2024/06/12 のログ
緋月 > 鉄腕の怪人が最後に放った、自動車爆破による攻撃。
撒き散らされた火炎に少女は飲み込まれ、その合間に怪人はこの場から素早く去り――――

「――っ、ごほっ、ごほっ…!」

きん、と、金属音のような音が響き、炎が「断たれる」。
そこから、服の所々が焼け焦げ、自身も火傷を負った書生服姿の少女が、刀を手に転がり出てきた。

「あつつ、いたっ…!
……骨までは、いってないか。
でも、後で緋彩さんには、謝らないといけませんね…。」

膝を付き、胸を抑えながら大きく咳き込む。
ちょっと吐血したが、死ぬような怪我ではない。

「……世に悪業の種は尽きまじ、か。
きっと、あの男みたいな…でなければ、他の悪人も、此処にはいる…んでしょうね…。」

口を拭きながら、音の様子からしてあの怪人が逃げたであろう方角を見る。
息を吐いてから、登って来た風紀委員のひとりにブザーと仮発行された身分証を見せ、身分の証明を行う。

「…今日は、帰れそうにないなぁ。」

けほ、と咳き込みながら、少女は夜空を見上げる。
月は変わらず、そこにあった。

ご案内:「異邦人街」からテンタクロウさんが去りました。
ご案内:「異邦人街」から緋月さんが去りました。
ご案内:「異邦人街」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
「今度は異邦人街…」

学生通りでの事件を皮切りにあちこちで事件が起こる…。
目撃者や現場に急行した風紀委員からの証言で、犯人は同じことが理解っている。
今日また、異邦人街にて。
学生そして教職員の居住区に繋がる場所での騒動だった。

丁度手が空いていたので招集に応じた。
それなりに目立つ場所での事件が多い所為か、手が足りていないのだろう。
1日経って夜が明けて、文字通り明るみに出たその破壊劇の痕跡を目にする。

ご案内:「異邦人街」に照月奏詩さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
とりあえず現場の動きに合わせよう。
防止線は多少広めに貼ることになる。
炎上した車両や、崩れた建造物の撤去・修復。
それらに特化した異能を持つ生徒を手配できない限りは、重機を入れなければいけないためだ。

『どう?手がかりとか…ありそう?』

「ん…それなりに痕跡は残ってるけど…」

文字通り超人同士の戦闘があったことを如実に語る現場。
少し妙に思ったのは、破壊された貯水タンク。
力任せに破壊された…というよりも。

「──随分鋭利に切断されてる。
 これまでのテンタクロウの事件があった場所に、こんな痕跡あったっけ?」

問われた風紀委員は、小さく首を横に振る。

「だよねえ」

此処は異邦人の住む街。
証言ではこの場で誰かがテンタクロウとの戦闘に応じて立ち回っていたというものもある。
一般人から提供された動画では、対象の動きが速すぎてカメラも追いついていないしブレブレであったため、特定も難しかった。
そもそも何かしら強烈な電磁波か何かが展開されたのか、後半は映像が乱れすぎて何も映っていなかったし。

ともあれ、自分の知る限りにおいて達人クラスの誰かが衝突していた…と見る。

照月奏詩 > 「だーかーらー、関係ないっていってるじゃないですか」

 そんな捜査の一角が少し騒がしくなる。
 そして退いてくださいなどという風紀委員の声。
 中にはピリピリしている隊員もいるのだろう。1人の男が引っ立てられてくる。

「いてっ、お前らこれ色々と問題だからなマジで……!!」

 そうして彼女の眼前に1人の男が突き出される。周囲を戦闘系の風紀委員に囲まれさらに手錠までかけられる。完全に何かの犯人扱いだ。

「……あー、この人が例の?」

 そんな男が自分を引っ立てて来た風紀委員にそう聞いて肩を竦める。
 彼を連れて来た人物曰く不審な男がいた、掃除の仕事で来たとの事だが周りを見ているようだったから連れて来た関係者かもしれないから調査してほしいとの事だった。
 戦闘系ではこういう会話は苦手なのだろう。それは連れてこられ方を見れば明らかだが。

