2024/08/12 のログ
ご案内:「常世神社」に伊都波 凛霞さんが現れました。
ご案内:「常世神社」に出雲寺 洟弦さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
縁日の催しが行われている常世神社境内にて。

「まだかなぁ……」

大きな松の木を背に、人を待つ。
気持ちが早って、少し早く来すぎたかもしれない。

白と浅葱色の涼しげな浴衣に、いつもはリボンで纏めているポニーテールの根本をお団子に花弁の簪で留めたスタイル。
浴衣自体は持っていて、着付けも母様が快くしてくれた。
何気にこうやって袖を通したのは初めてかも……。

「………」

幼馴染で許婚の彼と再会して、こうやってしっかりしたデートも、初めてじゃなかろうか!?

……そう考えると、ことさら緊張してきた。

落ち着け、深呼吸。吸ってはいて吸ってはいて。
……テンパった時に深呼吸するクセは妹と一緒なのかもしれない。

出雲寺 洟弦 > ――落ち着かない足取り、足音。遠く祭囃子に耳を傾けながら気を落ち着かせるようなゆっくりと急きが混じったちぐはぐな歩調。

「……約束した場所、って、この辺りだよな。
ちょっ……と、速く、来過ぎたか……?いや、まぁいいよな。来た時には全然さっき、みたいな風に言えばいいだろう、し」

――果たして着飾るには少々背も高いが、
何せ寺産まれ寺育ち、極東是正にという文化の家。
……自分で選んだが、選択肢の相談を仰いだのは実家の人だったりするけども。

ともあれ、そうしてやってきて、幼馴染の姿を探す甚平男子。
そして、その姿を間もなく目に映す事になり――。

「あッ……もう来て、た……の……か――」

スローダウンする言葉、見つけてそちらに歩いていく足が、
その全体像を映すと共に処理堕ちを起こしたように。
止まって。

   いって。

      しまった。




                          とんでもない浴衣美人が、其処にいたからだ。

伊都波 凛霞 >  
「?」

少し離れた位置で立ち止まっている彼の姿を見つける。
なんだかぼうっとこっちを見て立ち竦んでいる……?

「あ、来た来た♪ どうしたの?立ち止まって」

ぱっと花が咲くような笑顔。
早く来すぎてしまったのは自分だけど、待ち人が来るのはやはり嬉しい。

カラコロと鮮やかな色の下駄を鳴らし、少し早足で彼の下へ。

「っ、わ……っと!」

慣れない足元で少し足を早めてしまった故に、蹴躓く。
既に目の前まできていた彼にしがみつく形で、転ぶのを回避…した、のは、いいけれど──

出雲寺 洟弦 > 「――……あ、い、いや、その、ちがくて、り、凛」

からころ。ああ、まさか下駄まで。
かなり早く来た気持ちのところ、まさか先まで越されて、
ずっと待ってたんだとすればそれなりに足も疲れただろうに。
どれだけ自分とこの祭りを歩くのを楽しみにしてたりしてくれたならそれはとても嬉しい事ではあったけれど。

なんて言ってる場合もなく、突然目の前で躓いた凛霞に、
躰は考えるより先に、

「ッ!!!」

ぐっと前に身体を押し出す足の踏み込み。こちらも甚平に見合わせた雪駄。本来踏み込むには足らない足許と履物だが、
そこはこの男子、決して甘い鍛え方などしていない。
屈強な体幹と足への力の伝達により、しがみつかれるような形でも一切のふらつきもなくがっちりロック。

ガッチリ、ロック。抱き締める恰好になるわけだけども。

「――ぁ」

……甚平は夏仕様。麻の涼しい服はしかし、彼の細くもバッキバキな躰と凛霞の着物の懐までもをそれはもうばっちりと伝えてしまう。

「…………」

茹でダコのようになっていくまで、掛かった時間およそ四秒。
なんて速さで赤らむのか。

伊都波 凛霞 >  
躓いた身体を、彼が受け止めてくれた。

──こんなに身体、大きかったっけ。
なんて、思わずそんなことを思ってしまう…。

「ご、ごめん。ありがとう、洟弦」

恥ずかしいところ見られちゃったな…と、思うと同時に、
あまりにもしっかりと彼に抱かれている自分に気づく。

…しかもなぜか、彼が動かない…!?

