2025/05/23 のログ
鶴博 波都 >  
「いや、出来ないです。何かの漫画で読んだ気がしますが……」

 もきゅもきゅと食べながら、首を横に振ります。
 テレビの映像は──。

『常世島の霊障・災異・怪異・神祟に関する情報をお伝えする「霊的島防ニュース」をお伝えします。
 このコーナーは《祭祀局》および《風紀委員会》の協力・提供でお送りします――』

『──この事件は、妖精の恋人(リャナン・シーの虜)となった部員たちが、強い詩的霊感や詩才を得る代わりに妖精の恋人リャナン・シーに命を吸われた事件であることが公式に発表されました──』
『──突如神憑り的な詩才が芽生えたと思われる者が周囲にいた場合は、《祭祀局》や《風紀委員会》に相談を行って欲しいと──』

 ──常世島ではありふれた、霊的な事件に纏わるニュースの一つ。
 良くも悪くも、よく見る類の報道。詩才と引き換えに生命を奪うものらしい。

 恋人も芸術も、波都にとっては縁のなかったもの。
 それらを求める──と言う感覚はつい最近まで、理解のし難いものであった。 
 今は──。

「──芸術と命って、引き換えになるものなんですね。それとも……」

 何とも言い難い。
 不理解と言うにはもやもやとしたものを感じながら、ケーキを口に運んだ。

神樹椎苗 >  
「むむ、それは残念。
 賭け麻雀で搾り取ってやろうと思ったのですが」

 本当に性格の悪い子猫でした。

 チーズケーキを頬張りながら、テレビから流れる最近のニュースを眺めつつ。
 それ自体は、珍しくはない事件の一つではありました。
 対価として命を奪っていく怪異は、世界各地に数多く、島の中で学籍を得ている者だけでもそれなりの数がいるのです。

「芸術に限った話じゃねーと思いますけどね。
 ――お前には、命と引き換えにしてもいい願い事、とかはねーんですか?」

 そう、釈然としていない様子の少女に訊ね返すのでした。
 

鶴博 波都 >   
「しぃちゃんが包帯を巻かなくていい位に傷が綺麗になって欲しい──とかでしょうか?」

 本気なのか冗談か、そうと告げる。
 冗談にしては真面目すぎるし、本気にしてはピンポイントすぎる程度。

「なかなか、自分の命でどれだけの対価を得られるか計ることは難しいです。」

 ごちそうさまでした、と、出していたケーキを平らげる。

「一旦、お皿は下げますね。この後はどうしますか?」

神樹椎苗 >  
「命を対価にそれは、自己犠牲って次元の話じゃねーですよ?
 もっと自分にとって大事な事に使うべきです」

 『鉄道公安に移ったなら、ちゃんと考えとくといーですよ』と、少女の頬をぷにぷにと小さな指先でつっつきました。

「ふむ――しかし、われながら八号は大きすぎたかと思いましたが。
 意外と二人でいけるもんですね」

 半分ですら、随分と多い量なのです。
 晩御飯が要らなくなってしまいそうな。
 まあ、椎苗は甘いモノであれば際限なく食べられてしまうのですが。

「ん~、そうですねえ」

 するん、と少女の腕の中に滑り込んで、そのお膝に頭をのっけてしまいます。

「今日もお泊りさせてもらいましょーかねー。
 早朝に出ていくお前に、朝食を作って見送ってやるの、けっこーすきなんですよ」

 なんて、膝の上から少女を見上げて、微笑みました。
 

ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」から鶴博 波都さんが去りました。
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」から神樹椎苗さんが去りました。