「……らしいんで少し時間貰っても? ついでに後でこいつらの降格を伝えてください。滅茶苦茶すぎるでしょうこれ」

 と手錠を見せてヘラヘラと。

伊都波 凛霞 >  
「…ん?」

"彼"が連れてこられる数瞬前、小走りにやってきた風紀委員からの耳打ちを受ける。
現場で不審な男を捕縛。
言い分は『掃除の仕事』で現場にいた、とのこと。

「うわ、まるで犯人扱い。…やりすぎやりすぎ」

違ったらどうするの…?と少し眉を顰める。

「あの、大丈夫。暴れられても私なら取り押さえられるから…」

とりあえず冷静さを欠いていそうな風紀委員達を宥めるような言葉を欠けて、連れてこられた男から遠ざけるようにしつつ…。

「時間はいいけど。あんまり逆撫でるようなことも言わないように!
 早朝から駆り出されてる人ばっかりなんだから…ね?」

改めて、連れて来られた彼に向き直り、そう言葉をかける。

「それで…名前は?学生証ある…?」

一応、それも問う。
さすがに学生証があったら提示しているかな、とも思いつつ。
手錠までかけられているのだ。それをしない理由もないだろうけれど。

照月奏詩 >  
「了解しましたよ、名前は照月奏詩で学生証は……あー、ほら学生証ですって」

 と遠ざけられた風紀委員に向き直る。
 その人物は彼女に寄ってきて彼の財布を差し出す。その中に学生証も入っているだろう。
 一見すると普通に見えなくもないがほんのわずかに違和感を与える物。普通に拝見する為にパッと見るだけだったりするならそこまで違和感はないかもしれないが、捜査の為にじっくり見るならどこか違和感を感じる。
 例えば顔写真。本来ならば入学時なのでもっと幼かったりと印象が違うはずなのに今とそう変わらない。にもかかわらず生年月日は普通の人間でこの世界の出身者の基準であるなど。

「一応先に来てた理由も伝えておきますけど、目的はアルバイトです。クリーンダスターズって会社知ってます? そこに依頼が来て、瓦礫や砂埃が凄いから掃除してくれって、少し先のお店から」

 なんて話しかけるのはそれから意識を逸らす為でもある。流石に二級学生なのでそこを抜かれると色々と不味い立場ではある。

伊都波 凛霞 >  
「照月奏詩‥。
 私は伊都波凛霞、風紀委員ね」

言いつつ、身につけた腕章を少し引っ張ってアピール。
続いて、先に提示されていたのだろう学生証を、一人の風紀委員が近づき、手渡して。

「(──これ)」

偽造学生証。凛霞にはすぐにそれが理解る。
なぜなら、過去にも同じように偽造されたものを見たことがあるからだ。
刑事課に身を置いていればこその、気付きでもあったが。

「誰から入った依頼…かなんて、流石にわからない?よね」

アルバイトだとして、そこまでの情報を与える店もそうそうない。
学生証には…一端触れず。確認さえ終えれば一端それを預かる。

「とりあえず取り調べられる場所でもないし、まだ周りもバタバtしてるから…。
 簡単に身の潔白の証明できる方法が一応あるけど…同意する?」

問いかける。
無論、内容がわからないでは答えもしづらいだろうと。

「私の異能で少しだけ断片的に貴方の記憶を見ることが出来るんだけど…。
 それには嘘がつけないから、ちゃんとした証明になると思う…どう?」

とりあえずこの事件に関わっているかいないか…焦点はそこである。

照月奏詩 >  
「優しい風紀の人で助かりましたよ。ホントに」

 と逆なでるなと言われたので見るような事はしないがやはりどうしても思ってしまう。なので少しだけ毒を吐いて。
 依頼した人を聞かれれば目線を先の通りに。

「ん、誰からかはわかりますよ、そこのお店。自分でブレンドしたアロマを売ってるファンタジスタってお店。そこの玄関先を掃除してくれって依頼。裏取りしてもらっても構わないですよ」