「い、洟弦…?」

思わず見上げると…びっくりするぐらい顔を真っ赤にしている彼がいた。
それで気づくのだ。
お互いの涼しげな格好は布も薄く。互いの距離が普段以上に密着する…。
撓んだ浴衣の胸元はちょっとした危険領域…なにせ、ゆったりした浴衣で下着をつけていない。

「ほ、ほらほら!周りの人も見てるよ!」

少し慌てたように、彼を正気に戻そうと声をかけて。

出雲寺 洟弦 > 受け止めた身体は、きっとあの頃知っている彼とは比べ物にならない位大きく、そして逞しい。
齢、十七。至るべく鍛え上げられていった彼の躰、不動泰山。

抱き締めている相手の柔らかさはより、それによって彼も感じ取る肌が機微に敏くもあるわけで。
一瞬で、浴衣を"正しく着付けている"ことを理解してしまったがゆえに。

抱き締めた凛霞の無事を確認するように見下ろした視線の先に、
それはそれは、もう、もう、本当に、本っ当に立派で、そして柔らか……。

「あ"ッッッ」

受け止めるにあたって背中に回してしまっていた両手が真上に逃げた。万歳ポーズで素早く触れる面積を減らしながら顔を真横に苦し、茹で上がった顔をその腕を交差させて隠しながら。

「ご、ごめんッ!!いや、見てない、何も見てないからッ!!」

落ち着き給えという一言で落ち着くべき所はばっちり誤った様子。
ともかく離れねばと少し身を引くと共に、

「あ、足、大丈夫か?……悪ぃ、早めに来たつもりだったけど、待たせて……」

伊都波 凛霞 >  
「なっ、何が!?」

突然謝られた!?
いや、むしろ転びそうになったところを受け止めてもらったんだけど…。
なんだろう、赤くなっちゃってたのは、…まぁ、こう…距離も近かったし…多分、自分も少し赤い……気がする。

「見てないって、なにそれ」

よくわからないことをのたまう彼にくすくすと笑みを向けて。

「私としては、むしろもっと見て欲しいんだけどなぁ……。
 せっかくほら、浴衣着付けてきたんだもん」

少し離れて、どう?と、くるんとその場で回って見せる。

「あ…うん足は平気。
 慣れない履物で走ろうとするものじゃないね」

そう言って、苦笑。
待ち人来たれリ、の喜びが先に走ってしまった結果だ。

出雲寺 洟弦 > 見てない、うん、確かに見てないけど、

「見ッッッ」

見て欲しい?!!いや、それはそれでどうなんだという顔も、
その後に視線をちらっと向けた先でくるっと回った凛霞の姿、格好。
……ああ、そっちの意味か。

動揺もそれほど長く続かずに済んだのは、こういう時先に相手が落ち着いてくれるから、というのもある。
中々、本来自分だってこんなに激しく動揺をしたりするような、精神的にやわな鍛え方もしてない。

そんな自分を此処まで揺るがしてしまうような、きっと今世界で一番浴衣の似合う女の子、女性が、見せるようにするんだから。

「……俺の知ってる人の中で、たぶん、世界一今浴衣が似合ってる」

率直な感想から、くしゃっと出来た苦笑い。

「……時間通りじゃなくて、焦って早って来て良かったと思うよ。
浴衣姿の凛霞と一緒にいれる時間、少しでも長い方がいいな、とか思っちまってるから」

なんて。

「……じゃあ行こうか。今度は大丈夫に"する"よ。
……手、繋げば、支えるから」

そう言って、いつもの制服姿よりは見える腕を、手を差し出す。
これから歩く道は人ごみもあるし、はぐれないようにするためにも、のつもりで。

伊都波 凛霞 >  
ああ、似合ってるよ。ぐらい言ってくれるかな。
そんな気持ちでどきどきしていると、飛んできたのは予想以上の言葉。

「え」

「えっとぉ…そ、それはちょっと、褒めすぎなのでは……」

世界一、とか口にするような子だったっけ…!?
子供の頃のイメージのほうがまだまだ強いから…。そ、そんなことも言えるようになったんだ…と驚愕する。
今度はこっちが顔真っ赤になる番か!

