2025/01/23 のログ
■追影切人 > 「………。」
男にしてはかなり珍しく、がっつり沈黙した上に微妙に隻眼を逸らした。
…あ、何時もより強い問い詰めるような視線だ。別に男も隠し事をしたい訳じゃない。
ただ、言うと場合によってはちょっと説教フルコースになりそうなのでそこだけは沈黙を保った。
「…少なくとも、凛霞を今後も蔑ろにするような事はさせねぇよ。」
刃は鞘には勝てない。だからそう頑張って答えるのが今の精一杯ギリギリ。
「…ごほん。…簡単に言えば『過去の後始末』…ってやつだな。
正直、何で俺が押し付けられてんのかも分からん、というのは前提で話すぞ。
一級監視対象は俺達『5人』以外に過去に『7人』該当者が居た。
…居たっつぅのは既に全員死亡が確認されてるからだな。
一級はそもそも死ぬと全てのデータが抹消されるから、その7人に関しては公式な情報は今ではほぼ残ってない。
…が、その『7人』がどういう訳かここ最近【復活】したみてぇだな…。
復活といっても、蘇生とかゾンビみてぇな感じとは違う…俺とか”上”の連中は【残滓】って呼んでる。
…要するに生前のそいつらの残り滓…だな。自我も記憶も本来の姿も失って、かつての異能も一部しか残ってない。
…正確には違うんだろうが、生前の奴らの情報を一部抜き出した呪い…みたいなもんだ。」
と、ここまで一息で話してから…軽く目元を揉む。そもそも彼女の『妹』が巻き込まれたのもこの件が絡む。
「…で、そいつらの完全な始末を俺が押し付けられた。
…行ってみれば「1対7」だな。まぁ連中はそれぞれバラバラで意思の疎通なんぞ出来ない。
だから、個別撃破で十分ではあるし、生前に比べたらそこまで強くはねぇ。」
――が、腐ってもかつての一級監視対象達だ。何をやるか分からない怖さがある。
「…俺が権限を無理に凛霞に譲渡させたのは、いざという時に異能を解放する場合、オマエが管理してくれた方が話が早いってのと。
…あと、場合によってはバックアップとか助太刀も頼むかもしれねぇ。これは後日、他の…レイチェル辺りにも話はしてみるつもりだが。」
信頼できる、信用できる風紀の何人かにバックアップとか助力を頼みたい。
打算的になってしまうが、監視役に異能管理の権限を譲渡させたのは”上”から余計な真似をされない為もあったりする。
■伊都波 凛霞 >
じーーーー……。
視線を逸して沈黙を守る彼。
ようするに、ちょっと口には出せないようなこと。
ただ、無為に隠し事をするタイプでないことも知っている。
その選択をしたのであれば、これ以上は追求はしない。
後々にそのことが何か後を引かなければよし。引いたなら、お説教である。
そして、現況とそのあらましを一通り聞けば、なるほどと肩を竦めた。
「面倒毎の押し付け。凶刃が刃として機能するかのテスト。
なんか、色々思惑は見えるけど……」
人を何だと思っているのか、という気持ちはある。
けれど、咎人として…浄罪や償いを考えるなら重い扱いは然りでもある。
心情と規範の狭間…風紀委員として、いつも揺れる部分。
…それでも、彼がそれで納得し、前に進むのであれば。
「…了解。私は君の監視役だもん。
バックアップも助太刀も、当然、惜しまずやるよ」
沈んでいた顔に笑みが戻る。
男の子が前を向いていたら背中を押してあげよう。それも伊都波家での母親の教えの一つ。
「にしても残滓が残るなんて、…よっぽど強かったのかな…」
恨み、あるいは…残留思念が。
普段そういったものを読み取って活動する異能者でもあるため、ついそういうことも考えてしまう。
■追影切人 > まぁ、いずれきちんと話さねばなるまい…避けて通れない悩みが一つ増えてしまったが。
勿論、男は隠し事は出来るだけしたくない…というか出来ないタイプだ。
実際、彼女に見つめられるだけでかなりボロが出ているのでさもありなん。
下手するとお説教になり…たくはないな。凛霞からの説教は何か地味にダメージ通りそうだ。
「…まぁ、”上”も一枚岩じゃねぇからな…俺の扱いにも幾つか意見が割れてんだろ。
それでよく監視対象制度なんて馬鹿な事をやってるもんだとは思うが…。」
連中の考える事は何時もわかんねぇな、と肩を竦めてみせつつ。
彼女が”揺れて”いるのはぼんやり気付きはしたものの。
その揺らぎは人間としては当たり前で、多分とても大事な事だと思うから。
彼女には申し訳ないが、その揺らぎは無くして欲しくないと密かに思っている。
「…特に、一人二人近接戦闘特化の奴が居るからな…そういうのは俺よりオマエの方が相性良さそうだし。」
