2024/06/29 のログ
ご案内:「職員寮 入り口」に龍宮 鋼さんが現れました。
龍宮 鋼 >  
休日の職員寮。
建物のすぐ前のスペースの隅っこで、工具を広げてガチャガチャバイクを弄っている新人教師。
日本が誇る自動車メーカーがはるか昔に販売していた、黒い鳥の名を持つ大型バイクである。
今の時代には骨董品にも等しいそれを、パーツやらなにやら付けたり外したり。

「オマエも相当歳だろうが、まだまだ走ってもらわにゃ困るからなァ」

汚れているところを磨いたり、摩耗したパーツを交換したり。
古いバイクとは言え、未だファンが多いらしい。
純正パーツこそ流石に作られていないのだが、消耗品等は社外パーツが作られている。
この時代に化石燃料を燃やして走るバイクを、大事に大事にメンテナンス。

ご案内:「職員寮 入り口」に武知 一実さんが現れました。
武知 一実 >  
休日は家に居ても暇で仕方無い。
というわけで先週果たせなかった買い物を、と思い家を出てちょっと遠回りしてみるかと気の向くままに足を運んでいれば職員寮に差し掛かった。
さすがに先生たちも休日は休日してるだろうと建物を眺めながら通り過ぎようとしたが、何やら建物前に人影と……

「それは……バイク?
 へぇー、そんな風に手入れすんのか……」

走ってるものは何度か見掛けた事があるが、こうしてメンテされているのは初めて見る。
興味を惹かれて歩み寄りながら、つい感嘆が口を突いて出てしまった。

龍宮 鋼 >  
「あ?」

しゃがんでガチャガチャとカウルのナットを閉めていれば、後ろから声。
振り向けば、茶髪の少年がいた。
確か名前は、

「オウ武知ィ。
 なんだ、オマエバイク興味あんのか?」

武知一実、一年生。
ケンカばっかりして風紀に追い回されていると言う、いつかの自分みたいな生徒。
彼の名前を呼びながら笑顔を向ける。

「オマエ今日は大人しくしてんのか?
 別にケンカァしてもいいが勉強もしろよ」

しゃがんだままでは届かない位置のナット。
一度地面に寝そべり、それを締めながら先生らしい言葉。

武知 一実 >  
「どうも、龍宮先生。
 バイクに興味……まあ、乗れたら便利だろうなとは何度か
 けどオレまだ15だし、免許取れんの先なんで」

バイクを弄ってたのは龍宮鋼、たしか数学の先生だ。
アウトローな雰囲気の先生だとは思ってたが、バイク乗るんだな……
学校ではあんまり知る機会が無い一面に休日っぽさを再実感する。

「……別にオレは自分から喧嘩吹っ掛ける側じゃねぇんで。
 売られた喧嘩買ってるだけだし……勉強も一応してる方すよ」

風紀委員はともかく、先生の大半は授業の成績が悪くなければ口煩く言ってくることも少ない。
その為にも日々授業は出席しているし、成績も……上位とはいかなくとも赤点には程遠い結果を出せている筈だ。
勉強が好きかどうかはまた、別問題だけどな。

「なんかオレにも手伝えることとかないっすか……?」

地面に寝そべってまでバイクのメンテをする龍宮先生を見て、何か手伝えることはと思った傍から、口にしていた。
自分でも思ってる以上にバイクに興味が沸いてるらしい。

龍宮 鋼 >  
「免許ォ?
 オマエ、ケンカすんのは躊躇わねェのにそう言うとこ気にすんのな」

教師にあるまじきセリフ。
自分なんてそんな年の頃にはバイクどころか車だって乗りまわしていたと言うのに。
まぁ彼とは事情が違うけれど。

「別にケンカすんなとは言ってねェよ。
 俺だって学生んときゃそんなもんだったしな。
 ま、勉強してんならいい、っと」

弱い者いじめの現場に乱入したりはしていたけれど、基本的には彼と同じように売られたケンカを買う側だった。
ナットを締め終え、バイクの下から這い出てくる。
とりあえずは一通り整備は終わりである。

「あ?
 あー、んじゃ洗車すっか。
 ちィと待っとれ」

手早く工具をまとめ、職員寮の中に帰って行く。
数分もすれば、バケツと洗剤、スポンジにタオルと洗車グッズを持って戻ってくるだろう。
タオルなどは脇に置いておき、スポンジを一つ彼に放ってからバケツに洗剤を入れて水を入れる。

「ほら洗え」

ホースでバイクに水をバシャバシャと掛けながら。

武知 一実 >  
「そりゃあ、喧嘩以外で風紀にとやかく言われんの嫌なんで。
 無免許運転なんて喧嘩するよりも煩そうなの、分り切ってるじゃねえっすか」

多分運転を覚えるの自体は何度か見れば覚えられる気はする。
が、だからといって無免許で乗り回したいかと言われればそんなことはない。
出来る限り自分に非がある面倒事は避けたい。風紀絡みなら尚更だ。

「すんなって言われても売られた喧嘩は買うんで大丈夫っす。
 はぁ……まあ当然っちゃ当然だけど、先生も学生だったんすね。
 入学したばっかだし、まだそんな難しい事も授業でやってないんで」

授業が進むにつれて理解が追い付かなくなる事もあるかもしれない。
元々学が無いと言うほどじゃなかったが、こうして学校に通うのは初めての事なので確証も持てない。
……まあ、そういう時は早めに対処を考えとこう、に今は留まる訳だけど。

「洗車?
 ……まァ、暇なんで良いけど」

待ってろ、と言われたので大人しく待つ。別に買い物も急いでるわけじゃあないし。
その場で少し待てば、一度職員寮に引っ込んでいった龍宮先生がバケツやらいろいろ持って戻って来た。
……にしてもデカい先生だな。最近オレより小さい人らしか見てなかったから何か寸法の認識がバグりそうだ。

「おっと……はい、了解」

投げられたスポンジを手に、濡れたら困るボディバッグは少し離れた地面に置いておいて。
バイクと先生に近付くと、スポンジを一度バケツに突っ込んでからバイクを擦り始める。
……洗い方ってこうで良いのか?

龍宮 鋼 >  
「ッハ!
 そりゃァオマエケンカすんのが悪ィわ!!」

楽しそうに笑う。
ますますかつての自分を見ているようで、なんだか面白い。
止められてもケンカは買う、と言うあたり尚更である。

「ばァかオマエ、常世学園の龍宮鋼っつったらそれなりに有名だったんだからな。
 悪ィ名前の売れ方だったがよ。
 ま、勉強はちゃんとしとけ、数学なんざ特に積み重ねだからな」

わからないことがあったらすぐ聞けよ、なんて言いながら自身はブラシを持ってホイールを擦る。
ガシガシと、動きは雑そうに見えるが丁寧に。

「電装系は避けろよ、カウルとシートとタンク周りだけ洗っときゃいいからな」

見事なうんこ座りでホイール周りを洗いながら。