2024/09/07 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に橘壱さんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に伊都波 悠薇さんが現れました。
橘壱 >  
常世学園 カフェテラス「橘」
たまたま名字が同じなだけで彼の店ではない。
早速退院直後、仕事の最中ある女子生徒のお誘いに成功した。
生憎連絡先は知らないので直。かなり勇気を振り絞った。
再三お世話になったお礼として今度軽くなんか食べようって感じだ。
常世学園では定番中の定番のカフェテラス。
そんなお店の前で落ち着かない様子で待つ少年。

「……ヤバいな、直前ですっぽかされたらどうしよう。
 意外と精神的ショックデカいぞ。でもなぁ……ヘンに噂されるの嫌だよな……。」

お店の前でぶつぶつとぼやく姿はやや不審。
珍しくネガティブな発言だが、体とはいえ男女で行くこと。
結構控えめな性格な人物である事を考慮してもいきなりお誘いはハードルが高かったか?
やばい、当日になって不安が登ってきた。
当人の姉のお墨付き(?)とは言え不安になってきた。
こんなに不安なのは何時以来だ。変に緊張してきた。
頼む、来てくれ。先ずはそんな事を祈りながら待っていると……。

伊都波 悠薇 >  
「……こ、こんにちわ」

制服。
ぎこちない感じで、やってきた。
店の前に、すごく挙動不審にキョロキョロしながら、ロボット歩行で。

「あ、えと、その……キョウハヨロシクオネガイシマス?」

いつもの制服で。
アハハと、乾いた笑い。

緊張のあまり、どうしても変になるようだった。

橘壱 >  
「うぉっほう!?」

びくっ。聞き慣れた声が飛んできて跳ねた。
もう肩と一緒に体ごと飛んだ。
それこそギギギ、って錆びたようなぎこちなさで振り返る。
制服。うん、何時もの制服だ。一方こっちだって何時もの白衣。
だって仕方ないじゃん。外に行く服なんて無いんだもん。

「あー、えっと……此方こそ……?
 きょ、今日は来てくれてありがとうございま、す……?」

ぎこちないのがもう一人いる。
二人揃ってガッチガチである。

「えーっと、せ、席コッチっす……悠薇先輩……。
 き、今日も可愛らしい制服姿デスネ~。」

なんか口調までおかしくなってきた。
そして褒め方が余りにもズレてる。
世のモテ男が聞いていたらラリアットが飛んできたであろう。
とりあえずせめて男子ってことで予約席ご案内。
落ち着いたオシャレな雰囲気の店内席。
一番奥の席を選んだのは陰キャなりに落ち着いて二人きりでお話したいから、だ。
とりあえず席に付けば……やばいどうしよう。頭真っ白だ。
緊張してるせいで表情まで引きつってきたぞ、いかん。
とりあえず、話題だ。話題をふろう。

「えー、あ、あー、そう。
 なんか秋を先取りみたいな期間限定のパンケーキがね。
 あーるみたいなんで、はい。オススメらしいっす。」

それ店員の言うことですよオタクくん。

伊都波 悠薇 >  
「イエイエ、あの、誘っていただいてホンジツハ。恐縮で、ゴザイマス……」

何を言ってるのやら。
敬語なのか、敬語じゃないのか。

いつかの夜、友人から連絡が来ただけで、どう連絡を返したらいいか、なんて、相談を夜中、姉を叩き起こしてするくらいなのに。

そりゃ、テンパるどころではない。

「……いや、あの、今日も、橘さんも素敵な白衣デー」

制服にしたのに理由はない。
いつも、どこにいくのも、最近は制服だ。

誰かと行く用の私服なんて持ってない。

姉はたくさん持っているけれど。あと姉におすすめされたものはいくつかあるけれど。
クローゼットに眠っている。

妹を知っている人には想像に易い事かもしれないが。
そのまま案内されるまま店内へ。

「ど、どうも……じゃあ、あの、ソレデお願いします……」

自分で選ぶ余裕はないので、言われたものをそのまま注文することにする。

橘壱 >  
「アーイエ、此方こそマジでこう、ハイィ……ッスー……。」

クソ、おかしいな。
他の人とは普通だったのに会話がやばいぞ。
会話の続き、続きが出てこない。
チャットとか何気ない出会いとかなら問題ないのに
だってこれ"デート"じゃんね、実質。
自分から女性を誘って緊張してるのがダサすぎる。
なんかガッチガチすぎて肩まで萎縮してきた。

