2024/11/28 のログ
ご案内:「職員寮」に焔城鳴火さんが現れました。
ご案内:「職員寮」から焔城鳴火さんが去りました。
ご案内:「職員寮 第四アパート」に焔城鳴火さんが現れました。
ご案内:「職員寮 第四アパート」に黒羽 瑠音さんが現れました。
黒羽 瑠音 >   
「~~~♪」

エプロン姿で鼻歌交じりに小鍋の中の味噌汁をかき回す。
お味噌汁の匂いと言うものは何故こんなにも人を惹きつけるんだろう。
いや、日本人特有なのかもしれないけれど、少なくとも…。
私にとって朝の匂いは、お母さんが作ってくれたお味噌汁だった。

朝の6時半、先生の家での『何度目かの』お泊りの翌日。
昨日も先生お酒飲んでたし、朝は二日酔いにいいものを作ろう。

冷凍のあさりのむき身とお豆腐の味噌汁、ネギは昨日切ったのの残りがあった。
卵と豚バラのスライスと冷凍しておいた一食分の白菜、卵は目玉になるようにして一緒にして蒸しあげる。
冷凍野菜を一食分ずつ分けておくのもお母さんに教えて貰った楽テクって奴だ。
味付けはポン酢、それに塩コショウをぱらぱらと、うん、ふわっといい匂いが拡がるね。

ご飯も焚けたし、インスタントだけど珈琲も用意して… 私はカフェオレにしちゃおっと。
最後にパックのめかぶを添えて完成!健康にも気を使った、我ながらいい朝ごはんかも。

さて、扉とカーテンは開けて置いたけど、先生の部屋までこの匂い、届いてるかな……?

「せーんせ、朝ですよ~~?」

エプロンを付けたお母さん気分のまま、様子を見に行ってみよう!

焔城鳴火 >  
 鳴火の寝起きは悪い。
 血圧は高いくらいであり、貧血も滅多にないのだが。
 もっと根本的に、ごく単純に、寝たら中々起きれないのである。

「んん――あとごふん」

 そうもごもごと言って、頭から布団をかぶってしまう。
 学生時代、これで何回遅刻したか、と問われれば。
 数えきれない、としか答えようがなかった。

 ――しかし、毛布に丸まっていても香ばしい匂いが貫通してくる。
 冬場の毛布を貫通してくる、香りの攻撃!
 眠い上に意識もふわっふわしているが、もぞもぞと毛布怪人はベッドの上を這って。
 ぼてん、とベットから転がり落ちた。
 

黒羽 瑠音 >   
「お味噌汁冷めちゃいますよ~~?」

まぁまた暖めなおせばいいだけなんだけど。
布団をかぶる先生を見て、くすくすと笑っちゃう。
そのままころんとベッドから転げ落ちる姿には、流石に大丈夫かな、何て思うけど。

「せーんせ、顔洗ってきましょー?」

まだ被っている毛布を剥ぎ取って、軽く肩をゆすりながら微笑みかける。
先生のこうした所も、もう大分見慣れたというか… 最近はちょっとかわいいな、と思ってるのは秘密。
布団の中と比べれば、ちょっとひんやりとした朝の空気、洗面台で顔を洗えば、否が応でも少しは目を覚ますかな。

「朝ごはん、私も食べないで待ってるんですから、もうぺこぺこになっちゃいました!」

焔城鳴火 >  
「んぅぅ~」

 毛布をはぎ取られると、へにゃへにゃな抵抗をするが。
 ずるん、と着る毛布のぴよちゃんが転がり落ちた。
 鳴火の防御力がさがった!

「ぅぅ――るぅねぇ~さむぃ」

 そのまま、起こしてくれた少女の腕の中に潜り込んで抱き着く。
 そのまま背中をとんとん、とすればまたすぐに寝入ってしまいそうな様子ですらある。
 抱き着いてる様子は、どこか幸せそうで表情が緩んでいた。

「んんぅ~――みず、つめたい」

 あれこれと、眠たい頭で理由をこじつけて抵抗するが。
 お湯で洗いましょうね、で一発KOである。
 

黒羽 瑠音 >   
「あぁもう、先生、朝ほんと弱いですね…」

抱き着いてくる先生の背中をぽんぽん… するのは抑えつつ。
リラックスしてくれてる、と思えば悪くは無いんだけれど、やっぱりちょっと心配になる。
いや、毎日ちゃんと生活はしてたのは分かるんだけど、最初のあの部屋を見てると… ね。

というか、見てると私までちょっと眠くなってくるかも… ふぁ。
いけないいけない、此処は心を鬼にして… !

