2024/10/14 のログ
ご案内:「異邦人街」に武知一実さんが現れました。
■武知一実 >
「……この辺りもだいぶハロウィンっぽくなってきてんだな」
様々な飾り付けが施された、異世界情緒あふれる街並みを眺めながら石畳の上を歩く。
今日のバイトは早朝から昼前までのシフトだったため、どうせなら異邦人街で昼食を、と思って来たのだ。
思えば常世島に来てから、ほとんどこの辺りには来た覚えがない。 避けてたという訳でも無いんだけども。
「あんま、異邦人っていう存在に馴染みが無かったからか……?
いや、それを言ったら同じ年頃の人間も馴染みが無かったじゃねえか」
そんな事を独り呟きながら、観光気分で通りを歩く。
建造物や商店、通行人に至るまで普段利用している学生街とは趣が違って面白い。
ただ、土地勘が無い所為で、飯屋がどこか分からん。
■武知一実 >
「まあ、そこまで腹は減ってねえし、運よく見つけたら入ってみるとして、だ。
……お、何か露店やってる」
気の向くままに路地に入れば、露店が立ち並んでいた。
見た感じ食い物の屋台は無いみてえだが、アクセサリやら反物やら、装飾品と思しき品物が売られている様だ。
「ふーん、ボディバッグに付けられる様なキーホルダーみてえなの、売ってりゃ買ってくか……?」
それかあるいは地域性が色濃く出てるパーカーとか。
最終目的は飯食う事だけど、こういう普段来ない様な場所で買い物してみるのも一興かもしれねえ。
ひとまず、露店を覗きながら散策を続行中。
ご案内:「異邦人街」に古鐘 瑠璃さんが現れました。
■古鐘 瑠璃 > ふと目についた露店。
並んでいるのはアクセサリー類に見える。
しかし、それにしては不自然なまでに人が寄っていない。
黄金の瞳が少年を捉えた。
「……あやしいアクセサリー売ってるのです」
あやしかった。
■武知一実 >
学生街や商店街だと営業系の校則とかで、あまり露店食み掛けねえからなあ。
こうして様々な露店が軒を連ねているのは何だか新鮮だ。
祭りの時の出店通りみてえな……いや、話でしか聞いた事ねえけど、この島の祭り。
「……ほー、ん?」
冷やかしを悪く思いつつも、各店の店員が気にしていないのを良い事に露店を転々としていく。
その最中、一つの露店の前で足を止めた。
並んでいるのはアクセサリの様だけど、店員は学生っぽいし、異様に客の気配はないしで何となく怪s
「……いや、売る側で言っちゃうのかそれ」
銀髪で、黄金色の瞳の店主と目が合い、思わずツッコんでしまった。
■古鐘 瑠璃 > 「あやしいあやしいアクセサリーなのです」
店の前に並んだ少年にちょいちょい、と手招きをする。
出来はいい。
センスもいい。
値段もそう悪くはない。
「装備しているだけで刺されても爆破されても飛び降りても1回だけ死なないアクセサリーなのです」
あやしかった。売り文句が最早怪しすぎた。
■武知一実 >
「そりゃあ……確かに怪しいが……」
怪しいと言うか胡散臭いと言うか。
今のところ刺される予定も爆破される予定も、高いところから飛び降りる……はもしかするとワンチャンあるかもしれねえが。
いずれにせよ、死ぬような目に遭う予定は無い。あってたまるか。
「えーと、まあ……何つーの?
要するに……おまもり、みてえなもん?」
効果が物騒過ぎて試してみる気にもならない。
とはいえ、臆面もなくそんな売り文句を出してるからには、効果は保証されてる……ん、だよ、な?
思わずアクセサリと店主の顔を交互に見て、眉根を寄せるオレだった。
■古鐘 瑠璃 > 「いわゆるリバースドールと言うマジックアイテムなのです」
ひょい、と一つ持ち上げたのは羊さんが刻まれたタグ。
それをゆらゆらと揺らせば黄金の瞳が少年を見つめる。
「即死級ダメージを受けた場合、この羊さんが肩代わりして砕け散ると言う代物……おかしい……異世界ではバリバリに売れた逸品のはずなのです……」
おかしい……何かがおかしい……。
そう呟く店主の少女。
「これがあればダンジョンでも死にたい放題の無茶無理無謀が押し通るのに……」
おかしいのはお前の死生観の方であった。
■武知一実 >
「リバース、ドール……」
出された名称に聞き覚えはねえ。
しかし、説明を聞けばなるほど身代わり人形の事か、と得心がいく。
持ち主の代わりに災難や病苦を請け負ってくれるという、アレか。
要するにスケープゴートというやつだ。……羊じゃねぇか!
