2024/07/23 のログ
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」にミア・コレットさんが現れました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」にエルピス・シズメさんが現れました。
ミア・コレット >  
前にドッペルゲンガー戦で助けてもらったエルピスくん。
彼にお礼と現状説明を兼ねてファミレスに呼び出した。

時間は放課後。まぁまぁ混んでいるけれど。
座れたからよし。

「夏の夕暮れだね」

外をチラ、と見て。

「今日は好きなもの注文していいよ、前のお礼」
「あと、バイト代入ったし」

エルピス・シズメ >  少し前のお話。
 『定期券』を使って裏常世渋谷の探索に向かった時、たまたま彼女──
 ──ミア・コレットとその姿を模した怪異が相対している場面に遭遇した。

 彼女に向けられていた言葉が、聞いていられなく/見ていられなくなって割り込んで流れのままに二人で脱出。

 その際に連絡先を交換して、改めてお礼のお誘いをうけたのでここ至る──。

「うん。もうちょっとで夜になるのかな。ファミレスだと昼でもよるでも快適だけどね」

 好きなものを頼んでいいと言ってくれたので、メニューを立てる。
 ……遠慮なく好きなものを食べるとヒかれそうなので。

「ありがとう。ちょうどお腹も空いていたしね……ケルベロス風ステーキセット、サラダとケーキ付きにしようかな。」

 ちょっと贅沢かな? と思いつつも遠慮しない方がいいかなと思って試行錯誤中の期間限定っぽいメニューを選ぶ。

ミア・コレット >  
「私、夏の夕暮れは好きだな……」
「私が欲しいものに似ている気がして」

メニューを見る。
夏限定スイーツか。良いかも知れない。

「ケルベロス風……?」
「私はペッパーハンバーグと、橘のシャーベットで」

パタンとメニューを閉じて彼の目を見る。

「改めて、前は危ないところを助けてくれてありがとう」
「もう少しで……まぁ、ファミレスで言うのもアレな状態になるところだった」

冗談を交えながらお礼を言って。

エルピス・シズメ >   
「欲しいもの?」

 詩的な例えに疑問を抱いたらしい。
 小さく首を傾げた。

「三種類のお肉が乗ってるみたい。ぁ、ケーキは夏みかんのムースで。
 ロース、ハラミ、ランプの三種類の切り落とし?」

 1枚としてお出しするには小さい部位の盛り合わせ。
 種類と量を食べたい欲張りセットだ。

「うん。つい手を出しちゃったけど……それが良い方向に転がったならよかったよ。」
「……アレでソレな感じに成らずに済んだなら、一安心。でも……」

お礼を受け取りながらも、あの存在に気になるものがあったのだろう。

「どうにも、あの子?の言う事は僕も引っかかって……。
 よだかの星になれって言うのはすごく残酷だし、必然性……っていうのも、どうにも。」

 あの後引っかかるものがあって、相対していた存在が口に出した書物を軽く読んだ。
 考えさせられるものはあるが、中々気の滅入る話だった。

ミア・コレット >  
欲しいものを聞かれれば、

「傷ひとつない星」

と端的に答える。
注文を済ませてメニューを脇にどける。

「自分でもなんで欲しいのかわかってないけど、無性に欲しいもの…かな」
「三種盛りかぁ、いいね」

ぐ、とサムズアップして注文したメニューが届くのを待つ。

「あの時、エルピスくんが助けてくれなかったらここにはいられなかった」
「だから、すごくすごく感謝してる」

続く言葉には、しばらく沈思黙考。
考えをまとめてから言葉を一つ、一つ形にし始める。

「よだかの星も必然性の塊だよ」
「よだかは醜い、星は綺麗」
「よだかは食物連鎖に縛られる、星はそれ自体として独立している」
「よだかは有限の命、星は永遠の存在」

「作者らしい、徹底された合理主義の物語……よだかの星」

つまり、あいつは言いたいのだ。

「必然性を否定する私への当てつけ」

エルピス・シズメ >  
「傷ひとつない星?」

 どのようにも解釈が出来そうば言葉。
 夏の夕暮れと上手く紐づかず、疑問が浮かぶ。

「何でか分からないけど、どうしても欲しいもの。」
「三種盛りはこう、あれもこれも、って欲を満たしてくれるのから。」


 既視感のような違和感を覚えた。
 "相対していたものは"知っている"風な口をきいていたから。"