「だーめです、ほら、洗面所いきますよ?」

そのままよいしょ、ともたれかかられたまま立ち上がる、之も日々の鍛錬の成果、かも。
一度顔を洗えば先生も目が覚めるだろうし、早く朝ごはんを食べてもらいたいもんね。

「ちゃんとお湯も出るんですから、文明の利器に頼りましょうね」

焔城鳴火 >  
 ずるずる、と抱え上げられるように立ち上がる。
 圧倒的体格差!
 しかし、わりとずっしり重いのが、このふにゃふにゃな、ぴよちゃんである。
 筋肉質体型かつ、――かなり女性的な肉付きのためだろう。
 一部女子には羨ましい事だろう。

「ふぁ~――ぃ」

 非常に大きな欠伸をしつつ、抱き継いた少女にすりすりと甘えるように頭を寄せる。
 普段が狂犬か、というくらい激情家なのもあり。
 懐いてしまうと、子犬か何かのように甘えだしてしまう。
 そんな大きすぎるギャップを知っているのは、今のところ、目の前の少女だけだ。

「んっぅ、るね、あらって~」

 そう言いながら、一緒に洗面台までずるずると。
 なお、一部の生徒からは半端に可愛げを見透かされて、『ぴよちゃん』と愛称が広まり出しているのは、本人には不本意である。
 しかし、こんな状態を見られてしまえば『ぴよちゃん』でしかないだろう。
 結局のところ、鳴火は人の温もりに飢えているのであった。
 

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黒羽 瑠音 >   
「え~~?しょうがないですねえ…」

何だかんだ、そういって頼られると悪い気はしないのは私の悪い所なのかも。
何時か子供とかが出来た時にちゃんと叱ったりできるんだろうか私、何て、流石に早いか。
でも、そろそろいただきますの準備しておきたいんだけどなぁ。

ずるずると先生と一緒に洗面所まで移動して、何とか鏡の前にたたせ、お湯を出す。
ジャアアアーーー、と湯気が洗面台から立ち上る中、用意しておいたタオルをお湯に浸して。

「えいっ、と、ほら~~~ぐしぐししちゃいますよ~~~!!」

いいかげんに、おきろ~~!
の気持ちを込めて顔をちょっと強めにぐいぐいと暖かいタオルで拭いた後、ぽん、と手に乗っけて。

「はい、後は自分でやってくださいね?ごはんとか盛っておきますから」

ぽんぽん、と軽く背中を撫でるように叩いてから食事の用意に戻ります。
洗顔料とかも出しておいたし、流石に此処から時間はかからないよね。
先生が顔を洗って戻って来たころには、用意しておいた御飯が綺麗に用意されてるって訳です。

焔城鳴火 >  
「むぇぇぇぇぇ」

 お湯で温かいタオルを押し付けられると、ヘンな鳴き声が漏れた。
 きっと『ぴよちゃん』の鳴き声だろう、そうだろう。
 少なくとも鳴火先生ではないはずである、きっと、恐らく。

「んー」

 そんな、返事かどうかも分からない音を発して、のろのろと顔を拭い始める。
 用意してもらった洗顔料で顔を洗い、化粧水を乗せて、とルーチンになっている動作は何とか体が勝手に動いてくれた。
 が。

「あー、いい匂い」

 そんな事を言いながら、着る毛布に包まれた芋虫が、もぞもぞと床を這って戻ってくるあたり。
 本当に私生活が弱すぎる、困った先生だった。
 

黒羽 瑠音 >   
オンオフが激しいというか何と言うか、そんな所も先生のいい所なんだと思うけど。
だけど今日はちょっとお願いしたい事もあるし、そろそろもうちょっと起きて貰いたい。