「(こういう時ノーフェイス(アイツ)とかならスマートに行くのか……?)」

もうちょっとああ言うナンパな姿勢を見習うべきか。
いやでもああは成りたくないな。もうちょっと誠実に生きたい。
そんなド失礼なことを考えながらとにかく気持ちを落ち着かせようとする。
店内の落ち着いたクラシックなBGMに長閑な静かさ。
なにもない平和な一時だ。落ち着け。
最初に店員に出された水をぐいっと口に含んだ。
いい感じの冷たさがちょっとくらいは気持ちを落ち着かせてくれる。

「あ、いや、ハイ。まともな服もってなくて……ハイ……。
 す、すんません。マジで無難な服装ってこれしかなくて……ハイ……。」

変に落ち着いたせいでバカ正直に答えてしまった。
オシャレなんて、陰キャオタクにわかるはずもない。
せめてルームメイトにご教授願うべきだったか。
ハハ…と乾いた笑みを浮かべながら自分もそれで、と注文を済ませておいた。

……気まずい、そう思ってはダメだ。
ここで日和ったら意味がない。
自分が誘ったんだし、とにかく会話を広げなければダメだ。
今日は彼女をよりよく知るために此処にきたんだ。
そう、先ずは話題を広げていこう。よし、深呼吸。

「えっと……お姉さん、凛霞先輩にパンケーキとか好きって聞いたんで……。
 僕も甘いものとか、結構好きなんですよね。頭使うと糖分欲しくなる、というか。
 悠薇先輩とかはどうですか?他にこう、好きなものとかあったりします?」

伊都波 悠薇 >  
「ア、いや、そうじゃなくて」

失言!!?

間違えた、マズイマズイ……

さぁっと顔が青くなる。

えとえと、なんとか、なんとかしないと……

焦る。
水が運ばれてきた。それを一口、飲んで。
喉を、つまらせる。

どんどんどんっと、胸を叩いて、ぷはぁっと、息を吐くと。

飛んできた、質問に。

「……え。ねえさんに? えと。甘いものは、駄菓子のほうが好きで。こういうのも、まぁ、普通に好きですけど。好きランクだと、4くらいで、駄菓子が、5で。もっと高いのは、激辛料理、です」

喉が詰まったことに、焦って、素で。
すらすら、と言葉が出てきた。

橘壱 >  
「!?ちょ、大丈夫!?」

急に顔色が悪くなったと思ったら思い切り喉詰まらせた。
水を喉につまらせる人いるんだ…とは思ったが
医学的にこれが気管に入ったって言うなら話が変わる。
大変宜しく無い。思わず身を乗り出した頃にはとりあえず落ち着いたらしい。
ふぅ、とりあえず大丈夫そうだから一安心。
一旦席について、胸をなでおろした。

「一応聞くけど、変な所に詰まったりはしてないよね?
 場合によっては今すぐ検査を受けたほうがいいけど……。」

一応医学も専攻してる以上は聞いておこう。
些細なことでも人命が掛かるとなると、話は別だ。
思わぬきっかけで冷静さを取り戻すことは出来た。
じ、とレンズの奥で碧の双眸が真っ直ぐと彼女を見据えている。
が、返ってきた言葉には思わずずるっとずっこけそうになった。

「な、成る程?結構意外だな……辛いのが好きなんだ……。
 そういう激辛料理とか一人で食べに行ったりはしてる、のかな?」

ということはちょっとミステイクだったか。
クソ、お姉ちゃん情報網意外とアテにならないな。
だが思わぬ収穫は出てきた。激辛好き。此れは次に活かせる。
よし、いいぞ。この調子だ。ここから広げていこう。

