2025/01/04 のログ
ご案内:「常世神社」に橘壱さんが現れました。
ご案内:「常世神社」に伊那美かんなさんが現れました。
橘壱 >  
某日 常世神社。
早朝よりも少し後ろの肌寒い朝。
陽射しはギラギラながらも空気も風もキンキンに冷えている。
吐き出す息は真っ白で、体中に仕込んだカイロがないと凍えてしまいそうだ。

「……落ち着け落ち着け」

なんとも落ち着かない、というか慣れない。
彼女との待ち合わせは、ずっと緊張する。
すっぽかされたりしないよな。されたら結構凹むぞ。
そんな様子で神社の前で待つ、少年が一人。

伊那美かんな > 時間通り、いやちょっとだけ早いだろうか。
向こうのほうから冬らしい私服に身を包んだかんなが走ってくる。

普段制服でいることが多い分、少し珍しいかもしれない。

「ちぃくーん。おまたせ、まった…?」

息を切らしていることもなく、寒そうな様子もない。
ただ天気予報も見たし、寒い、ということはわかっているから。

「大丈夫…?寒くなかった?」

壱くんの真っ白な息を見て、心配そうに尋ねる。

橘壱 >  
そんな心配を他所に、待ち人はやってきた。
いつもの制服とは違い、可愛らしい私服姿。
普段と違う装いに思わずどきり、と胸が高鳴る。

「い、いや、大丈夫!今来たところ!
 えっと、服。似合ってるね?可愛いよ」

ちょっとどきまぎしながらはにかみ笑顔。
実際可愛いんだし本当だ。ただ、冬服にしては薄い気もする。

「僕はカイロがあるから大丈夫だよ。ホラ、ね?
 環菜ちゃんこそ、寒くない?冬服にしてはなんか薄着のような……」

そういって彼女の手を取った。
温かな人の手が、彼女の手を包みこんだ。

伊那美かんな > 「あー。ほんとに思ってるー?
付け焼刃のありきたりっぽいセリフになってるよ。」

下から見上げるようにして
ちょっとだけ珍しく、弄びからかうような言葉。
もしくはテンプレっぽい壱くんの言葉に合わせたような、ラブコメらしい言葉を選んで。
もちろんすぐに続けて、

「なんてね、ありがとう。とてもうれしい。
女の子のおしゃれは我慢なのだ。といっても寒さには強いから大丈夫だよ。」

くるりと回って見せて、ふわりとコーディネートが風に舞う。

「これくらいでもちょうどいいんだぁ。
わ、ちぃくんあったかいね。」

体温はやはりかんなのほうが低めで、冷えてしまうと思いつつも
うれしくてきゅっとかるく手を握り返してしまう。

橘壱 >  
「!?い、いや、そんなことないって!
 可愛い環菜ちゃんにピッタリっていうか、もう……。」

たしかにちょっとギャルゲっぽさはあったかも。
まさか彼女にからかわれるとは思わなくて、思わずびっくり。
けれどそれも愛嬌の内だと思えば、困ったように苦笑いに変わった。

「そういえば足出してる子とか結構いるしね。
 女の子もすごいね、ほんとに……。」

おしゃれに疎いから余計にそう思う。
くるくる回る彼女を微笑ましく見ていたけれど、
橘壱も男の子である。風と一緒に揺れる胸元についつい視線が。
そして何事もなかったかのように咳払い。スケベ。

「僕は普通だとは思うけど……、……うん、環菜ちゃんを温めるためにね」

彼女の異能のことを考えれば、冷たいのが自然なのかもしれない。
だからつい、そんな気障な台詞で上書きすればほんの少し、強い力で手を握った。
離すまいとするような力。そのままゆっくりと身を寄せ合う。

「それじゃあ、行こうか。お参りする内容とか決めてる?」

伊那美かんな > 「ふふ。
ちょっと肩から力が抜けたような感じがするね。緊張でもしてた?」

最初の言葉はちょっと取り繕ったような気配がしたから、
からかって正解だったかな、と思う。
普段いつどんな壱くんでも肯定してるから、からかってみるのには
ちょっとだけかんな自身もどきどきしていたようだ。

