2024/06/10 のログ
■伊都波 凛霞 >
「あー……とこコレ…」
様々な生徒がその名を口にするようになった。
6月は学校行事も少ないため、特に興味を引いたのかも知れないが。
「私は出るつもりは今のところないかな…。ほら、風紀委員でやることもあるし」
実際には、出る以上採寸という現実から逃げられないからなのだが。
せっかくここまで逃げ切ってきたのだから現実の数値を突きつけられるわけにはいかない。
なんとしてもである。
「ほら、家では人の目も気にならないしね?」
気にしなくてもいいから、と。
続いて彼女の手にする服を見やれば、両手を合わせてわぁ、と一息。
「涼しげな色でいいかなと思ったけど、それいいんじゃない?似合いそう~!」
夏にぴったりなコーデ。これに帽子なんかも合わせたらますます良さそうである。
■桜 緋彩 >
「私も友人から出ないのかと聞かれましたが、やはり風紀の仕事を開けるわけには。
しかし、凛霞さんは背も高くスタイルも良いですし、その上美人でありますから。
出れば優勝も狙えると思っていたのですが、残念です」
警備が無ければ出てもいいとは思ったのだけれど。
とは言え彼女が出ないのは残念だ。
学内で人気があるのは知っているし、自分と違って背も高い。
ステージに上がればさぞ絵になったろうに。
「な、るほどぉ……。
なんと言うかこう、人の目が無くても、肌が多く出るものは気後れしてしまいますね……」
水泳の授業とか、結構恥ずかしい。
水着はまだそう言うものと認識できるからまだマシなのだが。
「そ、そうですか?
凛霞どの――さんにそう言っていただけると、ちょっとその気になってきてしまいますね」
ちょっと顔を赤くして照れる。
色々な色があるが、自分が手に取ったものはベージュ。
しかしせっかく常世渋谷まで来たのだ、普段は選ばない色を、と濃い目の青のものと入れ替えて。
「ちょっと、試着してみても……?」
■伊都波 凛霞 >
「まぁ、少なくとも自薦はしないかな」
苦笑する。
並べられる言葉はよく言われる言葉ではあったけれど。
自分から積極的に…とは、なかなかうまくいかないものだ。
先述の理由もあるし!
「そうなんだ。私もまぁ人目があると流石に…だけど…」
彼女は見た目通りに奥ゆかしい女の子なのかもしれない。
自分はそれなりに活発な自覚もあるからして。
「あ、試着?いいと思うよ~♪
せっかくだし色んな色合い、試してみたら?」
確か試着コーナーはあっち…、と。
店員さんに使いますね、と言付けてそちらへ向かおう。
■桜 緋彩 >
自薦はしない。
まぁそれは自分も同じだし、見たいからと言って自分が推薦すると言うのも違う気がする。
多分出るとなれば風紀もある程度融通は効かせてくれるだろうが、出たくないと言っているような気がして。
「人目と言えば、先日刑事部の人に潜入捜査を手伝ってくれ、と頼まれたのですよ。
私は一般委員ですので流石にお断りをしたのですが、潜入先はカジノで、制服はバニースーツだったのです。
潜入捜査のためとは言え、流石に人前でバニースーツ姿とは、刑事部も大変ですね」
困ったように笑いながら。
笑い話のつもりのどうと言うことの無い話題提供のつもりだが、まさかそのバニースーツで潜入していたのが目の前の彼女だとは知る由もない。
そうして試着室へ入って、
「――どう、でしょう……?」
着替えて出てくる。
カットソーの裾は絞られているので、思ったほどの着太り感はないし、フレアスカートも裾に向けて広がっているからウエストが細く見えるシルエットで。
思ったより首回りが広いカットソーなので肌の露出が多いが、気になる程でもない。
恥ずかしそうにしながら感想を求める。
■伊都波 凛霞 >
ピタリ。動きが止まる。
ぎぎぎぎ…とぎこちない動きで振り返る、その顔は…いつもと変わらない、笑顔。
「そうだね。色々やらなきゃいけないから大変だよ」
でもお仕事だから仕方ないよね。
そう苦笑する彼女はいつもと変わらぬように見えた。
そう、努めた。
──まさか刑事課以外の風紀委員にまで話が行っているとは思わなかったけど。
さて、気を取り直して試着室から出てくる彼女を待つ。
「おおーっ!」
歓声を上げて、小さく拍手。
少し恥ずかしげにしているのが、余計愛嬌を感じさせる!