 そこは別に話しても良い内容。本来なら守秘義務とかあるのかもだが調査として事情聴取を受けている場合こっちの方が優先されるだろうという判断。
 しかしそこ後の話を聞けば肩を竦めて。

「いやぁまぁ正直引っ張られた時点で引っかかるとは思ってましたが……ここで記憶まで見せないと解放されないって事は。学生証、気がついたんでしょ?」

 話を変えるように、同意するとかしないとか。それすらをうやむやにするように。むしろバレても問題がない場所を話題に出す。
 記憶を覗かれる。どこまでかわからないがそれをされれば裏切りの黒の情報が出てしまう可能性があるから。それが1番不味い展開だ。

「一応聞きますけど、同意しないって場合どうなります? 二級学生だって事で風紀の施設に連行……ですかね?」

 

伊都波 凛霞 >  
裏取りしてもらって構わない。と男の口から言葉が出れば、先程まで話していた風紀委員に目配せ。
踵を返して男の言う店へと彼女は向かう。
はっきりと言う以上、そこは信用して良いのだろう。

「自分から言うんだ」

他の風紀委員は気づいていなさそうだったから、あえて口に出さずにいたのに。
遠巻きにいてもらっているから、聞こえていないとは思うけれど。小さく肩を竦め、口を開いて。

「言った通り、今は此処も少し混乱してるから。
 この場で潔白が証明できなかったら場所を移すしかなくなるし。そうなったらもっと色々な事情を探られることになる。
 ……ワケアリではあるんでしょ?」

そう言って、偽造された学生証を彼の眼の前へ。

「とりあえずこの場でそれ(手錠)外したいなら…かな…強制はしないけど」

とはいえ連行することになれば、事情を聴取するのはおそらく自分ではなく。
もっとそういうことが"得意"な刑事課の風紀委員になる。

照月奏詩 >  
「まぁ、正直バレてると思いましたしね。普通ならとりあえず解放で後日呼び出しとかでしょ?」

 なのにこの場で記憶を見せろとなるならつまりはそうでしょうと。
 それなりに経験はしてきているらしい。とはいえ、ここまでしっかりと言い切った事は無いが。

「ワケアリというかワケアリだったというか。もうそのワケが無くなったというか……」

 そこも嘘じゃない、自分をこの街に呼んだ人は既に死んでいるわけだし。組織は潰れていないが。
 それを外したいと聞かれると。

「その記憶の読み取り次第ではあるんですけどね。例えばこっちで見せる日にちや時間を指定できるならいくらでも、でもそっちで好き放題見れちゃうなら。大人しく取り調べ受けますよ。別にやましい事があるわけじゃない。むしろ保護観察においてもらえるなら正規学生に上がれるチャンスがある」

 なんて手錠をチャラっと鳴らして。

「別に隠したい事があるわけじゃないですけど、むしろ風紀で二級学生と関わりがあるなら知ってますよね。そういう奴らは大体過去に何かしらある……わざわざ自分のみじめな姿を見せたくはないですよ」

 なんてジッと目を見る。

伊都波 凛霞 >  
顎先に手をあてて、少し考える素振り。
…急務は、この場の収拾。
この事件に関わりがないのなら、この場で問答すること事態が不要。
ただ…潔白を証明する手段はこの場にはない。
アルバイトで此処に来た、ということと。
この騒ぎに関わっていないということは矛盾しない故に。
大人しく取り調べを受ける…と言っていても、とりあえずこの場から遠ざかりたいという意図に取ることも出来てしまう。

「じゃあ…」

「日時や時間の指定、とまではいかないけど。見る範囲を絞ることは出来るよ。
 私の異能の力(サイコメトリー)は残留思念の映像化…だから。深く集中すればするほど、より遠い過去が見れる。
 少なくとも昨日の夜、この騒ぎが起こった時間までを視れれば…」