「学園だと異能でなんとかしてたり、っていう子もいるみたい。
だから過度に心配しなくてもいいかもね。」

冬服の分ちゃんと着込んでいて、今日の装いに露出は少ない。
ただその分布にきちんと収まったフェチシズムがあるだろうか。

「あっ。あー…♪
それじゃあ寒いしちぃくんの風よけもかねてくっついていこっか。」

視線にはきちんと気づいて、握った手をそのまま腕まで密着するように
胸元を押し付ける。

「初詣だから、年神様に今年もよろしくお願いします、ってご挨拶かな。
そっかお願い事する人も多いんだ。ちぃくんはなにかある?」

橘壱 >  
「……そりゃ、まぁ、緊張くらいするよ」

その理由までは口にこそ出さなかった。
もしかしたら察せられるかもしれないけれど、
そこは一応"お互い様"ということだ。

「何でも僕のことはお見通しだったりする?
 ……心配位はするよ、その、幼馴染相手なら特にさ」

彼女といると、自分の考えの半分は知られているような気分だ。
十年の空白も意味もないほどに、自分のことを把握しているように思える。
その程度で不快に感じるとは、不気味には思わない。
それが"熱意"なら、なおのこと。

「うわっ……」

まぁ、それはそれとして男の子。
おっきな柔らかいものが引っ付けば顔も赤くなるし声も出る。
そのまま手は離さないように、ゆっくりと歩き始める。
ある程度日がたったとはいえ、境内にはちらほら参拝客が見える。
家族やカップル。そういった人々の姿も垣間見えた。

「そ、そっか。そうだよね、そういうものだし。
 ……僕は、付き添いの予定、だったかな?環菜ちゃんの。
 僕は神様に祈ったりはしないから、こういう日を環菜ちゃんと過ごしたかった、ってのが理由」

「……ヘンな理由で呼び出しちゃったよね。ゴメン」

なんて、苦笑い。

伊那美かんな > 「うーん、なんでもはわからないかな。
だってかんなの十倍はちぃくんはすごいからね!」

かんなにとって壱くんは幼いころも今も何歩も前を進む存在だ。
実際にも会話だけならなんとかなっても、橘壱という人物のすべてを
わかるとはとてもいえない。
もちろん、そのなかにはそれを信じている、ということも含まれるけれど。

心配、の言葉に口元がにやけるように微笑んで。
「うん、もちろんうれしいよ。
それにそういう人たらしなところもちぃくんっぽい。」

たぶんほかの女の子にも同じ心配をしてるんだろうなあ、って
特にさ、の強調の部分から思ってしまいながら。


「ううん。
行事ごとをきっかけに一緒に過ごせるのっていいよね。
バレンタインやクリスマスとかも、その本質はあんまり気にされてないでしょ。」

それほど環奈自身も、初詣!とするつもりはもともと積極的には無くて
壱くんに誘われたから来た、という部分が大きかった。

「なんだっけ…言い訳… ツユ… なんかそういう言葉で。
とりあえず都合がいいから使っちゃおうくらいの。」

なんだったかな、と頭をひねりながら
いいよね、それくらいが普通だよ。と応えた。

橘壱 >  
「それは言いすぎだよ。
 けど、凄いのは事実だからね。
 環菜ちゃんも、ちゃんと付いてきてよね」

様々な異能者や能力者がひしめく島でも、
非異能者である壱がそう言ってのけてしまう。
別に彼女の前だからってカッコつけたわけじゃない。
誰にも負けない自信があるから言ったんだ
吹っ切れたかつての世界王者、幼い頃から変わらない自信と実力。
そう言い切る姿こそ、幼い記憶となんら変わりなかった。

「人誑しって……本心だよ、まったく」

結構散々言われてることだっていうのに、言ってくれる。
確かに誰にでも心配はするかもしれない。
けど、その中で一層"特別"なつもりなのに。
困ったような顔をして歩いていけば、気づけば本殿の前まで来ていた。

「記念に、ってワケじゃないけどね。
 ……つゆ知らず?とは、違うか。さて、神様の御前だよ」

そう言って本殿の向こうを見据える壱。
もちろん、初めから祈る気なんてない。
あの日から一度だって、神頼みの予定はない。
それはこれからもだ。道は常に、自らの手で勝ち取るものだ。

伊那美かんな > 「あ、調子戻った?
そうだよ。うん、がんばるね。」

付いていけるかはともかく。努力の返事をかえす。
願いはかなった、ちぃくんに会えた―――
じゃあ、この先は?

