2024/08/03 のログ
ご案内:「異邦人街」に照月奏詩さんが現れました。
照月奏詩 >  仕事も終わった後、日陰に思わず座り込む。ベンチまでも持たない。

「……暑さだけ。じゃないよなぁこれ」

 感染は確実に体を蝕んでいる。常に全神経を張り巡らせるような状態が続いている。そうでなければ殺意に、そして苦痛に体を奪われてしまうから。
 傍から見れば暑くて休んでいるだけに見えなくもないだろう。勿論それも半分くらいはあるが。

「ったく、早いところ収集つけねぇと」

 前は偶然にも治してもらえたが、今は治せる手が無い状態。
 つまりは収集を付けないと治すに治せない。
 とりあえずは少し休もう。そうすれば治るはずだ。

ご案内:「異邦人街」に如月 槐徒さんが現れました。
如月 槐徒 > 「さて、残りはあっちの店か。
…暑いな。早く済ませて帰りたい」

クーラーの効いた屋内で調合の実験がしたい。
そんなことを考えながら袖で汗をぬぐう。
…夏服とはいえ、長袖を脱いでしまいたくなる。まあ、我慢だ。

異邦人街に来た目的は霊薬の材料の調達と、市場の調査。
異世界由来の素材などが霊薬に適しているかどうか調べているのだ。

「水分補給もしないとな

…そこの君、大丈夫か。良ければこれを」

自販機で水を買って、日陰で飲もうと思った時だった。
丁度その日陰で座り込んでいる青年を見つけた。
熱中症だろうか。放っておけない。買ったばかりの冷たい水入りペットボトルの蓋を開けて差し出すだろう。

照月奏詩 >  
「ん」

 声をかけられてそっちを見る。見た所自分よりも年上だろう。
 軽く笑顔を浮かべて手を上げるとそれを受け取った。

「いやぁ、ありがとうございます。この暑さは色々とヤバいですよねホントに」

 貴方も長袖暑いでしょと軽く笑いながら水を飲む。
 流石にこの場で毒を盛ってくるとかそこまでは考えてはいない。

「ん、冷たい水美味しい」

如月 槐徒 > 「そうだね。今すぐにでも一枚脱ぎたいところだ。」

意識を失うような段階ではないようだ。
こちらからも軽く笑いかける。

「ここも暑いし、とりあえずどこか涼める所まで行った方がいいだろう。
立てないなら手を貸すが、立てるかい?」

一先ず日陰とはいえ暑い事には変わりない。
どこか涼しい所まで誘導出来ればいいのだが。
そう思い手を差し伸べる。
掴んでくれるなら、必要に応じて肩を組んででも最寄りの冷房の効いた店内に誘導するだろう。

照月奏詩 >  
「流石にここで脱いだら不味いですからねぇ。涼しい所に案内はしてもらえますが」

 風紀委員にと笑って冗談ぽく返す。
 手を差し出されると軽く手を上げる。

「大丈夫ですよ、流石に歩けはしますので」

 むしろ今の状態下手に触れる方が不味いというのもある。
 なのでなんとか立ち上がって。

「とはいえ涼める場所……あっちの方にある喫茶店とかですかね。でも正直俺今財布がアレなんですよ」

 ハハハと頭を掻きながら笑う。薬やらなにやらで本当にお財布ピンチである。

如月 槐徒 > 「そうか。無理はしないでくれ」

正直無理が見える。
こんなところで座り込んでいたのだし、心配ではある。
とはいえ、ここ常世島には様々な事情を持つ人々がいる。
何か触れられてはいけない理由があるのかもしれない。

「安心してくれ。最初から俺が出すつもりだ。医療に携わっていた身として力になりたいんだ。
丁度現金の持ち合わせはあるんだ。」

買い出しに来ていたからなと言いながらゆっくりと歩き出す。
青年がついてきてくれるなら、危ない時は支えられるように、隣を少し開けるようにして歩くだろう。

照月奏詩 >  
「それは助かります。でもいいんですか、初めて会う相手にそんなに優しくして」

 足元掬われますよなんて軽く笑う。
 けど好意には甘えておこう。

「にしても買い出し。ってことは自分で病院をやってるとかそういう事ですか?」

 もしどこかの病院とかなら上の人が仕入れているだろうし、自分で買いだすという事はそういう事なのだろうと。
 距離に関してはいざというときに支えられる距離なんだろうなと理解している。もし自分が逆の立場なら同じ程度の距離を空けているから。

