2024/10/08 のログ
ご案内:「浜辺」に武知一実さんが現れました。
武知一実 >  
「……んっ、ふうぅ~……く、ふはぁ~……」

特大の欠伸が出た。
場所は海水浴場のある浜からもほど近い防波堤の上。
制服とパーカー(いつもの格好)に加えて、手には釣り竿、足元にはクーラーボックス。

「釣れそうにねえな……」

魚屋でバイトをした際にごちそうになったカワハギがあまりにも美味かったので、自分で釣って捌いてみたいと思い釣具を買ってみたものの。
素人が一朝一夕で釣れるはずもなく、今はただぼーっと穏やかな秋の空と海を眺めている状態だ。
……まあ、これもこれで悪くはねえ、か。

ご案内:「浜辺」に御津羽 つるぎさんが現れました。
御津羽 つるぎ >  
「糸をたらすことは、唯それそのものが己と向き合うための準備なのです」

ぼんやりぼやく少年に、柔い声がそっと言葉を継ぐ。
羽織の裾をひらりと揺らして、しょっぱい秋風の涼しさのなかを歩む糸目の女がひとり。
防波堤になにやらあらわれては、その隣にしゃなりと立った。

「いいお天気ですね。陽の光も、ずいぶんおちついてきて」

んんーっ、と伸びをして、こちらも空と海、その狭間に正対する。

武知一実 >  
穏やかな時間がただ流れていくだけってのも嫌いじゃない。
バイト中も、授業中も、覚えなきゃならない事はたくさんあって、ほぼ常に頭を回してると言っても過言じゃない。
だから、たまにはこうして何も考えず、ぼーっとしてるのも悪くはねえな、とそう思っていたんだが……

「……ッ!?」

突然意識の外から声が飛んできて、驚きのあまり釣り竿を投げそうになった。
いかんいかん、ぼーっとし過ぎたらしい。全く人の気配に気付かなかった。

「あ、あぁ……そうだな。
 ついこないだまで外に出るのも嫌ンなるくらいだったってのに、最近は散歩でもしたくなる日が増えたわ」

鼓動を落ち着かせるため、小さく深呼吸をしながら一度糸を繰り寄せて餌が盗られていないかだけ確認する。
そうしたらまた、沖の方へ、ポーイと投げて。後は再びアタリがあるまで待つだけ。

御津羽 つるぎ >  
「おさんぽ。いいですね。(わたくし)もいましが楽しんでるところで。
 ちいさい秋が、そこかしこに見つかるかもしれませんねえ……まつたけとか……。
 お空も風もとても大きい秋ですけれど……秋のお魚も、おおきいのでしょうか」

とぷん――水面に沈む糸の先。
ぷかりと浮かべる波も静かで、のんびりした時間が再び流れる。

「あのっ」

顔を寄せて、耳元近くに声をかけた。
上背がある女だからかだいたい顔の高さは同じくらい。

「いきなりあらわれて、それっぽいことを言う……
 剣客小説の、つわ者のような立ち振る舞い。
 ……それっぽかったですかね?」

そのつもりはなかろうとも、釣りの邪魔をしてくる。語調は真面目だ。

武知一実 >  
「今日狙ってんのは、そんな大きい魚じゃねえからなあ……
 鱚とかカワハギとか、せいぜいが手の平くらいの大きさだ」


まあ、素人が思い立ったが吉日で始めた釣りなので、道具も仕掛けも狙いに沿ったものなのかは分からない。
今日が坊主で終わったら、ちゃんと調べて改めて来ようとも思ってたところだ。
そんな答えを投げながら、なるほど釣りをしてると声を掛けられる事があるって本当なのか、と感心していた。

……のだが。

「……はッ!?」

今度は耳元で声がして、再び釣り竿を投げそうになる。
心臓に悪いことは止めて欲しい。漏電するから。
思わず振り向けば、間近に女性の顔があった。当惑。

「いや、剣客小説の?つわもの?
 ああ、そ、そうなんじゃねえか?あんま詳しくねえけどよ。
 どっちかっつーと、ホラーな気がしないでもねえんだが……」

いや、知らんがな。
正直に答えそうになるのをぐっと堪えて曖昧に肯いておく。
読まねえもん、普段、小説とか。剣客小説なんて尚更。
けどまあ、素人イメージで良いんならそれっぽかったと言えばそれっぽかったんじゃないかと思う。ホラーみが強かったけど。かなり。

