2025/04/11 のログ
夜見河 劫 >
「ん、歓楽街とか…落第街に近いコンビニの店員だと、この目つきでも気にされないし。」

そう答えながら、手を顔から除けてテーブルの上に軽く置く。
後は料理が届くまでの待ち時間――と思った所で、突然の質問が飛ぶ。
また少しだけ首を傾げる仕草。

「……随分、唐突だね。」

そう答えつつ、軽く腕を組んで。

「…一応、確認。」

そう声をかけつつ、失礼にならない仕草でテーブルを挟んで座る相手に、軽く指を向ける。
暗に、そちらに対してこちらがどう見えているかという事か、との確認の仕草。

「気になった、位の問いなら、特に気も遣わないで答えるけど。」

追加で、再確認のような返事も一緒に。
料理が来るまでは、まだかかりそうだ。

青霧在 > 「すまない」

唐突であった事に詫びる。
向けられた指には動じる事無く。

「気を遣う必要はない」
「夜見河は自身の事をよく見ていると思った」
「それが正しいかどうかは俺には分からないが、見ている事は間違いない」

見ているというのは夜見河自身に限らない。
以前出会った時に伝えられた、『夜見河から見えた青霧在』のことはよく覚えている。

「だから、お前から俺がどう見えるのか、訊いてみたくなった」
「それだけだと思ってくれて構わない」

言い切る。
少しばかり視線を伏せたが、最後には夜見河の方を見るだろう。
ただ、いつもはただ陰鬱なだけの青霧の面に、微かな恐怖が浮かんでいるのが読み取れるかもしれない。
しかし言葉に偽りはない。

夜見河 劫 >  
「ああ…そういう。」

成程、と一つ頷き、また軽く首を傾げる。
気を遣わない、とは言ったものの、流石に目の前の相手がどう見えるかには、
少しばかり言語化に時間が必要であるらしい。
その為の思案の時間を僅かに挟み、

「そうだね、ストレートに言葉にするなら、」


「――真面目なひと、だと思うよ、あんたは。」

何の飾り気もない、ストレートな一言。
ごく短い言葉ゆえに、それが本心からだと逆に分かり易いかも知れない。

「何に対しても、「真面目」…っていうだけじゃないかな。
真正面から、向かってる気がする。
今、こうやって話をしてる時も、随分真っ直ぐに訊いてきたし。」

自分の方に置かれたお冷に手を伸ばし、一口。
軽く唇を湿らせる。

「…敢えて悪い言い方で言うなら、「不器用」って印象もある。
何かしらぼかして訊ねるやり方もあっただろうに、そうしなかった。
まあ、不器用な事は悪いだけじゃないと思うよ。
「賢しい真似が出来ない」って事はそれだけ「分かり易い奴」だと思う。俺はそう思ってる。

ま、俺もそこまで偉そうに言える性質じゃないけどね。」

其処までを言葉にして、またお冷を一口。

青霧在 > 「……真面目か」

夜見河がコップを口に運んだのを見て、自分も思い出したようにコップに手を伸ばす。
組んだまま固まった手を解き、ゆっくりとコップの水を呷る。
混乱も焦燥もないが、少しでも落ち着こうと―――

最後まで夜見河の言葉を聞ききってから、一息。
深呼吸ほどではないが、少し長く息を吸って吐く。

「確かに俺は不器用だな…」

友人が器用に立ち回っているのを見ていると、自分がそうではない事を実感する。
だが、夜見河が言いたいのはそれほどネガティブな事ではないように感じる(思い込みたい)
水差しからコップに水を注ぎ、右手で握りながら続ける。

「なら…俺は悪い奴に見えるか?」

一息、飲み込んで口を開く。

「卑怯者、ズルい、人殺し、盗人、ロクデナシ、役立たず、でくの棒」
「俺にそう見える部分は少しでもあるか……?」

陰鬱とした表情ではない、何かを恐れた目で問う。
コップの汗が垂れてテーブルにごく小さな水たまりを作った。

夜見河 劫 >  
「難しい質問をしてくるね。」

続く問いには、表情こそ変わらないものの、軽く首を傾げる。
そのまま、先程より少し長い時間。
今回は先程よりも言語化に時間がかかっているようだ。

「……そうだな、どう言えばいいのか、少し難しいけど、」

そう、一度前置き。

「敢えて悪い面を挙げるとするなら、堅物、融通が効かないって印象。
でもそれは、「風紀委員」としてならあって当然だし、ヘラヘラしていい加減な奴よりはマシだと思うよ。」