如月 槐徒 > 「いいんだ。俺は君みたいな状況の人を放っておけない」

教師であることや、前の仕事の事もある。
だが、こういう状況の人を無視して生きるのは自分の生き方に反する。
それで足元をすくわれたとしても、後から後悔するよりはマシだろう。

「薬の材料の調達と調査に来たんだ。
異世界由来の材料とかね。個人的な実験のようなものだよ。
授業で使う分もある。これでも教師なんだ」

霊薬学の教師であることを隠す必要は無いだろう。
最寄りのカフェまで着けばドアを開けて先に入るように促す。

照月奏詩 >  
「ハハハ、なるほど。まぁたしかに状況的には無視しにくかったですからね」

 言われてみればと。
 逆の立場でも助けようとはしていただろう。
 教師と聞けばそっちを見て。

「へぇ、じゃあもしかしたらすれ違ってたかもしれませんね。俺も学生で照月奏詩です」

 一応論文出した事もありますよなんて笑う。
 なのでもしかしたらチラっと見たこともあるかもしれない。タイトルは防御系の異能の汎用活用術。

「あ、どうも」

 そういって先に入ると少し目を細めて。

「急に涼しい場所に来ると逆に違和感が凄い」

 急な変化で逆に違和感が来た。気持ちいいより先にそっちが来ていた。

如月 槐徒 > 「ああ、そうだとは思っていたよ。俺は如月槐徒だ。霊薬学の教師をやっている。
気軽に呼んでくれ」

論文を出しているという話に目を丸くしつつ自己紹介。
生憎その辺りの論文は殆ど読んだ事がない。時間があれば読ませてもらうよ、と伝えておこう。

「確かに…別のところにしておくかい?」

あまり極端な変化は逆によくないかもしれない。
確かに店内は凉しいが、それほどの極端さは感じない
とはいえ、それは健康な者の意見だ。店を変えるか一応提案はしたが、これ以上歩かせるのも…
と言って店員に空調の調整を願い出るのも他の客の迷惑になる。
どうしたものか。

照月奏詩 >  
「霊薬……ああ、取ってない授業だ。見てないわけだ」

 という事にしておこう。実際は立場として学生やってるだけの二級学生なのであっちこっちに不定期出現している。
 まぁ名簿上にはいるので色々と複雑ではあるが。
 気にされると首を軽く横に振って。

「いえいえ、ここで大丈夫ですよ。というか涼しい場所を探してるのに移動したら本末転倒でしょう」

 なのでここにしましょうと言って席に向かっていく。
 色々とメニューがあるが。

「それじゃ、お言葉に甘えて俺はアイスコーヒーにします。ごちそう様です!」

 とお礼を伝えるだろう。

「でも霊薬って実はあんまり詳しくないんですよね。不思議な薬……って事でいいんですよね」

 食べると一気に怪我が治ったりみたいなと。

如月 槐徒 > 「そうだね。じゃあ座ろうか」

一応聞きはしたが答えはほぼ決まっていた。
同じ考えでいたようで安心。席について青年がメニューを見ている間にメガネを外す。
内ポケットからメガネ拭きを取り出してメガネを拭く…
と、同時に青年の方を見る。
と言っても見るのは少年の青年の一部でいい。
顔を見たりするのではなく、眼鏡を見るぐらいの角度でお腹や腕でも見れればいいだろう。

目的は邪気を見る事。
青年の不調がどの程度のものなのかを確認しようと思ったのだ。
一応だ。

…そう、一応のつもりだったのだが。

「…ああ…あ、あぁアイスコーヒーだね。俺は…どうしようか」

明らかに不審な様子を見せる教師。
それもそのはず、その邪気を見通す目は、青年に付きまとう熱中症とは明らかに違う邪気を見ていたのだ。
目を見開き、一秒に満たない時間硬直した後落ち着いて眼鏡をかけ直す。

「…そうだね。霊薬は通常の薬では対処できない病や怪我を治す事が出来るんだ。
…ところで…詳細は詰めないし、秘密にもすることを約束する。
その上で聞きたいのだけど…君、何か呪いでもかけられているのか…?」

