2026/03/01 のログ
ご案内:「防波堤」に武知 一実さんが現れました。
■武知 一実 >
天気も良く、気温も高く、風も穏やかな休日は釣りに限る。
そう思い立ち、朝から隠れた釣りスポットとして有名な常世港の防波堤にやって来た。
普段使ってる海水浴場近くの堤防に行かなかったのは、新しい釣り場を開拓したかったから。
「当たり前だけど、こっちの方が青垣山が近くに見えるな……」
釣り糸を垂らし、持参したクーラーボックスに腰掛けてぼんやりと海を眺める。
一応常世港の内ではあるが、未開拓地区に大分近いこの辺りは船もあまり入って来ない。
波は穏やかで、日差しは暖かく。ボーっとするにはうってつけだ。
「春先はこっちの方を重点的に使っても良いかもな……」
駅も近いから帰りも楽だし。
周りを見れば、オレの他にもちらほら釣り人の姿があった。
遊泳しに来る奴は流石に居ない。まあ夏本番になっても居ないだろうけれど。
■武知 一実 >
「強くなりてえ、か……」
ボーッと海面を眺めながら、呟く。
それはつい先日聞いたばかりで、オレにとってはどこか新鮮さを感じる言葉だった。
強くなりたい。思い返してみれば、これまでの人生でそんな事を考えた事は無かったように思う。
強く在りたい、と思ったことは数えきれないほどある。
けど、強くなりたいと思ったことは――やっぱり、無い。
―――多分、そんな事を考えていたら生き延びられなかったからだろう。
なりたいっつー願望が出てくるって事は、自分が強くないと自覚した事があるって事だ。
切っ掛けは色々あれど、大抵は何かに負けたりしたとき、そう思うんじゃねえだろうか。
「……勝てなきゃ普通、死ぬもんな」
少なくとも、オレの育った環境はそうだった。
相手はまあ、獣だったり、病気だったり、はたまた人間だったり。
そのいずれも、負ければ――死。
強く在らないと生きていけないから、強くなりたいなんて考える暇も、無かったな。
そんな事をボーっと考えながら、水中に浮いたウキを眺める。
今こうして海っぺりで釣りをしているなんて未来も、当時は考えもしなかったことだ。
ご案内:「防波堤」にコトハさんが現れました。
■コトハ > 苛立つ
先だって、すっかり忘れていた携帯端末を引っ張り出してからというもの。
友人たちからの連絡などはない。別に、そんなしょっちゅう連絡をしていたわけでもないと思うが、妙に気になる。
「……」
最近の連絡は、この間出会った風紀委員のアドレスからのみ。
「わざわざ数時間後って、どんだけ忙しいんだか」
苦笑しながらも、律儀に時間をかけても連絡を返してきた相手を思い返す。
とはいえ、忙しいのだろうと思えば軽々に連絡するのもどうか、と少女も考える。
そもそも、知り合ったばかりでそれでは気持ち悪いだろう。
「はぁ……」
思わずため息を付く。
そんな有り様で歩いていれば……
「げ」
いつの間にか、海水浴場近くまで来ている。
……なんとなく、嫌気がして逃げるようにして進む内に、防波堤までくる。
「なーにやってんだかなぁ……ん」
歩いていく内に、ポツポツと人が見えるようになってきた。
海水浴場からは離れているはずだけれど、と見回すとなるほど、釣りをしているらしい、と気づく。
「んん?」
その中に、見知った顔が見える。あいつ、釣りなんかする顔じゃなかったけど以外だな、などと考えた。
せっかくだから声くらいかけるか、と近づいて
「よぉ、かずみ……」
そこまで言ったところで、つぶやきが聞こえた。
「あー……」
前も似たような状況だったことを思い出す。その時は、デリカシーなく声をかけた。
流石にちょっと気まずく感じて、どうしたものか、と頬をかく。
