2024/10/19 のログ
ご案内:「万妖邸 個室」に橘壱さんが現れました。
ご案内:「万妖邸 個室」にクロメさんが現れました。
■橘壱 >
万妖邸。異邦人街にある曰く付きの物件。
この異邦人街自体がある意味この島の治外法権地区のような部分がある。
特に此処はその色が強い。何かしらの事件がなければ、
各委員会は此処に強く関わろうとしない摩訶不思議な場所。
なら、こんな場所に一体何の用があってきたのかと言えば……。
「……本当に此処に引っ越したんだよ、な……?」
自身の担当する怪異の経過観察である。
急に言われたから手続きに色々手間取ったが、
本人の希望たってとなれば叶えるのも吝かではない。
とりあえず通ったから引っ越しには問題はなかったが、
改めてこの地に踏み入れると妙な気分だ。
古めかしい、何処か時代錯誤な廊下を訝しげに進む。
ただ住んでいるだけなのに、なんだか景色が変わらない。
何者かに見られている気もする、間違いなく。
「ある程度備えはしてきたし、アイツがくれたお守りもあるけれど……」
流石に迷子は想定してないぞ。
懐にあった、曰く"お守り"らしいアクセを一瞥。
ハァ、ため息混じりに変わらない景色を歩いていると、
漸く扉の前にたどり着いた。立て札に彼女の名前がある。
どうやら一応、ロビーの案内図通りではあったようだ。
ほ、と一安心。
「クロメ、いるか?いるんだろう?入るぞ」
軽くノックをし、扉をゆっくりと押し開けた。
■クロメ >
万妖邸
怪異やそれに近しいもの。
そういった、どちらかといえば"隣人"側の存在が跋扈する場所。
人間が溢れる女子寮、という場所よりはよほど居心地がいい
それゆえに、此処にいることは多い
「む……」
ほんの僅かに、侵入者……もとい、訪問者の気配がする。
この、場馴れしていない感じは"隣人"側ではない雰囲気。
それに
「……来たか」
返事も待たずに扉を開けて入ってきた男に、じろりと目を向ける。
「やれやれ、躾もなって……ん?」
ふわり、と宙に浮いて侵入者……橘壱に近寄る。
「ふむ……ほう……」
仔細に確認するように男を見た。
わずかに、匂いを嗅ぐような仕草も見られる。
■橘壱 >
部屋に入ると自然と周辺に視線をやった。
此処も学生寮と同じように部屋を好き勝手していいらしい。
そう、興味があった。彼女の趣味が。
「悪いね、あんまり廊下は良い心地がしなかったんだ。
誰かに見られている気もするし、たまに変な足音もする」
おそらく全て気のせいではない。
確実此方へとどちらも寄っていた。
橘壱はあらゆる神秘に嫌われているし、素質は本当に真人間。
怪異を引き寄せる体質はないが、見方次第では"格好の獲物"だ。
何処となくどっと疲れた顔をしながら、トランクを揺らす。
「相変わらず浮いてるな……え、な、何?」
近寄ってきたと思えば、何か見てる。
今、匂いも嗅いだのか?流石に困惑顔。
「ちゃんと身だしなみには気を使ってるけど……もしかして臭った……か?」
■クロメ >
「ああ……そうだろうな。
いい獲物だろうし、な」
単にちょっかいをかけたいもの、餌食にしたいもの
そういった存在からはいいカモである
流石に、そうそう手を出すこともないだろうが……
ただ、妖気やそういった意図しない妨害などには関係ない。
そういった色々を感じ取ったのだろう。
隠そうともしない連中もいるだろうし。
「……なるほど。番ったか」
困惑する男に、一言。
質問の答なのか何なのか。それだけを言い放つ。
「それで? 今日はなんだ?
まさか、報告か?」
■橘壱 >
獲物、そう言われるとほんの少し苦い顔だ。
どうにも超常存在は分かりづらい。
今や科学で対抗出来たりもするが、全部がそうじゃない。
「わかってて此処に引っ越したとか言わないよな?