伊都波 悠薇 >  
「はい、大丈夫です」

大丈夫と言われると肯いた。
ふぅっと、深呼吸して。
ゆっくりともう一度水を飲む。
こく、こくと二度喉が鳴った。

「激辛ラーメンとか、よく食べます。一番、辛いやつ、とか」

ことりとコップを置いて、息を吐く。

「調べて、行くこともよくありますし、激辛チャレンジ、とかもたまに」

橘壱 >  
「それならいいんだけど……へぇ、そうなんだ。
 どう?最近はなんかそういう踏破したチャレンジとかある?」

女の子だから偏見ってあるのだが聞けば聞くほど意外だ。
その見た目で、ああ言う真っ赤っ赤なラーメン美味しく食べたりするんだろうか。

「いや、僕のリサーチ不足だな。
 今度行くときはそういうお店にしておこうか。」

そういうところは生真面目らしい。
眼鏡を軽く上げながら、気が抜けたらしく柔くはにかんだ。

「にしても、急に誘ったりしてごめん。
 来てくれて嬉しいよ。先輩は、お姉さんとかとか友達とかと良くこういう店には?」

正直対ショック姿勢(?)は取っていた。
でも彼女の優しさか人徳のなせる技なんだろう。
せっかくのプライベートを頂いている以上は、丁寧に使わせてもらおう。
とりあえずごと、と自分の隣に重厚なトランクをおいておいた。
コイツは何時だって、プライベートでも手を離さない。

伊都波 悠薇 >  
「最近はチャレンジは、してないですけど。カップラーメンとかで有名な激辛ラーメンの一番上、くらいはさっくり食べれます。この間も美味しくいただきました」

あれは結構、好き。リピートしている。でも、友達でいける! 一緒に行こうと、二度目になった人は今のところはいない。

「……え、今度、ですか?」

目をパチクリして、マジ?という顔をした。
つい、出てしまった。

「いえ、その……あんまり来ないし、行かないですね。ひとりのことの、ほうが、おおい……です……」

だんだん小声になって、ずーんっと、落ち込んでいった。

橘壱 >  
「カップラーメンで有名っていうと……あれか。
 CMで見たことあるけど、あれの一番上ってなんか見たことはあるけど……凄くなかった?」

液晶越しに見たことあるぞ。
確かもうそりゃとんでもなく真っ赤だった。
いや、赤いってもんじゃない。地獄の血の池みたいな紅さ。
並み居るチャレンジャーがそれこそ泡吹いて倒れているのを見た。
それを彼女は"美味しい"といい切った。
すげぇ、とマジで呆気に取られてしまう。

「凄いな、先輩。やっぱ結構タフだよなぁ。
 ……え、あ、あ、すんません。嫌なら大丈夫ッス……。」

やばい。マジ?って顔してたぞ。
今度とか流石に調子乗りすぎたか。
思わず乾いた吐息に此方もスン…と気落ちしていく。
再びなんかコミュ弱者二人の間に気まずさがながれると
そのタイミングを察したかのようにテーブルに並ぶ注文品。
秋を先取りした限定パンケーキ。
二弾重ねの太いケーキにくりっくりっに熟れたクリがまぶしてある。
生クリームとバニラアイスを添え、芋ソースでトッピングされた秋の甘味。
備えてあるクリームソーダはお二人へのサービスです、とのこと。

「おぉ……結構ボリューミーだな……。
 こういう店はカフェラテ飲みながら作業ばっかりしてたから……凄いな。」

伊都波 悠薇 >  
「すごいみたいです。一緒に行った人たちは、辛いもの、もう見たくないって言ってたので」

美味しいと思うのだけれど。
まだ、そういえば姉といったことない。
でも、姉なら平気だと思う。今度一緒に行ってみようかな……

「あ、いや、嫌というわけではないんですけど。その、そんなに楽しませる自信がないといいますか、あの……」

慌てつつ。
否定。本当にそういう意味はなく。ただ自分の心臓が持たない。それだけ。

「美味しそうですね。姉が喜びそうです。写真。姉に送っておこうかな……」

写真を取りつつ、いただきますと手を合わせた。
ぱくりと一口、美味しい。

「……そ、そういえば今日はなにか用事があったんですか? その、この間の、いざこざで、なんか私、間違えましたか?」

そして。自分から、切り出した。

橘壱 >  
「そんなに。」

そんなに。
もうそれ食事って娯楽じゃなくて苦行じゃん。
味覚や好き嫌いは人それぞれ。
尚の事怖いもの見たさでちょっと食べてみたくなった。

「なんていうか……(から)い通り越してその人達は(つら)いだったのかな。
 え、ああ……そういう感じか……そんな気を使わなくてもいいよ。その……。」

「僕は悠薇先輩と行ければそれでいいと言うか……
 や、でも、気持ちはわかるっす。人と行くときはそういう事考えると言うか」

「今の僕がそうだし。
 僕が相手なら気を使わなくても気兼ねなく……って、言うのは変かな?」

せっかくプライベートの時間を使ってもらうならとは思う。
そういうことなら、自分が相手の時は気を使わなくてもいいし
飽くまで今回、誘ったのは自分なんだからそう考えるだけだ。
ちょっと困ったようなはにかみ笑顔を浮かべながら、パンケーキを一瞥。