■武知 一実 >
「……ん?」
不意に、視線を感じた。
他の釣り人たちの誰かか、とも思ったがが、基本釣り人は他の釣り人なんざ気にしない。
誰かが掛かった時に、ちょっと見るくらいで今のところオレにはアタリは来ていない。
ということは、釣り人以外に誰か来たってことか。
顔を上げて辺りを見回してみれば、場違いに立ち竦んでる人影がひとつ。
「―――琴葉じゃねェか」
何やってんだこんなとこで、と軽く手を振ってみる。
こんなとこまで散歩に来るような感じにゃ見えねえし、釣り――って訳でも無さそうだ。
マジで何しに来たんだろうな。
■コトハ > 「あー……よぉ」
少女はどう言葉をかけたものかと考えて、ひとまずは相手に合わせて手を振ってみた。
気まずさのために、少し弱い言葉だろうか。
「いや、まあ……色々考えてたら、この辺まで来ただけなんだけどな。
つか、かずみんは……いや、釣りやってんだな。釣れてんの?」
見た感じ釣れてなさそうだけど、と思いながらもつい聞いてしまう。
どうにも言葉が余計だ。
「釣りって顔でもねーけど、趣味なの?食費節約?」
重ねて出る言葉も、どこか余計なお世話である
■武知 一実 >
「おう、そこそこ釣れてんぞ」
腰掛けているクーラーボックスを示す。
中にはこれまでに釣ったアジとサバが何匹か。
釣った直後に電流で〆てるから鮮度も落ちにくいけど、帰ったらすぐ捌かねえとなあ。
「顔は関係ねーだろ。……食費には困っちゃいねえよ、これでもあれこれバイトしてんだ。
釣りは――あー、趣味っつーか、考え事したり、逆に何も考えたくねえときとかに丁度良いんだよ」
全く正反対の理由が両立出来てんのが面白ェな、と言ってて思う。
今回はどっちかと言えば海を眺めてボーッとしたかったてのがデカい。
ま、そういう時に限ってよく釣れんだよな。
■コトハ > 「そりゃ……うん、よかった」
クーラーボックスを見る。サイズ的にはそこそこ入りそうである。
そこそこ釣れているというなら、それなりには入っているのだろう、と想像できる。
「まあ、顔で釣れりゃ世話ねーわな。」
海辺には寄らず、少し離れた位置に座る。
「はー……瞑想、みてーな感じなのかね。よくわかんねーけど。
ってことは、なんか考えてんの?」
言ってから、あ、と思う。
先程の呟きからの想像であるが、また口にしてしまった。
「……まあ、色々あるよな。」
■武知 一実 >
「釣れねーときは全然釣れねーけどな。
ま、金には困ってねえから釣れても釣れなくてもどっちでも良いんだが」
顔に拘る必要はねえだろ、顔に。
まあ魚連中は釣り人の顔見て餌に食いついたりしねえだろうからな。
防波堤の端から少し離れて座る琴葉を横目で見てから、オレは海面に視線を戻した。
「瞑想……似たようなもんだけど、どうだかな。
何かっつーか、まあ、色々と。
最近、年下の奴らと話す機会があって、自分の事とかも含めてな考えてた」
色んな奴が来る学園だという事は分かっていたつもりだったけど、ここ数日はより一層それを感じるようになった。
オレが入学した歳よりも下の奴とかでも、色々抱えて生きてんだなあと。
「……つーか、また立ち聞きしたのか?」
何だか据わりが悪そうな雰囲気は、それか。
■コトハ > 「よく知らねーけど、いつでも馬鹿釣れってもんじゃねーんだろ?
いや、めっちゃうまいやつとかはそうなのかもしんねーけど。
まあ、釣れても釣れなくてもいいってのは気楽だな」
毎回そんな釣れてりゃ世話ないよな、と少女は思う。
最も、よく知らないから実際のところはわからない。
「ふーん。そりゃ、前言ってたような話の感じ?
