2024/09/08 のログ
ご案内:「異邦人街」にアーヴァリティさんが現れました。
■アーヴァリティ > 「今日こそ探そう~♪く~し~♪」
この前は結局逃げ帰っちゃって買えなかった櫛を!今日こそ買おう!
「ふふふ。今日のボクはしっかり下調べをしてきたからね…!
確かこっちだー!」
あの後落第街のマップとかを調べてみたんだけど、結構ネットでまとめられてるお店もあったんだよね。
その中で髪飾りを売ってる細工屋さんを見つけてね?
そこに櫛も売ってるんだってね!
という訳でそこへゴー!足取りが軽いね!
■アーヴァリティ > 「おじゃましま~す」
お店の人に迷惑にならないぐらいの小声でご挨拶。
挨拶は大事らしいからね。しっかり声かけしないと。
店名はあどまいやヘアーかな?意味は知らない。
お店の外観は異邦人街の中ではっちょっと目立つ感じ。
ちょっとだけだけど高級感のある整った外観。だけど品物はお手頃なものもある。
なにより品質がどれもいいらしい!いいレビューばっかりでびっくりした。
いくつか追い返されたみたいなレビューがあったけど、まあ大丈夫だよねきっと。
「わあ~」
西欧風?の内装も綺麗。暗めの店内だけど売り物のあるところは明るく照らされてる。
そこまで高そうな装飾とかはないのになんか凄い高級感…
台に並べられた髪飾りとかイヤリングみたいなのは結構高そうだけど…
盗まれないのかな?
「櫛はどこかな~?」
■店の奥から響く声 > 『櫛をお探しなんだね~』
お客の少女の独り言に応える様に店の奥から響くのは中性的な声色。
年齢も性別も分らない。つかみどころがない、否、つかめないまま心の奥までもぐりこむ声だ。
『どんな櫛をお探しかな?』
■アーヴァリティ > 「!
はい!櫛を探しに来たんです!」
一瞬びっくりしたけど、店員さんか店長さんかな。
ボクの櫛探しを手伝ってくれるのかな!
ちょっとどぎまぎしながらお返事。
「えっと、黄楊の櫛で真紅とか群青とか、木目のを探してます。
ありそうですか?」
いつもの調子で話しかけるとなんだか追い出される気がするからちょっとかしこまってみた。
姿すら見えてないのに、あっちの姿でも勝てる気がしないぐらい強そうな感じがするんだ。
■店の奥から響く声 > 『そうかいそうかい。櫛はそうだね…目をつぶってまっすぐ三歩歩けば辿り着くよ。欲しい櫛のイメージを浮かべてね…』
心を透かす声は心なしか嬉しそうな雰囲気がする。
■アーヴァリティ > 「え?目を瞑って…三歩…?」
不思議な声はまっすぐ歩けって言ってるけど、目の前には棚があるから絶対にぶつかる。
向こうの人はこっちが見えてないのかな?
(そうだ!三歩下がってから歩こう!)
横を向くのは違う気がして、後ろに三歩歩いてからまっすぐ歩く事にした。
店の入り口ギリギリまで下がってから、目を瞑って…
(1、2,3!)
「………え?」
目を開けると洞窟にいた。
遠くから水の流れる音がする、凄い綺麗な洞窟。
ちょっと光ってる石…これは宝石かな?
「え?え?どういうこと??」
大混乱。
■店の奥から響く声 > 『あーこらこら。その場からで良かったんだよ。棚にぶつからないようにしてくれたんだね、ありがとう』
謎の場所に迷い込んでしまったお客の少女に、またあの声が聞こえる。
その声はさっきと同じ距離感で少し焦った様子だった。
『次はその場から言った通りに歩くんだ…動かないでね…
うん、左を向いて真っすぐ3歩歩くんだ。たとえ何かにぶつかってもね』
慎重そうだ。
■アーヴァリティ > 「わ、分かりました!」
ボクの実家を思わせる場所だ。
あそこよりも自然っぽい場所だけど、こっちの方が清潔…洞窟なのにね。
このキラキラも宝石だったりしてね。
…絶対拾っちゃダメだろうけど。
言われた通りに立ち止まって待ってたら、すぐにさっきみたいな指示。
左を向いたら…うん、すぐに岩の壁だけど。
(今度は…言われた通りに!)
目をつぶって、左を向いて
(1…?!2、3!!)