(本当になのかな。……気のせいかな。)
(僕は僕だし、ミアさんはミアさんだから。)

 ミアの沈思黙考を以て、暫くの静寂が訪れる。
 エルピスもエルピスなりに思考を巡らせていたらしい。

 後に、カタチにされ始めた言葉へと耳にする。

「何と言うか……試験なら満点を狙えそうなこすり方だね。ミアちゃんの脛に傷がある訳でもないだろうし……」

 ただ、それ以上に一つの言葉が気に掛かった。

「必然性って?」

ミア・コレット >  
「なんていうんだろ……すごく綺麗なもの」
「光と闇、朝と夜、陰と陽みたいな…」
「世界には相反する属性のものだけじゃないと信じさせてくれる」

「そんな……綺麗なものが欲しい」

クス、と笑ってから相手の欲の話を考えて。

「だよね、私もついミックスグリルとか頼んじゃう」
「そして食べきれなくて後悔するまでがセットかな…」


黙り込んでいる二人の前にメニューが並べられる。
黒胡椒が美味しそうな、ハンバーグ。
デザートは後から持ってきますと告げてウェイターさんが去っていく。

「私は異邦人、偶然この世界に来たと信じてるけど」
「それがドッペルゲンガーは気に入らないみたい」

「運命とか、黙示録の四騎士とか」
「私によくわからない定義付けをしようとしている」

気に入らないな、と。
憂鬱だな、と。
どちらを続けていいのかわからないままナイフとフォークを取った。

「いただきます」

エルピス・シズメ >  
「それは僕もわかる気がする。」
「白とか黒か赤とか青じゃなくて、沢山の色彩があるような……」
「夜明けの茜色みたいな暖かさというか……」

「それは僕も、欲しいな。」

 頷きと共に話が弾む。
 綺麗なものはやっぱり欲しい。
 そういうものばかり見ていいたい。

「ミアさん、小食なんだね。」
「どうしてもミックス系は量が多いから。しょうがないね……。」

 ケルベロス風ステーキセットが届く。
 サラダにスープに、カロリー地獄の門番と言わんばかりの肉の量。

「ミアさんも異邦人さんなんだ。カエルム君や義理のお姉ちゃんと言い、最近異邦人さんとよく会うかも。」
「……ドッペルゲンガー。単純なものなら本人を模した"ガワ"や心の闇の具現だよね。」

(前者なら、僕も似たようなものだし。)

「黙示録の四騎士は、ミアさんも知っているの?
 確かホワイト・レッド・ブラック・ペイルの四騎士だっけ……」

ミア・コレット >  
「それが欲しくて遠くからずっと歩いてきた気がする」
「その時に……ドッペルゲンガーが広げた青空と風車の世界を見た、ような…」

曖昧にしか喋れない。
記憶が曖昧だから仕方ないのかも知れない。

「でも、裏渋で活動するとすごくカロリーを消費するから」
「時々、スイーツを食べ歩いて体重を戻したりするかな」

痩せすぎると戦えないのです。

「すごい肉尽くし、エルピスくんは健啖家だねぇ」

そう言って笑いながらハンバーグを一口。
肉の旨味とソースの味わいがすごく良い。

「黙示録の四騎士は知っている……けど」
「異世界にもあるものなのかはわからないなぁ」

「でもドッペルゲンガーが無意味なことを言うのかは…ちょっと判断がつかない」

私が知る限り、怪異はあまり嘘は言わない。
人を騙す時にさえも最低限の嘘しかつかない。

エルピス・シズメ >  
(長い旅路に、青空と風車の世界。)