真っ当な学生生活が出来てる、みたいな」
一応、この話なら前にも聞いたから振ってもいいよな?と思いながら少女は口にする。
口にしてしまっている、という方が正解かもしれない。
「……またって、なんだよ。またって。立ち聞きってのもよぉ。
前だって今回だって、たまたま聞こえてきただけだっての。」
そう言いながら、少し目線を逸らす。
逸らしながら、ため息を付く
「はぁ……なんつーか、やっぱ色んなやつが色んなモン抱えてるんだな。」
それなら、自分の苛立ちなど可愛いものなのだろう、と逆に苛立ってくる。
■武知 一実 >
「そりゃ釣れるときもありゃ釣れねー時もあるさ。
潮の流れとか、水温とか、狙ったもんが釣れない方が多いくれーだ」
だから多分、釣れなきゃ飢えるって奴ほど釣りはしない方が良いと思う。
釣れるのも釣れないのもどっちでも、って気構えで居んのが一番だ。
まあ、オレも釣りをするようになったのは常世島に来てから、つまりここ2年くらいなんだが。
「まあ、オレに関してはそんなだな。
他の奴に関しては、色んな奴が居るんだなって」
神様を身体に宿してたり、我武者羅に強くなろうと考えてたり。
まったく、オレたちゃ子供なんだからもう少しガキらしく学園生活楽しみゃ良いのにな。
……まあ、そういう意味じゃ琴葉も楽しめて無さそうな気配を感じるが、こっちから踏み込む事でもねーか。
「実際聞いたんだろ?
まあ、聞かれて困る様なこと、幾らボーっとしてても口にゃしねえから構いやしねえんだけどな」
にしてもまあ、つくづくよく拾う耳だよな。
公園の時は近くに居たからってのもあるんだろーが、今回はそんな近くはなかったろーに。
「そりゃあな、誰しも何かしら抱えて生きてンのが普通なんだろ。
他人が大小決めるもんでもねーし、他人と自分を比べんのもちげーとは思うが」
人それぞれ、感じ方が違うんだから抱えるモンの重さなんて違って当然だ。
オレの島に来る前の話を他の誰かが重く受け止めたりしても、オレはあっけらかんとしてられる自信はあるし。
■コトハ > 「思ったより大変そうだな。釣る方はマジにならねー方がよさそうだ」
別にやりたい、とも思わない。けれど、もしするならムキにならないほうがよさそうだ、と少女は思った。
ひょっとしたら、考え事にはいいかもしれないし。
「都市ってほどに人が居んだから、当然っちゃ当然なんだけどな。
色んなやつが居るんだな」
水使いのやつだったり、風紀のやつだったり、かずみんだったり……
悩みも、まあ色々に持ってるんだろうな、と少女も思う。
「……まあ、そりゃ……聞いたけどさ。
てか、構わねえならそういう聞き方すんなよ」
流石にバツが悪い。とはいえ、聞きたくて聞いたわけではない。
ついつい、反抗的な物言いをするが言葉は弱い。
「まあ、そうなんだろーけど、な……つか、誰かと全く同じでもそれはそれでキモいし」
ガリガリと、口中で飴をかじる。ガリガリと。
苛立ちがつのる。他人と全く同じ人生、など逆に怖い。
それはわかる。わかる、けれど。
「比べても、しょうがねー、よな」
ガリ、と飴が割れる。
「……連絡が、つかないんです。友だちと。
学校にも、いけないのに」
ついこぼれ出た言葉に、口を抑えて飴を突っ込む。
「……なんでもない。で、かずみん、なにさ。
後輩とかと交流してんの?やっぱ拳の語り合いとか?
そんで悩みとか聞き出してんの?カウンセラーでもやってんの?」
それから矢継ぎ早に言葉を継ぐ
■武知 一実 >
「ああ、気分転換とか息抜き程度にやんのが丁度良いんだ」
時間潰しにも持ってこいだ。ぼんやり海眺めてるだけで時間が溶ける溶ける。
まあただ、飽き性には辛いかもしれねえな。じっとしてるのが耐えらんない奴にも無理か。
「ま、そんだけ色んな奴が居れば自分の事が大したこと無いんじゃねえかって考えちまうのも分かるけどな。
結局、自分は自分、他人は他人だ。良いところ真似して、悪いところはスルーして、悩みの大小なんて比較しねえ。
そんな付き合い方が丁度良いんじゃねえか」
ほどほどの距離感、っつーのか。
言っといてなんだが、オレがそれを出来てるかっつーとちょい怪しい。
何せこの島に来るまで、真っ当な人付き合いなんざした試しがねえからな。
「ハッ。顔合わせるたびツラがどーのこーの言う意趣返しって奴だ」
恨むんならてめーの口の悪さを恨めってんだ。
と、鼻で笑いつつ釣り糸の先に目を向けてる間に、琴葉の様子が変わる。
これまでにも何度かあった、口調が変わるアレだ。
「あん? ダチと連絡がつかねえ?