およそ、12~15時間…といったところか。

「私を信用してくれれば、だけど。
 それで問題が視えなければ私の責任でそれを外す。……どう?」

こちらをじっと見る、その目をまっすぐ見つめ返して。

照月奏詩 >  
 相手の発言を聞いて少しだけ目を細める。
 記憶を映像として見られるか、記憶を覗かれるか。それは意味合いが大きく変わる。心の中で思っていた事まで覗かれる可能性がある。
 だからこそ自分の記憶を探る、それまでに何かあったかなかったか。変な事を考えていなかったかと。そして記憶を探り、思い起こす。
 ふぅと息を吐いて。

「まぁ、落ち着いて考えれば……たぶん、取り調べ中に貴女出て来て終わりでしょって言うね」

 そしてそうなればそれこそ全部ひっくり返される。そうなると隠すもクソもないわけで。
 というわけで。

「その範囲ならどうぞ、ただ必要以上には見ないでくださいよ」

 とあきらめたように肩を竦めて見せた。

「で、俺は何をすればいいんですか? ただ立ってるだけ? それともその時の事を思い出していればいいんですか?」

伊都波 凛霞 >  
「さあ…私よりもーっと取り調べに向いてる人もいるかも…?」

相手の溜息に対して、こちらは苦笑。
もちろんその通りになる可能性も、あるけれど。

「勿論。プライバシーの侵害をしたいわけでもないしね。
 ただの貴方のアリバイ証明、それ以上は視ないようにするから」

動画のシークバーほど精密に操作はできないけれど。
こうやって他人の記憶を再生させる時は相手が誰であっても細心の注意を払う。
人の記憶というデータのサイズは膨大で。自分自身の脳の容量を越えるようなものであれば危険も当然ある。
ゆえに慎重に、慎重に。

「ん。立っててくれたらいいよ。…失礼しまーす」

相手のほうが少し背が高い。近づいて、よいしょと背伸びをする。
…相手からすれば、急に顔が接近してきたようにはなるけれど仕方がない。
物に宿った残留思念ではなく、相手の記憶を直接読み取っての映像化は少し勝手が違う。

こつん。とお互いの額を合わせることで、それを可能とするのである。

──昨日の夜までなら、そこまで集中しなくても大丈夫。目を閉じた瞼の裏に再生される音声・映像。
断片的に再生されるそれは、彼の昨晩から今朝までに至る、記憶──。

照月奏詩 >  
「記憶覗かれるより向いてる人がいてたまるもんですか」

 なんて苦笑いで返す。
 相手の動きを見て、こちらに向かってくる。相手の動きを見て何をするか大体さっすればこちらからも迎えるようにして額を合わせる。
 記憶を遡れば昨日の夜から。
 とはいえ夜は何もない、普通にバイトを終えて、かえって眠っただけ。家は常磐ハイム。今日は変な現象に巻き込まれなかったかなんて考えているのがわかるだろう。
 部屋は年頃の割りには遊び道具等もほぼなく、テレビとパソコン。それに授業の道具がいくつかあるだけ。
 そして朝起きれば説明した通り。メールで届いた掃除先へ向かい掃除する。
 ここが噂の犯罪者が暴れた跡か……そんな風に考えながら少しだけその事件現場に寄った所、風紀委員によって捕縛され、後は今の通りである。
 だがひとつ不審な点とすればどの場面においても罪悪感が深く渦巻いている事だろう。
 深く踏み込もうと思えば踏み込めるのだろうが。

「あの、そろそろ大丈夫ですかね。流石に恥ずかしいんですが」

 その前に待ったとかけるように集中を乱す目的でそんな風に声をかけた。
 まぁそこは年頃の学生としてはそこまで変な感情でもないのだろう。相手が美人なら猶更だ。

伊都波 凛霞 >  
断片的に映し出される映像。
それは至って普通の。ただの日常風景。
ところどころ…音声が低く歪みを見せる以外は。
この減少は…正負でいえば負の感情が記憶に混じった時に起こる。
そう、例えば先日読み取ったテンタクロウの残留思念。
あれは酷かった。暗く、黒く、重く…吐き気すら催した。
それに比べたら、至って普通の範囲…何かしら重いものを背負っているのかな、といった程度の───。