御津羽 つるぎ >  
「ああ~……天ぷらもいいですし、煮付けにしてもいいですよねえ。
 お料理がてんでダメなので、お店でたべるばっかりになっちゃいますが……」

おなかのところをさすりさすり。
ちょっとおなかがすいてるらしい。毒になる話題だった。味を想像して、うふふ……と笑っている。

「ほらー」

がーん、と頭を殴られたような調子だ。
ぎくしゃくと顔をふたたび海のほうに向けた。
もご……とショックを言葉に出しそうになったのか、なにをか言おうとしたが。

「……釣りは、よくされるんですか……?」

つんつく、胸前で指を突き合わせながら話題を変えた。大人びたところを見せようとしていた。

武知一実 >  
「オレもこないだバイト先で食わせて貰ったのが美味くてさ。
 そんで自分で釣って好きな様に料理してみるかって思ったから来たんだよ」

自分で苦労して得たものを食う。
収穫なり狩猟なり、やっぱり自分の為に労力を使う事でより一層味わいが増すという……それが本当かどうか、試してみたいという思惑もある。
そんな事を考えつつ横目で女性を見れば、なんかわらってた。こわい。

「……いや、こんな真昼間に幽霊なんて出ねえからあくまで、っぽいっつーだけの話な?
 それに、アンタ剣士にも見えねえしさ」

どうやら返答にショックを受けたらしい。
場所が場所だけに身を投げられたりしても困るので、一応フォローもして……フォローになってるか、これ。

「……いや、ええと、趣味でやるのは今日が初めてだな……」

世間話っつーか見合いの席みたいになってねえか。
まあ何か無視する気にはなれないので律儀に答えるオレもオレだが。
ちなみにバイトで船釣りは何度か経験がある。8割酔ってた。

御津羽 つるぎ >  
「すこし味が濃いめの煮付けとですね、甘いお米といっしょに食べるの、いいですよねえ。
 ついついお箸がすすんじゃいます……お料理もできるんですねえ。
 (わたくし)だったら、お店を探して……そうだ!
 釣れたらぜひ、ご相伴にあずかってもいいでしょうか?」

いかにもいいこと思いついた風に手を打ってナチュラルにタカろうとしてくる。
ボウズ状態なのを知らない、クーラーボックスはシュレディンガーの箱だった。
そんななか、剣士に見えない、といわれると、
見えないハンマーで殴られたように顔ががくんっと傾ぐ。

「ぅぐ……確かにそうなのですが……が……!んぐ……!
 ……あれ、釣り人さんではないんですね。
 釣り竿をかつぐほうに発想がいくのは、てっきり釣りがご趣味なものかと……」

糸目のせいで表情は眉と口元ばかりだ。が、不思議そう~に見ている。
剣士に見えぬ女はしかし、むむむ……と少年が何に見えるのかを見定め……
見定め……

「ご趣味は……?」

直接聞いた。 

武知一実 >  
「釣れたらな、釣れたら。あんま期待しねえでくれよ。
 海の家の台所借りれる手はずになってっから、釣れたらそこで捌くつもりだ」

釣れなかったら? その時は焼きそばでも作って食って帰る。
割と最近まで暑い日が続いてたから、海の家の冷蔵庫はまだ食材が残ってるんだと。
しかし、初対面の相手からメシをタカられるとは思わなかったな。別に断る理由もねえから良いんだけどよ。
その前に釣れるかどうかが問題なんだけども。

「ああ、竿も箱も今日買ってその足で来たばかりだ。中古だけどな。
 色々バイトやってるから、釣り自体は初めてってわけじゃねえんだわ。あとは何つーかボーっとしたかったってのもあって」

さっきまで見込み通りだったんだけどなー、とか考えてたら。

「いや見合いか。
 ……じゃねえ、素で訊いてんだよな? 趣味、趣味……うーん……?」

さすがに喧嘩は趣味じゃねえし、かと言って他に何かと考えても出て来ない。
バイトの都合上、出来る事はいっぱいあるんだが、多趣味と無趣味って紙一重なんだな。

御津羽 つるぎ >  
「……わあ!いいんですか?嬉しいです!
 実は朝からなにもたべていなくて……楽しみです。
 てんぷら、おさしみ、煮付け……あれ……釣れたら……?」

雲行きが怪しいことに気づいたらしい。お空はいいお天気だけども。
豪奢な着物を纏うくせして、妙にせせこましくがめつそうな動きをしていた。
そこで裾を払い手を出すと、ぱん、ぱん、と手を叩いた。