一歩目で壁にぶつからない事にすごいびっくりしたけど、そのまま三歩歩いたら…
「…不思議だなあ」
店内に戻ってた。
しかも、周りには黄楊の櫛が並んだ棚がある。
さっぱり訳が分からないよ。
ちょっと力が抜ける。
■店主 > 「待ってたよ。小さなお客さん。
___はここの店主をやっているよ。来てくれてありがとう」
お客の少女の背後に浮かぶように立っている…何者か。
顔があるだろう場所には布がかかり、長く鋭い4本の爪がついた腕が二本。
胴体は…ある筈なのに見えない。
足に至っては全く存在しないように感じられる。
身長も性別も分らない不思議な存在がそこにはいた。
「気に入る櫛があるといいけど。
誰が使う櫛なのかな?」
それとなく尋ねる声は上機嫌だ。
■アーヴァリティ > 「は、初めまして!ボクはアーヴァリティです!!」
背後からの声に慌てて振り返って、その不思議な姿でまたびっくりして…
ひっくり返った声で押し流されるぐらいの勢いで自己紹介しちゃった。
あ、笑ってくれて…る?わ、わかんないな~~~?
「ぼ、ボクと一緒に住んでる人に贈るんです。
櫛が欲しいって言ってて、お祝いで何かプレゼントしたいんです!」
ファラに贈る櫛。そんな事聞いてどうするんだろう?
■店主 > 「そうかいそうかい。贈り物ね。教えてくれてありがとう
それじゃあ___はここで見ているから、ゆっくり見て行ってね」
店主の一人称が入るであろう部分はどうあがいても聞き取れない。
一人称であることは分かるが、それ以上は不明だ…
聞きたい事は聞けたようで、「ふふふ」とささやかな微笑みを残してその動きをとめた。
店主の些細な動きで触れあっていた爪の音も消え、僅かな動きを含めて一切が停止した。
■アーヴァリティ > 「は、はい。ありがとうございました…?」
よく分かんなかったけど、満足した…?のかな??
本当に何がなんだか分からないけど、急に動かなくなっちゃった。
恐る恐る近づいてみても微動だにしない。
爪は…やばいね。これ凄い鋭い…
絶対触らないほうがいい。
そっと離れて、櫛を見に行こう。
「すごい…」
棚に並んだ櫛はド素人のボクにも分る。どれも凄い丁寧に作られてる。
これで毎日髪を梳かせたら絶対心地よい。そんな気分になれる不思議な櫛が並んでいる。
真紅、群青、木目のどれもある。サイズもいくつもあるし、形状だって考え得るものは全部ある。
これを眺めているだけでも満足してしまいそうだけど、ボクの視線は最終的に一点に吸い寄せられていた。
■アーヴァリティ > 「…いいなぁ」
ボクのお腹ぐらいの高さ、右手の壁に備えられた壁掛け棚に9つの櫛が並んでいる。
その9つは赤3つ暗い青3つ、そして綺麗な木の色が3つ。少し離れてても全部凄くいい櫛に見える。
吸い寄せられるみたいに歩いて寄ってみると、商品詳細の札がそれぞれの櫛に置かれている。
9つの札にはどれも黄楊の櫛であることと、その値段がボクの手持ちギリギリか少し超えている事が書いてあって…
「わぁ……どうしようかな」
無意識に驚いて、声が漏れちゃった。
どれもいい物で、だけどどれが欲しいかなんて一瞬で3つまで絞れちゃった。
それは、一番奥にある一番高い3つ。ギリギリ所持金が足りないけど、これを一番贈りたい。そう思った。
どれにも赤い鮮やかで凄い…なんだろう、美しくてファラみたいな花が描かれてる。
「もうちょっと節約すればよかったな…」
ちょっとだけ反省。
手前の六つもいい物だし、こっちでもいいとは思うけど…
■アーヴァリティ > 「色はどれにしようかなぁ」
お値段は一回置いておこう。
先に色を決めよう…って言っても、実はもうほぼ決まってて。
「真紅、だよね」
今のファラのイメージは毎日一緒に居ても頭上の赤いお花、確かダリア…あれのイメージが結構強い。
それで、お花の柄を見たら、もうそれのイメージが凄いついちゃって。
「これかなあ」
真紅の黄楊櫛で、ボクの所持金ギリギリの二番目に高いの。
これにしようかな…でもやっぱり…
「あのー…おおお?!」
店長さんに決めた事を伝えようと思って、ふり向いたら。
そこに店長さんがいた。こっちを見下ろしている店長さんがすぐそこに!!!!
