2024/10/24 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」に神樹椎苗さんが現れました。
■神樹椎苗 >
――常世学園女子寮。
そこはある意味で男子にとっては憧れの園であり、女子たちにとってはのびのびと出来る楽園。
ただ、そんな場所にも、男子が出入りする事は皆無ではない。
というか、申請し許可さえ降りていれば、普通は問題ないのである。
『To;非凡人
おまえ、どうせ暇ですよね。
寮監には許可取ってるから、しいの部屋まできやがれです。
至急。ダッシュ。走れ』
そんなメッセージが少年の元に届いたのは、放課後も時間が流れ、夕方から夜へと変わり始める頃。
傍若無人な少年の雇い主からの、有無を言わさぬようなメッセージだった。
そして、そんな小さな雇い主の部屋は、扉が閉まり切っておらず、半開きになっていた。
なぜか?
なぜだろうか。
なお、気になって中を覗き込んだ女生徒は、『ひっ』と小さな声を上げてそそくさと立ち去った。
その半開きになった扉のすぐ先。
玄関には脱ぎ散らかしたヒールのある靴。
そして繋がる廊下には。
行き倒れたとしか表現しようのない、青いドレスを着た小娘がうつ伏せに転がっていたのだった。
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」に蘇芳 那由他さんが現れました。
■蘇芳 那由他 > ――常世学園女子寮。
そこはある意味で男子にとって――以下略。
そんな場違いとも言える場所に、何故だか訪れる羽目になった”凡人”の少年が独り。
「……幾ら寮監さんに許可とか貰っているとはいえ…入り辛いなぁ…。」
とはいえ、ここで突っ立っていても不審者でしかない。
しかも、少年は私服を殆ど持っておらず学生服姿のままである。
覚悟を決めるように一度深呼吸をしてから、女子寮にいざ――突入!
…勿論、静かに入ってから、寮監さんらしき人に学年と名前を名乗ってアポを確認はした。確認大事。
さて、時間帯も時間帯だし他の女子寮の人達に変な目で見られるのも困る。
急いでメッセージに指定された『雇い主』でもある少女…見た目幼女の元へと向かう。
「…と、いうか暇と断言されてるしダッシュで来いとか無茶言うし…。」
まぁ、彼女の気紛れとか毒舌とか暴君?な所は正直慣れてきてはいるのだが。
と、目的の部屋まで辿り着けば違和感。――扉が開いている?半開き状態とは不用心すぎる。
「――…あの、椎苗さん?那由他ですけど…流石に、扉を開きっぱなしは不用心――…」
そして、半開きの扉からそーっと中を覗き込みつつ、声を掛けてみるのだが。
脱ぎ散らかされたヒール靴。その先には青いドレスに黒タイツの幼女がうつぶせに転がっていた。
■蘇芳 那由他 > 「し、椎苗さーーーーん!?」
■蘇芳 那由他 > 流石の少年も慌てて中にお邪魔…あ、靴は脱ぎました。
で、慌てて駆け寄って助け起こそうとする。そりゃそうだ。
■神樹椎苗 >
少年が慌てて暴君を助け起こせば、完全に脱力しており、目も開いておらず。
そんな暴君の保護者的な神様も、天井付近でうろうろして狼狽していた。
非常に珍しい光景かもしれない。
そんな中、少年の端末が着信音を鳴らす。
『To:
しゃべるのもだりーです。
とりあえず、ベッドまで運びやがれですよ。
それと、もう夜になるからいきなり叫ぶんじゃねーです』
めちゃくちゃを(メッセだが)言う、小さな暴君であった。
■蘇芳 那由他 > 取り敢えず生きてはいる…が、脱力グッタリで目も閉じたまま。
小さな保護者さんの神様は天井付近でウロウロ…あ、どうもこんばんわ、と律義に挨拶はしつつ。
と、ポケットの端末が鳴った。幼女さんを片腕で抱きかかえたまま端末を確認。
…何でメッセージを送る余裕はあるんですかね、この人。
「…と、いうか意外と元気なんですかね…まぁ、了解です。」
女子の部屋にお邪魔するの初めてなんだけど、今は流石にそれどころじゃあない。