深刻な目つきで、尋ねた。ただ、決して脅す様なことは無いように、控えめな口調になるよう気を遣った。

照月奏詩 >  
「……なるほど、お医者様は凄いですね。いや、霊薬とのことですし薬剤師? でも一応は教師なんですっけ」

 水を飲もうとしていた所でそんな言葉を言われれば少しだけ笑う。
 悪意を見抜けるのならこれは見抜けるだろうか。瞬間青年が纏うは猜疑心。
 とはいえなぜ心配しただけでそれを纏うのか。そして……歴戦の詐欺師を相手取るほどの濃度のそれを見せるのか。
 理由は単純。病ではなく呪いという表現をしたこと。つまり邪気などを見ているのなら……自身の本業。つまりは殺し等も見抜かれる可能性もあるからだった。

「呪いではないですが、少し厄介な病気はありますよ。俺、バイトでクリーンダスターズって所にいるんですけど、あそこ結構ヤバい場所に行くところもあるんです。そこでちょーっと厄介な魔法生物と対峙したことがありましてね。なんか厄介なのに感染したっぽいです」

 全部までは話さずその上で嘘と真実を混ぜる。
 相手を騙す際の常套テクニックのひとつだ。

「サイフが不味いのもそれが原因ですよ。薬とかが必要でしてね」

 

如月 槐徒 > 「今はちゃんと教師だよ。だけど、君のような症例の子は何人も見てきたよ」

これは本当だ。見透かしたのは異能の力だが。
青年の警戒は空振りだ。何故なら異能は目に宿っているが、眼鏡をかけている間は機能しない。
先ほどのように眼鏡をはずさないと邪気は見れないのだ。
よって猜疑心には気づいていない。とはいえ、その猜疑心の濃度に、青年に変化があった事には気づくだろう。

…本来なら、もっと冷静に、こちらの異能を見透かされないように話を持っていく所なのだが…
どうにも珍しい邪気に冷静を保てなかった。だが、どこかで見覚えがある気もする。
何だろう、これは。

「なるほど…確かに学生には厳しい出費かもしれないな。
…そうか、魔法生物か」

全部が全部本当とはいかないだろう。
だが、詳細は詰めないと約束した手前信じるしかない。
何か手を貸したいが…。

「…症状について聞いてもいいかな。対症療法にはなるけど、何か力になれるかもしれない」

出来れば根本から断ちたいが、それは彼の事情に踏み込む事になる。
約束がある手前難しい。症状ですら、教えてもらえないかもしれない。

照月奏詩 >  
 猜疑心には気がつかずとも語る通り変化は勿論あった。さっきまでよりかなり冷静な返答を見せているだろう。
 少なくとも熱中症ではないと見抜かれたならわざわざそう見せる必要もないわけで。
 とはいえそれを見せるのは一瞬。すぐに元の青年の姿に戻るだろう

「そうですね、精神に来るものというべきでしょうか。簡単にいえば暴れたくなるとでもいうべきか……で、それを抑えるには常に神経を張りつめていないといけない。気を抜くと……ってね。まぁ抑制剤は貰っているので寝る前とか定期的には飲んでますが」

 それでも結構来るんですよと笑う。

「でも、これはこれで必要な時もあって、その魔法生物の接近に気がつけるんです。仕事には便利でね。命に比べれば安いでしょ?」

如月 槐徒 > 「教えてくれてありがとう。抑制剤は飲んでるんだね」

暴れたくなる…殺人衝動だろうか?
精神に影響を与える病か、呪いか。

仕事に便利と言っているが、外での様子を見るにそれ以上の負荷を負っている可能性は考えられる。

最悪な想像をしてしまう。彼女…いや彼を思い出す。
異能により姿が変わり、その精神にまで変化がみられると思しき彼。

「最近何か身体に変化はなかったかい?例えば背丈の変化、肉体の一部の膨張…身体能力の向上とか」

肉体に精神が引っ張られるのなら、精神に肉体が引っ張られる事もあるのではないだろうか。
…考えすぎだといいのだが。

何にしろ、既に薬を服用しているのであれば飲み合わせなども考慮する必要がある。
…分ってはいたが、難しい話だ。

照月奏詩 >  
「……感知できるというのもそれのひとつですが。気配をかなり敏感に察知できるようになったというのが最大の変化ですかね」

 というと目を閉じる。
 1秒にも満たない時間。

「今このカフェの内部に40名。スタッフ6名に客が34……数えてみても良いですよ」

 というと目を開く。
 言葉を濁しているが、気配に敏感になったというよりは殺意に飲まれ殺したい存在の数が察知できるというのが正解だがそうは言えないので気配に敏感にあったと言い換えた。
 もし本当に数えるなら数に間違いはない。