「……あ、もしかしてなんだけど、甘いものはお姉さんのが好き?」

写真を撮る姿を見つつももしや、と訪ねた。
とにかく自分もいただこう。いただきますはない。
育ちの悪さが滲み出ている。軽くフォークで切り分けて口の中へ。
ふわっとした食感にマロンと芋の濃厚な甘み。
そう、ダイレクトにデカい甘みが舌に転がる。美味い。

「あま……うま……。
 ……ん、あ、えー……」

「別に用事ってものはない、けど……あーえっと……
 ただ、悠薇先輩と食事したかったことが、用事、くらい?
 あ、き、キモかったらすんません。本当に単純に一緒に遊びにこう感覚で……。」

もしかしてあの誘いそういう風に取られてたのか。
だから来てくれたのか、成る程。
別に騙したわけでもないけど、そう言われるとなんか申し訳無さが出てきた。
キョドりつつもおずおずと、嘘はつけないバカ正直。
やべぇ、これで嫌われたらちょっと暫く立ち直れないかも。

伊都波 悠薇 >  
「……はぁ、そうですか」

ただ食事をしたかっただけと言われると。
そういうものなのかと、肯いた。
なんか、しただろうかと、思うけれど心当たりはない。

でも、こんなぼっちと話がしたいと思ってくれるあたり、結構、ぶっきらぼうな言い方をするが、根は優しいのだと思った。

「姉は大の甘いもの好きです。私は、こういったのよりは駄菓子、みたいな素朴なのをよく口にしますけど、姉はこういうのに、目がないので。

結構、何でもできて弱点がないように見えますけど、甘いものをこう、取引に持ち出すと結構、ぐらついてくれたりして、なんだかんだで譲歩してくれるときもあったりして、そんなところがギャップ萌えというか、なんというか。

でも、時に凛々しく、ばっちり決めてくるその姿はやはり姉だなぁって思う感じでーー」

始まってしまった姉トーク。止めないと、止まらない。

橘壱 >  
お、なんか思ったよりうっすい反応だぞ。
やばい、嫌だったか。は、はは、と笑みも引きつる。ずーん。

「……や、すんません。
 キモオタクと一緒に飯食うのイヤだったらマジ大丈夫なんで……。」

そういう反応だからそういう感じだと捉えたらしい。
泣くな壱、男だろう。とりあえず精一杯今の空気だけは重くしないようにしよう。
クソ、甘いもの食ってるはずなのになんか苦くなってきた。

とまぁ、あーだこーだ考えてると止まらない。
止まらない姉トーク。どっかで見たパターンだな、これ。
フォークをおいて頬杖を聞きながら遮らずただ聞いている。
そして、思わずふ、と吹き出すように笑ってしまった。

「まぁ、優秀な人だと聞いてはいるけど、結構キャピキャピしてるな。凛霞先輩。
 なんだか思わず"やっぱり姉妹なんだな"って思っちゃった。お姉さんも同じ話してたよ。」

「妹の話になると止まらない止まらない……ほんと、仲いいんだなって。
 家族仲がいいってだけで、ちょっと羨ましい。」

キリのいい所で口を挟んだ。
結構対照的だと思ってたけど、やっぱり姉妹だ。
お互いの絆をしっかり感じれるし、微笑ましい。
同時にやっぱり、こういう仲睦まじさは羨ましいとは思う。
終わっていた家庭環境である自分と比べると、なんと睦まじいことか。