端末を一度ポケットに戻せば、両腕で彼女を抱き上げてベッドまでお運びする。
「…ベッドに着きましたよ椎苗さん。取り敢えず下ろしますねー。」
そっとベッドに横たえつつ。こういう時、やっぱり看病した方がいいんだろうけど風邪とかでは無さそうだが。
「…と、いうか僕が呼ばれた理由がサッパリなんですけど…。」
あと、叫ぶなと言われても叫びますよ普通。凡人なんで尚更です。
流石に、隣室の女子生徒とかに来られて何か誤解されたら困りますけど。
ちなみに、半開きの扉はきちんと一応閉めておきました。
■神樹椎苗 >
当然の疑問を覚えた少年の端末に再び着信音。
とはいえ、ベッドに運んでからじゃないと確認は難しいかもしれない。
『To:
元気だったらお前をよんだりしねーです。
どのあたりをどーみたら元気に見えんですか。
疲労困憊です。
口を開くのも目を開けるのもだりーです』
そして抱き上げられて運ばれてる間にも着信音。
『To:
お前、女の抱き方不慣れ過ぎです。
しぃ程度の重さでふらふらしてんじゃねーです。
なんですか、女の一人もいねーんですか。
童貞やろーですか、ありがとうごぜーます』
散々に言っておきながら、最期に礼が付け足されていた。
そして続いて着信音が。
『To:
雇い主のめんどーくらい見にきやがれってことです。
ボーナスやりますから、とりあえず介護しやがれですよ。
あー、まず、くそいきぐるしーんで、ドレス脱がしやがれです。
背中のファスナー下ろしてくれりゃーあとは腕と足を引き抜くだけですから』
つまるところ、疲れて動きたくないから面倒見ろ、という事のようでした。
なんという非道。
なんという傍若無人。
■蘇芳 那由他 > 再び端末から電子音。ちなみに特定の音楽とか歌は登録してない少年なので、何とも味気ないデフォルト電子音。
倒れていた彼女を抱き上げてからベッドに運ぶまで、何か2,3回も音が鳴ったのだけど、どれだけ早打ち…ん?
(いや、今の椎苗さん端末触れるどころかぐったりしてるんだけど…え、魔術とか異能の類で通信してるのかなこれ。)
やっとその”おかしさ”に気付いたらしい。
相変わらず天井付近をウロウロしてる神様に「神様も大変ですね…」と、思わず独り言。
さて、それはそれとして改めてベッドに彼女を寝かせてから端末を確認。
「あぁ、はい抱き方不慣れですいませんね…筋力もあまり無いですし。
あと、付き合った事があったら不慣れな運び方にならんでしょう…と、いうか童貞言うな(事実ですけど)。
…あぁ、はい…どういたしまして。」
何か散々けなされた後に、最後にお礼を言われて少し面食らうも、溜息と共にそう返す。
そして、また新たに着信音。…その内容をざっと目で追えば流石にぎょっとする。
「…いや、その…まず、そもそも何でドレス姿なんですか…何かのパーティか正装ですかそれ。
…と、いうかこういうのは女性にやらせた方がいいのでは…?」
この雇い主さん、僕の後見人の蘇芳さんより破天荒なんですけど…。
まぁ、ボーナスは出るみたいなのでやりますが。少年にとって彼女から斡旋されるお仕事は貴重な収入源。
実は生活費以外は貯金とかに回しているので、実は財布的には全然余裕はあるのだけど。
(そもそも、アルバイトにしてはやたら羽振りが良いと言うか…)
仕事は特殊ではあるのだが、かなり時給とかに換算するとかなり破格だ。
なんて、思考を出来るだけ変な方向に行かないように保とうと彼は頑張る。
で、矢張り不慣れなのがバレバレな手付きで背中側のファスナーを下ろそうと…仰向けの姿勢だと下ろせない。
なので、失礼します、と上半身を一度片腕で支えながら起こしつつ、ファスナーを恐る恐る下ろす…何だろうこの緊張感。
(…ある意味で、紅い屍骸さんとの激闘以上に色々切羽詰まってる気がする…。)
そして、ファスナーを目一杯下ろしてから、腕と足から引き抜くようにドレスを脱がせようと。
――これ、第三者から見たら僕は変態なのでは?
