2024/06/12 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」にミア・コレットさんが現れました。
ミア・コレット >  
極彩色の街並み。
歪んだパースのビル群。
入り組んだ交差点。

「こちらミア・コレット。目的地に着いた」
「指示を……あれ?」

ここは裏常世渋谷。
この世界のウラガワみたいな場所。

「音の入りが悪くなった、もしもーし!!」

声を張っても通信機は作動せず。

「嫌な気配だなぁ…」

通信機を背嚢に戻して、探索を始める。

最近、テンタクロウとかいう悪党が負の感情をばら撒いているせいで。
裏の世界の住民が活発だ。

今回も行方不明者の女子生徒の捜索。
急がないと手遅れになる。

ミア・コレット >  
誰もいない街並みに足音だけが反響する。
そこかしこで人ならざる者の気配や影はあるのだけれど。

ふと、歩いていると。
頭だけデッカくて体はなんか変な形をしているヒトの形の怪異の一群を見つけた。
交通標識には巨頭オ?とか書いてある。

「どうもー、人間でーす」
「ここで最近、こういう女の子が拐われてこなかった?」

携帯デバイスの写真を見せる。

「大体同じ格好だけど。当時、赤のスニーカー履いてたんだって」

周囲の頭の大きい怪異の群れはそれぞれ眼を見開いて私の携帯デバイスを覗き込む。

巨頭の怪異 >  
「アー……オニグモ…昨日、女、拐った」
「あっち……でも強いぞ…」

「お前ウマそう……ちょっと味…味見…」

ミア・コレット >  
「情報ありがとう! 味見はさせらんないわー、ごめん」
「代わりにこれあげる」

焼きそばパンを怪異の白くて細長い手に握らせて。

「最近物騒だからハンターに狩られるなよー!!」

そう言ってぶんぶん手を振りながら一群から離れていった。
オニグモか……どんな怪異だったっけ…

名前からして蜘蛛っぽいのはわかる。

ミア・コレット >  
怪異に教えてもらった方向に歩いていく。
うーん、人の気配を感じ取れたらラクなんだろうけど。

そんな能力も道具も持ってはいない。

なんか看板には『豁サ縺ュ』と書いてある。

目を凝らすと、文字は『死ね』と変わった。
ええい、よくわからんわ!!
看板を蹴ったら足が痛かった。

その場に蹲る。

ご案内:「裏常世渋谷」に焔城鳴火さんが現れました。
ミア・コレット >  
その時。
薄汚い殺気を感じた。
咄嗟に振り返る。

オニグモ >  
見上げるほどの巨体の蜘蛛が。
音も立てず後ろに立ち。
鎌のような前足を少女に向けて振り下ろす!!

焔城鳴火 >  
「――伏せなさい!」

 そう鋭い声が聞こえた直後、巨大な蜘蛛を貫く様に雷が落ちた。
 体表を覆う体毛が焦げたのか、焼けるような臭いが広がる。

「早くこっちに来い!
 食われるわよ!」

 すぐ近くの路地から大声で、金髪の少女を呼ぶ声。
 白衣を羽織った小柄な女が腕を振って招いている。
 

ミア・コレット >  
振り下ろされる刃、しかし。

「わっわっわっ」

ワタワタと呼んだ白衣の女性の隣に向かう。
雷撃が大蜘蛛に直撃したのか……?

「蜘蛛の怪異……オニグモか!」
「あなたは?」

眼鏡をした白衣の──

「と、とにかく! あいつに行方不明者の話を聞き出さないと!!」

ビシッと蜘蛛を指さして。

「赤いスニーカーの女の子を拐った奴だな!!」
「彼女は今、どこだ!!」

オニグモ >  
電撃を受けて全身に電流が奔る。

「ゲヒュッ……」

ダメージを受けて怯む、ガキを仕留め損なった。

「ああん? 飯が増えたなぁ……」
「街にいた女かぁ?」

「あそこだぁ」

鎌で指した先に、蜘蛛の巣に絡め取られ、麻痺毒を受けたのかぐったりした少女。
渡良瀬 翔子(わたらせ しょうこ)だ。

「ヒヒヒヒヒャハハハァ!!」
「要るのか? じゃあやるよぉ」

蜘蛛の糸が切れ、4メートルほどの高さから少女が落下していく。
助けに行けば一対一、判断を迷えば不意打ち!!

焔城鳴火 >  
「――オニグモか。
 くそ、久しぶりに放り込まれたと思ったらこれか」

 舌打ちをしながら、やってきた少女を。

「でえい、目的はわかったから前に出るなコレット!
 お前アレとやりあえんの!?」

 そう言いながら、オニグモに啖呵を切る少女の前に出る。
 そして――

(これだからたちの悪い怪異ってのは!)

「――あの子は任せなさい!」

 宙に吊るされた被害者――渡良瀬を認めた瞬間、白衣は翻る。
 全力疾走から落下地点に滑り込んで、全身を使って受け止めた。

「――っ!」

 高所から落下する少女を生身で受け止める。
 体が軋む様に痛むが、なんとか少女は弱弱しい呼吸を続けていた。
 それに、束の間の安心を得るが――当然、オニグモに即応できるような状態ではなかった。
 

ミア・コレット >  
「やれる!」

構えを取って。

「そのためにここに来た……!!」
「って、私の名前知ってるの!?」

その時、切れる蜘蛛の糸。
あいつ、やりやがった。
私の前でそんなだいそれたことを。

怒りが異能に血を通わせる。

「エトランゼーッ!!」

叫びと共に、影から異形の狸が姿を見せる。
二本の足で立ち、神杖を握るそれは。

「汝の名は、隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)ッ!!」

眼の前の蜘蛛に向けて異形の狸が杖を構える。

「串刺しになれーッ!!」

念力で折れたカーブミラーや交通標識が、
槍のように鋭い断面を先に大蜘蛛に飛来する!!