実はこの"お守り"ってのもブラフとか、後で言わないでくれよ」
何時でも死ぬ準備はしてるとはいえ、
流石に間抜けな死に方は勘弁だ。
「つが……ハァッ!?」
思わず素っ頓狂な声が漏れる。
何、なんて言った。番?番って、言葉通りの?
それに当てはまると言えば旅行の……ほんのり頬も赤くなる。
「わ、わかるのかお前!?
い、いや違う……あれは思わず、というか……なんというか……」
複雑な事情があるんです。
んん、軽く咳払いで気を取り直す。
「何の報告だよ……。
別に?様子を見に来たんだよ。
顔も知ってる仲だし、一応職務。様子を見に来るのは当然だろ?」
「ホラ、良かったじゃないか。
経過観察に来るのは"まだ"僕だからね」
なんて、おどけるように言ってみせた。
■クロメ >
「わかってはいた。
だが、"それ"は本物だ」
正確には、容易に想像がついた、のだが。
その細かい差異を論じても意味はないだろう。
とはいえ、それで殺そう、などという意図はない。
むしろ、死なれても困る。だから、わざわざお守り、などというモノを渡したのだ。
正直、気は進まなかったが仕方ない。
「人の"質"が変わるからな。」
非童貞、非処女。
人体的には特に変わることもないのだが、魂の質、といったものが変化する。
それが、超常の感じる色々なモノに影響することもある。
例えば、血液――
「思わず? そうか」
いつもどおりの氷の声。
「それにしても……ふむ」
なにやら、人以外の気配が漂う。
そういえば、元々なんとなくはしていたが、それが増えた。
悪意があれば、守りが多少なりと反応するだろうから問題はないか。
増えた気配は女だが……これか?
といっても、そこまで探ることもしない。
「ああ、此処に来る前に死ぬこともなかったようだしな。」
じっと……顔を見る
■橘壱 >
「けど、ソッチのがキミにとっては心地いいのか?
まぁ、わざわざ謀殺なんてしないと思ってるよ」
人間嫌いの怪異。
確かに人間の中で常時いるよりはマシか。
懐のアクセサリーをトントン、と指先で叩けば、
ふ、と自然と口元が緩んだ。
「死なれたら面倒ってのもあるんだけど、
それなりに気にはかけてくれるようで
僕としては少し嬉しいけどね。効力もあるらしいし」
「"質"、ね。魂の形とか、そういうのか?
知識としか知らないからなんともだけど、
そんな所までわかるのか?キミは」
見えてるものがそもそも違うと思っていたが、
常時そんなことがわかるのか、流石は長命種だ。
素直に感心はするが、その氷の声にはちょっと肩を竦める。
「言いたいことはわかるし、僕も良くないとは思ってるよ……。
好意に対しての答えは返すべきなんだろうけど、その、なんとも……」
文字通りの煮え切らなさだ。
それを自覚しているからこそ、強く言えない。
「逆に聞くけど、そういうクロメはどうなんだ?