伊都波 悠薇 >  
「え、あ、いえ……そういうわけではなくて。その、そういうこと、最近多いなと思って。その、あんまり経験がないので戸惑うというか……

姉、を紹介してほしいとか、そういうことはあったりしたんですけど。過去。でも、こういうのは、慣れてなくて。

その、反応間違えてたらすみません」

すみませんに、すみませんが返される。
うぅ、負のスパイラル。

「すみません、慣れてなくて」

もぐもぐと、甘いものを食べる。もう、殆どなかった。
結構な、早食いだ。いや、緊張してたからかもしれない。

「……この前、喧嘩いっぱいしたばかりですけれどね。だからより仲良くなったのかもしれません。橘さん、ご兄弟は? この前、聞きましたっけ、このあたり」

橘壱 >  
「え、あ、ああ。そ、そっか。いや、コッチこそごめん。
 つい勘違いしちゃったかと言うか……まぁ、嫌じゃないなら良かった。」

とりあえずアウトではないらしい。
ほっと一安心。良かった。風紀委員続けられなくなるとこだった。
いやだって、もしかお合わせたら気まずいじゃんね、そうなったら。

「最近結構誘われるんだ。お友達とか……彼氏?
 確かに凛霞先輩も魅力的な人だとは思う。
 優秀だし可愛げもあるし、先輩として頼りになる。」

「けど、悠薇先輩は意外とタフでキモ座ってるし
 僕の所感ではあるけど頑張り屋っていうのかな。
 好みだけで言えば悠薇先輩のが僕は好きだけどね。
 だから、きっと皆先輩個人に向き合ってくれてる証じゃないかな?」

こういうことはしれっと言うタイプだ。
少なくとも自ら自己嫌悪するほどの人物だとは客観的に思わない。
好感触で、姉とは別の意味で自分は頼りにしてる。
フォークで適当にパンケーキを切りながら
視線を落とせば相手のパンケーキは結構無い。
因みに少年はまぁまぁ食べるのは遅い方。

「食べるの結構早いんだね。いや、僕が遅いだけかも知れないな。
 ……ハハ、僕だって慣れてないよ。誘うときだって、凄い緊張したし
 何より、本当に今日来てくれるか凄い不安だったから、来てくれてホッとしてるよ。」

ある意味一生分の勇気を使った気がする。
人付き合いに慣れてないのはお互い様。

「だから、そういうのは気にしなくてもいいし
 厚かましい言い方だけど、お互い慣れていけたらな、とは思うよ。」

「……"喧嘩するほど"って言うじゃない。
 本当にどうでもいい相手なら関心も無いよ。
 それだけキミ達姉妹が真面目に互いを思ってる証拠だよ。」

そうやってぶつかって、手を取り合えている。
本当に仲睦まじく、お互いが大事に思っているのがわかる。
クルクルとフォークで宙をなぞりながら、少しばかり困り顔。

「僕?どうだっけな。一応、一人っ子ではある。
 両親はいるけど、我ながら家庭環境は終わってるね。
 ……あんまり僕の話は聞いてて面白いものじゃないよ。
 それよりも僕は、先輩の事を知りたいから呼んだってのもあるしね。」

「悠薇先輩は、やっぱり家族皆仲良かったりする?」

伊都波 悠薇 >  
姉のことを聞くとうんうんっと得意げに頷く。
しかし、自分のことになると、ん? と首を傾げた。

「友達です。か、かれしとか……そんな、姉じゃあないんですから。縁遠く程遠く、生涯一度でも存在しなさそうな、固有名詞なんて、ないですよ」

ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんっと首を高速で横に振った。

「どう、でしょう。最近確かに、妹、と言われることは少なくなった気がしますけど……そっちのほうが、楽、だったような気も、します。

今はその、反応が、大変です」

反応と、いう表現で合っているかわからないけれど。
それでも、大変だ。嫌では、ないけれど。

「まぁ。ドタキャンされて、嫌な気分に。というのは自分にも、他人にもさせたくないので

まぁ、その、お互いに、というのであれば、が、がんばりましょう」

むず痒くなって、声が上擦った。

「まぁ、だいたい、仲はいいんじゃないかなって、思います。その、いろいろ一段落ついてからはより」

橘壱 >  
「うわ速い。首で発電できそう。」

ちょっと想像よりも強めの高速首振りにビックリして目をパチクリ。
しれっと出てくるノンデリ発言。そういうところだぞ。
にしても、想像よりも自分に自身がないタイプなのかもしれない。
んー、と軽く思案顔。じっと彼女を見やる碧の双眸。

「僕は悠薇先輩彼女だったらすっっっごい嬉しいけど?」

しれっと言う。こういうタイプの男。
良くも悪くも人と物を選ばずにLikeとLoveを問わず口にするタイプ。
好意を押し隠さずにひけらかすタイプのため、別ベクトルのコミュ障といえる。

「それは多分、慣れてない大変さだと思うな。
 というよりもそんなおまけみたいな扱いされてたの?
 なんだかちょっと酷いっていうか……なんていうかな。」

「コミュニケーションってちゃんと個人に向き合うものだと思うんだけどな。」

言葉の端から想像するに、有能な伊都波凛霞の妹。
付属品のような扱いには何とも言えない。
この学園に来たのも、風紀に入ったのもつい最近だ。
彼女がどういう扱いを受けてきたかは知らないが、憤りは覚える。
それこそ思わず、その心無い連中を思うと眉間に皺が寄った。

