2025/03/07 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
「あ、予約していたいとわ、です」

先に入って待ってると、連絡をしてカフェテラスのなかに。

案内されたテーブル席に移動して、一息。

どきどきと、緊張しながら相手を待つ。
からんと、運ばれたお冷やで喉を潤して。

ーー、待つ。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に黒條 紬さんが現れました。
黒條 紬 >  
喉を潤す時間はそう長くはなかったかもしれない。
一息ついた頃には紬がやって来て、
彼女が店の入口からあちこちの座席を見回している様子が見えるだろう。

額にぴったりと伸ばした指先を垂直に置いて、視線を泳がせて。

「あっ、ここでしたか~っ! いやー、お待たせしましたーっ」

いつもの如く元気な声色で、ぶんぶんと手を振って近づいてくる紬。
近づいてくれば、店の出口からやって来た風と共に甘い香りが届くだろう。

伊都波 悠薇 >  
「あ」

来てくれるだろうかと、不安だった。
いつもは、簡単に軽くチャットツールを使っての連絡。

だけど、今回はなんだか緊張して懇切丁寧な誘い文句、を、つらつらと並べてしまったから。

来ないかも、と。

「こんにちは、黒條さん」

前髪を整えて、向かいの席を示してご挨拶。

黒條 紬 >  
「どうもどうも~っ」

言われればすぐに対面の席へと座る紬。
すぐに店員が持ってきた水には口をつけず、
まずは相手を見て小首を傾げる。

「しかし、改まってどうしました?」

自らの顎に手をやり。

「あまりに丁寧かつしっかりした文章が送られてきた時は流石に
 戸惑いましたが~……」

整えられた髪の向こうに見える顔へと目を向けつつ。

「もしや……恋の相談ですかね?」

顎を挟むように親指と人差し指を広げて、目を輝かせて見せる紬。

伊都波 悠薇 >  
「え゛」

恋と言われると変な声が出て、そして固まった。

ふりーず。

さいきどうは……1分たってもしない。

黒條 紬 >  
「ってまぁ、冗談ですよ冗談~……あれ?」

手をくいくいっと振りながら、困ったように笑う紬だったが。
まったく再起動しない様子の悠薇に、流石に表情険しく目を細めて。

「……図星? 悠ちゃーん? 戻ってきてくださーい」

眼の前で手を振ってみたり、
それでもダメなら肩をぽんぽんしてみたり、
まだまだダメならほっぺを指でツンツンしてみたり――
とにかく戻ってきそうなことは何でもやっていくだろうが、さて。

伊都波 悠薇 >  
「はっ」

つんつん、されたころに戻ってきた。

「えと、なんでしたっけ。鯉? まな板、でしたっけ?」

全くもってよそうしてなかった自分とは余りに無縁……だったかもしれない存在に脳がふりーずしてしまった。

「あ、なんか頼みます?」

黒條 紬 >  
「あ、戻ってきましたね」

頬をツンツンしていた辺りでようやく戻ってきてくれたらしい。
次はほっぺをぎゅむぎゅむと捏ね回してみる予定だったが。

「あぁいやいや、何でもないです何でもないです」

またフリーズループに入ってしまっても困るし、
一旦この話題は振らないことに決めたらしかった。
眉を下げる笑みを浮かべて、ふいふい、と手を左右に振って見せる。

「あ、それじゃ私はショートケーキと珈琲のセットを」

そう口にしてて、相手方を見やり。

「で、かなりかしこまった相談みたいでしたけど……
 どうしたんです~?」

彼女が困っていること。本当にひっそり恋に悩んでいるのか、
或いは。
もう片方。既に彼女を悩ませていることがはっきりしている、
異能の方だろうか。

思考は走らせつつ、柔和な笑みは崩さないまま。

伊都波 悠薇 >  
「私は、アイスコーヒーにします」

一緒に店員に頼んで。
どうかした、と言われると。

「えと、その。黒條さん、は」

ゆっくり、声を震わせながら。

「『天秤』が、動いてるって知ったら、どう、ですか?」

黒條 紬 >  
こほん、と軽く咳払いを一つ。

「どうって……」

声を震わせている様子。
この場に誘ってきたあの真摯な言葉の数々を思い出し、
咳払いと共に過ぎたおふざけモードは一旦置いておいたらしい。
真剣な表情でその言葉を受けて。

