2024/11/29 のログ
ご案内:「異邦人街」にルーフラットさんが現れました。
ご案内:「異邦人街」にヴィシアスさんが現れました。
ルーフラット >  
夕暮れ。異邦人街。
僕は風紀から逃げ回っている。

畜生、無敵の力だと思ったけど銃を持った風紀複数にはさすがに勝てないか。
路地から路地へ。
今日は手を広げすぎて異邦人街まで来てしまった。

表が騒々しい。
裏道からどうにかして逃げないと。

喧騒 > 銃声

が響く、裏道に破裂音が聞こえる。

雑踏

が響く、無数の人が走り回る。

怒号

が響く、何かを追いかけまわしている人々が、すぐ近くまで来ている。

ヴィシアス > (――騒がしい。)

今日は、一段と。
この町の夕は普段から多種族が盛り上がるが、
異様な騒がしさを感じていた。

………裏道か?

よし。

ちょっと野次馬にいくか、
なに、この距離、私には大したことはない。
そう思って、そろりと、顔を出す…

ルーフラット >  
急に。顔を出した男にぶつかりそうになる。
角、いや、危ないな!!
人が逃げてる時に!!

「おわっとっと……気をつけろ!!」

急制動をかけたせいで体の節々が痛む。
畜生、前のヘンな女に異能でやられたのがまだ治ってないのか。

「クソっ………」

そのまま角の男を避けて隣を通り過ぎようとし。

ヴィシアス > 巨漢。
2m近い身長と、威圧感のあるツノと顔。

「おっとすまない。」

男が慌てた様子で出てきた。
ぶつかりかけるとひょいと後ろに退いた。
一瞥。

怪我
憔悴

一目で、分かった。
こいつはどうやら最近「大きな傷を負う事をした」のだと。
更に言えば―――生来の能力故に、「傷」への理解は異様に早く、
隠されていなければその理由すらも分かってしまう、かもしれない。

「待て」

貴方がすれ違ってどこかへ行こうとしたところへ、おせっかいにも声をかける。

ルーフラット >  
声をかけられると気難しい声音で返して。

「なんだよ!?」

顔を歪めて大男を見上げた。
僕は背の高い男がニガテだ。

「なんだ、なんだ、なんかモンクでもあるのか!」

そして大きな声を出していることに気づいて自らの口を塞ぎ。
風紀にバレるだろ!!

「……なんなんだ」

と小さく声を出した。

ヴィシアス > 「ああ、失礼……急ぎの用でもあったか?」

どうもこの男は、随分と焦っている…?

見上げる視線を見ながら、不思議そうに赤黒い怪しい眼差しが貴方を見つめる。
この町は緩く色んな種族の多様性を見ているのが楽しいというのに。

思考

………ふむ。

理解

「クックック――この騒ぎの原因は、君だな?」

根拠はない
確証もない

だが、にやりと、妙に不敵に笑って問い。

「それに君は随分と――派手に怪我をしているようだ。」
「違うかね?」

ルーフラット >  
「急いでるんだよ、早く要件を言えっ」

小声にしかならないので自分の甲高い声では威圧すらできない。

そして騒ぎの原因と言われれば眼光鋭く睨みつけて。

「だったらなんなんだ」
「正義感で僕を捕まえようとしてるなら後悔するぞ」

「僕はとってもとってもとってもとっっっても」
「強いんだからな」

こいつも異能者か?
どちらにせよ厄介なことになった。

ヴィシアス > 「クックック…そうかそうか、強いのか君は。」

どうも、当たっているらしい。
からかうでもなく、愉快そうに強さを誇示する貴方に笑いかける。

「まさか、捕まえよう等と。私は荒事を望んではいないんだ。」
「そう張り詰めないでくれ、君と敵対したいわけではない。」
「なに、そんなに急いでどこへ行くのかね?」

「そんなけがをしていては、満足に用もこなせんだろう」

「それとも、そんな怪我であの騒ぎの渦中をこっそりかいくぐってどこかで休もう――」

「なんて、思っているのかね。」

まるで敵意もない態度で、しかしながら、やけに貴方の怪我を気にしているのがわかるだろう。

「ああ、それと。」

ヴィシアス > 「私は悪魔だ、正義感などないのだよ――!!」
ルーフラット >  
「声が大きいんだよっ」

風紀に聞きつけられたらどうしてくれる!!

