2024/07/15 のログ
竜胆 襲 >  
「おうちでデートはしないです。
 いちゃいちゃって……」

なんだか言い方がおやじくさい…。
口にはしないけれど……。

そして…。
自分に余裕がない…つまりは心配されているのだと。
なるほど、それで部への勧誘は断ることをしなかった。

「そんなに危なっかしいですか。私」

少し、眉を顰める。
怪異を祓う力は十分に在ると思っているし、経験も積んでいる。
放って置けない、と言われればやや納得のいかなさそうな表情を浮かべていた。

部屋に香ばしい香りが満ちてくる。
焼けた小麦と油の、小気味良い食欲を誘う香り。

八坂 命 >  
麺にしっかり焦げ目をつけて、そこに野菜と肉を戻す。
お酒も少し入れてがしゃがしゃと混ぜ、粉のソースを入れてまた混ぜる。
お皿に盛れば焼きそばの出来上がりである。
鰹節とあおさを振って、食卓に。
マヨネーズと紅ショウガは別で持ってきてお好きにどうぞと並べた。
ゴム手袋を外して椅子に座ろう。

「うん、結構危なっかしいとこはあるなぁ」

マヨネーズと紅ショウガを乗せて手を合わせる。
彼女が危なっかしいかどうか、と聞かれれば、間違いなく危なっかしいだろう。

「襲ちゃん、僕とか飛鳥ちゃんとかが入部せんかったとしても、多分一人で今みたいなことやるでしょ。
 それがこう、何時かひっそり知らんとこで死んでたりすると怖いなぁって、今でもちょっと思う時あるよ」

命に代えても怪異を討伐する、的な。
そういうことを言い出してもおかしくないような雰囲気はある。

竜胆 襲 >  
危なっかしい、とはっきり言われてしまうと、俯いいてしまう。
なるべく、そんなことは感じさせないようにしようとしていたつもりだったけど。
ちゃんとできていないのなら、もっと頑張らなければ…。
…俯いた視線の先に出来立ての焼きそばが出てくれば、顔を上げる。

「…一人でもやるのは、そうです。私が持って生まれた使命だから。
 でも、そういうことをしている人、此処には他にもいそうだな…って」

それだけでなく、隠れ蓑となる部活を創設するのにも、頭数は必要で。
そんな縁が紡いだ間柄ではある…。

「大丈夫です。私、強いので…」

「ありがとう、いただきます」

行儀よく両手を合わせて、紅生姜は少し、マヨネーズは…ギガ盛り。
作ってもらった夕食をいただこう。

八坂 命 >  
「持って生まれた使命かぁ。
 僕はお母さんが対魔系の人やったけど、後継ぐとか考えんでええよって言われてたわ」

結局こうやってその手の活動をしているのだけれど。
勿論母親にも内緒で。
ずぞー、と焼きそばを啜る。

「うわ……。
 襲ちゃんそれ、太るよ?」

ギガに盛られたマヨネーズ。
流石にちょっと引いてしまった。
そう言えばジャンクなもの好きだったっけこの子。

竜胆 襲 >  
「………」

退魔…。
後継…。

選択の余地が彼女にはあった。にも関わらず…今、彼女は。

「ごめんなさい。巻き込んでしまっていますね」

本当は、そんなことをしなくて良いにも関わらず。
自分は…また、彼女とは事情が違うけれど。

「……え、普通です。これくらい。……太ったことがないのでそれはよくわからないです」

啜る音は立てずに、食べはじめる。
元の味がしっかりしているから余計にマヨがよく合う…美味しい。

八坂 命 >  
「え?
 あー、別にええよぉ。
 部活、やりとおてやってるだけやし」

巻き込まれたとか、そんなことを考えたことは一度もない。
自分がやりたくてやっていることなのだ。
星を見たり占いをやったりと言う、表向きの占星術部の活動も結構楽しいし。

「……襲ちゃん。
 そういうことは、他の女の子の前で言ったらあかんよ」

声のトーンが二段階ほど低くなる。
自分なんか少しお腹がぷにぷにしてきて気にしていると言うのに。

「栄養全部その胸にいっとるんかな……」

彼女の胸を凝視しながら小声でぼそり。

竜胆 襲 >  
「でも、危険もあります。
 もちろん、同行する時は私が責任もって守りますが…」

その想いとリスクは釣り合うのだろうか…そう、思わなくもない…。
それでも普段の部活動も楽しんでいると言ってもらえれば、安心したような表情を浮かべて。

「でも、事実ですので…。
 ああ…多分、そうだと想います。そういう事例があるのでしたら」

小声も聞き漏らさず、丁寧なですます口調で紡がれる肯定の言葉。
真面目な性格が災いしてか、歯に衣着せぬ物言いにすら聞こえる…。

「…ごちそうさまでした。美味しかったです」

食べ終えれば、しっかりと一礼。
とても美味しかったことを示す様に、麺一本野菜一欠片すらお皿には遺さなかった。

八坂 命 >  
「僕がやりとおてやってるんやから、怪我したらそれは僕の責任ちゃう?
 襲ちゃんが守ってくれるんは嬉しいけど」

選んだのは自分なのだ。
それで不都合が生じたなら、それは自分の責任だと。
それはそれとして部長みたいな美少女に守られるのは割と気分がいい。

「あかん、あかんよ襲ちゃん。
 事実やとしても、それは余計な敵を増やすことになるんや。
 絶対に言ったらあかん」

ふるふると首を振る。
やっぱこの美少女、一人にしたら危うい。

「はーいお粗末様ぁ。
 今日はお礼に背中でも流してもらおうかなぁ」

自分も綺麗に食べ尽くし、頭を下げる。
二人分のお皿を持って台所へ。
流しに皿を置きながらそんなことを言ってみる。
実際義手だと身体を洗うにも一苦労だし、誰か手伝ってくれると助かるのは事実である。

