2024/10/09 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」に緋月さんが現れました。
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」に桜 緋彩さんが現れました。
室内にて >  
とある日の、女子寮の一室。
其処は今、荷作りの現場と化していた。

なぜかと問われれば理由は簡単。
長らくこの部屋にて居候生活を送っていた少女が、この度新居へ引越しする事と相成った為である。

最も、居候の少女の私物はさして多くはない。
主に服を中心に、ダンボール箱にいくらかが入る程度である。
家具の類については、引っ越しの日取りに合わせて引っ越し先に送られる形だ。

そういう事で、今は然程多くはないそれらの私物をダンボール箱に詰めている所、という訳である。
 

桜 緋彩 >  
「ふむ、こんなものでしょうか」

彼女がこちらに来てから買いそろえた食器類を梱包。
小さな段ボールに納めて尚スペースが空いているぐらい。
そのスペースに緩衝材を詰め、テープで封をして一息。
それを持って、私物を箱に詰めている彼女の元へ。

「緋月どのの食器、詰め終わりました。
 そちらはどうですか?」

玄関にその箱をそっと置き、彼女の方を尋ねてみる。

緋月 >  
「あ、ありがとうございます。
ええと…これは、此処に入れて…。」

と、引っ越し作業中の居候。
荷物の詰め込みに少々苦戦気味。
さもありなん、何しろ今までは身一つ、刀一つの旅を続けて来たのだ。
引っ越し作業というものが初体験である。

「直ぐ済むかと思ったのですが、意外とかかりますね…。
思った以上に私物が増えていた…と言いますか。」

尚、今取り掛かっていたのは刀剣の整備道具である。

常に一緒である愛刀は、流石に作業に大変なので、暫く前に新しく
手に入れた大剣共々、壁に立てかけられてその作業を見守っている。
 

桜 緋彩 >  
「なかなか苦戦してますね」

四苦八苦している様子に思わず笑みがこぼれる。
彼女の隣に腰を下ろし、段ボールを覗き込む。

「これをこっちに積んで、空いたところにこれを入れればここに入りますよ」

こちらも引っ越し経験が豊富、と言うわけではないが、性格的にぴったり詰め込むのは得意な方。
既に箱の中に納められている荷物をどう動かせばうまく入るか、と言うことを示してみる。

「普通に暮らしているだけで、意外と物は増えますからね。
 引っ越した先でも掃除や整理整頓をしっかりしないと、すぐ部屋が汚くなってしまいますよ」

くすりと笑いながら。

緋月 >  
「なるほど…確かに、こうしたら効率が良いですね。」

ふむふむ、とお見事な手順に感心しつつ、そのやり方を真似るように荷物を詰め直し。
少しばかりだが、効率が良くなった、かも。
こんな時にも、学びは多い。

「うぅっ、気を付けます…!
引っ越し先に緋彩さんはいませんし、これからは自主的にしっかり掃除などもしなくては!」

居候中は日替わり的に家事や掃除、洗濯などをしていた。
同居人の委員活動の関係から、彼女が留守にする時は自主的に家事をしていたが、
これからは「それが当たり前の生活」になっていく。
しっかりと意識を持って日々を過ごさねば、と心境を新たに。

「後は………。」

ふ、と、部屋の隅の刀掛け台に目が向かう。
そこにかかっているのは、真っ白な鞘に収められた一振りの刀。
…刀袋に入っている愛刀と、生き写しの如く瓜二つな刀。
唯一の違いは、その重量。圧倒的に、あちらの方が軽い。

その内に収められている刃は、刀身真ん中から真っ二つに折れている。

……今は意識不明で凍結状態の、友人が残した刀である。
詳しい事情は伏せていたが、自分が預かる事になったと、話してはいる。
 

桜 緋彩 >  
「整理整頓は得意ですので」

むふん、と少し得意げな表情。
彼女の視線を辿れば、純白の鞘を纏った刀。

「大事な友人のもの、でしたっけ」

半ばから真っ二つに折れていたはずだ。
刀と言うのは折れれば元には戻らない。
死んだも同然の刀。
勿論、それが普通の刀なら、だが。

緋月 >
「その節は、色々とお世話になりまして…!」

得意そうな顔に、ちょっと情けない表情で深々と礼。
洗濯の方法や掃除の仕方、文明の利器を使った家事のあれこれは、ほぼ総てが彼女から学んだものだ。
お陰で今は不自由なく暮らしていける位に家事が出来るようになった。

かけられた言葉には、小さく頷く。

「はい……今は、意識不明で入院中ですけど。

――様々な異能を持った方が集う地です。
折れた刀を鍛え直せる(生き返らせる)事が可能な鍛冶の腕前を持つ方がいれば、と、思ったのですが…。
中々、上手くはゆかないものですね。」