「僕が怪我をしてたらなんだっていうんだ」
「お前は医者か? 違うだろ?」

「だったら僕の怪我なんて気にしたってなんの意味もないじゃないかっ」

悪魔。悪魔か。
神だの悪魔だの最近は妙なエンカウントが多い。

「最近はこの島は悪魔だっているんだな……」

ヴィシアス > 「いや私は医者だ――。」

割って入る様に、言ってのける。
ふざけているわけではない。

「正確には、医療に携わる者。」
「癒しの契約を司る悪魔、それが私だ。」

「ああ、こんな見た目で癒しなど、とでもいうのだろう。」
「職業柄、怪我人を放っておくことは出来ん。君のようなヤツはなおのことだ。」

進路を塞ぐように立ちはだかる巨漢。

「クックック――どうも君は、先ほどから、慌てて周りが見えなくなっておらんか?」
「何かに見つかるのを恐れてハラハラして、気が気でないようだ。」

ルーフラット >  
「……なんだって?」
「それで見ず知らずでカネも持ってなさそうな僕に何を?」

「お前は僕のことを放っておけないだろうけどな」
「僕はお前に放っておいてほしいんだよっ」

癒やしの契約を司る悪魔。
殺しをやってる天使よりもヘンテコだ。

「慌ててたら何が悪い」
「ハラハラしてたら何が悪いっ」

身振り手振りで放っておけと言うと、そのジェスチャーで体が痛んだ。

「ぐうう……畜生」

ヴィシアス > 「そうだ、まさにそんなやつだよ」
「周りから差し伸べられる手を拒絶して塞ぎ込んで」
「クックック……悪い事に染まり切らんとするヤツさ。」
「カネもなければ頼れる人間もない、それもまた傷だろう?精神的な。」
「これも立場上、そういう傷だらけの人間を嫌というほど見て来たのさ。そういうやつはたいてい…」

「破滅する。可哀想にな…」

笑いながら言葉を返す。お節介極まるヤツだと言えよう。
突っ返すようなジェスチャーをされるが、しかしながら巨漢はまるで引こうともせず。

「ふむ、しかし金がないなら……癒しの契約を結ぶ財貨がないようだ」
「まあいい、貸しにしておいてやるか……」

一方的に借金を押し付けるように、癒しの契約の話までしだす始末。

ルーフラット >  
くそう、好き勝手言いやがって。
僕が破滅するだ?
適当なこと言ってんじゃない!!

今にも噛みつかんばかりに睨みつける。
ちくしょう、デカブツめ!!
お前が壁になって通れないじゃないか!!

まぁ向こうからの視線も防げてはいるか。

「ああもう、なんなんだよっ」
「僕に貸しを作りたいのか? 踏み倒されるとは思わないのかっ?」

顔を顰めたまま言い放つ。
変わった悪魔だ。

ヴィシアス > 「クックック」
「はっはっはっはっは…!」

踏み倒されるか、と言われて、高らかに笑う巨漢。

「なに?"踏み倒されるとは思わないのか"だと?」

「どれ程の対価を寄越せとも言っておらんのにどう踏み倒すのかね。」
「それに、"本気で踏み倒すつもり"なら、そんな事言いださず恩恵だけ受けて"黙って逃げてしまう"のが良いだろう」