■神樹椎苗 >
――ぴろん。
『To;
筋力付けろって言ったじゃねーですか。
追い込み方がたりねーですよ、筋トレメニュー作ってやりましょうか。
なんでねーんですか、性欲足りてねーんじゃねーですか?
別に童貞くらい珍しくもねーですし気にする事じゃねーですよ』
そういう事じゃない。
――ぴろん。
『To;
まさにパーティですよ、正装出席の挨拶回り。
くそみてーにつまらねー、変態親父共の相手をしてきてクソ疲れてんです。
は?
クソ疲れてんのに、うるせー女なんかに頼んでらんねーですよ。
お前ならなんだかんだ言いつつも、ちゃんとやるでしょーし』
信頼しているらしいが、少年からすれば迷惑でしかないだろう。
――ぴろん。
『To;
もう少し優しく抱けねーんですか。
気遣いが足りねーですよ。
ああ、童貞でしたね、しかたねーですか。
まあ女を脱がす実績解除ですよ、やりましたね』
蒼いドレスを脱がせれば、黒い上下のインナー。
上はレース生地、下はタイツ。
どちらも透けないくらいに濃く分厚い生地だ。
『To;
次は、あー、タイツからの方が楽ですね。
つーか足元暑くてだりーですし、早く脱がしやがれです』
休む間もなく無茶苦茶を言う雇い主である。
なお、タイツを脱がせれば、指先まで包帯だらけの脚と、年齢不相応にやたらと煽情的な下着があらわになるのだが。
きっとこれでさよなら、と逃がしてはくれないのだろうと感じるだろう。
とはいえ、脱出しようとしても、扉の電子ロックがなぜか開かなくて、閉じ込められている事に気づいてしまうだけなのだが。
■蘇芳 那由他 > 「…それ、凡人の僕にこなせるメニューになるか不安なんですけど…。
あと、性欲とか以前に女子の知り合いとかそこまで多い訳でもないので…。」
割と律義に返す辺りが、少年の性格が垣間見えているかもしれない。
ちなみに、性欲は普通にあるが多分色々我慢したり何か発散して誤魔化すタイプ。
「パーティ…僕には縁が無いので正直ピンと来ないですけど…いや、変態親父共って…。」
どういうパーティなのか内容が気になるが、そこは聞かない方が良い気がしたので少年は聞かなかった。賢明?
さて、悪戦苦闘しつつ何とかドレスは脱がした…脱がしたが、問題はむしろここからである。
「何ですかその実績解除…と、いうか何処まで脱がさせればいいんですかこれ。あと、着替えとかは?」
そもそも少年は介護士とかではないし、誰かを介抱した経験なんて殆ど無い。
…後見人の人が酒飲みで、偶に二日酔いとかで地獄を見てるのをフォローする事はあるが。
ちなみに、レース生地とかタイツとかあまり意識すると変な気分になるので、なるべくそこはスルーをしたい……無理でしょうこれは。
ともあれ、リクエスト?に従ってタイツから脱がす事にする…伝線?が怖いのでかなり慎重な手付きで。
「…と、いうか僕は便利なパシリ役ではないんですけどね…。」
何てぼやきつつも、意識はなるべく平静を保ちたい。
タイツを何とか脱がせれば、足指まで包帯で覆われた姿に、何かやたら煽情的な下着…下着!?