「んんぬぬ……
 (かしこ)(かしこ)(もう)す~!
 五穀をはじめ諸々の食物衣物にいたるまで~!」

柏手(かしわで)からの祝詞。神道の祈祷、豊漁祈願。ちょっと胡散臭いくらい大仰。

「……お見合いって、実際にご趣味は~って聞くんですかね……?」

うーん、と体ごと首を傾いだ。

「そうです、ご趣味。私は剣客小説や、ふるーい時代劇を嗜んだりしてます。
 ぼーっとすること……ではなくて、でしょうか?
 してると楽しいこと。嬉しいこと満たされること……など……?
 ……あ。アルバイトなさってる。じゃあ夢があるとか?」

ぼーっとはさせてくれない。
穏やかな時間が流れるなか、なんともマイペースな女が募る。

武知一実 >  
「まあ、ボウズでも海の家にある程度の食材はあるみてえだし、何か作れっからよ。
 もしかしたら夏の間に提供しきれんかった魚が凍ってるかもしれねえし」

時々催事で使われる事もあるらしいし、何かしらあるだろ、多分。
そんな事を考えてたら、横で盛大な祈祷が始まった。
いやいやいや、んな大袈裟な。

「こればっかりは運頼みでしかねえからなー」

隣でそんな事されて集中出来ると思ってるのか。
まあ、オレ自身は別に釣れて釣れなくても、なスタンスのままなんだが。

「定番のイメージがあるけど、見合いなんてする歳でもねえから知らねえな」

ツッコミに疑問を持たれても困る。ああ困る。

「ちゃっかり自分の趣味言うとる……ああ、読む方が趣味なのか。てっきり物書きなのかと。
 趣味に割くほどの時間があったら何かしらバイトしたりしてるからな……
 あ、パーカーとスニーカーとボディバッグを買いに行くのは趣味に入るかもしれねえ。
 夢ってほどじゃねえけど、次の休みの時は旅行とか行ってみてえなって」

基本は今後の生活資金の貯蓄が目的だけどよ。
初対面の、素上の知れない相手にあんまり自分の事を喋ってもしゃあねえしな。
……にしても、えらい絡んで来るなこの人……。

御津羽 つるぎ >  
「た、食べさせてくださる……仏様かなにかで……?
 じつは生徒手帳をどこかに置いてきてしまって、
 ごはんも交通機関にも困り果てていたところで……
 再発行のために学舎を目指していたのですが。
 なにぶん表に出るのが春以来なもので、道を忘れてしまい……」

謎の剣士(?)、そしてやけに絡みに来るやつ、その実体は腹ペコでドジな迷子。
辛うじて見つけた年下の少年に縋る思いで声をかけてきたらしい。

「こういうときは、自分から明かすほうがいいかなあと……
 先に言ってしまえば秘密にしづらくなるかと思って……ああいえ。
 文才はないのです。それでものづくりは……部活(おしごと)でしてますね」

んー、と考えながら語る。ものを書くではなく作るひと。
趣味ではなく、仕事。技能職であると。

「ふんふんふむふむ。お洋服のお買い物……若者……!という感じ。
 ……次のお休みって、寒い頃ですよね。どちらに行かれたいのです?
 あっ。……もしかして、誰かと行くあてが……?」

武知一実 >  
「生徒手帳を失くした? それは面倒だな
 場所に寄っちゃ悪用されかねねえし、心当たりがあるなら見つけといた方が良いんじゃねえか……?
 にしても、春以来に学校に行くって……何でそんな長い事引き籠ってたんだ?
 あ、別に言えねえ事情があるんなら言わなくて良いけどよ」

何か最近腹空かした奴とのエンカウントが多いな。 いや、良いんだけどさ。
まあ事情は分かったし、それなら釣りを中断して海の家まで連れてった方が……いや、昼に売店で買ったのが何か残ってねえかな……

「別に人に言えねえような趣味を持つ気は無ェんだが……
 へえ、物作りはしてんのか……何を、どこで作ってんだ?」

見た目からその仕事内容までは想像がつきにくい。
和装で物作り……うん、マジで予想が立てらんねえ。

「まあ、実際若者だしな?……趣味と言えんのはそれくらいか。
 どちらに……までは考えてなかったな。とりあえずこの島からは出てみようと思ってたけどよ。
 別に、無計画な一人旅さ。どうせ、帰る実家も待ってる家族もいねえから、気儘に過ごそうかと」

ついでに同級生連中は冬も帰省するんだと。まあ年末年始くらいは生家で過ごしたい気持ちは分かる。