にや、と笑う顔は悪魔らしい。

「500円でいいよ」
「あと君の名前と、――騒動の原因を、私に告げよ。」

要求する者は、あまり悪魔らしくない。

「第一、踏み倒したくなるような押しつけがましい貸付をするのは、実に下級の下賤な悪魔のする事だ。」
「それに、」

ヴィシアス > 悪魔(わたし)の契約から逃れることは出来ぬ。絶対に。」
ルーフラット >  
「悪魔め……」

ちくしょう、もうこうなったらヤケだ。
どうにでもなれっ。

「僕はルーフラットだ」

ポケットから小銭を取り出す。
大きな硬貨を見つけて押し付けるように差し出して。

「盗みに入ったら犯罪心理学かなんかで張ってた風紀に追われてる」
「畜生、あいつら卑怯だ卑怯」

「これで満足か、ええと……悪魔めっ」

名前を知らないから二度目の悪魔め、を口にした。
腹を押さえる。

「畜生、お腹すいたなぁ……」

ヴィシアス > 「クックック。そうかそうか…」
「――ルーフラット、ルーフラット、ねぇ…。」

緩く、目を細める。

「知らんのか?悪魔との契約には"真なる名"が必要だ。」

金を受け取りながら、
魔力の粒子を亜空にちりばめると、
ふわりと、魔力で出来た紙面が浮かび上がる。

契約書だ。

「我が名はヴィシアス。」

そこに、ペンもなく、指を滑らせるだけで、赤黒い文字が浮かび上がる。

「契約に異議がなければ、君の名も記すが良い。」

互いの名を、記す欄に。
筆記用具は必要ない、同じように指を滑らせるだけで、契約書に名前が記せよう。

名を告げ合う事
契約の料金は500円
貴方の体を癒す事
それらが記されている。


「私は癒しを司る悪魔。――ふむ、なるほど、腹が減ったのかね。」
「実は、諸事情あってエビフライが余っているがね。」

「しかし――クックック、この辺で盗みを働くとは、命知らずだ。」

ルーフラット >  
「なんだって?」

見たこともない契約書に指を……
躊躇しながら這わせる。

サインは、梶田 勝。
平凡だ。
一般家庭の子供だからな。

それが嫌で嫌で嫌で嫌で嫌で嫌でたまらなくて。
この島に来たっていうのに。
畜生。

「命知らず大いに結構だ、僕は戦うぞ」

契約書を突っ返して。

「エビフライだって?」
「そっちはどういう契約なんだよ」

もう完全に悪魔とは契約でなんらかのやり取りをするものと思っている。
しょうがないだろ、初めて見たんだからな。

ヴィシアス > 「梶田…勝…」

文字を読み上げる。満足そうだ。
それが真なる名だと認めると、契約書が二枚複製され――

「持っておくが良い、悪魔との契約は絶対にして、後出しをしてはならないという決まりがあるのだ。」
「これをしないと下賤な悪魔共は悪用して後々から人間を騙すために契約を悪しく用いる。」
「時には魂を奪われることもある――ああ、この島では、それをやるのは悪魔に限った話ではないが。」
「気を付けておきたまえ」

片方を、書き換えられることが決してないようにと、魔法の契約書を押し付けるように差し出しつつ。

「ん?ああ、余り物だから無料で構わんが――」
「怪我した理由でも、聞いておこうかね。」

「クックック――それにしても、戦う、ね。」

「そんなに焦って、怪我してまで、何と戦うというのだ?」

ヴィシアスは知っている。
戦いや対立の果てにある空虚を。
貴方が平凡が嫌で、たまらないのと真逆で

ヴィシアスは


平凡を心底から望んでいる。

ルーフラット >  
「ふん、僕はお前のことを信用したわけじゃないんだぞ」
「悪魔のケーヤク事情を話されたって信頼できるもんか」

契約書を受け取る。
むき出しで持っておきたくないな。
でも封筒なんて持っていないし。
封筒をいれるカバンもない。

「これは……無茶苦茶やってくる異能者にやられたんだ」
「血を使って戦うヘンな女だった」

血走った目つきでヴィシアスを睨む。

「いいか、ヴィシアス。僕は平凡が大っ嫌いなんだ」
「ありふれたものに価値なんてあるものか」

ヴィシアス > 「ほう、…そうだったのか。具体的には、それでどう怪我させられたのだ?詳しく教えたまえ。」
「そうだ、詳らかに語るが良い――」
「契約を履行する。」

ヴィシアスは貴方が語る相手の事を、怪我の事を聞き、手を翳す。
悪魔が放つには神々しいほどの黒紫色の妖しいオーラが満ちると、
ふわりと貴方の怪我を撫でる。物理的な損傷を治癒し、自然治癒力が増大する、癒しの基本中の基本にして、究極ともいえる魔術。
「将来治る筈の怪我」を「今治す」魔法。
契約により、それが行使される。

「………なに?」
「何をバカな事を言っている。」
「平凡に価値がない?」
「ありふれたものに価値がない?」

「違う」

「違うぞ、梶田勝ッ!」

ルーフラット >  
「血を間欠泉みたいに吹き出してアッパー」
「歯が折れた……」

「血の結晶を頭上に作り出して落としてきた」
「肋にヒビが入った……」

ぐぎぎ。
思い出せば腹が立ってくる。
あの女、絶対に許さんからな。

そして怪我が治っていく。
傷跡は残るが、これなら問題なく動ける!