■店主 > 「それ、___が選んだのと同じ値段で売ってあげるよ」
驚くお客の少女を他所に、明らかに嬉しそうな声色で話し始める店長。
右手?の爪を動かして指さしたのは、一番高い真紅の黄楊櫛。綺麗な花の模様が入ったもの。
「どうしてもそれがいいんだよね?___の心意気に免じてまけてあげるよ」
見えない筈の顔が笑っているように感じれる。
■アーヴァリティ > 「え?え?ど、どうしてですか?」
店長さんが言ってる事はわかるんだけど、その理由がさっぱりわからない。
こんなに高いものを安くしてくれるなんて。どうして?
「えっと、その
またお金貯めてから来るから、それまで残しておいてもらえませんか…ってお願いしたかったんです!」
■店主 > 「知っているよ。だからまける事にしたんだ。」
お客の少女の言葉にゆっくりと柔らかな声で応える。
少女の方を優しく見下ろして続ける。
「早い所プレゼントしたいんだよね。気にしないでいいから。ラッピングはどうする?」
それだけ言って、さっきまでは無かったレジカウンターへと向かう店長。
もうすでに心に決めていたようだった。
■アーヴァリティ > 「……」
店長さんの言葉にびっくりしてぽかーんてなっちゃった。
ずーっとボクの心は読まれてたってこと?
…本当に不思議な人だなあ。
「あ、ありがとうございます!」
ふり向いて店長さんの背中?に向けて頭を下げて感謝の気持ちを伝える。
数秒してそっと頭を上げてみると、首だけ回してこちらを見ている店長さんがいた。
頭が斜めって、布の影からにっこり笑ってる口が見えた気がしたけど、すぐに見えなくなった。
気のせいだったのかな?
その後、ボクの所持金の殆どでお会計をした。
店長さんはさらにまけてくれようとしたけど、流石に申し訳なくて遠慮しちゃった。
■アーヴァリティ > 「本当にありがとうございました!!!」
お会計も終わってお店の入口。
ラッピングしてもらった櫛の入った真紅のリボンのついた紙袋を持って深々とお辞儀してるボク。
何から何までお見通しだったみたいだし。そう考えると、最初からずっと誘導してもらってたんだと思う。
ボクが贈りたいって思える一番いいものを見つけてくれたんだと思う。
お陰でファラにいい物を贈れそう。
■店主 > 『いいんだよ。良かったらまた来てね。気を付けて帰るんだよ』
再び姿を消した店長。
お客の少女の言葉に、満足気に別れの挨拶をする。
随分と楽しそうである。
■アーヴァリティ > 「はい!また来ます!」
絶対来るね。こんなにいいお店なら、また来たいよ。
「ありがとうございましたー!」
店長さんに最後に大きな声で挨拶だけして!
さようなら!ありがとう店長さん!
「待っててねファラ!」
駆け足で帰ろう!
いつ渡そうかな!どうやって渡そうかな!
今とっても幸せ!!
■長身の女 > 「……」
横を通り過ぎていくメスガキ。
何かラッピングされた袋を持ってる。プレゼントか?
出てきた店は…ふむ、高級店っぽいな
「へぇ…」
店に入ってみたら、妙に暗いが、いいもんが並んでいやがる。
しかも、防犯意識が皆無だ。
「すみませーん」
誰もいないのか?
■店主 > 返事は返ってこない。誰もいないのだろうか。
■長身の女 > 「誰も居ないんですかー?」
しらじらしい嘘だが、まさかこんなこと言いながら盗む奴がいるとは思わねえだろ。
防犯意識が成ってないほうが悪いんだ。私は悪くねえ。
宝石のついたイヤリングやら指輪をポケットにどんどん入れていく。
それほど高いもんは無さそうだが、これだけあればカネになる。
「…居ないか」
ポケットがパンパンになったし、そろそろ店から出ようと振り返った時だった。
「は?」
入り口がない。
■店主 > 「禍福は糾える縄の如し、だったっけ
折角いい子が来た後なのに…」
女の後ろには長く鋭い8本の爪を携えた不気味な化け物が立っていた。
「ハァ…」
そして、その爪を振り上げて――――――
■長身の女 > 翌日、行方不明届けが出された。
2年留年している女生徒が異邦人街から帰らないとのことだった。
そして、見つかることは無かった。
ご案内:「異邦人街」からアーヴァリティさんが去りました。