2024/09/17 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」にノーフェイスさんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」からノーフェイスさんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」にノーフェイスさんが現れました。
■ノーフェイス >
「―――――」
瞬きひとつせず。
頬杖ついて、眼の前で起こっている事象をみつめていた。
彫像のように身じろぎしないその様子は、この存在が生物であるか疑わしくなるほど。
それほどの集中で見つめているものだから、つい。
『お客様』
「―――――」
『あの、お客様』
「―――――」
『だいじょう』
「まだはじまらないの?」
急に視線を上げてきたその客に、店員はびくりと肩を竦めた。
その貌の造作に、見上げられて――
『少々お待ちくださいませ……』
足早に、店員がバックヤードのほうに向かってしまった。
■ノーフェイス >
(谷に……)
恋に落ちた、かのような物言いに聴こえるが。
その顔立ちに魅入られた、というわけではない――逆だ。
(ちょっと悪いコトしたかも)
緊張と不安を呼び起こしてしまったらしい。
苦笑して、背もたれに身を預けた。ぐっと伸びをする。
『大変申し訳ございません。御厨が代わります』
「ああ、どうも」
見知った店員だ。確か四年生。信用できる。
「新人ちゃんをいたぶるつもりはなかったんだけど」
『存じております』
「ついでにあの子の連絡先とか聞けない?」
『取り扱っておりません』
■ノーフェイス >
『それにしても、珍しいですね。いつもブレンドでしょう』
「この前同席した美女が楽しんでてね。羨ましくなったんだ」
首をかしいで、流血色の髪が肩に流れる。
「出来れば眼の前で、と思ってね」
『どうしてあの子に?』
「可愛かったから」
ため息を吐かれた。
『ご注文は』
■ノーフェイス >
自分の、満面の笑顔を指さしてみせた。
『似顔絵を?』
「まさか」
肩を震わせてから、頬杖をついた。
「描けるものかよ」
『なんなんですかあなた』
「愛を」
『ネコマニャンでよろしいですか?』
「待って待って」
いまにもエスプレッソに垂らされようとするミルクに、さすがに制止した。
■ノーフェイス >
「一輪の薔薇を」
少しだけ涼しい風が吹く午後に、不意に足が向いた楽しみ。
『ご注文はそのようにお願いいたします』
「つぎからは善処する」
――ぽたり。
褐色の世界に、白い光が落とされた。
「白薔薇になるのかな――紅くならない?」
『いまからは、なりませんかね』
やがて生まれゆく、愛らしいラテアートを、瞬きひとつせず見守っていた。
「"あなた色に染まる"――らしいよ」
ご案内:「カフェテラス「橘」」からノーフェイスさんが去りました。