頑張りが、たくさんの人の希望になるってことだね」
広告塔、旗頭、言い方は様々なれど、彼の肩には"未来"が乗っかっている。
そんな風に感じた。
■橘壱 >
17歳の少年、絶賛思春期である。
即ち、"そういう目で"見ることもある。
厚着だから関係ないって?No。その汗ばんだ肌とかちょっとやらしく見えたりする。
思わず、視線がじーっと汗ばんだ部分に視線が集中し────…。
「────…!あ、ああ……そう、すね。夜合先輩もルームシェアなんだ。
僕も一応、前々からルームシェアしてました。ルームメイトとちゃんと話したのは、つい最近だけど……。」
「いい縁に巡り会えたのは、そうかもしれない。
話せばいい奴等ばかりだよ。一人はまだ、子どもだけどね。」
はっと慌てて目線を上げた。危ない危ない、バレてないだろうか…。
それこそルームメイトの関わり合いは最小限にしてきた。
それを漸くコミュニケーションに取るようにしたんだから、筋金入だ。
言い換えればコミュ障が向き合うのは結構労力を使うのだ。
それに見合った結果が得られたかはわからないけど、収穫は在った。
事実、ルームメイトを語る少年は何処か楽しそうなものだった。
「そう。此れ自体はある程度重いし、支える為の筋力。
それと何より、フルに運動性を活かすと"G"が凄いんだ。」
「まぁ、それを踏まえても戦えるよ。僕も全てを使いこなせてるわけじゃない。
けど、事実異能者と戦えるし、災害現場や事故現場の作業も楽々こなせる。」
「それだけの機能はあると言って良い。」
多少AIの補正がかかるとはいえ、見ての通り鋼の塊。重さも相当だ。
そして、その機動力は高速戦闘さえこなせるほどだ。
だが、世界には物理法則が存在し、それを越えようとするものには相応に牙を剥く。
故に、ただ着て強くなるだけの漫画のような機械ではない。
それだったら、どれだけ楽なのか。自らのマグカップを手に取れば、その言葉には目を丸くする。
「……"希望"、か。考えたこともなかったな。
僕はAFに初めて乗った時、それこそ夢中になった。
だから、AFを動かす理由があれば何でも良かった。」
「だから企業からの提案があった時は、まさに天啓だったんだ。
最初は本当に、そんな自分勝手な理由だったからさ。そういうのはあんまり考えたことなかったな……。」
暗いコーヒーに映るのは、何とも言えないな少年の表情。
■夜合 音夢 >
「こっちは……メイドとバニーと普通の子」
ラノベのタイトルか何かのような珍妙な字面である。
そこに野良猫めいた音夢も加わって、かなり個性的な部屋のようだ。
それでも、楽しそうに語るのはこちらも同じ。
「どんなに自分勝手でも、努力し続けられるのはかっこいいと思う。
それが誰かのためになるなら、なおさら」
誰でも簡単に扱えるものではないことくらい、素人の自分でも分かる。
それを熱意ひとつで乗り越えたというのは立派なことだ。
誇っていいんじゃないかな、と微笑みを湛えたままグラスを傾ける。
■橘壱 >
「……何だって???メイドとバニー???」
なんて言った今。メイドとバニー?
いや、この変容後の時代、どんな人種が至っておかしくはない。
なんというかまぁ、そう、個性的だ。自分の部屋の面子に負けない位の個性だ。
逆にこの人はよくツッコまずに平然としているな。もしかして、天然なんだろうか。
少年壱、そんな事を思わずにはいられなかった。
「…………誰かのため、か。」
少年の戦う理由は常に自分のためだった。
正確には、兵器である以上戦いが付随するだけ。
AFを羽ばたかせる自由。その楽しさは自分だけのものだった。
確かに、AFで人命を救ったことはあった。風紀として、誰かのために戦ったのかもしれない。
今でもその気持ちは変わらないし、それが誰かのためというのは、不純ではないだろうか。
「余り考えたことはなかったな……僕は自分のことしか考えてなかったから。
……夜合先輩はどうなんですか?その、そういう誰かのためにっていうのは、自分がやってたりは?」
なんて訪ねて、カップに口をつけた。
「……うっ。」
やっぱりブラックは苦い。
顔をしかめて、ソーサーへカップを置いた。