「あー、あのな?
そもそもこの島にダンジョンはねえし、死ぬことを前提に何かしようって奴もそうそう居ねえんだわ」
百歩譲ってダンジョンがあったとしても、死ぬこと込みの無茶をする奴はそう居ない気がするが。
■古鐘 瑠璃 > 「……そうなのですか……じゃあこのへんの矢避けの加護のお守りとか」
ひょい、と出したのは矢が突き刺さってびっくりしてる山羊のお守りとか。
「炎耐性がつく火避けのお守りとか、雷耐性のつく避雷のお守りとか」
燃え盛るゴリラのお守りとか、雷に撃たれてほねが見えている魚のお守りとか。
どう考えてもご利益のなさそうなデザインをしている……!!
「ダンジョンがないのも興味深いデザインなのです……この世界の科学というもんはすごいと思うのです……。
ダンジョンや魔物と言う脅威無しにどうしてここまで進歩できたのですかね……」
ぼやきながら黄金の瞳がもう一度見る。
「……何か欲しいお守りとかアクセサリとかないのですか?」
作れるのですよ、と大きなアホ毛が主張するように揺れた。
体躯の割に大きな胸もたぷん、と揺れた。
■武知一実 >
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってくれ。
ええと、客のペースで商品を見せるのも大事だと思うんだよな」
止してくれねえか、ツッコミどころ満載のアクセサリを次々繰り出してくるのは。
近頃腹減りポン魔とか腹減り着物金物屋とか、ボケの波状攻撃を繰り出す相手と話す機会が多かったから新手のツッコミ待ちは控えて貰いたい気分が強い。
いや、売られたら買うが。そこは喧嘩と同じだ。
「矢も火も特に相手取る予定はねえし……雷に至っちゃ元から耐性持ちだからな……
まあ、大変容以前は人間同士でドンパチやってたからな、そのお陰で科学が発展したらしいし。
後は単純に好奇心の賜物なんじゃねえの」
オレも歴史の授業で聞いたくらいなので詳しくは知らねえが。
大変容以降は魔物とか怪異とか妖異とか、人間同士の戦争どころじゃねえってなったし、
異世界からの来訪者……異邦人から齎された技術が転用されていったらしい。
「欲しいお守りとかアクセサリ……別に、特別何か御利益があるもんじゃなくて良いんだけどよ」
作れるの? 誰が?
思わず店番と思しき女子を見て首を傾げてしまう。
■古鐘 瑠璃 > 「なるほど、それも一理あるのです」
ぴたり、と止まり、ご利益がなさそうなアクセサリー群をしまう。
性質が悪いのはこいつはボケたくてボケているわけではないことだ。
いや、少年が出会った人々もボケたくてボケているわけではないだろうが。
だが、この少年からは……そう、感じるのだ。
ツッコミの波動を……!!
「人間同士でどんぱちやるだけにしては発展の仕方があまりにも急速とも思うのですが……」
首を傾げればぽよん、とアホ毛も揺れた。
そして怪訝そうに見られれば。
「瑠璃は錬金術師なのです。このアクセサリーたちは全部瑠璃の手作りなのです。
なんなら飲めばたちまち元気になる薬や飲めばたちまちムキムキになる薬とかも作れるのです」
■武知一実 >
「だろ? まずはゆっくりと客の出方を窺って、気にしてる様な素振りを見せたら説明すりゃ良い」
伊達に接客のバイトも経験していない。
物を売るってのはある意味釣りに似ている。待ちが勝負だ、待ちが。
しかしまあ、何だってこんなにツッコミをせにゃならん様になったのか。
いや、変にビビられたりするよかよっぽどマシなんだが……はぁ。
「まあ、その辺の事情は当時の連中に聞いてみねえと分からねえもんだよ。
おおよそ碌でもない事には違いねえとは思うんだけどさ」
研究施設に居ただけあって、内部事情は全くの無知というわけでも無い。
倫理さえ捨てちまえば、技術革新なんてあっさり進んでくもんだが、さすがに見ず知らずの幼気な女子に言えることでもねえし。
「レンキンジュツシ……え、これ全部アンタが作ったのか。
それは驚きだが……ええと、どういう意図で作ったのか疑問なんだが、今言った薬も含めて」
需要があると思って作ったってんなら、この島の人間への認識を改めて貰いたいところではある。めっちゃある。
■古鐘 瑠璃 > 「しかしおかしいのです……瑠璃の作ったアクセサリーは向こうでは爆売れで売れば売るだけ利益が出る高性能のはず……。
何故……売れないのです……」
そりゃあ効果が怪しいからである。
どこまで言っても異世界ギャップのせいだ。
「……まぁ、技術の発展にはどこまでも犠牲はつきものなのです。
それは仕方ないことなのです」
そのへんの価値観は異世界製なことと自身の経験、そして錬金術師と言う職業柄わかっている。
わかっているつもりなのだが。
「向こうでは爆売れでした」
どういう意図で作ったのか、と言われたら。
真顔で答えた。
「向こうでは爆売れでした」
繰り返し言う。大切な事だからね!!