竜胆 襲 >  
「いえ、私が部長ですし、夜間の活動をはじめたのも私です。
 何より私が勧誘したんですから、責任をもって私が守ります」

きっぱりと言い切る。
真面目というよりも、生真面目。
頭や考え方はかなり固い部類であった。

「そう…ですか。
 では聞かれない限りは言わないようにします」

真面目だが、素直。
…が、ごちそうさま、へのお返しの言葉を聞けばその後に続くお礼を要求する言葉に眉を潜める。

「………仕方ないです。
 ミコちゃんの身体では、不都合も多いでしょうし」

少々の葛藤があったらしい後に、承諾するのだった。

八坂 命 >  
「真面目やなぁ、襲ちゃんは」

もう一度ゴム手袋をして皿を洗いながらくすりと笑う。
彼女のちょっとボケの入った生真面目さは、そんなに嫌いじゃない。

「聞かれても言わん方がええけどなー。
 あっは、ええよええよ、冗談やから。
 子供やないんやし、お風呂ぐらい一人で入れるって」

その後の答えもやはり生真面目なもの。
機械の義手――義手ではないけど――とは言え、濡れたら動かなくなる類のものではない。
あんまりよくはないけど、その後のメンテさえちゃんとしておけば大丈夫とメーカーからも言われている。
なにより、そんな顔をさせてまでしてもらいたいことでもないから。

竜胆 襲 >  
冗談、と言われれば顔を赤くする。
本気で一緒に入ることを覚悟していたらしい。

「…ミコちゃんの言葉はたまに本気なのか冗談なのかわからなくて困ります」

ナチュラルに洗い物をしはじめる彼女を見て、何か手伝ったほうがいいのかな…と思いはするも。
それも彼女は遠慮するだろうか…と。

「では、今度おすすめのラーメンを奢ります。
 異邦人街にとても美味しいお店を見つけましたので」

きらん、と黄金色の眼が光る。
ここは趣味のラーメン店巡りの結果の見せ所。

八坂 命 >  
「いやまぁ襲ちゃんとお風呂一緒に入りたいなーってのはほんとやけどね?
 でもほら、二人一緒に入れるほど広いお風呂ではないから」

風呂場は決して狭いわけではない。
狭いわけではないが、流石に二人で入るには不十分な大きさではあるだろう。
けらけらと笑っているうちに洗い物は終わる。

「おー、襲ちゃんとデートや。
 嬉しいなぁ」

前髪の下でにこにこと笑いながらリビングに戻ってきて、ソファに深く身を沈める。
こうやってやることを全部終わらせてだらだらするのが一番楽しい。

竜胆 襲 >  
「でしたら、行楽シーズンに部の皆で小旅行などはいかがでしょう。
 慰安旅行…というほどでもないですけど、部の仲間でおでかけも、楽しいかもしれません」

そう言って、笑う。
二人きりでなければ気持ち的にはなんだか抵抗感が少ない…ということもある。

「私から出来るお礼なんてそれくらいかもしれませんし。
 ミコちゃんには本当にいろいろお世話になってしまっていますから」

ソファにかけ、自分もまたのんびりとした時間を過ごす。
試験の話であったり、学園のことであったり。
他愛のない会話を交わしていれば時間は過ぎ去ってゆく…。

八坂 命 >  
「旅行、いいなぁ。
 僕京都とか行きたいなぁ。
 お母さんの実家しか行ったことないから」

とは言え京都でなくても部活のメンバーで旅行に行くならどこでも楽しいと思う。
そう言う、どこに行くかを話し合うのも旅行の醍醐味で。

「僕こそ色々助けられてるから。
 勉強とか、襲ちゃんがおらんかったらもっと成績悪かったと思うわ」

勉強は得意な方ではない。
彼女に色々教えてもらっているから中の上ぐらいの成績を取れているのだ。
色んな話をしているうちに、少し眠たくなってきて。
やがて彼女の肩を枕に、すやすやと眠ってしまったかもしれない――

竜胆 襲 >  
「───、と…」

思えば、部室以外では初めて、こんなにたくさんお話した。
話し疲れか、うとうとしはじめた彼女に寄りかかられれば、起こすことはせずに。

「…今日はありがとうございました。ミコちゃん」

起こさないよう、小さな声でそう囁いて、ソファの横に畳んであったタオルケットを手繰り寄せ、彼女の身体へと掛ける。

程なくすれば、自身もまた程よい眠気を憶える。
…多分、いつもどおり長くても三時間もすれば起きてしまうだろうけど。

今は彼女と共に微睡みの中へ。
もう少しだけ、寮の部屋に帰る日を増やそうかな。
そんな風に思えた、初夏の一日だった。

ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」から八坂 命さんが去りました。
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」から竜胆 襲さんが去りました。