2024/06/11 のログ
ご案内:「異邦人街」にテンタクロウさんが現れました。
ご案内:「異邦人街」に緋月さんが現れました。
テンタクロウ >  
夜の異邦人街。女性の悲鳴が響き渡る。
逃げ足が早い。だが追いつけないほどではない。

「大人しく協力してほしいものだ」
「この世界に“骨”を埋めるつもりなのだろう?」

すぐにマシンアームを路地に伸ばして逃げ道を塞ぐ。
さて……どの骨から折ろうか。

「ハァァ……あまり誘いを無碍にするものではない、御嬢様(フロイライン)

緋月 > 夜の異邦人街。
大通りを暗い赤の外套(マント)に書生服姿の少女がてくてくと歩く。
その手には、いつもの通り長物の入った刀袋。

「遅くなってしまった…しかし、異邦人街というのはこんな所ですか。」

少し物珍し気にきょろきょろと。学生街とは異なる趣の建物が多い。
故郷に比べれば遥かに都会だが、何と言うか、どことなく似た雰囲気を感じる建造物も見かけられる。

「こういうのも悪くない、ですね。
今度は、時間のある間に昼間にでも――――」

其処まで独りごちた所で、耳に届く異質な声。
直ぐにそれが何かが分かった。

「……悲鳴!?」

聴覚を凝らす。
離れている、が遠すぎる訳ではない。この街の中。
走れば充分に間に合う、筈。

「――――。」

ほんの少しだけ、逡巡。
荒事だとして、それに対処するのは風紀委員の仕事。
まだ正式に学生ではない自分が関わるべき事か。そもそも自分も、風紀委員の注意リストに載ったままかも知れない。

「……些末!」

再び響いた悲鳴に、逡巡は頭から消し飛ぶ。
足に力を籠め、全速で悲鳴の方角に走る。

テンタクロウ >  
塞ぎ込んだような夜に、逃げ場をなくした女性を追い詰める。

「女性の骨を折るのは初めてだ」
「ひとまず逃げられることのないように……足から行こう」

マシンアームを伸ばす。
わざと、ゆっくりと。
恐怖の時間を長く楽しむために。

「月が明るければ助けも来たのかも知れないなぁ……ハァァ」

異邦人の女性生徒の足にマシンアームが絡まった。
悲鳴が一際大きくなる。

緋月 > アームに足を絡み取られた、哀れな女性の恐怖の悲鳴が響く。
そのまま引き摺られるか、あるいは持ち上げられてから。
マシンアームの怪人の宣言通り、足を折られるのか。

逃げ場はなく、助ける者もなく、悲鳴のみが大きく――
――否、その悲鳴に、小さな「雑音」が混ざる。
地面を蹴り、駆ける、軽い音。
そして、

「疾ィ――!」

悲鳴を塗り潰さんばかりの一喝。
疾風の如く駆け込み、現れた少々小柄な人影が、手にした白刃を女性を捕えるマシンアーム目掛けて一挙に振り下ろす――!

テンタクロウ >  
「……!!」

一喝、見上げれば。
三日月。いや……見る者の心すら斬る、白刃の反射───

マシンアームが斬り落とされ、地面に落ちる。
バカな……伸びていて剛性が下がっていたとはいえ強化被覆の機腕を一刀で…

「何者だ」

赤い瞳が目に入った。
赤い、月……

触腕でマシンアームを拾っている間に異邦人の女生徒は逃げ出していった。

「ハァァ……あまり人の足を引っ張るものじゃあない」
「骨折り損は御免だ……もっとも」

「折られるのはお前の骨だがな」

緋月 > シィィ、と、闖入者――外套を纏った書生服姿の少女の口から呼吸音が漏れる。
素早く納刀すると、逃げ出そうとする異邦人の女生徒の尻を叩くように声を上げる。

「振り向くな! 逃げられませい! 人に報せなされ、襲われたと!」

必死で逃げる背中を一瞬見送ると、赤い瞳がゆらりとマシンアームの怪人に向けられる。

「名を知りたくば己が名乗るのが先でありましょう。
最も、外道に名乗る名などなし。
――成程、話に聞いてはおりましたが、「悪事を働く者」とはこういったモノですか。」

辛辣に返しつつ、赤い瞳がすぅ、と細められる。
す、と手にした刀を外套の中に戻し、小さく身構える。

「骨を折る、と。先程の女性も、そのように嬲りものにするつもりであったか。」

と、口で言いながら、外套に隠した手で予め渡されていた機械を握り、こっそりとボタンを押す。
防犯ブザーに似た形状のそれは、しかし音を立てることはなく、小さく振動しただけだった。

(…渡された時の言葉が正しければ、これでこの機械を探しに風紀委員がやって来る筈。
後は、何とか逃れるか時間を稼がなくては…!)

