2024/09/29 のログ
ご案内:「常世神社」に武知一実さんが現れました。
武知一実 >  
「―――キリがねぇな、本当によ」

常世神社の境内
箒を片手にオレは悪態と共に溜息を吐いた。
今日も今日とてバイトである。内容は――まあ見ての通り境内の掃き掃除だ。
ここ数日で急に気温が下がりだした所為か、落ち葉が急増したらしく臨時の募集が出ていた為飛びついて、今に至る。

「肉体的にはそんなでもねェが、精神的に来るな……掃いても掃いても落ちてくると」

既に特大ゴミ袋2つ分は掃いて集めたんだが、落ち葉は一向に減ってる気がしない。
むしろ掃いてる傍から増えてる気すらしてくる。そんな事はねえと思うんだが。
救いと言えば最近は真昼間でも少し汗ばむくらいで済んでることくらいだ。真夏だったら多分心が死んでた。

武知一実 >  
「……まァ、愚痴ってりゃ葉が落ちて来ねえかってと、そういうわけでもねえしな」

契約を結んでいる以上は、求められるだけの成果は最低でも出さねえとならない。
具体的にはゴミ袋5つ分。つまりまだ半分も完了していないわけで。
……神社勤めの奴って、毎日こんな事してんのか……?

「……ま、無心で腕動かしてりゃ良いんだから、考え事すんのには丁度良いか」

突風でも吹かなければ掃き集めた落ち葉が散る事もない。
黙々と掃き掃除をしながら、少し今後の段取りでも考えさせて貰おう。
とはいえ、ほぼほぼオレ自身の異能について今後どうしてくかってことだけだが。

―――異能、異能ねェ。

ご案内:「常世神社」にゼアさんが現れました。
ゼア >  
 すい、すい、と。
 神社の敷地の周囲に立ち並ぶ木々の間を飛んで、人形ほどの大きさの少女が境内へと向かう。

「とーう」

 くるくるくるくる、すたっ。
 そのまま跳ね上がるように空中で上に飛ぶと、縦三回転を決めてから、ぽんっと。
 人形から人間へと、トランスフォーム。


 暑さ寒さも彼岸まで。暦は秋口にと差し掛かり、夏の青々とした木々はその色を徐々にそれらしい色に変えていく。
 そして今日のゼアは、神社の落ち葉掃除のお手伝い。さて落ち葉の景色も風情があるといえばあるが、現実的に邪魔なものは邪魔なわけで。
 臨時のバイト募集に応募したはいいものの、諸事情で少し遅れた形になった。

 ――急いで神社に向かおう、となって、小さくなって空を飛ぶのはいい。
 ただ、そこで無意味にアクロバットを行う理由は……面白そうだったから、だろうか。この少女に合理性を求めてはいけない。

 さて。
 神社に辿り着いたゼアは、まず目についた作業中と思しき少年にと近づいていく。

「おっまたせぇ。ごめんねぇ、ちょっと遅れてしまいましたー」

 その割には平常通りの言葉の色をしていた。

武知一実 >  
一口に異能といっても様々な種類があり、発現過程もそれこそ多種多様らしい。
中には自他共に有害な効果を齎すものもあって、異能疾患としても扱われるとか何とか……ていうのが、転入前に説明されたもの。
学園に来てからもおおよそその認識が覆る様な事は無く、概ね人によって違う毒にも薬にもなる厄介なもん、くらいに思ってたが……

「まあ、異能なんて使わんでも埒外な人とか居るしな……」

不覚考察するだけ無駄じゃねえか、というのが直近の異能に対するオレの認識である。

「―――にしても、今日のバイトってオレだけだったか?」

ふと、延々と一人で掃き掃除を続けていたが我に返る。
事前の説明だと他にも参加者が居るって話だったような――

「……ああ、来たか。随分と時間掛かったじゃねえか」

バイトとは言え開始時間が明確に決まってるわけじゃないし、参加申請だけしてバックレる奴だってゴロゴロ居るのが実情らしい。
だから、遅れたとはいえこうして来て、謝罪するだけマシ……だと思っとこう。

「見ての通り落ち葉掃除だから、汚れんのが嫌ならオレみてえに服借りれるらしいぞ」

詳しい事は社務所で聞いてくれ、と指差してから集めた落ち葉をゴミ袋へと突っ込んでいく。

ゼア >  
「商店街でおばあちゃんが困ってたから、一緒に荷物を持ってあげたんだぁ」

 ある意味、注意散漫と言えなくもないが。
 困っている人を見れば、ついそちらに足が伸びてしまうのが癖である。
 本質的に、誰かに手を貸すのが好きなのだった。

「んーん、だいじょぶです。汚れるのは慣れっこだし」

 もとより自然の中で生きていた妖精である。今更土汚れの一つや二つ、気にすることもなかった。
 ゼアの場合、そもそも頓着しない性格というのもあるが。

「この服、汚れがすぐ落ちるんだよー。なんかそういう魔術で加工しているらしいのです。どやぁ」

 多少汚れたところで、はたけば落ちる。この服を見繕ってくれた服屋の手によるものだった。
 ゼアがあまりに服の汚れを気にしなさすぎるから。

 指で差された社務所に向かって、簡単な説明を受け、掃除用具を受け取る。
 五分もしないうちに戻ってくることだろう。

「やるぞーっ」

 竹箒を手にして、気合は十分。

武知一実 >  
「そうかよ。まあ、神社の方に連絡入れて遅れて来てんなら良いんだが」

奇特な奴だと思いつつも、オレが同じ立場に置かれればきっと同じことをしていた気もする。
それに最悪一人でもどうにかなる仕事量ではあったので、オレからとやかく言うことは無い。