「はい、お帰りなさい先生、ごはん食べましょうね」

もぞもぞと戻ってくる姿を見て、また思わず口元が笑ってしまう。
うーん、この姿、学校の… 特に男子とかには見せられないよね。

正座しながらずず、とカフェオレを一口。
ゆっくりと上がってくる先生を待ってから手を合わせて… 。

「それじゃ、いただきます」

ずず、とお味噌汁を一口、あさりの風味が鼻に抜けて心地いい。
しゃく、とそのままネギを一口噛みながら、蒸らしたご飯を口に運ぶ。
うん、朝!って感じだよね、中々自分で食べる時はものぐさしちゃう事も多いから。
こうして『誰かの為』にご飯を作る機会って、少しありがたかったりする。

焔城鳴火 >  
「はーい」

 素直な返事。
 のそのそとテーブルの前まで来て座り直す。
 ようやく目が覚めてきたようだが、まだまだ、ゆるふわ『ぴよちゃん』モードのようだ。

「ん、いただきまーす」

 そう言って、最初にお味噌汁。
 一口すすって、ほぅ、と息をつく。

「おいしい~」

 普段の険しい顔つきとはまるで違う、すっかりとろけた、幸せそうな表情。
 そのまま、ゆ~っくりと、小さな口でちょっとずつ朝食を味わっていく。
 終始にこにことしているのは、まだ目が覚め切っていない証拠。
 とはいえ、後はじわじわと覚醒していくだろうから、心配は無用だろう。
 

黒羽 瑠音 >   
「朝はさっぱり目に作ってみました」

ポン酢と塩コショウがかかった豚肉と白菜に卵の黄身を絡めてパクリ。
そのままめかぶもじゅるりといっちゃう、ごはんが進むね。

「美味しいなら、よかった、ふふ、作った甲斐があります」

何て言いながら暫く食べる様子を眺めつつ食事を進める。
お代わりもありますよー、なんて、ごはんが残ったらおにぎりにしちゃうだけだけど。
そんなに品数は多くないけど、朝ごはんはこれくらいでちょうどいいよねとも思う。

ずっとにこにこしている姿を見ると、何だかこっちまでぽやぽやしてきちゃいそう。
いけないいけない、そろそろ話を出しておかないと忘れちゃいそうだ。

「それで先生、今日ッて休みじゃないですか、実はお願いがあるんですけど…
私の異能、今ちょっと一人じゃ試せない事の調査中なんですよね」

焔城鳴火 >  
「んー、瑠音はいいお嫁さんになるわねえ」

 そう、ぽやぽやとしつつ、スローペースながら、しっかりと食べる。
 身体の栄養以上に、心の栄養になりそうな様子だ。

「んぇ。
 異能って、あの、使いどころに困る奴?」

 そう話を振られれば、少しだけ表情がシャキッとする。
 ――が、朝ごはんをまた一口食べると、またゆるんでしまうのだが。

「んー、ぁー、お願い次第だけど。
 どんな調査してんの?」

 と、うっかり軽く了承しそうになってしまったが、まずは内容の確認だ。
 ゆるく首を傾げながら、少女の言葉の説明を待つ構えだ。
 

黒羽 瑠音 >   
「そうですか?  えへへ…」

そう言われるとやっぱり悪い気はしない、今の所相手とかは考えた事無いけれど。
というか、あんまり男の人との出会い、っていうのも無いし… 。

「そうです、先生にはちょっと説明した事ありましたよね」

こくこくと頷いて、詳しい説明を続けつつ、またぱくりとあさりを口に含む。
拡がる滋味… でいいのかな?貝の風味と味噌汁がぽかぽかと体を温めてくれる。

「えっとですね、簡単に言えば… 『他人のために使おうとした場合』の挙動
についてデータを取ってきて欲しいらしいんです、それも、出来れば親しい相手の」

説明しながらカフェオレを飲み、ほぅ、と一息。

「何でも、異能による変化が『私の思考』に関係してるのか、それとも別の何かか
そういったものを調べる足掛かりにしたいんだとか…」

焔城鳴火 >  
「んー、自分じゃなくて、他人に対しての挙動かあ」

 ようやく、鳴火も『ぴよちゃん』から先生に戻りつつあり、なにを調べたいのか、というのもおおよそ理解できるものだった。
 なんて尤もらしく体裁を整えているが、表情筋は緩んでおり、普段よりずっと柔らかな表情だったが。

