2024/08/05 のログ
緋月 > 「ふむふむ――。」

話題が話題である。
真剣な表情で耳を傾ける。詰まる所、

「…技の引き出しに、不足、みたいなものを感じている、という事ですか?」

手数の多さが勝敗を決めるか否か。
それは簡単に解を出せる問題ではない。
手数…扱える技の多さは、確かに様々な相手に対応する事が出来るという事に繋がる。
だが同時に、極められたひとつの技による一撃の必殺性もまた、決して馬鹿に出来ないものがある。

隣に座る同居人から幾度か聞いた、彼女の扱う流派は…飽くまで個人的観点に基づくが、
非常に簡潔に纏まっている、と思う。
3つの技とその組み合わせ。
物足りない、と思う事は簡単だ。だが、それを「必殺」の域にまで高めれば…あるいはそれだけで充分かも知れない。

「うーん…私個人としては、綺麗に纏まっていて、後は使う側の習熟やそれを的確に運用する
状況判断力次第で充分に化ける技術だと思うのですが…。」

とはいえ、これは飽くまで個人的観点からの意見。
申し出て来た彼女の意志を蹴ってしまうのもあまり気持ちがいいものではない。

「――わかりました。私で良ければ、立ち合いのお相手を務めましょう。
ただ……私の修めた剣術は、その、少々独特で…。
もし何の手掛かりにもならなかった時は、すみません。
先にそれだけは、謝っておきます。」

ぺこり、と小さく頭を下げる。

桜 緋彩 >  
「と言うより、なんと言えばいいのか」

顎に手を当てて考える。
今のままでも十二分にやれるだろうし、実際やれている実感もある。
現状に不足がある、と言うわけではないのだが、

「――強いて言うなら、もう一つ先がある、と感じている、でしょうか」

不足はないが、これで完成ではないだろう、とも思う。
更に自分の個人的な感想も加えるならば、そもそもこの技を生み出した者はもう一段階先を見ていたような気がするのだ。

「纏まっている、と言うのは私も同意見です。
 逆に言えば優等生過ぎる、と言うのもやはりあるのです」

余所の流派から様々な技術を取り込むほど節操がないにも関わらず。
自身の流派の技はあまりにも綺麗にまとまり過ぎているような気がしてならない。

「いえ、受けて頂けるだけでありがたいです。
 緋月どのの流派からヒントを得たい、と言うよりは、立ち合いを通して足りないものを見付けたいという思いも近いので」

緋月 > 「もう一つ先。」

思わずちょっと難しい顔で腕組みをしながら首を軽く傾げてしまう。
何となく、他人事と思えない言葉。

「……その「もう一つ先」が伝えられていないのは、何というか。
もしかしたら、もしかしたらの話、です。

教えられるモノではなく、自力で到達するものではないか。
唯一の正解ではなく、編み出した者の数だけ、解と技があるのではないか。
「自分だけ」の、他人には伝え難い術理、というものが。」

もしもそうなら、奇妙な近似の感覚を覚える。
それは正に、己が求める「魔剣」の在り方ではないか。

「わかりました。
それでは、お互い都合の良い日に――訓練施設を使って大丈夫な規模で収まるといいのですが。」

ちょっとだけ、其処が心配。
主にヒートアップし過ぎて大変なことにならないかで。

桜 緋彩 >  
「あるいは、技を生み出した人物が志半ばで斃れたか」

単純にそこまで到達できなかっただけと言う可能性もある。
今あるものは慣性系ではなく、完成に至る途中のもので、残された者たちがそれを完成だと思っているだけ。
どちらにせよ過去のことだ、知る術はないだろう。

「なんにしてもご協力頂けるようで、ありがとうございます。
 それに関しては、ご心配なく。
 訓練施設だけではなく屋外の演習施設もございますので」

大規模な演習を行ったりするための施設もある。
訓練施設が体育館ならば演習施設はグラウンドのようなものだ。

「――まぁ、お互い怪我などしないように気を付ける必要はありますが……」

どちらかと言うとそちらの方が心配。

緋月 > 「確かに、その可能性もありますね…。」

いずれにしろ、難問には違いがない。
何しろ正解の見えない問題なのだ。
ならば、己が出来る事は其処に少しでも近づけるように、立ち合いに力を尽くすだけ。

「そうですね…怪我については気を付けないと大変です。
流石に入院沙汰は避けたいですからね。」

ちょっと苦笑。
何度か入院沙汰をやらかしてる人間としては、またの病院送りは流石に気まずい。

「――では、難しい話はこの位にして!
私は軽く水に流されてきます。
緋彩さんも、お子さん方の監督の方、頑張って下さい!」

よいしょ、と椅子から立ち上がり、ほんの少し残っていたペットボトルのお茶をぐい、と飲み干す。

桜 緋彩 >  
「緋月どのはそろそろ病院の常連になりそうですからね」

苦笑。
彼女が何度も入院しているのは、風紀委員だからという以前に同居人だから知っている。
その度にタイミングが合わずお見舞いに行けていないのは申し訳ない気持ちはあったり。

「はい、急な申し出を受けて頂きありがとうございます。
 緋月どのこそ、流され過ぎないようにお気を付けくださいね」

立ち上がる彼女へ笑顔を向ける。
水難事故と言うのは慣れていても起こるものなのだから。

緋月 > 「うっ…それを言われるとちょっと痛いです…。」

思わず口がバッテンのウサギさんのような表情に。
気まずい事に自覚はある少女であった。

「はーい、気を付けます!
プールの傍では走らず、足元に気を付けて、ですね。」

水難事故以前の問題にも気を付けつつ、てくてくとプールに向かう少女であった。
実はつい先日、友人とのお出かけの折にやらかしてしまった事は内緒である。

桜 緋彩 >  
「病院沙汰に関しては私も人のことは言えませんが……」

彼女ほどではないにせよ、自分もそれなりに怪我をするので、結構病院のお世話になったりしている。
お互い血の気は多いのかもしれない。

「プールサイドもそうですが、水の中も結構危ないですからね。
 体力も使いますし、陸の上とは勝手も違いますから」

そう言って彼女を見送ろう。
その後は、水を飲みに来た子供たちに飲み物を渡したり、転んで血を流して泣いている少年の手当をしたり。
大変ではあったが楽しかった一日であった――

ご案内:「常世島スパ洞天《桃源リゾート》 プールエリア「瑶池水宮」」から緋月さんが去りました。
ご案内:「常世島スパ洞天《桃源リゾート》 プールエリア「瑶池水宮」」から桜 緋彩さんが去りました。