「おお……痛くないぞ」

「なんだって? ヴィシアス、お前は非日常の塊みたいな風貌で」
「平凡なものを愛しているのか?」

「僕は違うぞ、特別なんだ」
「特別だから、特別なものを手に入れるために戦っているんだ」

「お腹が空いたぞっ。早くエビフライをよこせよっ」

ヴィシアス > 「ならば歯を――」
「ならば肋を――」

語られるたびに、癒しの魔力が行使されたはずで――。

「クックック。」
「非日常などもううんざりだ。」
「バカ騒ぎする衆愚、テロリストを勇者と持ち上げて炎上を煽るだけの無責任で害しか齎さないクソみたいなマスメディア……」
「そんなバカげたマスメディアが謡う非日常に、どれ程の価値があるのか。」
「――どこの世界も報道機関の連中は腐っているな。おっと、今のは秘密だ。」

なにやら、非日常への敬遠すら感じられる言葉を吐き出す。

「美味い飯を食い、誰かと楽しい会話をして、痛みや病を味わわぬ平穏な日々――あとちょっとエロ本があればなお良い。」
「私には、それが素晴らしいものだと思うんだ。」

そして、日常を愛おし気に赤黒い怪しい眼差しを細めて語る。

「ほら、エビフライだ。」
「クックック。そんじょそこらの市販の弁当のエビフライと違って、衣でかさましをしていないので美味いぞ。」
「元は――ある魔法の研究の為に作っていたんだがね。」

透明なパックに入ったエビフライが、いつの間にか貴方の手に握らされている。
…不思議だろう?だが、良い事しかない。
だから良いのさ。

「……君が特別である事を否定はしないさ。梶田勝。」
「だが、心底から欲しくなる特別なものってのは…」

ヴィシアス > 「存外――焦って見過ごしていた景色に、あるのかもしれんな…私はそうだった。」
ルーフラット >  
「ふんだ」

エビフライの尻尾を持ってかじりつく。
下味がしっかりした美味い揚げ物だった。
これならソースなんてなくても十分食える。

「何を偉そうに、僕の特別を決めていいのは僕だけなんだ」

でも、歯でしっかりエビフライを噛めるのは。
存外に悪くはない。

「第一……」

抗弁を続けようとした時に、聞こえてくる複数の足音。

「畜生、風紀だ……!」

逆側に逃げようとすっかり空になったパックをヴィシアスに押し付け。

「おいお前、この契約書は持っててやる」
「でもな、僕に会ったことを絶対に人に言うんじゃないぞ」

壁をよじ登って屋根に逃げる。
ゆえに屋根(ルーフ)ラット。

いやクマネズミの通称だけどな。

「感謝なんかしてやるもんか、これは契約なんだからな」
「じゃあな」

そう言って痛まず空腹も紛れ、軽くなった体で。

常世の街に消えていくのだ。

ヴィシアス > 「そうだ、違いない。」
「君は君の思うまま、特別であるが良い」

「だが、時には見過ごしていた景色を振り返ると」

「ちょっと心に染みる者があるのさ、梶田勝。」

感謝もしない、ぶっきらぼうに。
だけどもヴィシアスはなんともその懸命な姿を見て、
妙に好ましく思ってしまった。
ちょっとばかり、日常の良さを伝えるくらい、したっていいじゃないか?

焦って駆けて見過ごしていた事を、見返す事の良さを、知ったっていいじゃないか?

「クックック――達者でやるが良い。」

一枚の複製された契約書を手に、
押し付けられたパックを軽やかに片手でゴミ箱へ投げ入れると、

喧騒をどこ吹く風の顔色で異邦人街の雑踏へ消えて行った。

ご案内:「異邦人街」からヴィシアスさんが去りました。
ご案内:「異邦人街」からルーフラットさんが去りました。