と、いったところで、声がかけられる。

「───…あ、う、うん…もう、大丈夫…」

ごめんね、と一言つぶやいて、距離を取った。
ちょいちょい、と手招きして彼を捕縛した風紀委員を一人呼んで…。

「事件の時間のちょっと前まで遡って視たけど、とりあえず不審な記憶はなかったよ。
 多分、彼の証言にも嘘はないんじゃないかな…。この事件への関与はないと思う」

鍵、貸して。とその風紀委員に申し付ければ、自らの早とちりにバツが悪そうな彼から手錠の鍵を受け取って。
程なくして、店に確認をしにいった風紀委員も足早に戻って来る。

「ご協力ありがとうございました。
 …学生証のことは黙っておいてあげるから、今日のことは勘弁してあげてくれないかな…?」

気が立っていて強行してしまった部分もあるのだろうけれど。
それなりの時間彼を拘束してしまったことも事実…。なんとかそれで手打ちになれば、と。

照月奏詩 >  
「……随分と人が良いんですね」

 黙っておいてあげると言われれば少し笑う。
 それから肩を竦めて。

「わかりました、それじゃそれで手を打ちます。あぁ、でも、一応風紀に話を聞かれたとはバイト先に伝えますよ。終了報告の連絡、かなり遅れちゃうんで」

 それくらいは許してくれますよねと携帯端末を見せて。
 強制連行されましたとは言わないのでと笑って。

「後、一応掃除であっちこっちに行くので、一応俺の事だけは風紀内である程度は共有しておいてくれると助かります。ほら、バイトで行く先でまた捕まると面倒ってレベルじゃないので」

 最後のだけは嘘。
 実際はバイトなんて無かったとしても捜査しやすくするためだ。もし最後のが通れば今後、事件があった時にバイトという事にして堂々と近くで事件現場を見る事が出来る。
 とはいえこれは可能ならだから無理なら深入りはしないが。

伊都波 凛霞 >  
風紀委員側に行き過ぎたところがなかったかといえば、きっとあった。
続く事件に関与する可能性と見れば、疑わしきは…という極端な行動も理解できないわけれではないけれど。

「それは正直にそう言ってあげて。いちおう、まだ連行までは行ってないから…ね」

お店への報告についてはそう返して。
彼の腕を拘束する手錠の鍵を外して、取り上げる。

「どちらにしても報告には挙げないといけないから、この辺りで活動する風紀委員には共有されると思うけど──」

記憶の再生中に感じた、重苦しい乱れを思い返す。
偽造学生証を持っている、とあればいくらでも脛に傷を持つことはあるだろうけれど…。
あくまで、自分という個人が"感じた"に過ぎない。

「ただ。最近こういう表通りで暴れてる危険なのがいるからそれだけは気をつけて」

あちらこちらに行く、ということを聞けばむしろ心配事はそちらだ。
今回はただ後処理に巻き込まれただけだったが、事件そのものに本当に巻き込まれる可能性もあるのだ、と。

照月奏詩 >  
「大丈夫ですよ、俺強いんで」

 なんて笑う。まぁ実際に出会った場合、奏詩として勝てる確立はほぼ0だ。いい勝負になるかも怪しい。そんなレベルだが。
 それから少しだけ目を細めて。

「それに、そういう時は風紀が助けれくれるんでしょう? 時間稼ぎぐらいはできますんで」

 なのでその時にはお願いしますなんて軽く頭を下げる。
 そして財布や携帯端末をポケットに戻した。

「それにしても、こっちの方で暴れるなんて珍しい事もありますよね本当に、誇示したいのかなんなのか。思いっきり目立つ状況。例えば風紀を全域に配置して囮よろしく狙われやすくするとかしたら案外寄ってくるかもですね」

