2024/10/20 のログ
橘壱 >  
日が落ちたような不気味さだ。
さながら呑み込まれた。此の部屋全体が、影に。
いや、彼女自身が飲み込んだと言うべきか。
まるで、何処からでも殺せると言わんばかりだ。
ただそれでも動じることはなく、目も逸らさない。

「……今の時代、別にキミだけに群がるような人間はいないと思うけどな。
 悪いけど、ちょっと長生きした位の可愛い美人さんなんて、今更ごまんといる」

それこそこの変容したい時代には、彼女の存在は珍しくない。
確かに差別意識等が全員持っていないわけではないが、
此の広大な世界、人間以外にも増えすぎた種族。
たかが小娘一人だ。何だというのだ。

相当根深いのは知っている。
いや、此れは寧ろ撚ているのか。

「僕も17年ちょっと生きちゃいない。
 キミからしたらちっぽけかもしれないが……
 キミよりは現代(いま)を知っているね。断言出来る」

懐からおもむろに飛び出すアクセサリー。
シルバーのネックレスは、彼女がくれた"お守り"でもある。

「……けど、それだけが人間の全てじゃない。
 僕もきっと追いすがる側だろうけど、それだけじゃない」

墓を暴き、寂れた大地を踏み荒らす。
蛮行を行うこともあるだろう。だが、本質の全てじゃない。

「長命種にしては随分と視野が狭いと常々思っているだけさ。
 何も企んじゃ無い。僕がキミに抱く感情に変化はない。……なぁ、クロメ」

「そんなにも人間がイヤか?世界は、キミの周りはくだらないのか?」

クロメ >  
ちょっと長生きした位か。
 なるほどな?」

ゆっくりと、手を前に出す。
その手は開かれ……そして、軽く、握るように閉じる。
同時に壱自身が見えない何かに掴まれたように感じる

「そうだな。私は、その程度。
 今更無数にいる芥の如き者であろうとも。」

みしり、と音がする

「この程度も、大したこともないのだろう?」

みしり、みしり

「さて……問いくらいは答えてやろうか。
 今際かもしれないからな」

未だに、拘束は続く
みしり、みしり、と音が静かに響く

「ああ。人間は嫌いだ。度し難い。
 くだらないものばかりだ。黒いカラスばかりだ」

冷たい目が、冷ややかに男を見る

「白いカラスがいるとでも?」

橘壱 >  
「!?」

何かが全身を包んだ。見えない何かだ。
彼女の動きに合わせて、ゆっくりと締め上げられている。
その小さな手中に囚われたようだ。
みしり、みしり、と締め上げてくる。

「……っ!」

全身の肉が、骨が軋む。
鍛えているとはいえ、超人とは程遠い。
相応に抵抗、押し返そうとはするも見えない何かが迫ってくる。
肺が圧迫され、息も苦しくなってきた。
文字通り、生殺与奪の権を握られたらしい。


だから、何だと言うんだ


「ま、……ったくだな!
 どうせ撫でるんだったら、直接さわれよ恥ずかしがり屋……!」

ニヤリと広角を上げて、言い放つ。
その通り、どうってことはないって。

「くだらな、いか……!
 先入観ばかりに囚われたら、そうだろう、さ!
 否定するのは、簡単さ……!そうやって逃げてれば楽だろうに……!」

無論、その長い道のりの中で、それだけではない可能性もある。
だが、敢えてそう言ってやった。その方が、効くと思った。

「いるさ……白いカラスも、絶対にいる……!見せてやるさ……!
 それ、に……、今の黒いカラスも、案外可愛いモンさ……!」

かつて無差別に群がったカラスとは違うはずだ。
もう彼女を啄むような行儀の悪い連中は、
歴史とともに風化した。もう時代は、世界は、
たかが吸血種一人に構ったりもしないはずだ。
強引に自らの座っているトランクに、アクセサリーを絡めた右手を添えて目を見開く。