「ばっちり!いいんじゃない?
えーと…うん!お値段も手頃みたいだし。
一杯男の子に声かけられちゃうかもね?ふふっ」
サムズアップしつつ、冗談めかしてそんなことまで言ったりして。
■桜 緋彩 >
「……あっ」
一瞬彼女の動きが止まり、振り返る動きは壊れかけたロボットのよう。
こっちを向いた彼女の顔はいつも通りだったけれど、察した。
察してしまった。
にこっ、と曖昧な笑みを向けるに留めておこう。
「おとっ――!!」
男の子に声を掛けられる、と言われ、顔が真っ赤になる。
「そ、そんな、私など剣術だけが取り柄のゴリラみたいなものですので!
そんな、男性になど、こ、困ります……!」
先ほどまでとは違う恥ずかしさ。
思わず試着室のカーテンに隠れてしまう。
■伊都波 凛霞 >
「…?」
急に顔を真っ赤にする彼女に思わず首を傾げる。
…もしかしてそういうのに免疫がないのかも。
「ゴリラ…にはとても見えないんだけどなぁ…」
力説する彼女に苦笑。
普段の立ち姿もそうだけど、夏コーデを纏った彼女をゴリラに例える人なんて恐らくいないだろう。
試着室に隠れてしまう少女は年上にも関わらずとても愛くるしく見える。
「まぁ、それはそのうちわかりますよ、っていうことで」
とりあえず、お気に入りには出会えたかな?と笑顔。
■桜 緋彩 >
「この間、後輩にゴリラ女と言われまして……」
まぁアレはアレで無理矢理頭を押さえつけたからそう言われても仕方ないけれど。
「うぅ、そう言われるとこの格好が恥ずかしくなってきました……」
カーテンの裏でもじもじしている。
とりあえずいつまでもこの格好でいても仕方がないので着替えてしまおう。
カーテンを閉めて素早く制服に着替えて。
「ふう、やはりこの格好が落ち着きます……
凛霞さんは何か試着はよろしいのですか?」
とりあえず手近のカゴを手に取り、今試着していた服を入れる。
サイズもぴったりだった。
■伊都波 凛霞 >
「そんな失礼なこと言う子がいるの!?
っていうか、後輩ってことは風紀委員…?」
むむ、と眉を顰める。
女の子相手にそんなことを言うなんて。
こんな、恥ずかしがって試着室から出てこれないような乙女に向かって!
まさに憤慨である。
ぷんすかぷんすか。
「ん、もういいの?
あー、うん私はサイズは決まってるから大丈夫!
どう?お値段とかも大丈夫そう?」
気を取り直して、にこやかに問いかけ。
ちゃんと期待に応えられたかな…とやや心配しつつ。
■桜 緋彩 >
「なんと言うか、難しい家庭だったようで……。
あ、でも悪い子ではないのですよ。
良くも悪くも素直というだけで」
慌ててフォロー。
本人のあずかり知らぬところで悪く言うのは良くなかった。
反省。
とは言え悪い子ではないと思っているのは本心でもある。
「ええ、サイズに問題ないのは確認いたしましたので。
値段も問題ありません、こう見えて結構溜め込んでおりますから」
むんと胸を張って見せる。
お金に関しては使う先があまりないと言う意味でもあり。
「凛霞――さんに相談してよかった。
私一人ではいつも通りの無難なものに落ち着いていたでしょうから。
ありがとうございます」
改めて深々とお礼。
■伊都波 凛霞 >
慌ててフォローをいれる様子にちょっと驚く。
ゴリラ呼ばわりなんて、結構傷つく案件だと思うのだけど。
それえ後輩をかばう姿勢を見せる彼女はなんてよく出来た人間なのだろうか。
結構、感情的になる自分も見習わなければならない。
「ううん。私も欲しいものあったし、これくらいならいつでも!