少し、寂しそうな微笑み。
生まれこそただの物ではない刀だが――流石に、これを修復できる腕前を持つ者の情報には至っていない。
出来る事なら直してあげたいという思いで預かっているのだが、世の中上手くはゆかないものである。
 

桜 緋彩 >  
「剣の腕だけではなく、日々の生活もきちんとしてこそ、ですからね」

とは言え今の彼女は十分一人で暮らしていけるだろう。
そう感じるくらいに家事の腕は上がっていると思う。

「ふむ……。
 鍛冶、ではありませんが、どんな怪我人でも綺麗さっぱり治してしまう保健の先生がいるらしいのですが」

保健医では刀は直せない、とは思うだろう。
しかし。

「あくまで噂なのですが。
 人の身体に岩をくっつけたとか、鉄とプラスチックを振れただけで分子レベルで接着したとか、そう言う話を聞いたことがあります」

ただの保健医と言うには、あまりにも「何かと何かを繋ぎ合わせた」と言う噂が多い。
恐らくはそう言う異能なのだろうけれど。

緋月 >  
「ひ、人の身体に岩を…ですか…。」

ちょっと引いてしまった。
事実だとするととんでもない話である。

しかし、保健の先生とは。鍛冶の方ばかりに気を取られていて、そちらの方面はノータッチであった少女。

「…本当にどうしようもなくなった時は、そちらの先生に頼る事も考えてみましょうか。

ともあれ…これも、忘れないように持っていかなくてはいけませんね。」

一度その場を立ち、刀掛け台に歩み寄ると、そっと白い鞘の刀を手に取り、
予備の刀袋を取り出してしゅるしゅるとしまい込む。

「流石に、業者の方に持っていってもらうのは…色々危ないですし、
これは直接私が持っていきましょうか。」

荷作りした分は、新しく買った家具共々引っ越し日である明日に新居に
運んで行ってもらう手筈である。
だが、折れているとはいえ――むしろ折れているからこそ、これは下手に人には任せられない。

「では、明日までよろしくお願いします。」

言いながら、刀袋に入った刀をそっと刀掛け台に戻す。

「――これで、荷作りはおしまいですね。
お手伝い頂いて、本当にありがとうございます。」

手伝ってくれた彼女に、改めてお礼。
 

桜 緋彩 >  
「死んでさえいなければどんな怪我も治してくれる、ともっぱらの評判らしいですよ」

本当だとすればとんでもない名医である。

「いえいえとんでもない。
 しかし、――」

こちらも一礼を返す。
体を起こし、改めて部屋の中を見回して。
この家にあった物は、彼女の私物よりも自身のものの方が断然多い。
ここで二年半くらしているのだから当たり前だ。
半年ほど彼女と言う同居人が増えたとしても、その荷物の量はたかが知れている。

「――さみしく、なりますね」

それでも、ここ半年の間に増えたものが急になくなったのだ。
どうしても部屋が広くなったように感じてしまう。
ここで二人で過ごした半年間を思い返すように、部屋の右から左に視線をゆっくり移動させる。

緋月 >  
「……さみしく、ですか。」

釣られるように、書生服姿の少女もまた、部屋の中に視線を巡らす。
こうして片付けてみれば…思ったより、部屋が広くなったようにも見える。
自分一人の荷物、と思っていたが……考えていた以上に、この部屋の、
そしてその住人である彼女のお世話になった時間が長かったのだな、と、実感が押し寄せて来る。

「……確かに、思った以上に、広くなりましたね。」

いけない。
どうにも湿っぽくなってしまう。
何も今生の別れという訳でもないのだ。ぶんぶんと頭を振る。

「…何も、死に別れる訳でもないのですし!
学校でも…もしかしたら、学外でもお世話になる事もあるでしょう。」

つとめて明るく、そう声を出す。

「――もし時間があるようでしたら、遠慮なく遊びに来てください。
えっと、住所は…あ、これですね。」

住所をメモしておいた紙を差し出す。
住所番号に加えて『万妖邸・霽月之室』と追加記述がされたメモ紙だ。
引っ越し先の部屋名も、もう決まったようである。
 

桜 緋彩 >  
「それは、はい。
 そうですね、死に別れるわけではありませんし」

ただ住む場所が変わるだけだ。
わかってはいる。
わかってはいるが、明日からはただいまを言う相手がいないんだなぁ、とちょっとしんみり。

「そう言えば、新しい住居を聞いていませんでしたね。
 ええと、――」

彼女から渡されたメモ。
それに目を落とし、

「――ええと、緋月どの。
 この、万妖邸と言う屋敷のことは、ご存じですか……?」

その名前を見て、流石に顔が少しひきつる。
幽霊屋敷と名高い万妖邸の名前を、よもや今日までのルームメイトの新居として見るとは思わなかった。

緋月 >  
「はい、存じてますよ。
怪異屋敷だの幽霊屋敷だの…まあ、あまりよくない…そう、ネガティブというのでしたか。
そんな噂というか、風評は割かしと。」

あっさり肯定。

「下見はさせて貰いましたが…ええ、思ったほど酷いという訳ではないですし。
家賃が安いのも助かりますし――何より、こう、里の部屋にいた頃を思い返しますので。」

それで住居を怪異屋敷にしようと決めたのだから、やっぱりどこかネジが外れているように思える少女。
とりあえず、この図太さなら幽霊屋敷・怪異屋敷だろうとやっていけそうではある。