「なるべく親しい人、ね。
 ――それ、私が瑠音にとって、特別って考えちゃっていいの?」

 と、内心、今すぐ抱き着きたい衝動を押さえつつ。
 一先ず言葉だけで我慢する。

「まあ、そういう事なら協力くらい、惜しむつもりはないけど。
 結局、なにをすればいいの?」

 少女の異能については、報告されているだけの内容は把握している。
 とはいえ、実験協力となれば、具体的になにを試したいのかまではわからない。
 お味噌汁の最後の一口を飲んで、とても満足げに息を着いた。
 

黒羽 瑠音 >   
「はい、基本的に、何が起こるか分からないのもあって、そういうのって結構避けてたので… 」

何かあっても自分で何とかできる程度で納められるように、というのもあって。
他人のために使ったのは本当に数えるほどだ、此処に来る切欠も、そういえばその使い方をした時だっけ?

「特別、そりゃまぁ、特別だとは思ってますよ、とってもお世話になっちゃってますし
そう思ってなきゃ、こんな感じにお泊り何て来ませんって」

ふふ、と小さく微笑みながら目を細めて見せる。
この学園で一番世話になっている大人で、見えない所で何時も頑張っている事も知っていて。
色んな意味で色んな事を教えてくれた人でもある、うん、教え方は兎も角として。

「そうですね… 私の異能の特性を考えると… こう『これの上位互換が欲しいなぁ~』
って感じのものがあったら、それを教えてくれるといいんですけど」

私の異能は同一ジャンルの別のものに変わる、というのが基本の挙動だ。
だから、何を何に変えて欲しいか、の指針を貰って、それに変われ~~って思いながら異能を使ってみる!
多分、これで実験の条件は満たせると思うのだけど… 。

食べ終えた食器を一先ず集めて、水にゆっくりと漬けながら洗い始める。
歯磨き、忘れないうちにしておいてくださいねー、と言いながら後片付けだ。

「片付け終わるまでに考えておいてくれると嬉しいです!」

焔城鳴火 >  
「んまあ、そうよね、規則性はあってもランダム性も高いし。
 いつかみたいに、自分が怪我するならともかく、相手に怪我させるのは嫌よね」

 お箸をおいて、ん、と考える。
 そして、眉を顰めて真剣に考える。

「――瑠音、私に嫁入りしない?」

 考えてる事が、思いっきりズレていた。
 真顔で、かなり本気のトーンの声だった。
 ――大きな咳払い。

「あー、えーっと、上位互換?
 そう言われてもパッと思いつかないわねえ――」

 そう部屋を見回している間に、食器を片付けられてしまう。
 少女の家事スキルがどんどんレベルアップしている気がした。

「――互換ねえ」

 とりあえず、であれば色々あるが。
 普段通り下位互換として発動しても、危険性の無い物を選ぶ必要がある。
 しかも不可逆なので、無くなっても困らない物。
 ――意外と少ない。

「んー、よい、しょっと――」

 立ち上がって、クロゼットから使い古した手首用のサポーターを引っ張りだす。
 既にくたびれていて、癖がついてしまい、丁度捨てようと思っていたものだ。

「るね~、これなんか、新品みたいにしてくれると助かるんだけどー」

 

黒羽 瑠音 >   
「です、何かあっても責任とか取れませんし… だから結構悩ましくって」

こくこくと頷きながらも先生の続く言葉に、がくっ、と思わずこけそうになる。
いやいやいや… !

「先生、流石に14歳に求婚はちょっと… 」

何て苦笑いはするけれど、今やってることが嫁入りした女の子がする事なのではといわれると。
割とあっている気がして、自分でもうーん、となってしまう、嫁入りの修行になってるのかなこれ。

「そうです、例えば、お酒をいいものにするとか、古い道具とか… 」

まぁ飲み物とかの場合基本不味かったりするものになるし、道具は文字通り不便な奴になる事が基本なんだけど。
ともあれ、先生が何を用意するのかちょっとだけ楽しみにしつつ、手早く片づけを済ませて戻ってくる。