「どう、っていうのはなかなか難しい質問ですね。
 それはまぁ、それで悠ちゃんが悲しんだり、苦しんだりするなら
 嫌だなって。私はそう思いますけど……。
 
 
 その、天秤……やっぱり動いてたんです……?」

伊都波 悠薇 >  
「そう、だと思います」

研究者の、確率で言えば8割がた。
その天秤は、あり、動いているという。

「指標は、なんなのかは、わかっていない、ですけれど」

いくつか、心当たりがある。
でも、それは偶然……のように見えるだけ。

姉のときも、そうだったから。

「私、は含めず。純粋に天秤、のこと、どう、思いますか?」

黒條 紬 >  
「悠ちゃんを含めず、ですか」

窓の外を見やる。
店内のガラスには紬と――その前に座る悠薇の姿が
通りへ浮き出したように映り込んでいた。

その様子を見て何事かを考えたのか、
暫し経ってから視線を戻す紬。

「……天秤だけを切り取って考えるってこと、
 考えてみればなかったですね。
 私が知り合った時にはもう、悠ちゃんは天秤と共にありましたし。
 その、能力と人を分けるって考え方がなかなか難しく」

世に異能を二つ名として呼ばれる者などは数あれど、
紬からすれば、そういったものもあまり良い気はしなかった。
対象を観る際に、「人」であるより先に「能力」として見てしまう、というのは恐ろしいものだ、と。そのようなことを話し。

「その上で、敢えて『天秤』だけを見るのであれば……
 天秤自体は、怖い能力だな、とは感じますよ。
 均衡を保つ為にどんなことが起きるか分からないですからね」

まっすぐ目を見てそう伝える。
ここで優しい嘘を口から出すことなんていくらでもできるが、
それが彼女の為でないことは自明の理であった。

伊都波 悠薇 >  
「そう、ですよね」

そう、怖い能力だ。
だってーー

「いつ、自分が対象になるかわからないですもんね」

そうなれば降りかかるものはプラスかマイナスかわからない。

プラスならまだいい。
でも、マイナスなら……

「…………」

つい、無言になる。

黒條 紬 >  
運命を捻じ曲げてしまう力とも考えられる。
しかし、そこに巻き込まれる因果もまた運命である。
ならば彼女自身の意思が働かぬその力に、
如何なる罪が問えるだろうかと。

詭弁を弄すればこの少女を救えるかと言われれば、
そうではないだろう。

故に。

「えいっ」

重苦しい雰囲気。
無言になってしまった悠薇の頬を、身を乗り出して
掴まんと手を伸ばした。
拒まなければ、頬はぎゅむぎゅむと揉まれてしまうだろう!

伊都波 悠薇 >  
「ぽむちょ!?」

挟まれると奇声がでた。

「こ、黒條さん?」

黒條 紬 >  
「悠ちゃんの辛さは私には測りかねますし、
 そんな気持ちが分かるなんて口が裂けても言えないですけど。

 それでも、
 悠ちゃんが辛い思いをしてるのは十二分に伝わってます。
 
 そんな重~い空気醸し出してたら、
 不幸の神様の良い的ってもんですよ」

挟めてしまったのでついでにちょっと揉みつつ。

「確かに天秤は怖いものかもしれないですけど。
 悠ちゃんは一生懸命な良い人なんですから、
 私はそんな悠ちゃんが好きなわけで」

そうして、そのように語を継いだ。
異能に対してどう向き合えばよいか。ただその答えだけを求めるのであれば、
専門家やカウンセラーに相談するのが筋だ。

それだけでは足りずに、友人を名乗る自分にこうして相談を投げかけてきたことに
意味がないとは考えていなかった。

「だからその、こほん。
 これが見当違いなおせっかいだったら超恥ずかしいですけど、その。
 私は天秤が動いてるからと言って悠ちゃんから離れようとは思いません。
 もう友達ですから」