 一旦思考の済に置き、食事に手を付ける。
 まずはレアもののランプから行こう。
 
 柔らかいが脂身は少なく、肉汁の味も濃い。
 少量のソースだけでも十二分に旨味を堪能出来る良い肉だ。

「少食でカロリーを補充できないのはちょっと大変そうだね……」
「うっ、僕も何だかんだで動くとカロリーを使うから。」
「ちょっとはしたなかったら、ごめんね?」

 抑えきれていない食欲。
 盛り合わせのセットメニューを頼んだ時点でそれはそうそれはそう(必然性)

「こっちにもあるよ。むしろ最大手まであるよ。
 大変容がなくても、学問として残るぐらいには。」

「ドッペルゲンガーのことばは……なんとなく、無意味じゃなくて……遠回しか、裏返しか……ううん」

怪異はあまり嘘は言わない。
人を騙す時にさえも最低限の嘘しかつかない。

エルピスが知る認識でもそうである。
だからこそ、自分の身に起きたことを踏まえて違和感がある。

「何と言うのかな。気に障ったら申し訳ないんだけど……」
「"向き合いたくないこと"を、上手く認識できていない気がする」

 あくまでエルピスの体験と直感でしかない。
 でも、どうしてか言わずに言われなかった。

「僕がそう、だったから。」
「……詳細は省くし事情は特殊だけど、僕も『エルピス』のドッペルゲンガーで、」
「その記憶から目を背けていたんだ。」

ミア・コレット >  
「食べることがはしたなかったら」
「人類はほぼ全員はしたないよ」

平気な顔で付け合せのコーンにハンバーグソースを絡める。

「そっか……どの世界にもある概念なのかな…」

そして続く言葉には、“彼”自身の。
実感の籠もった力のようなものがあった。

「エルピスくんは、オリジナルエルピスくんがいる、みたいな…話なのかな」
「ごめんね、ドッペルゲンガーの相談なんかしちゃって」

ハンバーグに視線を落とす。
肉汁は滴っていない。
余熱で完全に内部に収められている熟練の技。

「私が向き合いたくないこと……」
「まずはそれを認識しないと、ドッペルゲンガーには勝てない」

コーンとハンバーグを口に運んだ。

エルピス・シズメ >   
「あ、うん。そうだけどそうじゃなくて……
 ……でもそうだね。生きる事は食べる事だし。」

 なんかこう、女の子の前では気を使っちゃう感情。
 何だかんだで男の子な側面は脇に置き、気を取り直す。

「僕の場合はたぶん、オリジナルの遺志を継いだカタチ。」
「気にしないで。僕が話すべきだと思って話したから。」
「ドッペルゲンガーの言葉が僕に刺さったのも、そういうことだったからだと思う。」

 これも彼女の言う必然性なのだろうか。

 次に食べるのはロース。王道中の王道だ。脂身と肉汁がダイレクトに食欲を刺激する。
(このお肉を食べる順番も、僕が決めたつもりだけれど。)

「向き合って、損はないと思う。僕のそれはファレーマン先生やイーリスやカエルム君……」
「クーポン券をくれた田中君もそうかな。……ううん。皆との交流。」
「そしてその交流からはじまった合縁奇縁があって、ようやく向き合えたことだった。」