「ふんふん… これは、サポーターですか?なるほど… これなら大丈夫、なのかな」

こういうものを変えた事は思えば殆どなかったと思う、どう変わるのかちょっと見当がつかない。

「ちなみに、先生的に何か希望とかはあったり…?」

一応そんな事を聞きながら、取りあえず受け取ってしげしげと見てみる。
あぁ、たしかに… 大分年季が入ってる感じがするなぁこれ。

焔城鳴火 >  
「そうそう、サポーター。
 これならどう変わったとしても、流石にお互い怪我したり、なんてことはないだろうし」

 そもそも危なそうなら使わなければいいだけだ。
 そうした心配が無ければ、気兼ねなく異能を使えるだろう、と思って引っ張り出してみたのだが。

「希望ねえ。
 これ、着け心地が気に入ってて、昔から愛用してたんだけど、終売しちゃったのよ。
 だから、元通りとは言わないけど、それなりに肌触りが好くなると嬉しいかしらねえ」

 悩みながら、渡した古ぼけて糸もほつれて居るサポーターを眺める。
 長年使っていたモノだけあって、生地もクタクタにへたっていた。
 

黒羽 瑠音 >   
「成程―― 」

こくりと頷いて、説明を聞く

「気に入ってたって事は、一番はこのままもとに戻す感じですよね
なら、そうなるように願って願ってぇ……」

うんうんと神頼みをするようにサポーターを両手で持って、軽くもみもみと。
まぁ神様に願ってうまく言った事、今まで一度もないんだけど… 。

「それにしても、大分ほつれてますね、でもそれだけしっかり使ってもらったって事でしょうし」

出来ればこのまま直ってくれた方が先生も喜ぶよね、と思いつつ、改めて深呼吸。
一応、ちょっとだけ離れててくださいね、と先生に言ってから。

何時ものように、異能を"使った"。
そして、それは何時ものように起こり、サポーターは… 。

【サポーターは、焔城鳴火が買った新品のものと寸分違わぬ姿に変貌していた】

「ーー  !先生、上手くいぎま… あれ?」

頭がフラッとする、そのまま先生にサポーターを渡そうとするんだけど、ごとん、とゆっくりと体が横たわった。
うわ、何か、凄い体がだるい、後… 手、ちょっといたいなぁ。

サポーターから離れた私の手には、少し焼き跡のようなものがついている。
サポーターにも同じように、ちょっとかっこいいかも、ええと、何々…?

「My dear 焔城鳴火… 
え、ぇ… ちょっと、ある意味間違ってないですけど、はずかし、すぎません?」

焔城鳴火 >  
「まあ、そりゃあ、元通りになると嬉しいけど」

 そこまで高望みするつもりはない。
 というよりも、そんな都合よくいくものでもないだろう、というのが正直な感想だ。
 少女の異能は、少なくとも鳴火の知る限り、そういう物ではないのだから。

「使い込んだからね。
 終売になってからもう長いし――っ?」

 だから、その少女の手の中で起きた現象に、鳴火は面食らう事に成る。
 かつて見た新品同様になったサポーターは、確かに鳴火の気に入りに違いない。
 ただ――

「――ちょっ、瑠音!?」

 慌てて少女に近づいて、その様子をうかがうが。
 視線が揺れている様子もなく、熱も少しだけ。
 少々辛そうにも見えるが、異能を使った事による強い疲労だろう、と結論づけて、ほっとする。

「ほら、手を見せて、治療す――」

 ――そして耳元に届く甘い声。
 
 サポーターには、親愛を示すようにしっかりとメッセージが刻まれている。

「瑠音――その、ちょっと」

 瞬時に、自分の顔が燃えるように熱くなるのが分かった。
 少女の火傷した手に触れつつ、片手で口元を隠しながら目を逸らし。
 顔は、耳に首元まで色が変わるくらい、真っ赤に染まっていた。
 

黒羽 瑠音 >   
「…… ?」

横たわったまま先生を見上げる、そりゃ、親愛な――何て書かれていたらちょっと恥ずかしいけど。
流石にそこまで顔を真っ赤にする事だろうか?

「えへへ、うまくいっちゃって、正直ちょっと吃驚ですね… 」

そういいながらそっと手を差し出して先生にやけどを見せる。
うわぁ、本当に文字の形に赤くなってる… これ、入れ墨みたいでやばいかも。

「で、出来るだけ早く治る方法でお願いしたいんですけど
なんかありません… !?」

真っ赤になった先生の顔とは別の意味で顔が赤くなってるのを感じる。
いや、本当にこれ、恥ずかしいってレベルじゃないんですけどー!