(…よし、落ち着こう蘇芳那由他。こういう時こそ平常心…平常心が大事だと思うんだ。)
さて、タイツを脱がし終えた段階だがこれで終わり、とはならないだろう。
むしろ確信しているので流石に逃げようとはしない。しないが、逃げようとしても無理な気がしてきた、なんとなく。
■神樹椎苗 >
――ぴろん
『To:
最初からハードメニューにするのは三流です。
一流は、相手に調整すんですよ。
女子の知り合いが少ないとか、共学の楽しみどぶにすててるじゃねーですか。
青春しやがれ、青春。
それとも一人で楽しんで満足出来ちまうタイプですか』
メッセの内容がどんどん酷くなっていく悲劇。
なお、少年が今、腕に抱いている雇い主は、わりと性欲の権化寄りである。
――ぴろん
『To:
変態親父は変態親父ですよ。
しぃみたいな発育不良のロリの尻や脚を撫でてくるようなクズやろーどもです。
その場でぶん殴らねーで、にこやかに酒を飲ませてやってきたのを褒めたたえやがれですよ』
なお、毎度の接待相手がそういうクズ親父、というわけではないのだが。
少なからずそういう人間は居るのである。
――ぴろん
『To:
男子としては名誉な実績じゃねーですか?
どこまでって当然全部に決まってるじゃねーですか。
着替えは、めんどーですから後でいーです』
羞恥心の欠片もない話である。
色気も――哀しいかな、下着のデザインくらいしかない。
――ぴろん
『To:
ただのパシリみてーなやつに、こんなこと頼むわけねーでしょう。
お前だから頼んでんですよ、非凡人。
ふむ、丁寧に出来るじゃねーですか。
加点してやります、四億点くらい。
褒美にしぃの美脚を好きに触っても許してやります』
なんて言うが、何か所にも包帯が巻かれた脚は、確かに肌艶は綺麗でも、痛々しく見えるかもしれない。
というか、軽々しく許可を出すものじゃない。
神様は気が気じゃない、と言った様子で、そわそわ眺めている始末。
――ぴろん
『To;
ほら、次は上のインナーですよ。
って、あー、ダメですね、多分、ふつーには脱げねーです。
多分貼り付いてますね。
そこのサイドテーブルに断ち切りバサミありますから、それで切っちまっていいですよ』
なんてメッセを送ってくるが、確かにベッド横にはサイドテーブルがあり、断ち切りバサミが無造作にその上に置いてある。
とはいえ、少年にもわかるほど、肌触りが明らかに高級品であるインナ―を軽々と切れと言ってくるのは、難題かもしれない。
――ぴろん
『To:
裾からハサミを入れて、真っすぐ首元まで切ればいいです。
あとは、膿で貼り付いちまってますが、そのままはがして大丈夫ですよ。
あー、その前に手袋付けた方がいいですね。
他人の怪我の膿になんて、直接さわらねーほうがいいですし』
そう言うと、保護者が少年のところにわたわたと、使い捨ての薄手のゴム手袋を持ってきた。
百枚入りとかのよくある量販品だ。
さて、少年がインナーを脱がそうとすれば、雇い主の言う通り、インナーの内側には、包帯やガーゼから染み出した膿がべっとりとくっついている事だろう。
――あまり、見たい光景ではないに違いない。
■蘇芳 那由他 > 「まぁ、最低限自分の身を守れる程度の体力とか筋力は身に付けたいので、お願いするのも有りかもしれませんね。
…と、言われてもまだ常世学園の生徒になって1年も経過してないですし…。」
過去がさっぱり無いので、今の自分が本当に過去の自分と同じ性格や気質なのかも分からない。
とはいえ、少年は『一度失ったモノは二度と戻らない』という考えの持ち主なので、過去を今更気にしない。
青春に関しては、まぁ楽しみたい気持ちは人並にはある…つもり。自信は無い。
しかし、段々と会話内容が酷くなってる気がする…大丈夫かなこれ。
「…あぁ、文字通りの変態なんですね…でも、そういう人達って、無駄にお金とかコネ持ってそう…。」