「そうだね、お互い頑張ろうか。……声、上擦ってる。」

なんだかこっちは随分と落ち着いてきた。
何気なしにからかうように、指差し向けてイタズラっぽく笑んだ。

「良いことじゃないか、それ。
 それだけ大事に思われてるってことだと思うよ。
 ……先輩達のご家族とかは本土に?お姉さんとは一緒に学園へ?」

伊都波 悠薇 >  
「いや、あの、そういうのはいいんで」

かつて、悪い男がいた。その男が、口にしたセリフで。
スン、と、手を前に出して、結構ですとアピール。

ーー姉に習った、拐かされたときの拒否方法その1

だった気がする。違ったような気も、する。

「まぁ、その。ぼっちでしたからね」

苦笑しつつ。ドリンクも飲み終え、ほぉっと一息。
ずいぶん、余裕がある口調に、ほえーと感心して。

「はい。みんなで一緒に」

コクリと肯いた

橘壱 >  
「?いやだって普通に可愛いし、さっきも言ったけど魅力的な人だよ。
 ……まさかとは思うけど、僕が適当言ってると思った?」

「こう見えても、今はちゃんと他人のことは見ているつもりだけどな、
 確かに、悠薇先輩の全てを知っているわけではないけど
 こうして関わった中でさえ、一人の女性としても、人間としても魅力的だと思ってるよ。」

言葉の意図が汲み取れないタイプの男。
というのもあるけど、橘壱という少年は一度決めたことには真剣だ。
何事にも真剣であるが故に、嘘だと思われたからこその訂正したつもりだ。
根は真面目で実直だからこそ起きる事故。
変なこと言ったかなぁ、と当の少年は不思議顔。

「それを言ったら、僕だって学園にくるまで引きこもりだよ。
 小さい頃以外は、ネットの世界に引きこもり。ちょっと有名人にはなったけどね。」

そういう意味でもお互い様。
リアル、社会の中で見たら随分と似たりよったりなのかも。
シンパシー何かを感じつつもへぇ、と相槌を打ちながらごちそうさま。
此方は漸く食べ終わってクリームソーダを軽く一口。

「じゃあ、お姉さんとはずっと同じ学校とか
 そういうのでもずっといっしょだった感じ?」

彼女に興味があるからこそどんどん質問を重ねる。
その口端には生クリーム付いてるけど。育ちが悪い。

伊都波 悠薇 >  
「……ちゃんと伝わってますが。そういうのはいいので。そういうこと言ってると勘違いされますよ。ラブコメ主人公になりたいんですか」

そういうタイプかと納得。
同じく、対応その2。冷静に、そういうこというな、と対処。
姉に、ここで、慌てると悪い男の思う壺、と習っているから。

内心はもう、大変だ、てんてこ舞いである。
でも姉に言われたことはほぼ、絶対だから。負けない。

「はい。今までずっと一緒でしたよ。……口端、クリームついてますよ」

ようやく一息。いつも通りに、なれてきた。

橘壱 >  
「ラブ……!?そんなにヘンな事言ったのか、僕……?」

当然無自覚である。
勿論その手のゲームもやったことあるから非常に良く伝わった。
成る程、好意を伝えるにしろこういうのはダメらしい。
難しいな、コミュニケーション。
むむ、と悩ましげに額を指で抑えながらふと、気づく。

「……なんか僕ヘンな男だと思われてる???」

なんかそんなオーラを感じる。気のせいか?

「そりゃ、仲いいわけだ。
 にしても、喧嘩って言ったけどそんなに喧嘩してこなかったのかい?
 仲がいいにしろ、少なからずあるとは思うけど、一体何が原因で……」

「……っと、ごめんごめん。ちょっとつい……。」

指摘されれば慌ててナプキンで拭き取った。
良く見れば更にはちょっと雑多なクリームやカスがあり
食べ方の汚さもある。端々に見える、育ちの悪さ。
ひいては、家庭環境の悪さが垣間見えるだろう。