「──────万妖邸(ココ)で起きたことは、大抵事故だ。
 要するに、僕が死んでも、キミは疑われづらいだろう、な……!」

「……やれるものならやってみろ。言っておくが、簡単には殺せないぞ

クロメ >  
「ほう……まだ囀るか。」

生殺与奪の権を握られてすら、まだ回る舌。
なんとなれば、こちらを挑発しようとさえしてくる。
自分は間違っていない。お前こそ惨めだと。

「では、見せてもらおうか?」

みしり、ぱきり
いやな、音がする

「あぁ……直接、の方がよかったか?」

見えない拘束は続いたまま、優しく男の手を取る。
どうとでも、できるのだろう

「さて、望みはなんだ?
 まだ囀るか?」

冷たい目が、冷たい声が、男にかかる

橘壱 >  
「───────っ!」

ぱきり。何かが折れた。
口の中いっぱいに広がる、鉄の味。
鮮血が口端から漏れる。苦悶に染まる表情。
冷たい彼女の手が、優しく自らの手を取る。
さながら、看取られている気分だ。

その気になれば一瞬だろうが、死なない自信がある
何の策もなしに、こんなことはしない。
その凝り固まった長い道のりを踏み込もうと、
向き合うとするなら、危ない橋くらい渡らなきゃ意味がない。

「望み、ね……!クロメのカワイイ笑顔、とか?
 ってね……!言った通り、さ!僕がいる、限り……」

必ずお前に、悪くないって言わせてやる……!

どれだけ圧をかけようが、冷ややかになろうと、
蛮勇が折れるはずもない。さぁ、吸血種。
囀りを止めたいのなら、殺す以外道はないぞ──────!

クロメ >  
「――興が冷めたな」

拘束が弱まる。
零下にまで下がったかのような気配が消え去り、部屋が暖かさを取り戻す。
明かりが差し、部屋の薄暗さが消え去ってゆく。
淀んだような空気が拡散していく。

「この程度で、たかが人一匹を屠るなど沽券に関わる」

手を持ったまま、じっと冷たい目が男を見上げる。
その眼は何処までも冷たく、顔は凍りついたままだ。
笑顔など、望むべくもない。

「囀ったなりに、やってみせろ」

手に、わずかに力がこもる。
わずか、ではあるが痛いほどに。
ここからさらに力が入れば、砕けるかも知れない

「折れず、曲がらず、度し難くないものだと。」

ふと、男の顔から視線を下ろす

「骨は、折れたようだがな」

橘壱 >  
何時でもその締付けを、超越者の握撃を握り込んでみせろ。
簡単には死なない。口に出したことを下げるつもりもない。
全身に脂汗が滴り、強く奥歯を噛み締め耐える。耐える。耐え──────…。

「……っ……力が……?」

全身にかかる圧力消えていく感じがする。
淀んだ雰囲気が遠ざかり、本来の部屋の明るさを取り戻し初めた。
ちょっとした秘策も見せてやろうと思ったが、
その必要もなくなった。嬉しいような悲しいような。

「……どうかな?結果として、殺せなかったんだろうさ。
 けど、その選択は絶対に後悔させない。
 言われずとも、やってみせ……いっだぁっ!?」

なんだかんだいいながら、
そっちを選択したのは彼女自身だ。
だから、選んでくれた彼女の選択を、間違いにしてはいけない
ふ、と口元ははにかんだ直後、悲鳴を上げた。
そりゃ握った手に"結構"力が入ったからね。