あくまでイメージだけども。やっぱり内容を聞かなくて正解…いや、雇い主があっけらかんとぶちまけてしまったが。
しかし、この雇い主さんが笑顔で変態親父連中を相手にしたとか、いまいちピンと来ない。
…多分、相応にストレスが溜まるとは思うのだけれど。
それに、そういう変態ばかりではない真っ当な人たちも勿論多いとは思う。
「…完全にお世話係じゃないですか…まぁ、いいですけどね…。」
何か諦めらというか悟りの境地になりつつある少年。
意外と順応性や適応性は高い部類なのか、既に何時もの少年になりつつある。
それはそれとして、落ち着かないのは年相応というか何と言うか。
「…まぁ、お仕事の斡旋とか神器の扱い方とか色々お世話になってるのは事実ですし。
こういう形でなのは予想外過ぎますけど、お礼の一環になるなら是非も無いです。」
あと、何ですかそのいい加減な加点方式は。それと女の子の足をべたべた触る変態趣味はありません。
と、いうか神様がソワソワしてるのを凄く感じる。神器の所有者になった影響かその辺りが直感的に分かる。
「…張り付いてる?…断ち切り鋏…いや、まぁ確かにありますけど…。」
この人は介護初心者に何をやらせようというのか…。
ベッド横のサイドテーブルに、無造作に置かれているが矢鱈と存在を主張するソレを眺めて。
と、神様が使い捨てのゴム手袋を持ってきてくれた。ありがとうございます、と律義に会釈をしつつ受け取り。
「…何か、まるで手術前とかみたいな感じになってるんですけど…。」
ゴム手袋をしっかりと嵌めつつ。サイドテーブルに置かれていた断ち切り鋏を手に取る…うん、僕は何やってんだろう。
ともあれ、彼女に言われた通りにそっと裾の部分から鋏を入れる。
…素人でも分かるくらいに高級そうなインナーだが、やれ、と雇い主がゴーサイン出しているので…。
「――首元まで真っすぐに…一息に切ってしまった方がいいですねこれ。」
変に躊躇しては駄目な気がするので、一度深呼吸をしてから断ち切り鋏で、高級インナーを裾から入れて首元までしっかり切っていく。
意外と手際が良いと言うか、刃物の扱いは初心者だが度胸はあるらしい。
さて、断ち切り鋏の出番は一先ずここで終わり。一度サイドテーブルに置き直す。
そして、恐る恐るゴム手袋を付けた両手で、断ち切ったインナーを剝がすように外していく。
インナーの内側は、包帯やガーゼ、あと染み出した膿など中々に痛々しい。
だが、少年は以外にも顔色一つ変える事なく、丁寧にそっとインナーを剥がしていく。
「…これで…良し…と。すいません、素人手付きなので何か痛みとかあったらご容赦を。」
何とかインナーも外すミッションはやり遂げた。まぁ及第点くらいは貰える手付き…かもしれない。
■神樹椎苗 >
――ぴろん
『To:
奥手になってどーすんですか。
男はどきょーとかいうでしょう。
女の一人や二人抱いて、自信の一つでもつけりゃーいいんです』
とんでもない事を言う暴君である。
――ぴろん
『To:
まさにそういう連中ですよ。
しいが世話になってる、研究室のスポンサー共です。
どんな研究も、出資者がいねーとできませんし。
設備や施設の維持にもとんでもねー金が掛かりますからね。
真っ当な連中は、しぃよりも研究内容の方に興味を持ちますから、もっぱらそっちの話をします。
そういう時はまあ、肩が凝るくれえで済むんですが』
流石にその場で殴り飛ばしてやりたくなるような連中相手に、愛想を振りまいているのはすさまじいストレスのようだった。
それこそ、自力で何一つやりたくなくなって、少年を頼るくらいには。
――ぴろん
『To:
ただのお世話係だったら金出して、適当なヘルパーを呼びますよ。
この島の福祉はやたら充実してますし。
つーかわかんねーんですか?