というか、動きが完全にこう、何と言うか… 。
あぁ、頭が疲労感でよくまわらない、ぐるぐるするぅ。

「と、取りあえず、治療してもらうにしてもベッドいってもいいですか… 」

何とかそれだけを絞り出すように言ったのであった。
片付け、終わらせといてよかった… 。

焔城鳴火 >  
「――やだ」

 少女がびっくりしているのも、手に焼き印のように刻まれてしまったメッセージに動揺しているのも、まるで関係ないとばかりに。
 そんな短い、我儘が飛び出した。

「治療はしてあげるけど、綺麗に痕が残るようにする」

 そう言いながら、軽々と少女をお姫様抱っこして、ベッドへと寝かせる。

「大丈夫、この手の治療は得意だし、痛みも引きつりも無いように、痕だけ綺麗に残してあげられるから」

 そしてそのまま、少女の上に覆いかぶさる。
 理由に違いはあれど、互いに真っ赤に染まった顔。

「――瑠音」

 そう熱の籠った声で名前を呼びながら、ゆっくりと少女と顔を近づけていく――
 

黒羽 瑠音 >   
「いや、やだ、って、書いてある文字の意味わかってますよね!?」

ちょっとちょっとと言ってる間に抱き上げて寝かせられる。
わぁ、お姫様抱っこだー、何て思っている余裕はない。

「それって、私が先生のモノみたいじゃないですか~~!?」

あ、覆いかぶされた、之不味い、先生の目がマジだ。
頭もふらふらしてあんまり力が入らないし、息も少し、荒くて… 。

喉がごくり、となる、渇きと言うか、なんというか。

「せ、せんせ… 」

近づいてくる、潤いのある唇に、何処か切なげな顔。
実際の所、此処まで近づくのも初めてじゃないんだけれど、之はもう、言い逃れが――。

「ぇ… っく、くしゅんっっ!!」

ぶつかる瞬間、盛大にくしゃみが出て、ごつん、と先生の額に頭突きが飛んでいった。

焔城鳴火 >  
 ――愛しい少女が何かを言っている。

 けれど、そんな言葉にはもう、鳴火を止める力はなかった。
 少女に刻みついた印。
 乱れた呼吸、じわりと滲む汗。
 どれもが鳴火の熱に薪をくべて、火がついて止まらない。

 この子を自分のモノにしたい。
 この子に自分のコトを刻み付けたい。
 いつまでも――自分が居なくなっても、忘れられないように。

 そんな欲望が渦巻く炎の様に燃え上がり。
 今回ばかりは、自分でも少女への想いを止められそうになく――

「――んごぁっ!?」

 ――ガチン、と。

 瞬間炸裂音のような音がして、鳴火の脳を揺らす。
 鋭い痛みに、急激に熱が引いていくのを感じた。

「ぃ――たぁ」

 流石に涙が滲み出た。
 痛覚が戻って以来(・・・・・・・・)最大級のダメージだ。

「っぅ、ごめん、瑠音、大丈夫?」

 熱に浮かされていた頭が冷えて、理性が戻ってくる。
 かなりの衝撃だった。
 少女がうっかり怪我をしていないか――ポタり。

「――あ」

 起き上がった自分の膝の上に、赤い滴が。
 そして、そのままだらだらと、顔を伝って赤い色が続く。
 額が綺麗に割れたようだった。
 額は傷のわりに出血が多いからなあ、なんて思っている間に、普段からの血の気の多さを示すかのように、勢いよく、額から血が流れだしていた。
 

黒羽 瑠音 >   
額同士がごっつんこ、じんじんひりひりが追加されました。

「い、ったぁ… …
せ、せんせいこそ…」

あ、あぶなかった、いや、何がって言われると困るけど!
ドキドキと高鳴る胸に、額に滴る熱さに、そして先生の吐息… ?

滴る?