特にフォローのつもりもなく、言語化した印象をストレートにぶつけてくる言い方は変わらない。
遠慮や容赦がない、と言えば良いのか。

「少なくとも、俺の知ってる「人間嫌い」の風紀委員よりはまともだし、良い人だと思うよ、あんたは。

――大神、璃士。聞いた事ある?
あいつの「人間嫌い」は、正直相当だと思ってる。
真面目に働いてるのを見てる風紀委員だったら、気が付かないかもだけどね。」

出て来た名前は風紀委員の中でも「走狗」とまで呼ばれている男の名前だった。
様々な課に呼び出されては、雑用から区内の巡回、果ては危険な任務にまで駆り出されている、まさに「走狗」。
それでいて、文句らしい事は殆ど口にしない。

どうやら、包帯巻きの顔の男は過去に少なくとも一度は、「風紀の走狗」のお世話にもなったらしい。
そして、件の委員がかなりの「人間嫌い」だと見ている。
根拠については口にしないが。

青霧在 > 『敢えて悪い面を――』

夜見河がそう口にした時点の青霧の表情は、恐れから絶望へと陥る寸前のものだったであろう。
しかし、続く言葉に少しずつその様子も回復し…
記憶にある風紀委員(大神璃士)の話になる頃には、随分と落ち着いた様子となっていた。
握りつぶそうかという所まで行ったコップからも手を放し、脱力したように肩を落とす。

「大神…知っている、というよりかは同じ仕事をしたことがある」
「優秀な委員だった。特攻課にいれば心強いだろうと思った事があるさ…」
「人間嫌いだとまでは…知らなかったが」

呼吸を整えながら言葉を紡ぎ、言い終えるころには陰鬱さが少し晴れた面をしていた。

「だが、そうか」
「風紀委員会として当然の振る舞いが出来ている…か」

そう考えても良いだろう。
ああ、良いだろう。
大きく息を吸って、吐く。

「それが訊けて安心した…すまないな、妙な質問をして」
「感謝するよ…」

少しばかり嬉しそうに、俯きながら続けた。

夜見河 劫 >  
「そっか、噂でちょっと聞いた位だけど、ホントに何処にでも呼ばれていってるんだな、アイツ…。」

話題に上っている風紀委員の、「同僚」からの言葉に、納得したようにそう一言。
人間嫌いと知らなかった、と語る対面の男に、包帯巻きの顔の男は軽く頬を掻く。

「まあ、かなり上手い事隠してるみたいだったから、普通なら気が付かなくても仕方ないよ。

飽くまで俺の印象だけど…アイツは、「社会の枠組み」に収まる為に、風紀委員やってるように見える。
人間が嫌いな奴が、それでも人間の世の中で生きていく為に…何て言うのか…自分に「枷」を着けてるみたいな。

でも、俺の印象…勘みたいなものだから。
話半分程度に思って貰えるといいかな。」

最後にそう注意する形で、件の委員についての話題は一旦幕に。
そうして、続く相手の言葉に対しては、また軽く首を傾げながら口を開く。

「――なら、こっちからも質問。
今回の食事の話、本題は今の質問だったりした?
後、何で訊くのが大変そうな質問を俺に?

…ああ、これは俺が単純に気になっただけ。
だから、答えてもいいし、答えなくても全然構わない。誰かに漏らす気もないし。」

回答が難しい質問だったのなら、別に答えなくても問題はない。
その「抜け道」だけは、最初に開けて置く事を忘れなかった。
向かい合った男の事情は兎も角、こちらは単純に「気になっただけ」なのだから、重みが違う、と。

青霧在 > 夜見河が問い終えた時には、随分と落ち着いた様で。

「本当にすまない。夜見河の言う通り、本題はあの質問だ」

これが不器用で真面目という事なのだろう。
そう思いながら夜見河の方をしっかり向き続ける。

「別に隠す必要もないな…理由は二つある」
「一つはとある契約でこの問いを投げかける必要があったから」
「もう一つは…自問自答を終わらせる為…」

ここまで言って、座ったままでこそあるが、しっかり頭を下げ、

「こんなことで呼び出して本当にすまない」
「対価になるとは思っていないが、この食事の代金は俺が出すし、必ずこの詫びはする」

用意された抜け道であっても、利用するのは厭うのが青霧在という男なのだろう。
もしくは、ただ気付いていないだけか。
なんにしろ、誤魔化すつもりも逃れるつもりもないらしい。