こっちでは? うん、怪しいね!!
需要がねえこっちがおかしい、と言わんばかりに胸をはった。
どたぷん。
■武知一実 >
「向こうってのは……学生街とか?
まあ場所に応じた売り方ってのがあるからな、川で水を売るのと砂漠で水を売るのとじゃワケが違うのと同じだ」
瑠璃、っていうのがこの女子の名前なんだろうか。
どこか別の場所で売っていた時は売れていたのに、と不思議がっているが、まあ言った通り肝心なのは場所に応じた需要の見極めと、あとは売り方だ。
効果のほどは伏せて、土産物と同じように扱えば、今日のオレみたいな奴が物珍しさに買っていくかも。
「……あぁ、そうだな」
技術の研究・発展には犠牲も失敗もつきものだ。
だからまあ、廃棄品みたいなのも出てくるわけで。
「他所で爆売れだったのを根拠にすな」
真顔で答えられてしまった。
思わず真顔でツッコんでしまう。
「念を押すな!」
繰り返し言うほど大切な事じゃねえよそんなの!!
思わずツッコみの熱が上がる。止めてくれホントに……。
しかも買わない方がおかしいと言わんばかりの態度。
揺らすな揺らすな。出来るだけ気にしねえようにしてんだから。
■古鐘 瑠璃 > 「瑠璃は異邦人なので向こうと言うのは異世界のことなのです」
つまり少女の逸品は異世界では爆売れ!!
こちらでは?
そう言いたげに目を向けるときってふい、と目をそらすだろう。
「しかしなるほど……つまりこちらの世界に適合した商品を作る必要があると……。
……荒事が多いのだからやはり需要はあるのでは?」
ここをどこだと思っているのか。
落第街のような危険地帯ならいざ知らずまだ安全なこちらではDEFアップなど売れようものか!
「仕方ないのです。ではこちらのラインナップなのです」
そう言って取り出したるはいぬのようなキーホルダーやねこのようなキーホルダー。
なるほど、この程度ならばぶら下げていても不自然さはない。
「装備すると足が早くなったり、足音が出なくなったりするのです」
付加価値をつけるな。
だから売れなくなるのだと言うのに。
「冒険者たちには爆売れだったのです……」
アホ毛がへにゃんとへたってしまった。
残念だがこちらに冒険者はいない。
「そういえばお兄さん、お名前はなんなのですか。
瑠璃はこちらに来てからは古鐘 瑠璃と名乗ってるのです」
■武知一実 >
「ああ、異邦人。なるほど。
だったら尚の事、こっちの世界に応じた商品や売り方ってのを覚えねえとな」
異世界では爆売れだった、と。なるほどなるほど。命が安いような、そういう世界もあるだろう。
いや同じ感覚で物売るんじゃねえよ……!
「言うほど荒事が多い訳じゃねえぞ、言うほど。
まあ、喧嘩みてえな小競り合いは日常茶飯事だから、怪我が早く治るとかその程度で良いんじゃねえか」
あるいは落第街の方でなら売れそうな気もするが。
向こうは売り買い以前に奪って行かれそうという印象が強い。さすがにそこまで末法じゃねえと思うけど。
「まだ何か……あー、確かにこういうのの方が良いんじゃねえか。
動物マスコットみたいなのは流行ってるって聞いた覚えがあるし、足が速くなったり足音が立たなく……」
オレは頭を抱えた。
この店で売り上げを出す一番の方法は、店主を黙らせておくことかもしれない、と半ば本気で思う。
さっきのアクセサリもデザインは学生ウケしそうなんだけどな……!
