2024/12/05 のログ
ご案内:「万妖邸 霽月之室」にノーフェイスさんが現れました。
ノーフェイス >  
おじゃましまーす(オープンセサミ~)

鍵を回して入り込んだは、部屋の主――ではない。間違っても。

「朝も早くからご登校とは、勤勉な学生諸兄には頭が下がるね」

学生ならず正規の島民ならず。
しかしならず者というには社会に芽も種もあり、言わば変わり者(ゴンゾ)の風体。
手に提げているものは、しかしあまりに生活感に満ちた商店の買い物袋。

「……不法侵入。には、ならない……よね……」

今更だが。
こっそりと忍び足をして、畳の藺草の香りと、不在の部屋主の気配を確かめつつ。
もそもそと向かうのは、キッチン――備え付けられてるとあたりの部屋らしい――へ。

ノーフェイス >  
「モノに当たるタイプじゃないとは思うケド……片付いてる」

気を遣う余裕は取り戻したのか、朔が頑張ったのか。
何れにせよ回復の兆しが見えている。
なんでこんなことを気にしているかといえば――相変わらずの筆不精同士だ。
相手の近況を把握していない。
なにかがあれば緋月か朔(どちらか)から連絡が入るだろう、とは思うのだけれど。

「お怒り鎮まりまして?なんてきけるハズもないしなー」

いちおう、朔と自分で共有された秘密であるので。
あまり自炊の印象のない相手の居室にて、いざ進めやキッチン。
洗浄と消毒ののちに準備は慣れた調子で。要領は良かった。良くしたのだ。

ノーフェイス >  
まずはベーコンから。程よく焦げ目がつくまで鍋肌で温めて。
融けた脂が広がる頃、追いかけるのは刻まれた野菜類。
甘みを出すためオニオンはたっぷりと――燻製香と脂と絡め合わせる。
軽快な鼻歌(ハミング)とともに、彩りを遊ばせるように木べらを動かした。

「もうここらへんからお腹が空いてくるんだよねー」

立ち上る芳香と、ぱちぱちとささやかに弾ける音がなんとも効く。
うんと小さい頃は聴いてるだけでそわそわして、共にキッチンに立たせてもらった後も、
それは変わらない――跳びかけた意識を現在に引き戻して。
注ぎ込んだスープストックと忍ばせたタバスコは市販品だが、
続いて取り出した小瓶は無地(ラベルレス)

「――そんでもってこいつの出番だ!」

独自配合のハーブとスパイスは生家秘伝の隠し味。
――商店で揃うような一般的なものしか使ってないが、隠し味ったら隠し味。
秘密にしておくことに意味があるのだ。
擦り切れてしまった思い出のなかで、レシピと数値という形で残る確かな記録。

……

ノーフェイス >    
「"朝な夕な鳥は騒いだ。小夜鳴鳥は谷のはざまで、雲雀は空の高くで"――」

あとは主役のアサリをぶち込んで、しばしベッドの上で読書タイム。

「……時は来た!」

まだ完成ではないのだ。
滋味の染み出したスープにポテトを投じて、ミルクとクリームのおしろいで化粧する。
こいつらが良い感じに煮込まれて馴染んだら、いつものやつの完成だ。

「そして完成品はこちらとなります」

こっそり合間に作っておいた、ロブスターのマリネ。
ハーブマヨネーズの配合も、当然秘密。温めたロールパンに挟んで蒸らせば相棒も完成だ。

ノーフェイス >  
「いただきまーす」

テーブルの上に並べられたのは、いつかを辿る郷土料理(コンフォートフード)
いつか来た場所、いつかたどり着く場所。
手を合わせるのは家人に倣い――……忘れてた。

「――これでよし、と」

ばっちり写真に収めておいて。
ちょうど昼前の時刻。部屋主へのメッセージに添付しておこう。

  『作りたくなったから作った』

ロブスターロールとクラムチャウダー。
これしか作れないのか、というくらい作ってるやつ。
レパートリーは実際少ないが、そう、どちらも自分しか作れない味だ。
質の高低ではない。定量(レシピ)が導いてくれる、記憶への(しるべ)であるがゆえ。