その、恋とか愛?とか、経験があったりするのか?」
流石に長く生きていれば一つや二つ歩きもするが、さて。
ほんの少し困ったように頬を掻き、視線を見返す碧の双眸。
「お陰様でね。まぁ、"まだ"死ぬ気はないけどね。
……にしても、なんかやけに勘ぐるな。まだ何か匂うか?」
不思議そうに尋ねるその顔は何時も通りだが、
何となく、前よりはスッキリしているというか、
悩みのなさが伺えるかもしれない。
■クロメ >
「居心地は、いいな。
……見なくて済む」
人は、あまり見たくない。
別に怪異が好き、というわけでもないが……
此処のほうがよほど心地はいい。
「効力がないものを渡してどうする」
そもそも人にモノを渡すこと自体が、業腹である。
それなのに無駄にモノを渡すなど、あり得ない。
この男をうっかり死なせたほうが面倒、という天秤の結果だ。
「なんでも、ではないがな。
"血"に関わることはな」
吸血種としての本能……というべきか。
人が信じる、吸血鬼としてのあり方通り、そういうものはわかる。
「別に責めてなどいない」
人とは度し難い
一々腹を立て、一々責めたところで虚しいだけだ
そんなことはとっくに思い知っている
「恋に愛、か。」
問われて、しばし考える。
「……ないな」
そもそも、そういう感情そのものがわかっているのか。
自分自身、確証はない。
「そうだな。"匂い"は……いや、いい」
いくらか気になる匂いはあるにはあるが。
それは別の話だ
「……あとは、空気、だな。
どうでもいいことだが」
どこか前よりは精神的に安定がある、ようにも見える。
落ち着きがある、というべきだろうか。
それも番った結果か、とも思ったのだが。
■橘壱 >
彼女が人間嫌いなのは知っている。
その経緯も、それなりに。全てを知っている訳じゃない。
口頭ですべてを知るには、彼女の時間は長過ぎる。
重厚なトランクをそのへんにおいて、その上に座った。
「空気、ね。まぁ、そうだね。
その、番ってのとは違うけど、考えは固まった……かな?
出来ることと、望むことをするだけさ。自分にもう、嘘は吐けないからね」
好きなように生き、好きなように死ぬ。
例え望むが真逆であっても、どちらも取る。
はにかむ笑顔にも言葉にも悩みはない。
初めにであった頃の空気も有りつつ、
それは今と変わらない気配でもある。
「……僕よりも何倍も生きてて無いのか。
僕はどういう生まれかは知らないけど、親とかいないのかい?」
正直、ちょっと意外だった。
寝ている期間を考えていたとしても、
普通の人間より活動しているのなら、
一つや二つありそうだと言うのに、
思ったより手狭な人生だったのだろうか。
不思議そうな顔をしつつ、自身の顎を軽く撫でる。
そうだな、これはまたとなく彼女のことを知る良い機会なのかもしれない。
「血に関わることならわかるのか……ますます吸血鬼っぽい」
ロリ長命種吸血鬼。属性もりもりだ。
オタクくん、たまに変なことを考える。
「まぁ、それはともかく興味はあるな。
流石に自分の生まれくらいは覚えてるんじゃないか?
それこそ、さっき言ったように親とか、兄妹とかいないのかい?」
■クロメ >
「そうか。
ある種の覚者の境地か。」
己の望むままに。
それは、強欲であり、しかし迷いがないという意味では悟りを得たモノと同質ともいえる。
"至った"という捉え方もできる。
なにより、この気配の変わりよう。
少なくとも、変化があったのは確かだ。
「なんだ。木の股から産まれたとでも?」
親がいないのか、とそんなことを聞いてくる男。
怪異である自分であれば、そういうことも想像されるかも知れない。
無論、そんな訳はないが
「兄妹なぞいない。
親は……すぐに死んだ」
それは厳然たる事実。
別に伝えたところで大したことのない情報。
「そも、愛など……私には無用だ。」
そこまでいってから
「何を聞き出そうとするのか、くだらん」
■橘壱 >
ハハ、と流石に乾いた笑み。
「そんな大層なものじゃないよ。
ちょっと肩の力を抜いただけ、かな」
多分。自分でもなんと言うべきかはわからない。
ただ、うだうだしてた少し前よりは気分がいいのは確かだ。
「ワンチャン?」
可能性の話をすればなくはない。
まぁ、流石にこんな可愛い子がそんな野暮ったいわけないか。
ちゃんと両親はいたらしいが、すぐ死んだらしい。
余り気持ちの良い話ではなさそうだと思いつつも、
じ、と碧の双眸は彼女を見据えて離さない。
「そっか……寂しくはなかった?