「この島に居んのは基本的に学生だからな。
冒険者もゼロってわけじゃないが、商売やってく相手としては細過ぎんだろ」
アホ毛がヘタるのを見て、少し可哀そうな気がしてきてしまう。
いや、単にコイツが商売下手なだけだが。紛れもない自業自得なんだが。
「え? ああ、オレの名前?
武知一実、ただの学生だ。良ければかずみんって呼んでくれ」
■古鐘 瑠璃 > 「なるほど……怪我の回復が早くなる。
つまりリジェネ効果のあるアクセサリーなどがいいのですね。
あるのです!!」
できらぁッ!!
そう言わんばかりにぱんっと言う音とともに両手を合わせれば。
不思議な光が収束していき、そして一つのキーホルダーが出来上がった。
なんだこれ。なんだこれ。
錬金術です。
「と言うことでリジェネ効果のあるキーホルダーなのです。
500円でどうなのですか!!」
安い!! 出来もいい!!
でも売り文句は怪しい!!
やはりこの娘を黙らせた方が普通に売れる予想は正しい気がするだろう。
黙ってさえいれば見目も整ってるだけあって、売り子としては最適だ。
飛び出す文句が怪しくなければデザインも値段もあって売れていただろう。
「そうなのですか。かずみんお兄さん。
で、これ500円でどうなのでしょうか。
今日の瑠璃のご飯代になるのです」
ずずい。ずずい。寄ってきた。
ちんまいのが寄ってきた。
■武知一実 >
「いや、そういう事じゃなくてな……そういう事、か……?」
プラシーボ効果だけで充分なんだが、と言いかけたところで瑠璃がやたらと得意げに手を合わせた。
その手に向かって光が収束し、原理がよく分からねえけどもキーホルダーが完成する。
これが、錬金術……? いや、錬金術師がしたんだから、錬金術なんだろう。
「と言うことで、じゃねえんだわ。
今の流れでリジェネ効果を期待しろって方が無理だわ」
500円は確かにお安いけれども。
普通のただのキーホルダーとして売れば良いものを、何で胡散臭い効果を喧伝するんだコイツは。
黙って金銭の受け渡しだけしてりゃあ良いものを。
見た目も良いのに……いや、服装……制服に白衣は物売るって格好じゃねえな……?
「お兄さんって言われるほど歳も離れてねえと思うんだが、古鐘とは。
って、オレに売る気なのかよリジェネ付きキーホルダー!?
つーか本ッ当に今まで売れてなかったんだな、若い身空でそんなぎりぎりの生活すんなよ!?」
いや、もしかすると単純に飯代が500円ってだけで、生活は普通に送れてるのかしれねえが。
それにしては息巻いて寄って来る古鐘に若干引く。
■古鐘 瑠璃 > 「ゲーム的に言うなら毎秒HPが3%回復するのです」
チート効果であった。
ゲームでならば。
ゲームでならなぁッ!!
実際にHPなんて数値はねえんだよ!!
「そうなのです。かずみんお兄さんが今日の私のご飯となるのです
さあ。550円なのです。かずみんお兄さん、私のご飯になってくださいなのです」
あれ、値上がってる。
ずずい、ずずい、と這い寄る白衣。
■武知一実 >
「ゲーム的に言わんで良い!」
実際どれくらいの速度で怪我が治りやすいのかさっぱり分からん。
いや説明されても困るが、大変困るが。
もういっそ幸運を呼ぶお守りとか曖昧な文句で売れば良いんじゃねえって感じもしてくる。
「いや言い方ァ!一応異邦人街とはいえ、人目もあるんだから言い方気を付けろって!
ちゃっかり値上げしてやがるし、普通そこは値下げして揺さぶりを掛けるところじゃねえのか……」
オーケーわかったいったんおちつこ、それ以上近寄るなこわい。
しかし近づいたのを改めてみれば、だいぶちまっこい奴と言うか……何か色々アンバランスと言うか。
■古鐘 瑠璃 > 「仕方ないのです。じゃあよくありがちでかつ有名なこれならどうなのですか」
可愛いうさぎさんが後ろを振り返ってるキーホルダーだ。
うさぎのしっぽのもふさがチャーミング。
「幸運を呼ぶおまもりです。これなら430円でいいのです。
ですからかずみんお兄さん、私の今日のご飯に突撃晩ごはんさせるのです」
アホ毛が揺れる。
ちまっこい割に……そう、出るところは出ているのだ。
黄金の瞳はじぃ、と見つめる。
「それともかずみんお兄さんが奢ってくれると言うのですか!