お前がよかったから、お前を呼んだんですよ』
完全に脱力しっぱなしで、少年に身を委ねている。
それだけ信用、信頼できる相手だと、椎苗なりに想っているのだろう。
だからこそ、遠慮も配慮もしない暴君っぷりなのだが。
――ぴろん
『To:
む――感謝されても困るんですが。
でもまあ、こうして、来てくれたのは、ありがたい限り、ですが、むぅ』
文面でも伝わってきそうな微妙な心境。
椎苗からすれば、感謝するのは自分の方なのだが。
先手を取って言われてしまうと、なかなか伝えづらくなってしまう。
さて、少年が感じたように、手術前という感覚はあまり間違いではない。
少年がインナーを引きはがしたら、背中と胸腹部に体を挟むように張り付けられた、医療用ジェルパッド。
それを固定するためなのだろう、上からまかれた包帯などの隙間からあふれ出た膿。
両腕にもまかれた包帯からも、黄ばんだ物が染み出している。
そんな姿を見ても取り乱さず、しっかりインナーを脱がしてくれるのだから、やはり少年を頼って正解だったと思うのだ。
『To:
加点、8億6千2百万と二点。
初めてにしては十分ですよ、気遣いもありがてーです。
というか、お前こそ平気ですか?
見ていて、気分のいい物じゃあねーでしょう。
大抵、ヘルパーに頼んでもこの辺りでしんどそうにされるもんですが』
椎苗にとっては、日々繰り返されることなのだが。
ぱっと見てわかるほどの重傷人を相手にすれば、取り乱さない人間の方が珍しい。
『To:
インナーもタイツもそのまま捨てちまってください。
ああ、ベッド横のゴミ箱でいーです。
後で医療廃棄物としてまとめますから』
そう送られてくる文面。
相変わらず体を完全に少年へと預けている物の。
少なからず、少年が不快じゃないかと気にはなっているようだ。
■蘇芳 那由他 > 「…神様、ちょっとこの人にチョップしていいですか?」
思わず半目になりつつ、神様に顔を向ける。謎の威圧感が神様を襲う…!!
流石に、そろそろ暴君ぶりというか猥談方面になりつつある話題に何か危険信号を感じたらしい。
むしろ、神様に堂々とそんな事を言う所は変に度胸がある…のかもしれない。
「研究室…まぁ、スポンサーは大事ですからね…お金が無いと研究とかなんて出来ませんし。」
納得したように頷くが、雇い主が”物”扱いされているみたいで何か面白くない。
ただ、そういう感情は押し殺して、ただゆっくりと息を吐き出す事で堪えた。
「…え?…あ、ハイ…ありがとう…ございます?」
自分が良い、と言われれば流石にちょっと挙動不審になりかけるが、お礼は反射的に述べていたり。
…まぁ、分かり易いくらいに動揺していて言葉も詰まりがちだったが。
「…??」
何か困惑というか戸惑っているというか、複雑そうな様子の雇い主さん。
それは感じ取れたが、何で複雑そうなのかは心が読める訳でもないのでさっぱり分からない少年で。
さて、それはそれとして。彼女からインナーを剥がした姿は確かに痛々しい。
あまりじろじろ見るのも失礼ではあるが、目を逸らすのもそれはそれで失礼だと思う。
表情はしかし平静で、変に忌避するような態度も一切見せない。ただその姿をちゃんと”見る”。
「何か凄い加点が来たんですが…むしろ、包帯だらけなのは知ってましたからある程度覚悟はしてましたし。
どうしてそんな状態なのかまでは僕には分かりませんけど。」
そう口にするくらいで、矢張り落ち着いているというか顔に嫌悪感も何も出ていない。
酷い状態だとは思うが、そこを根掘り葉掘り尋ねもしなければ目も逸らさない。
記憶が無く、恐怖を感じず、方向音痴で色々と危なっかしい少年ではあるが。
今、そこにあるものをしっかりと見つめるという点は中々のものがありそうだ。
「了解です…と。それで次はどうすればいいんでしょうか?」
インナーとタイツはゴム手袋で手に取って言われた通りにゴミ箱に。
ゴム手袋はまだ外さない方がいいのだろうが、それはそれとして次の指示を確認しようと。
ちなみに、不快を感じているかどうかだが、多分別に感じてなさそうだ。
精神の一部を欠落している影響もあるのだろうが、そういう耐性も強いのかもしれない。