2024/07/14 のログ
ご案内:「異邦人街」にマルヤさんが現れました。
マルヤ > 七夕の時期であるらしい。
と気付いたのは、短冊が吊るされた大きな笹竹を教室棟のロビーで見かけてからのことだった。

「あ~そういえば今年もそんな時期かあ……」

丁度期末試験の時期だったこともあり、
それとは別にアルバイトがあったこともあり、
それなりに忙しいものだから、すっかりと忘れていたのでした。

「願いごと……特に、そうねえ。無いけれど……健康とか?」

呟きながらの通りすがり、視線はそれなりに笹竹に注がれて幾つかの願いが見えた。

『試験の結果が良いものでありますように』
『素敵な彼氏ができますように』
『カッコイイ異能に目覚めますように』
『(見たこともない言語で書かれておりわからない)』
『売り上げが伸びますように』

他etc.etc
物騒なことが書かれたものもチラホラとあったけれど、大体は平穏な内容で、
見たことも無い言語で書かれたものは、恐らく異邦人の人達のものかしら?

──などと思ったものだから、ついついと興味本位でやってきたのが異邦人街の商店街。
様々な形の建物があり、様々な姿の人達がいて、様々な匂いがして、様々な屋台や商店がある。
それらの隙間には短冊の吊るされた笹竹があったりするし、
短冊の吊るされたモミの木の模型があったりするし、
短冊の吊るされた大きな茸があったりする。

「これが異文化交流ってやつ?」

植物的なものに願い事を吊るす行事。
みたいなものになっている気がして、あたしは茸に吊るされた短冊を眺めていた。

マルヤ > 『『『ちょっと失礼』』』

暫くすると頭上から多重音声のような声がした。
おや?と振り返ると、そこに居たのは2mはありそうな大柄の竜のような人だった。
あたしが目を瞬くことになったのは、彼の煌びやかな紺碧の鱗に惹かれたわけではなく、
彼が三つの頭を持っていたから。ついでに手には短冊を3つ持っていて、3人分なのかしら?なんて与太が流れゆく。

「おおっと御免なさい」

そしてあたしの身体も横に流れて場を譲り、暫し彼?彼ら?が短冊を取り付けるのを眺めていたんだけど、
あんまりジロジロと見るのも失礼よね、などと思い直してまた別の所に足が向く。

「……で、今度は何よあれ」

次に目が留まったのは一件の屋台。
大きな回転式のダーツボードが置いてあり、客はダーツに短冊を付けてそれを投げていた。
屋台の屋号は七夕投げと記され、店員と思しき耳の長い男性が客引きをしている。
彼の言によると、願い事を書いた短冊を見事にボードに当てたならば、当たった所の景品が貰えるとのこと。
そして当たるのだから願い事だってきっと叶う!という理屈みたい。

「射的の親戚みたいなものかしら……」

ボードの景品を見ると上は最新鋭の学生手帳であるオモイカネ8から、下は駄菓子の詰め合わせまで。
勿論上の隙間は恐ろしく狭く、更にボードが回転するのだから狙って当てるのは至難の技なことでしょう。

マルヤ > それとなく見ていると、楽しそうに投げて楽しそうに景品を貰う様子は、そりゃあまあ楽しそうに見えるもので、
あたしは無駄遣いしない主義だけれど、こういう季節に便乗したものは折角だから少しだけと思いもするもので、

「ま、でも運試しよね。ちょっと面白そうだし」

などと誰に言うべくもなく呟いて、店員さんに声をかけて参戦することにした。
短冊には、特に書くことも無かったのだけどダメ元ついでだから「背が伸びますように」なんて記し──

「おりゃあっ!」

気合と共にダーツをぶん投げる!


[1-3:小型 4-5:普通 6:大型]
[1-3:軽い 4-5:普通 6:重い]
[1-3:安い 4-5:普通 6:高い]

マルヤ > [3d6→5+5+6=16]
マルヤ > 投じられたダーツはそれなりに良い音をたててボードに突き刺さり、
囃し立てる店員さんの声が賑やかに響く。
やがて回転するダーツボードも速度を緩め……

「……あら?結構いい所にあたった?」

どこに当たったのかも段々とわかるのだけど、どうもそれなりに狭い所に当たったみたい。

『お、いい所に当たったねえ~!』

ボードが止まると店員さんは、手にしたハンドベルをガラガラと鳴らして景品を取り出してきた。
あたしはそりゃあまあ、多少はワクワクもしたのだけれど、彼が取り出したのはロボットの絵が描かれた箱で

『メタリック・ラグナロクの使用コード付きのプラモデルだよ!』

などと言ってくるのだから、プラモデルなど作った事のない身としては少し困ってしまいもする。
けど買うと高いらしい。なぜなら後ろから羨ましがるような声がするんだもの。

「ど、どうも……」

箱を受け取り眺めてみる。
頭の無い丸っこい胴体に大きな爪状の手。意外と可愛いかもしれないと思うのは欲目かもしれない。

マルヤ > 「どうしよっかなこれ……」

プラモデルの箱を抱えながら、日傘を差して歩くのは中々どうして奇妙なものだけど、
幸か不幸か異邦人街では奇妙と普通の境界は曖昧だから事なきを得た……と思いたい。

「対戦ゲームは好きだけどねえ……」

メタリック・ラグナロク。
名前くらいは知っている奴で、何でも随分と人気のあるロボット物の対戦ゲームなのだとか。

「ま、折角だしちょっと遊んでみてもいいかもね。……とりあえず期末試験が全部終わってからだけど」

新しいものに触れることはきっといいことでしょう。
そう結論づけるあたしの足取りは軽く、休憩がてら商店街の一角にある喫茶店へと吸い込まれるのでした。

ご案内:「異邦人街」からマルヤさんが去りました。