勿論、【残滓】と生前の彼/彼女達では戦闘スタイルすら変化している可能性はある。
男も今回はいきなり討伐に出向くより、ある程度事前に根回しや準備を整えて望むつもりだ。
幸い、【残滓】だから今すぐに始末しないと危険、というほど危急的案件ではない――だらだら時間は掛けられないが。
「…いんや、7人の一人に精神に侵食する呪いみてぇな異能持ちが居てな。
そいつが他の6人を本人たちが気付かない間に”狂わせて”暴走させたって話だ。
そいつも含めて7人とも死んだけど、復活したのはそいつの呪いの副作用みてぇなもん…だと聞いてる。」
知らずに狂い、命を絶たれ、そして呪いで死後も【残滓】として彷徨う…何とも。
(…下手すりゃ俺なんかもそういう末路だった可能性もあるけどな)
「…凛霞の異能は読み取る系統だっけか。…流石に残滓とはいえ、連中の情報は呪いと同じだからそれはやらせたくねぇな。」
下手すると、『逆流』して彼女が呪いに侵食される可能性だってある。
「…あぁ、でも残留思念…か。呪いよりそっちの方がしっくり来るな。」
生前の彼ら彼女らと”同一”ではあるが、あくまで呪いをベースとした情報であり本人たちの自我も記憶も無い。
けれど、強い生前の想いはきっと今も抱いて蠢いているだろうから。
■伊都波 凛霞 >
そんな、彼が凛霞からの説教に対しての色々を内心で拱いているとは露知らず。
「変な形で一枚にまとまっていられるよりはいいのかも、だけどね…。
──うん、そういうことなら、いくらでも頼ってよ♪」
笑顔で、力こぶをつくるようなポーズ。
見ての通りの細腕。とはいえこの腕が風紀委員として多くの活躍をしている敏腕なのは知っての通り。
「…またはた迷惑な話…。
でもそんなことになってるんじゃ、制度の今後もあるし放ってはおけないよね…。
おっけ、ヘンに読み取らないように私も気をつけておくね」
呪い、なんて読み取ったらどんなことになるかわかったものじゃない。
「──と、まぁ情報交換はこんなところかな…?
廬山くんに最初に言われた時は溜息モノだったけど…まぁ、それくらいなら、なんとか」
今後もうまいことやっていくしかないよね、とある意味しっかり前が向けた。
いい感じに冷めはじめて飲みやすくなった紅茶を口元に運んでティーブレイクだ。
後は、時間が許すならのんびりと、どうでもいいことでも話そうか。
彼に人間味が出てきたことは以前から感じていたし、そうなれば気になることも増えるわけで…。
「──ところで、気になる女の子とかできたりしてない?」
にひ、ちょっと意地悪そうな笑みを浮かべてそう聞く少女の顔はすっかりいつも通り。
悩むことも多けれど、今や割り切りの早さもピカイチだ。
カタい話ばかりじゃだめ、監視役としてはそういうところも気にするべきである──
そんな妙に緩い空気感で、ドーナッツと紅茶を囲み、その日の午後は更けていく──のかもしれない
■追影切人 > 「…誰かに頼る…っつぅのも俺の些細な成長になんのかね…。」
一昔前の自分なら考えもしなかったであろう。これも成長、なのだと思いたい。
弱音を吐いた事もあるし、こうして誰かに頼るという事も覚えた…刃は着実に人になっていく。
それでも、彼の源泉はあくまで刃。何かを斬らなければ生きてはいけない。
だけど、何を斬るかは自分の意志で決められる筈だから。
凛霞の頼もしい笑顔とポーズに、つい釣られるように珍しく男も小さくだが笑って。
「…少なくとも、余程切羽詰まらない限りは止めた方がいいな。」
連中の仲間入りになりかねない【残滓】なんて読み取るべきでもない。
情報交換については概ねこんな感じだろう。まだ細かいあれこれはあるが、それは追々でも問題はない。
「――何だそのいきなりの質問は。気になるって言っても色々意味合いあんだろうよ…。」
思わず半眼になりつつも、そうしたものも含めて他愛も無い話に興じるのも悪くない。
そう、思えるようになったのは立派な成長だと…きっと彼だけがいまいち実感していないだろう。
(――凛霞と概ねきちんと話す事は話せた。次は…。)
苦々しくも頼もしい”腐れ縁”とのお話だ。
それは近々アポを取るとして、今はただ…
「――って、何でニヤニヤしてんだオマエは!変な邪推すんじゃねぇ!!」
なんて、意外と盛り上がっていたかもしれない、そんなある日の監視役と監視対象の一幕。
ご案内:「常世寮/男子寮 『追影切人』の部屋」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「常世寮/男子寮 『追影切人』の部屋」から追影切人さんが去りました。