今日の!! 晩ごはん!!」
どうしてそうなった。
■武知一実 >
「幸運を呼ぶお守りを売り付けられそうになってる時点でもう不幸だろ」
商魂逞しいと言えば良いのか、形振り構わず金を稼ぎたい程に貧窮しているのか。
けれどまあ、身形も服装もボロい感じはしねえし、単に今腹が減ってるってだけなんだろうか。
……だからどうしてこう高頻度で腹ペコ女子と出くわすんだろうなオレ。
「分かった、分かったから!
オレも丁度メシ探そうとしてたとこだし、奢るから一旦落ち着け。
頼むからツッコミ疲れで喉がどうにかなりそうな状況を一旦止めてくれ」
もう奢りで良いよ、バイト代貰ってるし……。
と若干弱気になる程度には今の状況は何とかしたかった。あんまり近寄り過ぎられると困っちまうし。
別に柔らかそうなのがオレの身体に当たりそうで困ってるとかじゃないから。たぶん。めいびー。
■古鐘 瑠璃 > 「その発想はなかったのです……迂闊だったのです」
それは完全に見落としていた。
目からウロコとはまさにことことか。
蒙昧さを気づかせてくれたことに感謝の祈りを捧げて。
「それならばよかったのです。
お腹ぺこぺこだったのです。
それではこれから今すぐに行くのです」
そう言えば、ぽん、と露店にタッチすれば、メカニカルな音をあげて格納されていき、最終的には手のひらに収まるほどのサイズに。
そして、それを異空間に格納してしまう。
この一瞬で何か目を疑うような光景が2つも繰り出された。
■武知一実 >
「そして売る側がそれで納得すんじゃねえよ」
商売する気あんのかコイツ……と本気で疑わざるを得ない。
多分金欠で食費も出せなくなってきたから、自分で作ったもんを売って飯代を稼ごうって事だったんだと思うんだけども。
何だかもっと違う(ツッコミどころ満載な)理由が出て来そうで怖くて聞くに聞けねえ……!
「今すぐに?……て、店はどうすん
……えええ、何それどうなってんだよ!?
店が小さくなったのもそうだけど、そんでそれを何処に仕舞ったんだよ!?」
は?え?は?今まで見せられていた胡乱な商品と比べてだいぶ商品価値のありそうな光景が飛び出してきた。
正直なところだいぶ理解が追い付かない。
自分でも分かるほど呆気に取られた顔で古鐘を見下ろす。
■古鐘 瑠璃 > 「蒙昧な瑠璃の目を開いてくれたお礼にこれはあげるのです」
かずみんは うさぎのしっぽ をてにいれた。
そうびちゅう LUK があがるぞ!
「……?
ただの収納ガジェットなのです。
そしてただのインベントリなのです」
商品価値が高そうな光景に関しては何をと言わんばかりに疑問そうだ。
こいつぁ価値観のすり合わせが必要そうですぜ旦那ぁ……!!
■武知一実 >
「いや、売り付けようとした物をそのままお礼に使うんじゃねえよ。
まあ、貰っとく、けど……」
ここで断ったらどんなトンチキアクセサリが飛び出てくるか分からない。
効果はどうにも手に入れた経緯含めて信用ならないが、デザインは割と気に入った。
動物、懐かれねえからこういう、モチーフってだけでもちょっと癒されるんだよな。
……ラッキーになるかどうかは、この際だからどうでも良いか。
「一体どんな世界から来たんだアンタ……
収納ガジェットの技術の方が売れると思うぞ、主に企業に。
さすがにオレもそこまで詳しい訳じゃねえが、少なくともここでアクセサリ売ってるよりはよっぽど儲けが出るんじゃねえか?」
その代わり何かと面倒な誓約もついて来そうな気がするけど。
そこは学園から代理人を立てたりすれば上手く行くんじゃねえかなあ。
■古鐘 瑠璃 > 「剣と魔法の世界なのですよ」
なんともファンタジーな世界からやってきた。
やってきた割にさっきのガジェットはどう考えても現代技術の科学より上の代物だ。
だが、そういうものを企業に売りつけると言う発想はなくて。
「企業に縛られるよりは瑠璃は自由な鳥でいたいのです。
そんなことよりもかずみんお兄さん、さあ、ご飯を食べにいくのです」
意味深なことを呟いてから気を取り直し。
そう言えば強引に手を掴んでしまい。
ぐいぐい、と引っ張っていこうとするだろう。