伊都波 悠薇 >  
「……まぁ、その。初対面だったら、ドン引きして、近寄らないようにしよ、っていうくらいには」

知ってるから、しないですけれど、と、口にして。

「だいぶ、ナンパ師ですよ。今の橘さん」

くすりと笑いつつ。

「単純な、ことですよ。私は姉を、姉は私を。ちょっとだけ、大事に思いすぎただけって感じです。その、大事の方向性が違って、大喧嘩ですよ」

橘壱 >  
「…………そ、そっか。
 いや、その、そういうつもりじゃないんだ。
 別に軽い男のつもりではなかったし、ごめん。」

「考えってのは口に出したほうがいいと思ってる方なんで、つい。」

やばいぞ、思ったよりも自分のコミュニケーション能力のなさに愕然。
普通の人間はエスパーなんかじゃない。
テレパシーなんて出来ないし、考えだけで思いは伝わらない。
好意的な事はそういう点では伝えるべきだと思っているんだが、そうじゃないらしい。
反省だ。額を手で抑えて、素直に謝罪をした。
なんだかんだ、根は実直な少年なのだ。

「大事に思いすぎたが故、か。
 なんというか、知ったような利き方になると"らしい"理由かな。
 僕は喧嘩する相手もいないから憶測だけど、そういうのが束縛的になっちゃった、とか?」

仲睦まじさ、大事なものほど守りたい。
傷つけたくないからこそのすれ違いなのかもしれない。
笑う彼女の笑顔を指の隙間から眺めつつも、視線にはちょっと羨望が交じる。

伊都波 悠薇 >  
「まぁその、考えは素晴らしいとは思いますけど。その、まぁ、頑張ってください」

そのあたり、自分も上手な方とは言えない。
頑張ってとしか言いようがなく、少し申し訳なくなった。

「逆ですかね、束縛、というか。相手の意志を尊重しすぎるがあまり、すれ違ったというか。その結果、大変だったというか。

私の異能、教えました、よね?」

確か、ふんわり言った、気がしたけれど。どうだったか。
ーー最近、異能について、話す機会が多くて、どうだったか、覚えていない

橘壱 >  
「ハイ、ガンバリマス……。」

コミュ弱者少年。
とりあえずこのあたりの機敏は鍛えなければいけない。
気を取り直して飲みきったクリームソーダの甘味が良いリセット剤。
クリームが溶けてるほうが美味しいと思うタイプ。

「意思を尊重っていうと、やりたいことをやらせたらって感じか。
 えっと、触りくらい?詳しくは聞いたこと無いから、もう一度詳しく聞いていいかな?」

確か格納庫でふんわりと聞いた気がする。
マイナス系の異能とか、その程度。
医学的に言えば、恐らく異能疾患という病にも属する可能性もある。
彼女の事に大いに関わることだ。じ、と真面目な視線で促した。

伊都波 悠薇 >  
「いいですよ」

そんな大した、話じゃない。

「私の異能は、『天秤』と称するものを内包しているらしくて。
その対象が姉、となっていたようでした。その、効果は結構単純で」

もう、慣れてしまった説明。

「姉と、反対の事象が、私には起こる。例えばですけど、姉が、テストで100点をとれば、私は0点を取るんです」

これだけで、だいたい、察することができる。

「姉は、天才です。御存知の通り。ということは、つまり、私は、凡才、以下になる、という釣り合いを取っていた。

だから、姉が結果を出せば出すほどに。私は、結果が出ない。落ちこぼれというか、テストでは0点ばかりでしたし。武術も落第レベル。もう、ホント、どんなに頑張っても。結果が出なかったんですよ。

笑っちゃいますよね。だから、橘さんにはーーマイナスの異能、って言ったんですよ」

橘壱 >  
彼女の話を聞いている。
天秤、秤。文字通りの効力。
文字通り片方に比重が向けば片方が割りを食う。
深刻な異能疾患に該当する症状だ
医学を専攻する一生徒としては、かなりこわばった顔つきになった。

「……仲睦まじいはずなのに、割りを食う。
 いや、笑わないよ。だって、残酷じゃないか。
 光があれば影ができるって言うけどさ。それがよりにもよって姉妹なんだよ。」

「笑えるはずもないよ。
 本来あり得た、いけるはずだった道に行けない悔しさはわかってるつもりだ。」

若者を中心として覚醒する異能。
魔術、武術の才覚。非異能者である少年は何も持ち得なかった。
異能社会、神秘が当たり前に成り下がった世界で
汎ゆる非凡に嫌われた非異能者。笑えるはずもない。
深刻な表情でじ、と碧は逸らされることはない。