 "話が長くなっちゃってごめんね"と付け加えながら水を飲む。

「まずは図書館に行ってみたらどうだろう?
 この世界での『黙示録の四騎士』や、大本の宗教の書物はいっぱいあるから。」

ミア・コレット >  
「オリジナルの遺志」

言葉が重たかった。
自分なのに、自分じゃない。
ドッペルゲンガー。私にとってのそれも……

苦しんだり、悩んだりするのだろうか。

「そうだね、図書館でできるだけ調べてみる」

もし、向き合えなかったら。
私はどうなるのだろう。

必然性に塗り潰される?
そのことを想像しただけで寒気がした。

「私……自分の意思で動いてきたつもり」
「だから、必然性とか……あんまり好きじゃない、かな」

自分でも。どうしてそんなことを言ったのかわからなかった。

そしてメインディッシュを食べ終えた頃。
スイーツを待ちながら。

「エルピスくん、思考の整理まで付き合ってもらったからさ」
「なんかあったら呼んでよ」

「なんとか力になってみせるからさ」

エルピス・シズメ >  
「きっと……その方が後悔しないから。」
「だから、今は僕の意志って言える。」

 声が弱まる。言葉に少しだけ迷いが混ざる。
 それでも前向きであろうと、最後には断言に至る。

「図書館は涼しいし、色んな本があるからね。
 端末で調べても良いけど……カタチになった本は強固だから。」

 熟慮と推敲、校正を重ねて仕上げてた一つの『本』。
 神秘や宗教に於いては、その強固さが信頼性の確度の保証になる。

 少なくともエルピスはそう考えて、提案した。

「でも、無理しないでね。向き合うことは本当に本当本当に苦しいから。」
「……僕もそのつもりで動いてきたし、あんまり好きじゃないけれど……」
「必然とは言えないけれど、"流れ"みたいのは、あると思う。」

 控えめな口調で提案する。
 必然性は絶対ではない、けれどゼロでもない。

「歩けば埃が舞うようなものから、『そのつもりで水辺に石を投げれば』石が水を切って跳ねるように。」

 どうにか身近なもので例えようとする。
 故に表現があいまいだ。

「うん。困った時には頼らせてね。僕一人で出来る事は少ないから。」
「ミアさんも、何かあったら遠慮なく声を掛けて欲しいな。」

「僕の思考も整理できたし、何より──大分ごちそうになっちゃったし。」

 最後のハラミはもたれにくくも味わい深い堅実さ。
 その肉を平らげてから、デザートを頂く。

 蕩ける柑橘類のさっぱりした甘さが、全ての塩と脂を流してくれて心地よい。

「ごちそうさま、美味しかったよ。ミアさん。」

ミア・コレット >  
「後悔しない……信じた未来か」

自分の意志で歩いている。そう信じたほうが。
ずっと傷ひとつない星に近づける気がする。

「本で調べたほうが、信頼できるからね」

次は図書館。そう考えながら。
明日はバイトだなぁ、とかしょうもない思考が脳裏を過った。

「雨が降ったら水たまりができるみたいな?」

必然性。それは悪いことばかりじゃない。
そう言ってくれる彼の言葉に。
少しだけ安らぎを得ていた。

そして食べ終えて。
手を合わせる。

「美味しかったね、やっぱりここのファミレス好きだな」
「でも、裏渋にちょくちょく潜ってる女に協力を要請されたら大変だよ?」

クスクス笑って、冗談っぽく言って。

その日は別れた。

夏の夕暮れは、星空に変わっていて。


ほんの少しだけ、憂鬱だった。

エルピス・シズメ >   
「そんな感じ。」

 ミアの言葉にひとつひとつ頷き、
 自分の言いたかったことはそうだ、と、肯定の意を示す。

「僕も裏渋とか『歓楽街のあのへん』には潜るもん、大丈夫。」
「それに最近は、ちょっと身体と思考の同期も取りたい位だし……」

 冗談っぽい言葉に、その位は平気だと安普請な軽口を叩く。

「そうだね。……あ、別会計でこの『夏みかんのムース』を4つお願いします。お友達へのお土産にしたいので。」

 奢って貰った分とは別でお土産を購入し、店を出る。

(美味しかったし、イーリスにも持って帰ろ。)

「じゃ、またね。今度会った時にはあのゲートの話とかも聞きたいな。」

 忘れてたことを一つ告げて、それぞれ帰路に着く。
 すっかり星空になった夜空を見上げて──

(月を見ると、ちょっとだけ憂鬱になっちゃうなぁ。)

 心の中で肩をすくめて、帰ることにした。

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」からエルピス・シズメさんが去りました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」からミア・コレットさんが去りました。