最初は別の理由があった気もするが、今は純粋にそう感じているのだった。

伊都波 悠薇 >  
「あ」

言われた言葉に。
揉まれたとき、前髪がさらりと流れる。

覗く左目。なきぼくろ。

その、瞳は揺れていた。

「そう、ですか」

これは、『確認』だった。
そして、『博打』だった。
ならば、

「わかり、ました」

『覚悟』が、いる。

「なら、友達だから。ちゃんと、言いますね」

そのまま、眼を逸らさず。

「私は、『私』を。天秤に乗せるようにします」

口にする、決意。

「犠牲、という意味じゃないですよ。天秤の使い方という話で。

ーー私は『今』を、大事にしたいという、話です」

黒條 紬 >  
手を離して、相手の顔を見る。
伝えるべきことは伝えた。だから後は待つだけだ、と。
そう言わんばかりに、紬は量の拳をスカートの上に置いて、
彼女の様子を見守り、言葉に耳を傾けた。


「これまでも悠ちゃんは天秤に乗っていたのではないですか?

 ……いや、これまでとは違う意味合いなのでしょうね。
 乗せられるのではなく、自分から乗っていくということでしょうか?」

彼女が発する言葉を、紬なりに解釈して聞き返す。

「天秤の使い方を変えて――自分なりにコントロールをする、と?」


伊都波 悠薇 >  
「うん」

こくり、頷く。

「『天秤』は、道具です。だから、使い手になる」

この先はーー


伊都波 悠薇 >  
カフェテラスが混んできた。

回りの音で、
言葉が聞こえたのはきっと目の前の、友人だけだった。

黒條 紬 >  
始終を聞き、受け止めて後、逡巡。

「なるほど、そうしてしまえば確かに。でも、それではいずれ――」

そう口にしかけて、友人は頭を振った。

「――いえ、そういう生き方も、一つでしょう。
『今』を大切にしたい。それが悠ちゃんの望みであれば、
 応援するのが友人ってものです」

静かに頷く。しっかりと見つめ返して。

能力(どうぐ)を怖がっていない今の悠ちゃんなら、きっと大丈夫ですよ。
 でも……釈迦に説法(おせっかい)かとは思いますが、
 くれぐれも油断しないようにしてくださいね」

紬は、沢山の者達を見てきた。
能力に溺れ、奢り、恐れ、破滅してきた者たちを。
その中には、自身が最後に突き落としたものも多くある。
彼らの多くは今頃――牢の中だ。

「私にできることなんて限られてますけど……まぁ!
 何かあったらいつでも言ってください。
 怖くなったり寂しくなったりしたら、一緒に居てあげることくらいはできますからね」

うんうん、と頷く紬。

伊都波 悠薇 >  
「そのときは、お願いします」

力なく、ふにゃりと笑みを浮かべた。
信じているような、偽りない、自然な笑みだった。

きっと、見たことあるのは、姉ぐらいかもしれない。

「姉にも、言ってないことですから。黒條さんは、共犯、ですね」

しぃと、鼻に人差し指を当てて。

「あ、注文の来ましたね」

タイミングよく、テーブルに並ぶ頼んだメニュー

黒條 紬 >  
「二人だけの秘密ってやつですね、分かりました。
 この黒條 紬。口の堅さには自信がありますから。
 貴女と一緒に罪を犯しましょう」

とん、と拳を胸にやってどや顔の紬であった。

さて、やって来たメニューを見て、両の拳をぎゅっと握って
笑顔を見せる紬。

「いやぁ、ここの珈琲最高なんですよね~!
 あ、ケーキ半分要ります?」

などと、ケーキの中央にフォークを入れながら問いかける紬であった。

伊都波 悠薇 >  
「いえ、大丈夫です」

くすりと、笑みを浮かべて。

「はい、落ち着いて、本もよく読めるいい喫茶店ですよね」

ここからは、普通の友達のように。

仲良く談笑の時間ーー

ご案内:「カフェテラス「橘」」から伊都波 悠薇さんが去りました。