夜見河 劫 >  
「………………。」

軽く腕を組み、無言でその回答を聞くと、ふぅ、と小さく息を吐く。
そして、腕を解き、テーブルの上に軽く置き、

「――追加の印象。
嘘のつけないタイプ、悪く言うと馬鹿正直。」

そう、付け加えるように短く。

「契約云々については、深くは訊かないよ。
プライベートなり、もしかしたら風紀委員の事情って奴もあるのかもだし。

俺としては、質問に答えるだけで、こんないい店で飯奢って貰うのが、却って申し訳ない位。」

メニューをもう一度引き寄せ、開き直す。
捲った先は、デザートや軽い食事、それにテイクアウトメニューが載っているページだ。

「甘いもの、いけるクチ? デザートとか。
でなければ、軽めのメニューか、持ち帰りのを何か。
その位は俺に出させて貰わないと、こっちの気が済まない。

これでも、異能研究の一環って奴で研究機関に協力してて、その分の謝礼金は貰ってるから。」

青霧在 > 「バカ正直…そうだな、どうやらどうみたいだな…」

言われて自覚した。
確かにこれではバカ正直だ。相手次第ではどう言われていたか分からないだろうに。
誤魔化すように後頭部を少し掻いて口角が上がった。

「そんな気にしなくていいが……」

そこまで口にするが、メニューを開いて続ける夜見河の口ぶりとしっかりした…しているのかは分からないが、収入源を聞いて肩を竦めた。

「なら……ありがたくいただこう」
「そうだな……このプリンにしようか」

《プリン擬き》と直球で書かれたメニュー。
少し気になるしこれにしよう。

「本当に、感謝する」

夜見河 劫 >  
「ん、それじゃ俺は…これにしようかな。」

プリン擬きも気になったようだが、少し考えて包帯巻きの顔の男が選んだのは《悪魔のケーキ》と書かれた一品。
写真がないので、どんな品か逆に興味を覚えたらしい。

「後は、明日の食事用にでも、串焼きのテイクアウトとか……っと、その前に注文した奴がそろそろかな。」

こちらに歩いて来る店員の姿が見える。
注文の品が届いたのか、それとも別の席に運ぶ所なのか。

「ま、注文したのが届いたら、のんびり食事にでもしようよ。
飯食ってる時位は、リラックスが一番だろうしさ。」

生真面目な礼の言葉には、幾分か気の抜けた声。
食事時はリラックス、が信条なのだろうか。

青霧在 > 「夜見河の言う通りだな」
「注文が届く前に終わってよかった」

脱力しながら微かに微笑む。
あの空気で何かを口にしても砂の味がしそうだ。
折角誘ったのにそんな食事をさせそうになったというのは、少々我儘だったかもしれない。
これは反省だ。しかし、今は食事を楽しもう。

こちらに歩いてきていた店員はこの席の注文を運んできたので合っているようだ。

『お待たせしましたー』と差し出された注文の品を、感謝の言葉を伝えて受け取り、麺の方を夜見河の方に配膳する。
どちらも美味しそうだが、肉が特に目を引く。
唐揚げの方はそもそも、牛と形容される肉のから揚げがどういうものなのか気になったから注文している。
そんな肉の見た目は、牛のような赤身や霜降りではなく、黄色と橙の間の仄かに明るい色。
見る分には脂肪の塊のようだが…

「……ほう」

箸で唐揚げを掴んでみた所、表面が柔らかいが、中はそんなことは無い。
どういう理屈かは不明だが、一部ではなく、肉の表面が柔らかく、中は鶏肉のような触感を箸越しに感じる。

一度箸をおき、夜見河の方を向き。

「それじゃ、食べるか」

手を合わせた。

夜見河 劫 >  
「うん、折角のいい店での食事だし。」

こちらも赤いスープで満たされた器を配膳されれば、箸を手に。
赤いスープの中の肉は、見た所は普通に煮た肉と大幅には変わっていないように見える。
香りは…香辛料が異なるせいか、印象とは違った雰囲気だが、辛そうだというのは確かに伝わって来る。
中々、新鮮な刺激と味を得られそうな予感だ。

「そうだね、冷める前に食べよう。」

同じく手を合わせて、いただきますの姿勢。


――尚、頼んだ麺入りスープは、予想していた中華系とは似ているようで何処か異なる、
中々に刺激的な、しかし箸の止まらない、予想以上に精神も身体も温まる逸品であった。

後に頼んだ串焼きも、普段口にする成形肉と一緒にするのが憚られる程に味わい深い、
じわりと旨味が染み出すような独特の尾を引く味が特徴的だった。

青霧在 > 「いただきます」

夜見河が手を合わせたのを見てそう口にし、唐揚げを口へと運んだ。
異世界の肉は独特かつ馴染みない味ではあったが、それを考慮しても非常に美味だった。
牛というより鶏に近い触感と、濃厚な赤身と白身のいいとこどりのような味。

どれくらい美味しかったかというと、青霧も持ち帰りの串焼きを注文する程。

勿論、そちらも非常に美味であったという。

ご案内:「異邦人街」から青霧在さんが去りました。
ご案内:「異邦人街」から夜見河 劫さんが去りました。