だらだらと先生の額から零れる赤い液体。
先生から零れる血と、割れたような傷跡が見えた。

ぞくっ、と背筋が冷えるような感覚がして、慌てて身を起こす。
頭がふらつくような疲労感は抜けないけれど… 。

「せ、先生、額、しょ、消毒しないと… 私より酷いですよそれ!」

今度は私が先生を押し倒す… つもりはないけれど、抱き着く番だった。
といっても、先生みたいには出来ないから、まず自分を!と促すくらいなのだけど。

「あぁもう、だいじょ―― 」

撫でるように先生の傷に触れる、触れた、早く治さないと、 なお、って

【焔城鳴火の額の傷が癒える、流れ出た赤い血を残して】

あれ、また、体がだる、ぃ 口、なんだろ、勝手にうご――

「―― ある、か、でぃあ」

「   代償を再生するね♪」

何かやたらきゃるんって感じの声がでたなぁ… 。

【言の葉が紡がれる、ビジョンが見える】

【焔城鳴火と黒羽瑠音は、何かの異形の姿を見る
誰かの口が開き、裂ける、芋虫のような体に、無数の大小様々な足。
背中からは四本の腕が生え、その頭部は、頭だけは人の名残を完全に残している
焔城鳴火と、誰かがその異形と戦っている】

何だろう、先生と誰かが戦ってる?でも、かっこいいなぁ先生。

【対峙する二人の影が見える、一人は焔城鳴火に見える、何かを話している】

「… あーちゃん?」

最後に私の口が勝手にそう動き、先生と私の前に現れたビジョンは姿を消した。
じり、と熱を感じる。火傷が出来た手からだ、火傷跡が、増えた。

気だるげに手を伸ばして先生に伸ばすと 其処に【for あーちゃん】という文字が増えていた。
誰だろう、でもなんだか、大切な言葉な気がする、混乱する思考でも、"それだけははっきり感じられた"。

焔城鳴火 >  
「ああ、平気平気、額の出血は傷に比べて派手なだけだから――」

 と言ってる間にも少女が抱き着いてきて――

「――え?」

 額の痛みが嘘のように消えて、出血も止まる。
 触れてみれば、傷も塞がっている事だろう。
 そんな現象を起こしたのは鳴火ではない。
 間違いなく、目の前の少女なのだが、それ以上に――

「――まって、なんであんたが『ソレ』を知ってるの!?」

 まるで別人のような声による『代償』という単語に寒気がした。

「ちょっと瑠音っ、しっかりして、しっかりしなさい!」

 ――今すぐ連れ戻さないといけない。
 そんな嫌な予感だけが、背筋を這いまわる。
 なにが起きているのかはわからないが、少なくとも、まともな状態には見えないのだから。

「――うそ、どうして」

 少女の口にした『愛称』は、少女が知らないはずのもので。
 半ば呆然としつつも――鳴火は必死で少女を抱きしめた。
 

黒羽 瑠音 >   
「―― 」

尚も何かを紡ごうとする口に対して先生が抱き着いてくる。
わからない、いや、分かる事もあるけれど。
濁流のように溢れてくる何かに対し、之だけは確かに感じられた。

【先生、困ってる、怒ってる… ? 悲しんでる… 】

そうして、いとも簡単に口が閉じる、先生が抱きしめてくれたからかな?

「ソレ? … 方舟… あれ、何だろう… 何だっけ」

入り込もうとしていた何かの情報が、薄れて消えていくのを感じる。
まるで目が覚めた時に覚えていた夢が、朝ごはんを食べ終わるまでにぼんやりと消えていくみたい。

今日は何の夢を見たんだっけ、確か、おこん先生の尻尾を阿修羅の手になった私が一斉にケアする夢だったような。
あ、だめだ、疲れがどんどん増えてく… でも、ちゃんと言わないと… 。

「ごめ、んなさい先生、なんか、勝手にやっちゃって… ごめんなさい」

先生のそんな顔は見たくないのに、気をつけて能力を使わないといけないのは分かってたのに。
抱きしめられた震える先生の体に手を回して、ぽんぽん、とまた背中を叩いた。
―― あ、でも今血がついてるんだっけ、後で二人とも洗濯しないとなぁ。

焔城鳴火 >  
「――大丈夫、大丈夫だから」

 そう必死で少女を抱きしめる。
 何が起きているか分からないが、今は真っ当な状態でないのはわかる。
 医師として、すぐに処置出来ないのが口惜しいくらいだ。

『あ――?
 なんだお前は――鳴火の記憶に繋がるとは、死にたいのか?
 ああ、死にたいのならいいぞ、全て灰燼と化し焼き尽くして――』


 ――ノイズ混じりの男の声が、少女の頭に響く。
 それは、灰になっても燃え尽きないほどの怒りと、狂おしい程の破壊衝動、破滅的な狂乱――その中にわずかに。
 凍てつくような寒さも溶けるような、暖かさに満ちたやさしさが埋もれているようで――