「ちょ、ツ、ツンデレするんだったらもっと優しく……えっ」

折れた?今ので?
確かになんだか手が鈍痛めいて響いてくる。
あ、いや、普通に痛い。超痛い。
そりゃもう表情が引きつってしまう程に。

「マ、マジか……そんな怒ってる?」

クロメ >  
「なんだ、殺されたかったか?」

どこか拍子抜け、という顔の男に冷たく言葉をかける

「……ああ」

何事もなかったかのように、また、宙に座る
男の悲鳴など聞いても居ない、とでも言うように

「骨? 気のせいだろう。」

あちこちに走る痛みは変わらない。
間違いなく、痛い。
ただ、痛い……それだけだ

「怒りなど、ない。
 人は度し難い、というのはすでに知っているからな」

静かな声が響く

「さて、ではせいぜい励め。
 どうやら、人外と絡むのは得意のようだからな」

そして、わずかに天を仰ぐ

「……まったく、度し難い」

橘壱 >  
「まさか。死ぬにしても、クロメには殺されてやらないさ。
 ……好きなように生き、好きなように死ぬ。それは変わってない」

そう、ずっと変わっていない。
押し留めていたものと向き合い、
新たに大切にしているものと一緒に背負っただけだ。

「……いや、言ったよな???さっきボソって言ったよな???」

間違いなく聞こえたぞ絶対。
っていうか手以前に全身痛い。
そりゃそうだ、さっきまで圧迫祭りだったんだから。
……いかん、落ち着いてきたら感じるようになってきた。

「あだ!?いっ……!っ~~~~~~!!」

途端、全身の痛みに歯を食いしばり蹲る。
これ、外傷が少ないだけで結構イったか?
クソ、せめて加減くらいしてくれよ、と胸中吐き捨てた。

「っ~~~……!え、な、何?なんだって?
 人外と……な、何?いでで…!ちょっと落ち着くまでそれどころじゃな……!」

天を仰ぐ少女の足元でのたうちまわる壱。
なんとも最後まで締まらないタイプだ。

クロメ >  
「……そうか。」

強欲なことだ。好きなように生きようなどと。
覚者とはいったがやはり、人は度し難い。

「喧しい男だ」

好き放題囀ったかと思えば、今度は痛みの声。
情けないことこの上ない。
締まらないことこの上ない。

「耳障りな声を上げるな」

ぱちり、と指を鳴らすと壱の体の違和感が減る。
痛みは残っているが、少しは楽になる。

「……死に際でもないだろう」

ぽつり、と呟く

「……」

橘壱 >  
「だ、誰のせいで……、……?」

文句の一つでも言おうとすれば、
少しは体が楽になった。彼女のおかげか。
体の軋む、骨が折れた分は治ったか?
でもまだ体が痛い。ハァ、思わず脱力。

「仕方ないだろ、痛いものは痛いんだ。
 鍛えてはいるけど、人間だからね。
 ……生きてる以上、痛みは感じる」

死に際でなくても、そういうものだ。
なんだかどっと疲れた気がする。
目を瞑れば眠れてしまいそうだ。

「……?クロメ……?」

何かを呟いたか、見ていたのか。
疲弊した表情で、少女を見上げる形となった。

クロメ >  
「死ななければ、なんとでもなる。
 痛み程度で文句を言うな」

理不尽とも言えるような物言いをする。
淡々としていて、冗談にも聞こえない

「……なんでも、ない。
 ただ……度し難い、だけだ」

声をかけられた。
つぶやきはどこかへ消えている。
答えは、わからない。

ただ、それだけを応える

「しかし、わざわざ死にに来たとは酔狂なものだ」

橘壱 >  
「…………」

たしかになにかいった気がする。
ただ、聞こえなかった。聞き逃してしまったか。
いや、でも疲れてしまったな。流石に体を貼りすぎたか。

「度し難いってもう半分口癖だよな……。
 まぁ、でも……言った通りさ。何時か……」

「白いカラスくらい、出会え……」

ゆるりと目を閉じたら、意識が途切れてしまった。
その気はなかったが、想像より効いたらしい。
非異能者の少年だ。殺そうと思えば簡単なものだろう。
その身でその片鱗を受け、こんな無防備を晒したまま寝てしまった。
それもまた、彼女への信頼なのだろう。

まぁ、起きた後どうなるかは知らないが……。

クロメ >  
「……」

男が気絶した。
おそらくではあるが。

息も、血流も問題はない。
死んではいないだろう。

「やれやれ。
 気が緩んだな」

一人、ため息をつく。

「その辺りに転がしておくか」

わざわざ外に出して置いておくのも、と考えると。
ここに放置、が一番間違いがないだろう。

「騒がしいことだ」

ようやっと戻ってきた静寂に、また息をつく。
そうして、今日、という日は過ぎていくのだろう。

ご案内:「万妖邸 個室」から橘壱さんが去りました。
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