 裏の視点からの観点。とはいえ表の視点でも近い物は見えているかもしれないが、まるで風紀を呼び寄せるかのように目立った場所で戦う構図。
 それらを考えるともしかしたらという考えをつぶやいて。

「それじゃ、俺はまだ仕事が残ってるので。そっちも仕事がんばってください、結構時間取らせちゃったので」

 なんて言いながら引き留めないのなら仕事先へ向かっていく事だろう。

 

伊都波 凛霞 >  
"そういう時は風紀が助けてくれるんでしょう?"

その通り、と答えることは出来なかった。
最初の事件では、命はとりとめたものの風紀委員の到着は間に合わなかった。
今回もけが人が出て、通報があったものの現場に到着した時にはこつ然とテンタクロウは姿を消していて。

「誇示…わざわざ、風紀委員に…?」

そんなこと、あるものだろうか。
常世の島の風紀委員はただの学園の風紀を守る組織じゃない。
島自体の秩序に関わる治安機構だ。
──そう、考えると同時に、あの日に感じたドス黒さもまた、頭を過ぎる。

彼、照月奏詩のつぶやきは凛霞に一時の思案の時間を与え…そして。

「あ…う、うん…ごめんね、迷惑かけて──」

まだ仕事が残っている、と背を向け仕事先に向けて移動する彼へと、そう言葉を投げかけ、見送った。

照月奏詩 >  
「風紀へ誇示するかはわかりません、けど。犯罪をわざわざ見える形でするって事は見せつけたいのかなと思っただけです。で、見せつける相手は風紀かなって、たまにあるでしょ、挑戦状みたいに叩きつけてくるあれです。逆に風紀にビビってるなら風紀があっちこっちに居れば逆に出なくなるんじゃないかっていう。それだけです」

 あくまで可能性ですよと。
 実際自分も相手の事などほぼ知らない。ただ裏の人間から見ると明らかに無駄が多すぎる。ただ暴れたいだけなら落第街でやればいい。なのにこっちでやるということはそういう意図があるように思えた。
 だからこそ風紀をあっちこっちに配置すれば目的が風紀なら襲いに来るだろうし、風紀を恐れているなら逆に犯罪件数が減るんじゃないか。そういう意見だった。

「いえいえ、何だかんだ普通には経験できない事なんで楽しかったですよ。普通に生きてる分には手錠を付ける機会なんて無いでしょ」

 なんて楽しそうに笑って戻っていく事だろう。

ご案内:「異邦人街」から照月奏詩さんが去りました。
伊都波 凛霞 >  
迷惑をかけてしまった彼を見送って。

彼が偽造学生証を使っていたことは、一先ず胸に留めておく。
この島には色々な事情を持った人間がいることは知っているし、一緒くたに二級学生だから…と。
そういった判断をすることには個人的に大きな抵抗があった。
好きでそういう環境に身を置いている人ばかり、というわけでもないのを知っている。

「…とりあえず…」

振り返る。
そこには手配された重機が到着し、焼けた車両を運び出すところだった。

風紀委員同士の連やり取りもやや煩雑となり、様々な情報が交錯する。

「とりあえずテンタクロウと対峙した…と思しき怪我人は近くの病院に搬送済み…と」

じゃあ、事情の聞き取り何かには既に人が行っているからな…と。
現場に最初に駆けつけた風紀委員がそのあたりは対応したらしい。
かの機界魔人を相手にやり合える実力…そちらはそちらで気になるけども。

視線の先、鋭利に切断された貯水タンクの残骸を見ながらそんなことを考える。

『ごめん!ちょっとこっち手伝ってー!』

「…おっけ、すぐいくー」

声をかけられ、はっとすると、その後はその場の風紀委員と共に事件の後始末へ、粛々と加勢するのだった。

ご案内:「異邦人街」から伊都波 凛霞さんが去りました。