「い…洟弦。意外とそういうこと言えるんだね…」

ぱんぱん、と小さく自分の頬をはたく。
あっつ…顔、あっつ。

「…もぉ転ばないようにするけど!」

でもそれはそれとして、自然に差し出されてる手がなんだか嬉しい。
自分の手よりも随分大きな手になった、その手をとって。

「子供の頃思い出しちゃうね。
 出雲寺にみんなで集まって、シズクとか、カミヤくんとか──」

あの頃よりも随分、お互い大きくなったけど。
お互いのイメージはまだ、今の二人にはきっと追いついていない。
彼じゃないけど、一緒にいる時間は少しでも長いほうが、きっと…。

出雲寺 洟弦 > 「……え、そ、そうか?いや、その、本当にそう思っただけ……」

自覚、なし。恐らくこの男子はそこまで歯の浮くような言葉をのたまったつもりはないのだろうが。
一瞬真っ白になるような突発な出来事の後に率直な感想となるとどうやらこうなるようだ。

顔をはたいて顔を赤くする様子に、こっちももしかして相当なこと言ってしまったんじゃと熱がぶり返しそうになる……ともう無限ループだ、気張れ男子。気張った。

確りつないだ手は、ぎゅ、と強くも優しくも握り返し、
縁日の会場のほうに向けて顔と共に足を出す。


「……」


顔が引き攣った。
ぴたりと止まった足。

「…………霜月、こっち来てるの?来てたの?
……あと、カミヤは、えっと」

振り返った横顔が、ちょっと。

「……カミヤも、今、こっちに来てるんだけど……」

伊都波 凛霞 >  
「あれ、知らなかったの?洟弦と会う結構前かなぁ…シズクもこっちに来てるよ」

意外、と言うように。
ただ、もう一人の名前についてはこちらがそれを知らなかった。

「え、カミヤくんも?そうなんだ、どうなってるんだろう~会いたいなあ。
 洟弦がこんなに大きくなってるんだもんね…。
 会ってもわかんなかったらどうしよ」

子供の頃に共に過ごした面々。
再会するのは嬉しくもあり、どうなっているのか心配でもあり。

「私も、結構変わってた?」

なんとなく、改めてそう聞いてみたりして。
窮屈そうな制服姿じゃなく、ゆったりと余裕のある浴衣姿はまた少し、色々なものが違って見える。
そう、色々なものが。

出雲寺 洟弦 > 「……マジか。いや、ああーあぁ~~……そ、っかぁ」

……何とも言い難そうな顔と反応だ。
というのも、彼女と凛霞が物凄く仲良しなことは知っている。
その上、自分と凛霞がその昔、許嫁としての話が持ち上がった部分とかも含めて、なんていうか。

多少なり、あんまり実はよく思われていないんじゃないかという不安に、冷や汗。
――きらり。伝家の宝刀、あの大太刀『凍月』の煌きを思い出して、ひやりと。

「……カミヤは、その、アイツは全然……うん、全然変わってなかったよ。一目で判ると思う……」

さぁ能内にはもう一人、褐色赤眼の不良男子。
目付だけで二人は殺せそうなアイツの顔が過る。
家庭の事情につき、割と複雑な、しかし親しみのある友人なんだけれども。

歩く足の間にそんなおもむろに聞かれた事に、

「ん?え、あ」

ふいと顔を向けて数秒、
――真っ先にそこを目で追ってしまいそうになるの、本当どうかと思う。
また前を見てしまったが顔が少し赤さを取り戻してしまった。

「……かわ、ってた、か、なぁ……う、うん、凄く」

「……でも、その」


……"あの日"と数えるには、多すぎる。
多くの日常の中で、目に映した凛霞と、今の姿は。

「……変わってない部分もあって、安心した」

――安心した、という言葉は、どちらかというなら、
自分の中に響き落とすような。

伊都波 凛霞 >  
「…? どうか、した?」

友人の話で少し様子のおかしな彼の顔を覗き込む。
汗をかいている。まぁ…日が沈む時間でも結構暑いしね。

「そっか。変わってないならそれはそれで楽しみだなあ~」

こうやって繋がっていれば、慌てなくてもきっとそのうち会える。
子供の頃に仲良くしていた面々と、成長してから再会していくのは、なんというか…特別感。

問いかけに答えてくれようとする彼は、少し顔が赤い。
視線の先も…まぁ、わからないわけじゃない。
子供の頃とは違う。一番大きく変わった部分は…お互い成長したという部分だろうから。
それは男としても。女としても。

変わっていない部分もあって安心した、という言葉に

「私も!」

子供の頃と余り変わらない笑顔を見せて、そう応える。
変わらない部分がちゃんとあるからこそ、お互い安心できたのだ。
こうやってすぐに打ち解けて、一緒にいることが出来る──。

「──あ、りんご飴売ってるー!」

祭り囃子鳴り響く中、縁日露店なども増えてくる。
お祭りの雰囲気の中、なんだか子供に戻ったように無邪気な笑顔を浮かべてしまうのも無理はなく。