「へぇ、そいつは便利だな。
 わざわざ魔術で加工して貰うって言う発想が無かったわ、オレも今度新しい服買う時は試してみるか」

こういった清掃のバイトもそうだが、喧嘩すると大抵汚れる。
都度洗うのも手間だし、喧嘩の時の汚れは兎角落としにくい。
お気にのパーカーとかが汚れずにすむ方法があるなら是非とも試してみたいもんだ。

さて、境内の掃除アルバイターが一人から二人に増えた。
……二人に増えたところで境内から落ち葉を消し去るのはまあ無理だろうとは思うものの、
最低限のノルマ達成は独りでやるよりはよっぽど速く済みそうだ。
幸い、遅れて来た相方はやる気もあるみたいだし。

「じゃあよろしく頼むわ、途中で居なくなったりすんなよ?」

ゼア >  
「いえっさー、ぼす」

 少年に敬礼。
 それから竹箒を掲げて、たったかたったか落ち葉の山に駆けだしていった。

 見た目よりもずっと子供っぽい仕草が目立つが。
 果たしてその動きはといえば、これがなかなか。
 何せ、こういった雑用的な仕事にはそれなりに慣れきっている少女である。さっささっさと地面を払えば、見る見るうちに枯葉の団子ができていって。

「そいやあっ」

 一つ、二つ、三つ。
 枯葉団子を積み上げて、山はどんどん成長していく。
 そうしてゴミ袋の半分ほどの枯葉を集めるまでに、そう時間もかからなかった。

 とはいえ、まだまだ量としては相当残ってはいるのだが。
 それにやる気が削がれる様子もなく、鼻歌交じりでさっささっさ。

武知一実 >  
「へぇ、結構手慣れた動きすんじゃねえか」

意気揚々と掃除を始めた後ろ姿を眺めながらオレも落ち葉を掃き集めていく。
軽いノリとは裏腹に、手際は良くそのまま進めていけば遅れなんて充分に取り返せるほどだった。

「こういうバイト、結構すんのか?」

よろしく頼むわ、と言ったが任せきりの丸投げをする気は更々無く。
オレもオレの方で自分のノルマをこなさなきゃならないし、後から来た奴に越されるのも示しがつかないので問い掛けながらも手は動かす。
結構居るみてェだしな、バイト幾つも掛け持ちする戦士。

ゼア >  
 掃除に夢中になっていたせいか、一瞬だけ応答が遅れた。

「んー。商店街とか学生通りとかで、よくお手伝いしてるよー」

 金銭的な報酬は二の次で、主な目的は人との交流。
 接客だとか呼び込みだとか荷運びだとか。そんなふうな仕事を主に受けている。
 まあ、先立つものは何かと必要になるし、助かってもいるのだが。今のところ使い道に乏しく、蓄えとして眠りがちになっていた。

「お兄さんも、お仕事好き? ゼアは好きだよ。頑張ったらみんな褒めてくれるしー、お疲れさまって言ってくれるしー」

 今日もそうなるといいねえ、なんて暢気に話しながら、変わらず地面をさっささっさ。
 ――ゼアは本質的に、誰かの喜ぶ姿を見るのが好きなのだった。

武知一実 >  
「そうかよ、結構活動範囲被ってんだな……」

すぐに返答が無かった辺り、邪魔しちまったかと思ったが、どうやら作業に夢中になっていただけのようだ。
商店街や学生通りでと言うと、案外ニアミスしてるのかもしれねえな……。

「あ?いや、オレは別に仕事が好きってわけじゃねえが……
 まあ、それなりにやり甲斐もあるしな、好きではねえが嫌いって訳でもない、ってとこだな」

お兄さん、と言われた事に引っ掛かりを覚えるも、まあ年上に見られるのも早く慣れろと自分に言い聞かせる。
それはそれとして、どうやら向こうは労働に対する報酬よりも感謝とか労いの言葉の方が嬉しい性分らしい。
気持ちは分からんでもないが、はっきりと言い切れるのには少しばかり感心せざるを得ない。

「――ああ、そうだな。
 神社の奴ら、何かと忙しいみてえだからきっと喜んでくれんだろ」

その為にも指定された量以上の成果は出しておきたい。
そう思えば箒を扱う手にも自然と熱が入る。