他にも学園のこととか委員会のこととか、何か困ったことがあったら何でも言って♪」
深々と礼をする彼女にそう言って笑うと胸を張って見せる。
人に頼りにされると断れない性格なのはもともと、でもこうやって役に立てることはとても嬉しい。
「じゃ、お会計して出よっか。
この後どうする?よかったら近くでお茶でも──」
せっかくだし、なんて。
常渋のスイーツでもご一緒しよう。
そんな、風紀委員二人のオフの1日。
■桜 緋彩 >
「ありがとうございます!
私も、凛霞さんの力になれることは少ないかもしれませんが、何かありましたらお声かけ下さい!」
前々から思っていたが、この人は色々と頼りになる――頼りになり過ぎる。
彼女の人柄も相まって、ついつい甘えたくなるのだが、同時にもっと頼って欲しい、と思うことも。
たまにそう言う話も聞いたりするので、そんな意味も込めて言葉にしておこう。
「あ、それでしたら今日のお礼にご馳走させていただけませんか?」
なんてことを話しながら、会計を済ませて店を出る。
もしかしたら払う払わないの押し問答になるかもしれないけれど、それもそれで楽しい休日である――
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から桜 緋彩さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に五百森 伽怜さんが現れました。
■五百森 伽怜 >
鹿討ち帽を被った紫髪の少女が、元気に賭けていく。
道行く人々に新聞を配りながら走る彼女の名は、五百森。
新聞同好会、2年生である。
今日の担当は常世渋谷――ということで、歓楽区で新聞配りを
しているというわけだ。
「お待たせしたッス! 新しい記事ッスよ~!
昨日、マシンアームの男がまた出たらしいッス~!」
さて。本日新聞同好会の紙面を大きく飾ったのは、
近頃巷を賑わせている鋼の触腕を持つ男、テンタクロウについての記事である。
『怪奇! 謎のマシンアーム男再び!』
と題されたその記事は、
不鮮明ながら彼を捉えた写真を掲載しており、
また彼についての目撃情報や、
被害者についての情報も羅列していた。
通行人の反応はといえば――十人十色だ。
いつもの騒動か、と無視する者達も居れば、何だ何だと新聞を取りに来る者達も居る。
さて、歓楽区を走り回って数刻。
もう日はとっぷり暮れているが、それでも五百森は根気強く走り回っていた。
せっかく部のみんなで、一生懸命作った新聞なのだ。
少しでも部室に持って帰る量は減らしたかった。
できることなら、全部渡しきって、帰りたかった。
部員のみんなの、悲しい顔は、見たくない。
せめて配りきれないのなら、とっておきのスクープでも
持ち帰らなければ、申し訳ない。
五百森はそう感じていた。
■五百森 伽怜 >
無論、現実は非情である。
残念ながら、そう上手くいくわけもなく。
余った新聞記事は残すところ、数十部。
最後に新聞を受け取ってくれた人に会えたのは、
一体何十分前だっただろうか。
もう歓楽区の端まで来てしまったし、
悲しいけれど新聞を持って帰るしかない。
そう思っていた、矢先のことだった。
「あのー、新聞どうッス――」
曲がり角からやって来た大柄な男にぶつかった。
不意の衝撃に、軽い五百森の身体は簡単に地面に転がる。
それでも、新聞は大事に抱えながら――
「――わわ、ごめんなさいッス!」
――謝罪。
落としてしまった鹿撃ち帽を被り直した
五百森は男にぺこぺこ頭を下げるのだが――
既に、男の姿はなかった。
見れば、遥か向こうまで走り去っているらしい。
他にも数名の男女が、
まるで何かから逃げるかのようにこちらへ走ってきていた。
「テンタクロウよ! あんたも逃げなさいよ! 骨をめちゃくちゃにされたいの!?」
制服を着た一人の女。
鬼のような形相の彼女は、
へたり込んでいる五百森に声をかけて、走り去っていった。
一人ぽつんと、取り残される五百森はといえば。
残り僅かとなった新聞記事を大事そうに小脇に抱えれば、
ポケットから取り出した写真から、カメラを取り出した。
「怖いけど……怖いけど……」
骨を折って回る怪人だなんてとんでもない。
めちゃくちゃにやばい相手だ。
不鮮明ながらも写真で見た、あの腕に掴まるのを想像するだけで
身震いがした。
――でも。
――それでも。
「みんなにスクープ持ち帰る、大チャンス……ッスね」
五百森は一人、カメラを手に一人、逆走を始めたのだった。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から五百森 伽怜さんが去りました。