「部屋が頻繁に変わると言うので、其処は心配でしたが…幸い、「当たり」だったようで。
お風呂もトイレも、台所もありました!」

――本当に図太い。
 

桜 緋彩 >  
「知っていて尚ここに住むと決めたんですか……?」

図太いというかなんと言うか。
いやまぁ、確かにそもそもそう言うのに慣れてはいるとは思ったが、ここまで受け入れているとは思わなかった。

「それにしたって風呂トイレ台所があればいいというわけでも……。
 いや、いっそ私もそちらに引っ越した方が……?」

こういう図太さは見習うべきなのかもしれない。
少し本気で考えたが、間取りもちょくちょく変わると言うので、何かあった時に呼びだされる風紀委員とは相性が悪いだろう。

「まぁ、それはそれで緋月どのらしいですね」

結局は、そう言う意見に落ち着くのだ。

緋月 >  
「正式に生徒になったとはいえ、やはり節約出来るところは節約したいですからね…。
どうも、共有コーナーの方に売店もあるようなので、もしお許しが出ればそこでアルバイトでもしようかと。」

どこまでも前向きかつ図太い。
住居とアルバイト先候補の同時確保である。

「あはは、恐縮です。」

そう笑いながら軽く頭を掻く。いつもの調子だ。


「――さて!
引越しの準備も終わりましたし、日も落ちましたし…ご飯にしましょうか!」

気が付けば、既に夜といっていい時刻。
食器類は梱包しているので、スーパーで買って来たお弁当とお惣菜だ。
 

桜 緋彩 >  
「アルバイトですか、良いですね。
 うちもたまに事務のアルバイトや、イベントごとの警備など、募集を出している時がありますので、お手すきでしたら是非」

何もかも自前の人員で賄えるほど人手が足りているわけでもない。
彼女と一緒に仕事が出来るのならば、割と嬉しいことではある。

「そうですね、頂きましょう。
 明日はお送りしますよ。
 せっかくですし、どこか外で食べましょう。
 入学祝にご馳走しますよ」

食事は基本的に自炊か外食派。
あまりお弁当やお惣菜は買わないのだが、今回ばかりは仕方ない。
たまにはそう言うのもいいものだ。

緋月 >  
「なるほど…風紀委員も大変なのですね。
では、そちらも機会がありましたら募集を考えてみます。」

何処も人手の確保は大変なのだなぁ、と思いつつ。
風紀委員は事件に治安維持にと仕事が多い。さもありなん、と納得の様子。

「…最後まで、緋彩さんにはお世話をおかけしますね。
本当に――此処に来て間もなくの頃から、今まで…色々お世話になりました。

住居は変わりますが、これからも…よろしくです!」

湿っぽい別れの言葉よりは、こちらの方がずっといい。
それに、会おうと思えばいつでも会えるのだ。

「では、引っ越し祝いも兼ねて……お蕎麦かおうどんにしましょうか?
引っ越しには蕎麦を配るものだと聞きましたので。」

そんな事は知識にある少女。
ともあれ、行くとすれば天ぷらを載せて貰える少しお高めのお蕎麦屋さんでもいいかもしれない。


そんなこんなで晩御飯の時間。
買って来たお弁当――書生服姿の少女のものはニンニク入りの大盛りのラーメンだったが――を互いに頂きつつ、
長らくの共同生活の最後の夜は更けていく事だろう――。
 

桜 緋彩 >  
「こちらこそ、この半年大変楽しく暮らせました。
 ありがとうございます」

こちらも深々とお辞儀。
彼女のおかげで、生活がとても豊かなものになった。

「引っ越し蕎麦は本来引っ越した先の近隣住民に振舞うものですが、そうですね。
 この間美味しい蕎麦屋さんを見つけたので、せっかくですしそうしましょうか」

彼女が異世界から来た人物だということを、たまにこうして思い知らされる。
とは言えこの間見付けた美味しい蕎麦屋を共有したい、という気持ちもあったので、明日の食事は決まった。

そうして最後の晩餐を楽しみつつ、別れを惜しむ様に色々話して過ごしただろう――

ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」から緋月さんが去りました。
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」から桜 緋彩さんが去りました。