「まぁ能力があったり、訓練を受けている人なら出来ちゃう技術なんであまり参考にはならないんですが」

 実際、殺意に頼らずともやろうと思えば同じ事は出来る。とはいえここまですぐに正確には出来ないだろう。

如月 槐徒 > 「ありがとう。
…結局色々聞いてしまってすまない」

苦笑いして応じつつ、店内の人間の数を数える。
…見える範囲、客だけ数えてみたが恐らく間違いはない。
青年の言う通りこういった技能を持っている人はいるだろうが、実際に見せられると信じがたい能力だ。
…なんの能力だ。

「…」

少しばかし考え込む。
暴力衝動、座り込んでしまうような負荷、精神への影響、周囲の気配を正確に感知、察知できる。
肉体への大きな変化は現時点ではない。魔法生物。

「…その魔法生物は…紅き屍骸といったりはしないか?」

紅き屍骸。以前より常世島の封鎖区域に確認される危険な怪異だという。
感染により数を増やすゾンビのような存在だと聞いている。

ゾンビは見た事がある。と言っても人間のではないし、あくまでも管理された実験の中での話だ。
感染した者は容姿は変わらず、何かを恐れる様に暴れ狂い、やがて衰弱し死に至る。
そして、死後復活し仲間を増やすべく動き出す。
他にも固有の特徴を多く有していたが、今の青年の状況はそのイメージに近しい部分がある様に思えた。
今の青年の特徴のいくつかも、それで説明がつく気がする。
イメージと別の事例での妄想に過ぎないかもしれないが…

照月奏詩 >  
「いえいえ、心配してくださっているだけですので」

 教師として放置はできませんからねと笑う。
 疑われるのは慣れているし、それを誤魔化す術もいくつか有してはいる。
 その後該当の名前が出てくると。

「さぁ、名前までは。でもたしかに紅かったですね。落第街に迷い込んだ時に遭遇しまして」

 後ゾンビみたいでしたと。答えた。
 名前まで正確に把握しているのは一般人としては不自然。まぁSNS等で広まっている話ではあるのかもしれないが。

「先生はご存じなんですかその……紅きなんとかっていうの」

如月 槐徒 > 「そうか…ならそうかもしれないな…」

落第街に入り、そんな危険なものに遭遇するようなバイト…出来れば止めたいが、それは主義に反する。
それに、そこまで無責任な事は言えない。
とはいえ、そうか…

「名前と少しの話だけだけどね。俺の授業をとってくれてる子が話してたんだ
確か…そうだ、治療薬の話だ。確か、治療法自体はあると言っていた」

既に先月の話だったはずだ。もっと前かもしれない。

「島内の医療機関は受診したかな」

もし聞いた話が本当なら、これほど苦しむ問題にはなっていない筈だ。
別の魔法生物かもしれないし、やはり事情があるのかもしれないが…
紹介状を書いたり金銭面での援助ぐらいなら可能だ。
受け入れてもらえるかは、また別だが。

照月奏詩 >  
「ええ、一応は。そしておっしゃる通り治療法はありました」

 医療機関は闇医者だが行ったし、治療法に関しても確認した。
 しかし少し笑って。

「でも、残念ながら金銭的に無理でしてね、借金して治療するわけにもいかない。そんな事をすれば文字通り金銭不足って不治の病になる」

 そして手をヒラヒラと笑う。

「一応無理やり治療する方法もあるんですよ。風紀委員に入るとかね。そうすれば向こうの経費で治療してもらえる……でも、俺はそんなに強くない。経費で治療してもらえるような前線部隊に配属されれば最後。待つのは死ですよ」

 一般人としてはまっとうな理由を並べる。
 治療などはどうしても費用がかかるから無理。費用をなんとかしようとすれば今度は風紀とか特殊な職につかないといけないからと。

 

如月 槐徒 > 「…そうだね」

青年の言っている事は何ら間違っていない。
治療法があるからと言って、誰でもそれを享受できるとは限らない。
風紀に入るという方法だって、リスクがない訳ではない。
話していない事情だってあろう。

とはいえ、とはいえだ。本当に紅き屍骸の感染によるものだとすれば…
いずれ、奴らの仲間入りを果たす…かもしれない。

このまま治る可能性もあるし、想像よりも軽い症状かもしれない。
だが、見過ごす事は出来ない。

だからと言って何が出来る…?