テンタクロウ >  
動きに隙がない。
納刀して構えている姿は。
まるで銃口を向けられているかのような威圧感がある。

サムライか。面白い。

「私はテンタクロウ、機界魔人とも最近は呼ばれているようだ」
「名を名乗らなければそれでもいい」

「幾多の被害者の一人として忘却されるだけだ」

マシンアームを蠢かせる。
この触腕、予備動作はあっても人間が対処できる数を上回る本数を動かせる。
だがあまり斬られると拾った分の腕との兼ね合いでこちらの動きも鈍る。

今回はあと3本斬られたら撤退時か。
まぁ、それまでにこいつを。

「ハァァ……骨を折るだけじゃない、音を確かめるんだ…」

惨劇の只中に叩き落としてくれる。

触腕を四本、一気呵成に相手の体に突き出す。
それだけで相手の体を粉砕骨折させるだけの威力はある。

同時に直撃させはしない。一刀で斬り防がれるのが目に見えている。
クアドラプルアタック、防げるか。

緋月 > 「無駄に仰々しい名前を。
鉄磯巾着程度で充分でありましょう。」

多数の腕を蠢かせるマシンアームの怪人は、どちらかというと蛸や烏賊と言った方が近いと思う。
だが、明確な悪意を感じる相手に対し、敢えてイソギンチャクという表現を用いた。

「……阿弥陀仏も見放す非道ぶり。
家族が知れば、それは嘆く事でしょうな。」

骨を折るのみならず、音を確かめるとまで言い放つ悪辣さに、わざとらしくため息を付く。
が、実際問題、油断出来る相手ではない。

(あの腕、どれ程に動くものか。
一斉に動かされたら、はたして凌ぎ切れるか…?)

考えている間に、鉄の腕が迫る。数は4本。

(…今は避ける事に集中するべきか。
――天眼。)

瞬間、両目に一気に熱が加わる。
同時に迫る鉄の腕がはっきりと見て取れる。

(他心。)

瞬間。脳が灼けるように働き始める。
何処を狙い撃つか、いつ着弾するか、脳が予測を弾き出す。

(――縮地!)

瞬間、脚に氣が満ちる。
後は、この速度で躱すのみ。
常人には捉える事が困難な速度で、予測に基づき回避を試みる。

(頭が熱い、目が痛む。
やはり、他心と天眼の同時使用は、キツイですね…!)

テンタクロウ >  
「人の名前を嘲笑う……お前の家族は…ハァァ」
「お前に何を教えていたんだ?」

意趣返しを端的に行い、惨撃は繰り出された。
だが。

「!!」

回避ッ!
瞬間四連撃を!! 人間の反射神経でか!!

点の攻撃でダメなら、線の攻撃。
袈裟懸けを描く軌道で小型の触腕での鞭打。
一人時間差で逆袈裟のメインアームでの鞭打。

交差する強打で仕掛ける。

同時にその場にいることは危険と判断し、腕を使って上空に跳ね上がる。
古びた建造物の屋根の上へ。

緋月 > 「嘲られたと、思うなら……貴様は、酔っている!
「己の名」を「恐れられる事」に、「他者の命は思うが儘」と!
それこそ、不遜なり!」

四連撃を回避しつつも、頭と目にかかる負担は加速度的に上がっていく。
このまま同時に持続させては、己の方が持たない。

(やむを得ない、他心法、切断!)

脳にかかる負担を切断した次の瞬間。
目が、小振りな腕と大型の腕の交差攻撃…鞭で打つかのような軌道の双撃を捕える。

(しまった…避ける道が、見つからない…!)

動体視力を強化した為、迫って来る腕が嫌になる程はっきりと感じられる。
鉄の腕の長さからして、下手に躱しても腕か脚を打たれる。

(なれば―――――)

刹那。
繰り出される鞭打が、はっきりと少女を叩き、吹き飛ばす。
まるで、毬のようにその身体が宙に舞う。

――そう、いくらマシンアームの力が強いとはいっても、「軽すぎる」と思える位に。

テンタクロウ >  
()った!!

いや……手応えがおかしい。
どう考えても今のは。
空を舞う羽の一枚を殴ったような──

「私が不遜なら、お前は化け物だな」

いっそ恐怖すら感じた。
人体は鍛錬することでこんなこともできるのか?

だが軽身であろうと人体の構造が変わるはずはない。

「残念だよ」

建物上部にある貯水タンクにメインアームを絡める。

「キミの骨が折れる音を聞く機会を逸したようだ」

そのまま上空から相手に向かって貯水タンクを落とす。

「ゲームオーバー」

質量攻撃。貯水タンクは建造物の上を転げながら。
少女一人のために落下する!!

