2024/08/22 のログ
ご案内:「異邦人街」に田中 浩平さんが現れました。
田中 浩平 >  
学校帰り。麺処たな香は今日は休みだ。
よって放課後はフリータイム。
とはいっても帰りに目ぼしいものなく。

アパート借りてる異邦人街に着く頃にはすっかり空腹になってしまった。

なんかこの辺で飯食うかなぁ。

田中 浩平 >  
ふと、露天で変な人形を見つけた。
異邦人街にある変なものはもう普通なんだが。
時々目を引くほど変なものが売っていることがある。

なんだろう、角が生えた人間が踊っている? ような?
木彫りの? 人形……?

「これなんスか」

露天商に聞いてみる。
あ、見たことのある顔だ。多分三年生。

露天商 >  
顔を上げて声をかけてきた少年を見た。

「入荷したばっかりのタウマクタンギハンガコアウアウオだよ」

にっこり笑ってそう返す。

田中 浩平 >  
「タウ……何?」

聞き取れなかった。
そして多分聞き取れても覚えきれないやつだこれ。

「なんかご利益があるとか……?」

そろそろと人形に手を伸ばして。

露天商 >  
「日本で言う縁切り神社みたいなもんだね」
「持ってるだけで悪縁バッサリだよ~」

田中 浩平 >  
「遠慮しときます!!」

慌てて指を引っ込めた。
女の子の知り合いすら少ないのに縁を切られてたまるか!!

はー、と溜息をついて。
本腰を入れて夕飯を探し始めた。
夏の夕暮れ、まだ暑し。

田中 浩平 >  
醤油と砂糖、つまり照り焼きな感じの香りがする。
そっちのほうにフラッと足が向いた。

売っていたのは、串焼き……ただし、羽の生えたカエルだった。
ピチュ=ッパイガヤだ。異邦人街では割りと見るけど。

食べたことはなかったな……カエルだし。
しかし照り焼きにされてると美味そうに見えるのは日本人の業(カルマ)。

田中 浩平 >  
「一本ください」

空腹にプッシュされて買う。なんとびっくり250円。
しかしどこからかじりつけばいいんだこれ。

照り焼きにされたカエルと目が合ったんですけど。

周りを見れば腹だの足だの好き放題食べている。
さすがに内蔵は取ってあるみたいだな……
食いでがあるのは足、か……?

息を呑む。
羽有りカエル、腹から齧る? 足から食べる?

田中 浩平 >  
昔、中華料理屋でティエンチーの丸焼き食べたけど。
カエルの味って雑肉の味なんだよなぁ~~~~~。

肉の味は大別して数種類しかなく。
カエルや蛇が鶏肉の味がするというのは。
要は鶏肉もカエルもひっくるめて『雑肉』という味がするだけだ。
牛や豚やアナグマが特殊なケースで、大抵の肉は雑肉の味なんだな。


閑話休題。
とにかく、あんまり期待しないで食べてみよう。
冷めたら勿体ない。

田中 浩平 >  
食べる。
じわ、と旨味が口の中に広がった。

これは……美味いぞ!?

雑肉の味じゃない、脂が乗った獣肉にも近い味だ!!
そして照り焼きのソースが絡まってこれは新境地ッ!!

なるほど、異界から来た厄介者もこうして食べれば大層美味いわけだな。
自分の見聞の狭さ、今はただ悔いるばかり。


こうなると飲み物が欲しくなるな。少し周辺を見てみよう。

田中 浩平 >  
道行く人が後付で異能が授かる、とかいううわさ話をしていた。
なるほど、最近はそういうのがブームなんだな。

でも落第街も異能バトルも無縁な俺にはちょっと関係ないなー。
無縁で思い出した、今度ヤギ乳の無塩バター届くからバイトたちと味見して使えるか話し合わないと。

飲み物、飲み物……
ふむ、リンゴジュースか。
『黄金のリンゴ、いざ出陣(デヴュウ)!! エイ・エイ・オー!!』
なんだこの看板のセンス。

出店にはサンプルの黄色いリンゴが並んでいた。
なるほど、これを絞ったドリンクね。

「一つください」

片手で器用に財布から金を払って片手に串焼き、片手にドリンクのスタイルへ移行。

田中 浩平 >  
一口飲んでみると、甘さと酸味のバランスが絶妙な。
言ってみれば普通より美味いくらいのリンゴジュースだった。

うん、普通だよ普通。
これくらい青森に行った時に飲んだことあるくらいの。

なのになんかこう、ストローから口を離せないな。
謎の魅力がある。

なんだ……!? この飲み心地は!?
喉越しが爽快すぎてサイコーじゃねぇかこれ!?
言ってみれば体育でマラソンした後にみんなで駄弁りながら飲むジュースのような!!

せ、青春の味……!!

気がつけば満面の笑みになっていた。
このカエルとリンゴジュース、店で出せないかなぁ。
ラーメン屋でもリンゴジュースくらいは出せる気がするな……

田中 浩平 >  
食べ終えて串を折り、紙に包んで共有ゴミ箱に捨てる。

メモを取ろう。
夏の終わりに黄金リンゴジュース……
ありだな、ああ、ありだとも。

後は販路か。上手く店で出せたら良いドリンクになると思うんだよなぁ。
こういう時が一番ウキウキする。

田中 浩平 >  
さて、この黄金のリンゴを市場をさらって探しまくるぞー!!
店の人には聞けない。
ライバルだもの。

そんなこんなで腹とやる気を満たして、金曜日に臨む。
これも学生の姿と思ってもらおう。

益体のない考えを迸らせたまま、アパート(アーバンパレス富岡)まで歩いていった。

ご案内:「異邦人街」から田中 浩平さんが去りました。