一瞬の間に思考を巡らせる。

「…すまない。今の俺には何もできないかもしれない」

一度頭を冷やす事にした。
そこまで熱くなっているとは思っていなかったが、思考にロックがかかっている気がした。
一度大きく息を吐き、素直に無力であることを伝えた。

「だけど、君の状況は危険だと思う。放置はしたくない」

あれほどの邪気は中々のものだ。強力な呪いと比べれば可愛いかもしれないが、それでも命に係わるレベルだと判断した。

「だから、俺の方で何か方法を探す。俺のエゴかもしれないが、力にならせてほしい。
少し、待ってもらえないか」

一方的な申し出であることは分かっているが、それでも放っておけない。
霊薬の知識の活かし時だ。幸い、資金も資源も潤沢だ。最悪実家に頭でも下げればいい。
初めて会っただけの生徒だが、それでもその道を断たせてしまいたくないのだ。

照月奏詩 >  
「……気持ちは嬉しいです。ありがとうございます。でもさっきも話した通り便利なんですよこれ」

 なんて少し笑って外に目線を向ける。

「前に生き残れたのは本当に偶然です。でもこの力に目覚めてから危険地帯でも危険が近寄って来たらすぐにわかる。防御系の異能なので不意打ちを受けなければ意外と生き残れるんです」

 と言ってそちらに目線を戻す。
 そして肩を竦めた。

「でも、そうですね。ずっとこのままというわけにもいきませんし。お願いしておきます……一応チャットのIDもお伝えしておきます。何かあった時に連絡が必要ですから」

 そう言って携帯電話を取り出して連絡アプリを起動して先生に見せる。

如月 槐徒 > 「ありがとう」

これまた青年の言う通りだ。
危険地帯で仕事をしているのなら、その察知能力は強力なものだろう。
であれば、失うのは逆に痛手とも言えよう。
ギリギリの生活を知らない俺には分からない世界だ。情けない。

本当に情けない。道を断たせたくない。そんな理由で邪魔をしてはいないだろうか。
そう思ってしまった。不甲斐ない。

「いつでも連絡してくれ。危険だと感じる様な事があれば、すぐにでも連絡してくれると嬉しい」

だから、せめてタイミングの判断は本人に委ねよう。
それは死の間際かもしれないし、取返しのつかないタイミングかもしれない。
けれど、俺は彼の選択肢の一つであろう。こちらから強要するような事は…可能な限り避けよう。

旧型のタブレット端末を起動し、連絡先を登録させてもらう。
そして、こちらから「如月槐徒です」と、確認用のメッセージを送っておく。

「そういえば注文がまだだった。長く付き合わせてしまって本当に申し訳ない」

店員を呼んでアイスコーヒーを注文する。

照月奏詩 >  
「いえいえ、ありがとうございます先生。そういえばそうでしたね。水だけでなんとなく満足してました」

 折角の機会なので奢ってもらわないとなんて年相応に笑って見せた。
 そうして注文をすればきっと他愛もない話や授業の話。学校の話なんかをして過ごすのだろう。
 食事が終わればありがとうございましたといって別れ、彼はまた仕事に行く。ここからは夜の時間。仕事は仕事でも夜の仕事だ。

如月 槐徒 > 「そうだね。俺も何か注文しておくか」

適当に選んだメニューを追加で店員に告げた。
その後は、他愛もない会話をするだろう。

「…久しぶりに被るか。アレを」

青年が去ったのを見届け、一人ぽつりと呟いた。
青年に話せない事があるように、彼にも隠し事はあるのだ。
異邦人街の奥地へ、少し急いた歩調で去って行った。

ご案内:「異邦人街」から照月奏詩さんが去りました。
ご案内:「異邦人街」から如月 槐徒さんが去りました。