緋月 > ゲームオーバーの宣言と共に、貯水タンクが、転げ、落下する。
吹っ飛ばされた少女に向かい、圧し潰さんと、重力に従い。
宣言通り、その貯水タンクは少女を圧し、

「――斬。」

潰すより先に、一閃。
後に続くように、更に数閃。
貯水タンクは、マシンアームの怪人に与えられた役目を果たす前に、まるで野菜のように斬り裂かれる。

それだけならいい、否、良くはないのだが、それ以上の異常がある。
斬り裂かれた以上、中のタンクの水が溢れ、その重さが少女を圧し潰すはず。
だが、斬られて隙間が空いても、水は溢れては来ない。
そう――タンクごと水が斬られたように。

ほんの僅かな間、斬られて宙に留まっていた貯水タンク――だったものが地面に落下し、
金属音と水をぶちまける音を派手に立てる。
その轟音の中で、小さく地を蹴る音がする。
だん。
だん、だん。
だん、だん、だん、だん。
だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん。
だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん、だん。

地を蹴る音がする、地を蹴る跡が見える。
それを行っている者が、見えない!

テンタクロウ >  
「!?」

圧死は免れぬタイミングッ!!
確実な“王に掛ける手(チェックメイト)”だったはず!!

だが、ヤツは……あの女はッ!! 貯水タンクを斬ったのか!?
それも中にある水ごと!!

「ばッ」

化け物め。

大凡、人の理解を得られるはずもない。

大凡、人との関係を築けるはずもない。

化け物……真なる業火に燃ゆる月───!!

 
「!!」

足音だけが響く。
そして私は相手の姿を視認できない!!

電磁パルスでフィールドを展開し、全ての触腕を使い全力で防御の姿勢を取る──

緋月 > 最早、響く足音はそれそのものが一つの音に繋がって聞こえる程。
これだけの速度を人に出せる筈が、人に耐えられる筈がない。
確実に何らかの…魔術か、あるいは異能の力が働いている筈。

そして、鉄腕の怪人が守りに入った瞬間、忽然と音が止む。
見れば、通りを挟んで反対側の建造物の屋根。
其処に、刀を八相に構えた少女が、まるで跳躍の瞬間を切り取ったように宙に浮いている。
赤い瞳が、鉄腕の怪人を見据え、

「――”神足”。」

その声と共に、瞬間。
守りを固めた怪人に向けて、一気に飛んで来る。
その様を見て、多くの人が最初に思い浮かべるのは、武侠映画のワイヤーアクションによる滑空や跳躍だろう。
だが、此処にはそんな仕掛けなどありはしない。
何より、ふわりと飛翔するようなアクションに比べて、何かを蹴ったような加速度だ。

そして、電磁パルスと触腕で守りを固める怪人に、口の端から血を一筋流しつつ、少女は躊躇いなく刃を振り下ろす。
その口の動きは、怪人にも読めた事だろう。

『――――界断チ。』

直後、まるでホールのケーキにナイフを入れるかの如く。
電磁パルスのフィールドという「界」に、刃が入り込み、斬り込んでいく。
それを行う者の目は、喜悦も敵意もなく、ただ「斬る」事のみに没入した――まるで、人の形をした、刃。


この常世島に住まうすべての者が、今は知らぬ事。


九天にて残る骸無し。
常では斬れぬを斬らんとした狂人達…あるいは求道者達が磨き、高め、時には血で、時には外れた才で。
継承してきた、系譜。その結実のひとつ。

故に、剣術に非ず。人は呼ぶ、「魔剣術」と

テンタクロウ >  
あり得ない。
電磁パルスによるフィールドを。
斬るなどと────

「……!!」

複合装甲が斬られて欠けている。
万魔両断、あと数センチ先にいたら肉体を斬られていた。

触腕が無事なのがかえって恐ろしい。
これだけの防御を技術で掻い潜ったことの証左に他ならない。

「くっ……」

逃げるように大きく距離を取った。

「そういうことか……だが」

近くに駐車してある車を。
マシンアームのパワーだけで持ち上げる。

「やはり、私の勝ちだ─────!!」

自動車を投げつけた。
相手に当てることはしない、空中で伝播ソリトン弾を放ち。

車に入っているガソリンごと爆砕させる。

火炎を撒き散らし、周囲に黒煙が立ち込める。

 
そのまま周囲を見る。
既に風紀委員によって避難が済んでいる。
このタイミング、あと40秒ほどで
武装した風紀委員が多数踏み込んでくるだろう。

「結局、あの女は」

触腕を使って屋根から屋根へと移動していく。

「ハァァ…時間を稼ぎきったということか……」

闇を掘る。どこまでも。
その先に、何が待ち受けていようとも。