「その子を守ってー!!」

こいつは、私がやる!!

オニグモ >  
「ゲヒヒッ!! 全員、ひき肉にして喰ってや…」

その時、念力で操作された鋼の槍が体に突き刺さる。

「ウギャアアアアアアアァ!?」

ドス黒い血が刺さった先で所在なさげに揺れるカーブミラーを染めた。

「お前……ぶっ殺してやるぅぅぅぅ!!」

ミアに向けて口から炎を吹いた。
火炎放出。浴びれば人間一人、ひとたまりもない。

焔城鳴火 >  
「い、った――」

 表情をしかめながら少女を抱き上げる。
 右肩に抱え上げて、オニグモの方を見れば――

(――へえ、あれが『エトランゼ』
 なかなかのモンじゃない)

 少女により呼び出された異形により、オニグモが汚い悲鳴を上げる。
 だが、それだけでは滅ぼすには足りない。
 白衣のポケットを探る。

(――『迅雷』は残り一つ。
 『草薙』も――ケチってる場合じゃないか)

「――足止めする!
 あんたがトドメを刺しなさい!」

 左手で、二つの小道具を投げた。
 一つは、飾りのような小さな角。
 もう一つは、キーホルダーのような小さな剣。

「――霹靂(はたた)け『迅雷』!
 切り払え『草薙』!」

 角からは鋭い雷が放たれ、オニグモに刺さった即席の槍を避雷針に吸い寄せられ、オニグモを体の内外から感電させる。
 そして放たれた炎は、小さな剣に引き裂かれるように、無数の火の粉になって霧散するだろう。
 

ミア・コレット >  
「だ、大丈夫なの!?」

あの女の人、あの高さから落ちた女の子を受け止めてもまだ動ける!?
そして炎は防がれ、雷撃は相手の足を止めた。

最後の刻だ。

「オニグモ……だっけ…」
「私アンタのことが嫌い」

「だから、さよなら」

影から出た異形が姿を変えていく。

「エトランゼッ!!」

影は変質し、顔が塗り潰され、輪郭がブレた女ガンマンのような異形へと変わる。

「カラミティ・ジェーンッ!!」

“彼女”の手に握られた銃に力が収束していく。

そして。
影が大きく口を開いて嗤うと、銃口から魔弾が放たれた。

それは寸分違わず、オニグモの急所に向けて迫る。

オニグモ >  
放った炎が散らされ、雷が体に収束していく。

「イギッアアアアアァァァ!!」

最後に肉弾攻撃で誰かを道連れにしようとした時。

体の中心に大穴が空いた。
魔弾が怪異を穿ったのだ。

「ヒ、ヒヒヒ……」
「麻痺毒を打ち込んだガキは助かるかな…?」

最期にその呪言を浴びせると。
巨体は弛緩して、二度と動くことはなかった。

焔城鳴火 >  
 崩れ落ちた巨体の前、女生徒を抱えたままオニグモを討ち取った少女の元へやってくる。

「凄いもんね――ぃっ」

 体のそこかしこが、軋む様に痛む。
 受け身は取ったとはいえ、鍛えていても負担を掛ければ筋肉は痛む。
 とは言え、動けないほどではなかったのは、普段から鍛えていた甲斐と幸運によるものだろう。

「ミア・コレット、一年の異邦人だったわね。
 あんた、ここから出る方法はわかんの?」

 そう言いながら、ゆっくりと少女を床に寝かせる。
 白衣を翻すと、ウエストに留められたポーチから、小さな薬箱を取り出した。
 使い捨ての注射器を数本並べて、少女のバイタルを確認する。

「麻痺毒、デカいとは言え蜘蛛の毒ならこれで処置は出来るか。
 ――安心しなさい渡良瀬、あんたは死なないから」

 そう力なく横たわる少女の頭を優しく撫でながら、その首筋に注射器の針を突き立てた。
 

ミア・コレット >  
「やっぱり私のこと知ってるんだ…あなたは?」
「年上だと思うけど敬語……あんまできなくてごめん」

手際よく行方不明者だった少女を解毒する姿を見て。

「良かった、助けられる命は助けたい……からね」

周囲を見渡してからエトランゼを自分の影に戻して。
道開きの御守を取り出した。

「帰り道は私がわかる」
「その子は……不定形のエトランゼを呼んで運ぼう」

「それにしても……」

大蜘蛛の死骸を見て顔を歪めた。

「やっぱりこの世界、慣れない」

そう言ってエトランゼで乗れる雲のような存在を創り出し。

後で知ったのは、彼女が保健の焔城鳴火せんせーだったこと。
そして、渡良瀬翔子が日中に異世界に拐われた、ということだった。

黄昏時ではなく。昼間に。
この世界の法則が崩れてきている。
そう感じた。

焔城鳴火 >  
「通りすがりの巻き込まれ教員。
 敬語なんて気にしなくていいわ。
 あんたたちが無事だっただけで十分よ」

 そう言いながら応急処置を終えると、少女に案内されて裏側の世界を後にするだろう。

「こんな世界、慣れないに越した事はないわよ」

 そして表側の世界へと帰れば、少女の代わりに渡良瀬を病院へと連れて行ったことだろう。
 これにて、一件落着だが、しかし。

 偶然とは言え縁が結ばれてしまったとなれば。
 またいずれ、『あの世界』で出会う事がある――かもしれない。
 

ご案内:「裏常世渋谷」からミア・コレットさんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」から焔城鳴火さんが去りました。