「ちょっと他人事みたいな言い方になるけど、だからこそ凄いとは思う。
 今もこうして、姉妹仲良く出来るキミが、お姉さんが。
 ……そんなキミさえ羨ましいと言ってしまった僕なんだ。」

「僕が先輩の立場なら、悍ましい感情を抱いていたと思うよ。」

今でこそそういった感情はないにしろ
同じ立場ならきっと仲良しではいられない。
きっと殺したいほど憎くなっていたはずだ。
だからこそ、彼女の人間性の凄さには感服せざるを得なかった。
そう、だから言わねばならないことがある
知った以上は、必要なことだ。

「……ごめん、あの時格納庫でキミに不躾な事を言った。
 それだけはちゃんと、謝らなきゃいけない。本当にごめん。」

だからこそ、不用意に羨んだ過去の己を恥じた。
座ったまま、深く頭を下げた。ケジメだ。
許されようとは思わない。

伊都波 悠薇 >  
「あはは、まぁその。この異能のせいだったってわかったのは、最初からじゃなかったですし。

なんだったら、わかったときは、うまく使おうとしちゃって。

姉にできないことが自分にはできるから、姉においていかれないとか、思っっちゃって。それが姉の負担になるとも知らず」

懐かしい、というのも違うけれど。
あのときの感覚は、今も、忘れない。

「大丈夫ですよ。あのときの発言は、お互い様、だったと思いますし」

気にしてないと首を横に振り。

「天秤の効果を、姉が中和する手段を見つけてくれて。今は普通に。成長はできてます。でも、凡の範囲ですからいっぱい失敗して、心配かけて姉と大喧嘩して。ごめんなさいをして、また仲良しになった、ていうのが近況です」

くすくすと笑った。

「あぁ、橘さん。悍ましい感情を抱いていた、っていうのは、私、実は抱いていたんですよ?」

正しすぎる、という意味で。

「姉は絶対に負けない、って全幅の信頼を、押し付けていたんですから」

橘壱 >  
静かに頭を上げて、少し困ったように頬を掻いた。

「そう言ってくれると助かるよ。ありがとう。
 ……そうだね。どうなってしまうかは、大体想像付くよ。」

出来ないことが出来る、ということは逆も然り
今度は姉がその分をおっかぶるようになるだけだ。
姉妹でありながら、互いに互いに手を取り合うような事もさせてくれない。
まるで、そう─────……。

「……お互いを憎み合わせるような、食い合わせるような。
 恐ろしい異能疾患だ。……これは答えたくなかったら無視してくれて良い。」

「今でこそ仲が良いけど、その、中和する前にいがみ合ったりとかはしなかったのかい?」

結果的にそれは乗り越え、今の仲の良さが今の状態に表れている。
その過程はどうだったのだろうか。
答えたくない過去かもしれないから、知れないならそれでもいい。
まさしく、今となっては笑えるくらいの思い出話なんだろう。
顎に指を添えながら、思案を巡らす。

「絶対に負けないと言える全幅の信頼……。
 それはつまり、自分の姉が完璧でなければ姉ではないみたいな、歪んだ考えとか?」

伊都波 悠薇 >  
「どうでしょう。でも心の底では失敗してくれてもいいとも、思ってたかもしれません」

全幅の信頼はしてた。でも、失敗したらしたらソレで。

「姉の手伝いはできますし。私は、どちらかといえば置いていかれる方が、嫌だったので。

完璧じゃない姉は姉じゃないとは思ったことなかったかもですね。姉も人間ですし、ただ……そう、ただ、私の気持ちを押し付けていただけですから

その。私は、姉に憧れしか抱いたことがなかったので」

橘壱 >  
「……気持ちはわかるよ。僕だってこの島に来てからは似たような事を考えてた。
 何時か、AF(コイツ)といっしょに全員ねじ伏せてやるとか、考えてたしね。」

「ちょっと違うかも知れないけど
 明るい奴が上にいると、影にいる方はどうしても妬ましくなる。」

彼女の感情とは違うけど、失敗を願うものの気持ちはわかる。
島に来た当初とは大分考えも変わった。
けど、未だに下にいる存在なのも事実だから
それが妬ましく、悍ましく思うのも理解できる。

「けど、今は違う。とかじゃないかな?
 当時を知らない僕が言えた事ではないだろうけど
 今はお互い前後にいるわけじゃない、隣同士とかさ。」

「喧嘩してより仲良くなれたのなら、そういう風に考えも変わったりしたんじゃないかな?」