何でもなくねえだろ、それに、学校に行けねえってのはどういうこった」
行かないんじゃなくて、行けないのか?
ただ行かねえだけならテメーの都合だ、口出しする様なことじゃねえ。
だが、原因が他所にあるんなら話は違ってくんだろ。
「話逸らすんじゃねーよ。
交流ってか、行きずりで案内したのと、向こうから話し掛けて来たので、オレぁ別に何もしてねえ」
そもそも無駄にビビられるからあんまり後輩には声掛けねえし。
■コトハ > 「このやろ……」
憎まれ口をきくが、しかし力が弱い。
口のきき方については、文句は言えない。言えないが、直すことも出来ない。
「……………」
話を逸らすな、と言われて黙り込む。まさか、言ってしまうとは思わなかった。
どうする、どうしよう。少女の中は混乱の渦となっていた。
「……別に、すげー話でもねーよ。かずみんの過去みてーなもんじゃねーし。
なんか、ガッコには足が向かねーだけだし。
ダチは……久しぶりに携帯端末見たけど、なんか連絡つかねーってだけだし。
それに、最近知り合ったやつとは連絡ついてっからそんな大したことねーし。」
少女は早口でまくしたてた。
理解できなくても聞き取れなくてもいい、というくらいに。
「はは、そりゃかずみんから行ったら怖がられるかもしれねーしな」
どうにか、憎まれ口を絞り出す。
■武知 一実 >
さて少しばかり留飲も下ったところで、改めて琴葉に向き直る。
話を逸らすなとは言ったが黙れとは言ってない、が。
それだけコイツにとって予期せず口から出ちまったんだろう。
聞き流してやれば良かった、と一瞬思うが、事の全容が分からんことにはどうとも言えねえし。
「別にオレの事は今関係ねえだろーが。
……連絡つかねえってのが、単に連絡すっぽかしてるだけなのか、そいつに何かあったのかも分からねえんだろ?
だったら学校行って確かめるしかねえじゃねーか。
それとも、足が向かねえ以外に学校に行かねえ理由でもあんのか?」
捲し立てられるが、この程度なら喧嘩の時の罵り合いで慣れてる。
まあ、オレにも最近連絡の取れねえ知り合いは居るけども、それはこれとは別問題な気もする。
近頃キナ臭い話も聞くし、相手に何かあったかもしれねえなら、そりゃ確かめに行くしかねえだろ。
「だろ。変に委縮させても困っちまうからな……ま、最近会った奴らはそーでもなかったけどよ」
ふん、と鼻を鳴らして釣竿を置き腕を組む。
ンな話は、今はどーでもいい、とばかりに。
■コトハ > 「別に、大したことじゃねーって。そんな毎日連絡してるわけでもねーし。
そもそも、返事だるくて返さねーってことだってあるし。
だから、大したことねーんだって。」
事実、そういうこともあるだろう。人間は気まぐれだ。
しかしそれでも、言い聞かせるかのような言葉だった。
「別に。足が向かねえんだよ。足が、向かねえだけ、なんだよ。
だから、それだけだって言ってんだろ。大したことじゃねーんだって」
それ以上の説明のしようがない。事実はそれだけだ。
だから、少女はそのとおりに言葉にした。
「やっぱり、怖がられてんじゃん。
やっぱ化粧とかしてみねえ?」
話を逸らすかのように、また言い立てる。