「ん、いいの、忘れなさい。
 すごく疲れてるでしょう?
 後の事は良いから、少しやすみなさい」

 そう言いながら、少女をそっと横にして。

「いいって言ったでしょ。
 私のために頑張ってくれたんだから、謝らなくていい。
 だから今は、ちゃんと休みなさい。
 その間に治療はしてあげるから、ね」

 そう言って、横にした少女の頭を、そっとなでる。
 とても愛おしく、大切な物に触れるように、優しく、何度も何度も。
 

黒羽 瑠音 >   
「……  先生」

そのまま髪を梳くように撫でていると、聞きなれない声が耳を騒がせて。
思わずびくっ、と身が縮こまるようになる、何だろう、変な事ばかり今日は起こる。
でも、先生がぎゅっとしてくれているから、少しだけ、安心できた。
でもそれってつまり、先生に迷惑かけてることになっちゃうよね、しっかり、しないと。
――というか流石に死にたくないし普通に、というか凄い怖い、なにこれ。
普段だったら滅茶苦茶ビビって叫びそうだけど、今はその気力が無いのが幸いしてます。
もう、聞こえない?聞こえないよね… 。

「んぇ…  ぅ~~~」

ぐるぐる、今のあたまをガツンと殴るような言葉、先生の言葉、合わせて一言で言えば【眠れ】って事だ。
うん、多分そう、こんな状態で色々考えるのは、多分あんまりよくない、多分。

あぁもう、頭の中の言葉もぐらぐら同じようなのが浮かんでくる、疲れてるんだなぁ。

「そう、します… でも、最後、に…」

目をこすりながら、息を吐いて、何とか口を紡いでいく。
横にされながらできる事は、これくらいしかないから。

「私、の手帳に… 担当の研究員さんの連絡先、ありますから… 」

そういって手帳をごそり、と差し出す。
多分私の異能のせいなんだろう、先生に協力してもらったからどの道伝えるつもりではあったし。

「ありがとうございます、少し、休みますね… 」

そのまま大きくため息をついて、意識を鎮めていく。
今度、お礼に何か用意しないと、だなんて消えゆく意識で考えながらも。
治ってよかったな、と頭の片隅で考えていたのでした。

焔城鳴火 >  
「ん、わかった、あんたのトコの研究員ね。
 ――安心してやすみなさい」

 そう、しっかり少女が寝付くで頭を撫で続け。
 少女の寝息が落ち着くと、少女の状態を確認する。

「――この妙な火傷以外は、問題なさそう、だけど」

 恐らく急激な疲労は、異能による脳の酷使、もしくは体力の消耗だろう。
 だとすれば、この少女の異能は――申告されている物とは、根本的に違った物になる。
 そう考えながら、自分と少女に着いた血を拭って、服に着いたものも染みを取るように痕跡を消す。

「――、研究員、か」

 少女の火傷を治療しつつ、少女の手帳を開いて、連絡先を確認する。
 落ち着いたら一度連絡を取っておくべきだろう。
 なるべく、少女本人には知られないように。

「あとは――」

 火傷の痕だが。

「――消したかったら、別の医者に頼む事ね」

 と。
 刻まれた火傷痕は、綺麗にくっきりと肌に残るのだった。
 

黒羽 瑠音 >   
「むにゃ… 」

果たして、一度眠れば早い物、手当てをされながらもくすぐったそうにむずがって。

「先生… そこはもう食べましたよぉ… お酒ものみすぎですって… 」

何て呑気に寝言も言っていたり、結局、先生が連絡し終わっても夕方くらいまでぐっすり寝ていただろうか。
そうして無事に帰ったのだけど、帰ってから気づいた火傷跡については… 。

色んな意味でどうするのか暫く悩んだらしい。

ご案内:「職員寮 第四アパート」から黒羽 瑠音さんが去りました。
ご案内:「職員寮 第四アパート」から焔城鳴火さんが去りました。