ちらりと掠めた思考をそっと押し込める。

体重をかるく、掛けるように加減しながら。
そんなことに思考を割いていたらあっというまに祈りの場に。

「意外と早かったねえ。
じゃあかんなが鈴を鳴らすね!」

壱くんが祈るかどうかにかかわらず、大きな鈴の縄を揺らして

からんからん

と音が響く。
作法にのっとり、二礼二拍手。きちんとお祈りはそれはそれとしてちゃんとして。
少しだけ環奈の時間に浸ってから、

「お待たせ。
またせちゃった?」

壱くんのほうを振り返った。

橘壱 >  
鈴を鳴らし、環菜は本殿の前で祈る。
何を祈るかはわからない。透視なんて力はない。
ただ、その後姿を見ているだけでも十分だ。

「(……まぁ、誰かのために捨てるって言うなら……)」

事実、人の為なら矜持を曲げたって良い。
けれど、そうじゃないならこのスタンスはやめない。
環菜が戻ってくると同時に、不意にまた手を引いた。

「待ってないよ。……環菜ちゃん、ちょっと歩こうか」

ほんの少し、何か言いたげな顔をしていた。
有無を言わせず歩いていく先は、徐々に人ごみから外れて言ってる気もする。

伊那美かんな > あれ、と思う。
お祈りを終えて、あとはおみくじでも引いて帰るのかなと思っていた。

それがいまは、手を引かれてどこかへと連れていかれる。
声をかけて参拝道に戻ってもいいけれど…
手順にも順番にもこだわる、というわけでもないからおみくじのことを一旦は忘れる。

「あ、うん。」

こういうときの壱くんはきっと、何か真面目なことを言うときだ――

「少し風が冷たいから、気を付けてね。
長くなりそうなら、部屋でも―――」

橘壱 >  
とは言っても、そこまで離れた位置ではない。
売店の裏。休憩スペースも兼ねた場所に付けば足を止めた。

「おみくじは帰りにでも引いていこうか。
 その後は一緒にご飯でも食べて、ね?」

少し不安にさせてしまったかな、とも思った。
だから振り返るといつものようにはにかんだ笑顔で、そっと頭を撫でる。

「僕の答えは、前も変わってないよ?
 それに、約束したでしょ。確かに僕は止まる気はないけど、
 環菜ちゃんを置いてったりはしないよ。それとも、環菜ちゃんは、
 常世島(ここまで)追いかけてきてくれたのに、将来(このさき)は追いかけてくれないのかな?」

敢えて今の今まで、直接的な答えは口に出さなかった。
ただそれでも、彼女の気持ちには答えるようになったし、
何かあれば彼女を追いかける約束だってした。
一緒に住もうと言ったのも、同情とかじゃない。
彼女と一緒にいたいと思ったからの、本心だ。
だからこそ、敢えて意地悪い言い方をした。
子どもあやすように頭を撫でながら、見下ろし碧の双眸は優しい色をしていた。

伊那美かんな > 「あ、ご飯食べたいね。
そうそうおみくじも… お見通しだぁ。」

言葉にしなかったことを見透かされて。
もしくはそんなにわかりやすく社務所のほうを見ていただろうか。
・・・そうかもしれない。

「うん、そうだよ。
びっくりした。うーん…。」

ごまかすような答えにしかならないようでもあり。
だからと言ってきちんと返せる答えでもない。
いろいろと根本的なところが整理されていないというのもあって。

「もちろん付いていくよ。環奈から心変わりすることもないと思う。
でもほら、ごまかすような言い方になっちゃうけれど――」

多分に誤魔化しも含むが。

「永遠を誓うのって結婚するときじゃないかな。」

橘壱 >  
「まぁ、そう、か。そうだね……」

本はといえば、返事を滞ってる自分にも問題はある。
他人と一緒に、ともに歩もうと考えたことがなかった。
そう考えさせたのは、他でもない彼女だ。
彼女のおかげで考えも少しずつ変わり、
いつしか背中を付いてくるだけの少女に振り返るようになってきた。

「えっと……」

そう迫ったのは自分なんだ。
それこそずっと、誤魔化すことなんて出来やしない。
正直に言うと、まだちょっと迷いがある。
視線をそらして、思案顔を隠すように口元を片手で覆う。

「あの、さ……」

上ずった声。
やばい、意識しただけで顔が熱い。
きっと今、耳元まで真っ赤になってる。

「……、……卒業、したらその……」

「……式、あげてもいい……」

つまり、そういうことなんだ。