  『キミの分もあるから、夜にでもどうぞ』

――久々の会話の取っ掛かりと、秘密を知ってしまった罪悪感への贖いと。
健啖家へのご機嫌取りだ。

ノーフェイス >  
「……美味しすぎる。やっぱりコレなんだよな……」

満足感がすごい。あとはしっかり片付けをしなければ。

「…………」

――まぁ。
久しぶり、と声をかける白々しさを隠すように、こうした戯れを好む。
慣れてきた床座のまま、両手を背後の床について、天井を眺めた。

「つぎはふたりで食べようか」

含み笑いとともに、独りごちた。
このメッセージは送らないでおこう。
機嫌良いものが返ってくるなら顔を合わせられよう。

たとえいつ、またひっくり返るかもわからない世界とて。
そうでなければ――また会えるだろう、いつでも。

きっと。

そうして後始末のなった中で、帰った部屋主を招くのはその味。
気の利くようで利かないシェフは、そこにはおらずとも。
確かにいた気配は、ほんの僅かなバニラの残り香とともに。

ご案内:「万妖邸 霽月之室」からノーフェイスさんが去りました。
ご案内:「万妖邸 霽月之室」に緋月さんが現れました。
緋月 >  
「た…ただいま……。」

ヘロヘロになって帰って来た部屋の主。
何のことはない、暫く眠らされていて中断していた「稽古」の再会で散々に揉まれた結果である。
虚の眼をした黒い戦人は、相変わらず容赦と手加減がなかった。

「……。」

軽くオモイカネ8を弄り、昼頃に送信されてきたメッセージに目を向ける。
既に既読は付いているのだが、再確認だ。

「まったく…勝手知ったる何とやら、ですか。」

軽く苦笑すると、いつも彼女が作ってくれる料理を探す。
――冷蔵庫にあった。
レンジとコンロで温め、いただきます。

緋月 >  
「ん……おいしい。」

疲れた身体に、暖かいクラムチャウダーが身に沁みる。
ここ暫くで少々寒くなって来たので猶更だ。
暖かい食べ物がおいしくなる季節。

《相変わらずよく食べるな。
昼も割と食べていたのではないか?》

内から響く声は、身に宿る友のそれ。
以前に受けたアドバイスから、そう頻繁ではないものの、こうして時折起こしては
二人での会話や情報処理の練習などに励んでいた。
特に、座学の授業では少し助かっている。

「散々身体を動かしましたから。
食べないと身体が出来上がりませんよ。」
《怠けて弛んだ身体にならぬようにな。》
「うるさいです。」

そんなちょっとした言い争いをしながら、リモコンを探り、テレビをONに。
最初は必要かどうか迷ったのだが、「得られる情報もある」という事で押し切られる形で買ったものだった。
今では暇潰しの時に見る位になっている。

今回も、ただの食事中の時間潰しになる、筈だった。

《――盟友よ、何やら大変な事になっているぞ。》
「ん、何ですって?」
《にゅーす、だったか。知っている顔が映っている。》

そんな事を言いながら、自分が食に集中する間、テレビに意識を向けていた友がこちらに情報を流してくる。
 

ナレーション >  
『――――と、言う事で、現在、不法入島者・仮称「ノーフェイス」がこちら、風紀委員■■署に
連行されるという事で、署は多数の報道陣で埋め尽くされています――』

『あ、只今護送車両でしょうか、一台の車が入ってきました!
署前に停車し――降りて来ました! 
ああ、手を振っております! しかも笑顔です!
何という大胆不敵!!』


『えー、こちら■■署前は大変混雑しております!
報道陣の他、様々なメディア関係者がその存在を疑問視さえされていた
怪人の連行される姿を一度でもカメラに収めようと必死です!

しかし、姿を現しただけで、大変な騒動です!
更にまるでサービスでもするかのような笑顔を――――』
 

緋月 >  
「な」

――少しだけ映っていた、連行される「犯罪者」。
意識を向け、視力を絞ったので、何とかその顔を判別出来た。

「な――――」

……とてもよく知っている顔であった。
まるで誘うような、挑発するようにも見える、満面の笑顔。
それが、「犯罪者」として、テレビに流れている。

「な………………」

――――――――
 

激怒の声 >  

「――――何をやって
いるんですか、あの馬鹿ーーーー!!!」


 

ご案内:「万妖邸 霽月之室」から緋月さんが去りました。