僕は両親とは仲良くないけど、短い間に一緒に入れた時の思い出とかさ」
どれだけの時期入れたかはわからない。
ただ、そこに愛情があれば記憶が根付くはずだと踏んだ。
「クロメの事を知りたいだけさ。
……それに、キミのその仏頂面を、少しは変えたいと思ってる」
一呼吸。
「なぁ、ちょっとは今の世界を、今の人間を少しでも認める気はないか?」
余りにも直球だが、一切の冗談のない問いかけだった。
■クロメ >
「くだらん話だ。
私が産まれてすぐに、母は死んだ。
父も、物心つく頃には死んだ。」
そして、一人で生きてきた。
思い出など欠片もない。愛など覚えがない。
寂しさは……はるか昔に置いてきた。
そんなもの、感じている余裕もなかった。
想いを馳せるものがない。そこには、空白しかない。
ないものには、なんの感慨も抱くこともない。
「これで満足か?」
聞いても徒労のような内容だっただろう。
男はどう思うだろうか。
別にどうでもいいことではあるが。
「……ふむ」
事務的でもなく、冗談でもなく。
一人の存在として投げかけられた言葉。
「何を以てだ?」
静かに問い返す。
■橘壱 >
静かに首を振った。
「寂しくなど無いとは言わないんだな。
……わざわざくだらないなんて卑下して、
毎度思うけど、そんな言い方したって意味ないだろ?」
別に満足感を得るためのものでもないし、
彼女が捻くれるにも十分な理由も理解しているつもりだ。
ただ、人間とは関係ない家族の思い出だ。
本当に短い時間であったとしても、そんな言い草はないだろう。
「何をって、"そういう所"だろ。
……キミの事情は理解しているつもりだ。
けど、もうキミに群がるような連中はもういないはずだ。
坊主憎けりゃっていうけど、もう随分と時代も世界も変わった」
「だったら、ちょっとは楽しいことを探すために目を向けても良いんじゃないか?
もう人間ばかりの社会じゃないけど、人が多いのは本当の事だ。
そんなに長く生きて、もうぶつける場所も無い恨み辛み愚痴るのが、キミの人生か?」
だとしたら本当に無駄に長生きだ。
相手がどんな存在か理解した上で、
何時も以上に踏み込み、更に一歩、無遠慮なまでに踏み込む。
彼女の言葉を借りればこれは、余計なお節介だ。
ただ、一人の人間としても、その価値観は今の時代において、
少しでも変えなければ一生息苦しいままだと思っていた。
「……今更杭を見せつけてビビる奴なんていないよ、きっと。
精々変わり者のアクセサリーだ。僕としても、見ていて気持ちの良いものじゃないしね」
だからこそ胸襟に迫る。
いかなりしっぺ返しも厭わない。
物怖じしない、どっしりとしたものがあった。
■クロメ >
「事実だ。くだらないものは、くだらない。
私の心には、何も刻まれていない」
ろくに覚えもない。何も残っていない。
なぜないのか、と恨みに思うことはあった。
それを寂しさ、というのならそうなのかもしれない。
しかし、そんなものはほんの瞬きの間の話だ。
論ずるにも値しない。
それゆえに、くだらない、と断ずる。
「事情は理解している?」
部屋の温度が、少し下がったような錯覚に襲われる。
「なるほど。
確かに人は変わったようだ。
お前のように、ズケズケと入り込もうとするモノが出る始末だ。」
すとり、と足が地についた。
床に降りた影が、部屋に広がるかのように部屋が暗くなった錯覚に襲われる。
「だが、どうだ。
神の祠は廃れ、そのくせ力なきものは力を求め何かに縋る。
本質はなにも、変わってなど居ない」
氷の声が、氷点下の言葉を紡ぐ。
冷めきっている
「度し難い。
……あいも変わらず、だ。」
そして、どかり、と宙に座る。
「それでも認めろ、と?
カラスの行動が多少変わろうと、色は変わらぬというのに」
時代が変わろうと何が変わろうと、根っこに根付いたものは変わらない。
「よく囀ったものだ。
何を企んでいる?」