2026/02/20 のログ
ご案内:「浜辺」に御雷 天華さんが現れました。
御雷 天華 >  
清らかな海を一望できる海岸の通りを一人の少女が歩いていた。
縦ニットのワンピースに黒のタイツ、手ぶらで買い物姿にも見えない。
かといって散歩というには、ここはあまりに似つかわしくない。

「……」

なにせ今は冬、海岸通りには潮風が吹き荒び、波の音が絶え間なく聞こえてくる。
とても少女の散歩道として適しているとは思えぬ時期。
それこそ夏であれば、そこはビーチとして最適ではあっただろうが。

ともあれそんな道を、少女は明らかに海を目指して歩いていた。

御雷 天華 >  
やがて少女は砂浜に辿り着き、波打ち際までやってくる。
海から吹く風は冷たく、潮の香りは鼻腔を容赦なく刺激する。
そんな環境にあって、少女はただ静かに海を見続けるのみ。

冬に波風は飛沫を上げて容赦なく宙へと舞い上がる。
当然それは、少女の足近くまで迫っていてもおかしくない。

なのに少女の身体は潮風を浴びても微動だにしない。
否、微塵たりとも濡れてすらいなかった。

御雷 天華 >  
よくよく目を凝らす者が居れば、それを視認できたかもしれない。
宙を舞う飛沫は少女の表面を滑るように、脇を流れ落ちていた。
それじゃまるで見えないヴェールが少女の全身を包んでいるかのように。

「……本当は、湖のほうが適してるのですけどね」

少女の歩みは海の波と、触れ合えてしまう境界にてやがて止まる。
しゃがみ込み、波間から何かを拾いあげるように手を伸ばす。

だがその手には何もなく、ただ潮風の飛沫が当たるだけ。

ご案内:「浜辺」にコトハさんが現れました。
コトハ > 足が向く。気が向かない。
足は進む。気は進まない。

少女は、気づけば浜辺に立っていた。
時期は冬。肌を刺すような潮風が吹き、それだけで気が滅入る。

「はぁ……ん?」

思わず溜息をついた少女の視線の先に、また別の少女の姿が映る。
波打ち際にしゃがむ、少女。
この時期には不似合いなその姿。

「は?」

ぞくり、と少女の背筋に奇妙な寒気が襲った。
それは、飛躍した想像に過ぎない。
それでも、何故かそれが脳裏に浮かぶ。

「おいおいおいおい、何やってんだテメェ!
 沈む気か?」

咥えた飴を落としてしまいそうな勢いで叫んだ。
足は、じりじりとだけ近づいていく。

御雷 天華 >  
その姿は傍から見れば不用意すぎる入水だ。
波打ち際で歩を止めたとはいえ、誤解を招くのもむべなるかな。

「うん?」

さりとて、当事者の少女がその声に首を傾げるのも仕方がない。
こんな冬の海辺に人が居るとは彼女は思っても居ない。

顔だけを振り向かせて、細めた視線の先。
そこにあるのは此方に向けて叫ぶ誰かの姿。

「どうかいたしましたか?」

少し声を張って、ゆっくりと立ち上がりながら少女はそう問い返す。

コトハ > そもそも入水疑惑の状況にいきなり声をかけるのは正しかったのか。
正答など少女にわかる由もない。思わず叫んだその声に対する反応はしかし。
至って普通。どころか、聞き様に依ってはのんびりとしたものだった。

「は?」

思わず、間の抜けた声が少女の口から漏れた。

「どうかいたしましたか、じゃねーよバカ!
 こんな寒空の水際でなにしてやがんだよ!死ぬ気か」

言葉荒く、問いかけに返す。

「……うげ」

そこまでいってから、自分の勘違いの可能性に気づいて変な声をあげる。
なにしろ、相手はしっかり立ち上がってこっちを見ている。
思い違いだとしたら恥ずかしいことこの上ない。

御雷 天華 >  
ふむりと、不思議そうな表情を一瞬浮かべて。
程なくしてあぁ、と軽く手を叩く。

どうやら自らが客観的にどう見えていたかに合点がいったらしい。

「どうやら勘違いさせてしまったみたいですね。
 ですがご安心を、ちょっと波と戯れていただけですから」

苦笑しながら、少女は謝罪するようにそう答える。
歩も彼女の方へと向けて、ゆっくりと近づいていく。

「しかし、こんな場所に何か御用時でも?
 私が言えた事ではないかもしれませんけれど」

コトハ > 「波と戯れるってなんだよ!
 バカじゃねーの。こんな寒空ですることじゃねえだろ。」

照れ隠しか、ほんの少し視線を外しながら悪態をつく。
その足は完全に止まり、水際には寄ろうとしない。
少女が近づいてくるのを待つ。

「用……なんて、ねーよ。
 あるわけねーだろ、こんな寒いところに。」

それではなぜ居るのか。
少女自身も、やや疑問に思っている。

「なんとなくだよ。なんか足が向いたんだよ。
 悪いかよ、クソ」

いいしれない謎の苛立ちにガリ、と口中の飴を噛む。
眼の前の少女が悪いわけではないのは、わかっている。
ただ、なんとはなしに苛立っている。

「テメェこそ……って、そうだ。波と戯れてたんだったな。
 はぁ……なんだそれ。なんか楽しいのかよ、それ」

毒気を抜かれたようにため息を付き、しかし荒い口調のままボヤいた。

「私は……無理だな。」

御雷 天華 >  
なるほど、口は悪いが性根は恐らく良い子らしい。
言われてみれば、確かにそれはその通り。

尤も、自覚がある上で見られないだろうし大丈夫だろう…と。
そうした動機で行った事でもあるので苦笑するしかないのだが。

「いえ、そう言う時もありますよね。
 なんとなしに風にあたりたくなるときとか」

彼女の正面まで歩み寄れば、少女はぴたりと脚を止めて。

「私は少々、海…というよりは水に所縁がありまして。
 精神修行や慰安と言いますか……まぁ、退屈はしませんよ」

そう言いながらにクスリと笑いかける。

「と、ともあれ初めまして。
 御雷天華と申します」