2024/06/29 のログ
カロン > 「…何とも当たってほしくないものですが…お互い、運が悪かったようですね。」

自分の何気ないそんな返しに、内心で吐息。これではまるで…いや、今は考える時ではない。
ちらり、とファレーマン氏へと視線を戻せば、何やら手足に装着している。
対してこちらは、先端が金属で補強されてはいるが木製の黒い櫂が一本きり。

「…歓迎よりも快く送り出して頂きたいものですが…。
…”魂の感触”からして、対話は少々無理そうですね。」

【渡し守】の最もたる特性の一つに魂魄の感知がある。
その感覚に引っ掛かる手触りからして、まともな会話は成り立ちそうにない。

「…幽霊、ですか。」

ならば自分が送るべき魂でもある…が、生憎と怪異は少々専門外だ。
緩やかに、迫る気配を眺める――やがて、夥しい数の黒い甲虫のような出で立ちの怪異の姿が。
ぐるりと、老人と影を取り囲むそれは最低限の知能は持っているらしい。

「…ファレーマン氏。私も戦いは避けたいクチですが…ここは応戦するしかないかと。」

逃げるにしても、突破口を広げなければならない。

ファレーマン >   
「ま、こういった時の悪い勘は当たるものです、ししとうの辛い所を食ったと思ってあきらめましょう」

からからと笑いながら櫂を眺める

「良い櫂じゃ、実に心が籠っていそうな一品じゃの……あぁ、しかし、そうか……対話としての戦闘(お話)ならば歓迎なんじゃがのぅ」

悲し気に首を軽く振り

「はは、幽霊は物理で殴れんのも多くて苦手じゃな!而して……」
「カロンさん、裏渋谷からの出方ですが、他の境界、或いは世界の端を目指すといいと聞いたことがありますぞ」

「この場所の性質を考えると、彼らの数にきりもなく、此方に多くを傷つける理由も無し」
「うまく包囲網を切り抜け、突破するのを目標としたいが、如何か?」

恐らく同意を得られるであろう提案をしながら、出てきた怪異の姿を見やり、髭を撫でる

「やれやれ、あれなら殴れそうかの」

カロン > 「……まるでロシアンルーレットのようですね…全く。」

ししとうやロシアンルーレットの意味合いは理解しているのか、そんな軽口を叩く。
…軽口?いけない、少し精神堅牢の特性が緩んでいるのだろうか。
直ぐに、淡々とした口調に戻しながら彼我の数と距離を凡そ目測で測りながら。

「…私も、対話で済めばそれに越したことは無いと思っていますよ、心から。」

だが、そうはいかないのが世の常らしい。今この時もまさにそうだ。
悲し気に首を振るご老人に対して、影も少々吐息を零す辺りそこは考えがやや似ているのかもしれない。

「――つまり、尚更にここを早急に突破して境界…あるいは端を目指すのが最適解、と。」

そして、こちらとしても降りかかる火の粉は払えど、いちいち相手にする理由も義理も無い。
ファレーマン氏の提案に頷きながら、肩に担いだ櫂を軽々と右手一本で構え直す。

「――端を目指すのは距離がありそうですし、境界に絞って行くのがいいかもしれません――」


――ね、と言い終わる前に最初に飛びかかってきた一匹へと滑り込むように接近。
狙いは腹部…正確には足の付け根辺り。甲虫の其処へと、寸分違わず櫂の一撃を叩き込み吹き飛ばす。

…それが、この一点突破の戦いの狼煙である。

ファレーマン >   
「駄菓子やパーティメニューなら寧ろロシアン歓迎なんじゃがな?}

両手を軽く上げ、ファイティングポーズを取る

「ええ、ですが……やるからには覚悟を決めましょう」
「これが彼らの対話(声の上げ方)でもあるのでしょうからの」
「それを受け止めるのも…… 倫理教師の務め――」

「では、そうしましょう、まぁ何、片っ端から境界を喰らっていけばそのうち出られましょうぞ!」

カロンの一撃を皮切りに突っ込んでくる甲虫の一体の一撃を肘で受ける
鋭利な傷がつく筈の牙からは、果たして血の一滴も流れず
代わりにファレーマンの脳と胃に、彼らの与える苦痛と感情に応じた『味』が満ちていく

「やはり、苦めの炭酸じゃなぁ……と!」

肘に食らいついたままの甲虫の頭に拳を叩き込み沈黙させながら
カロンに並び、飛び込んできた甲虫の一撃でをプロテクターで受け、弾き飛ばす
そんな当身中心の動きで前進していくだろうか

カロン > 「…先ほどから疑問だったのですが…ファレーマン氏は食に対する拘りがお強いので?」

緩く、首を傾げる仕草を一つ。食への関心が無い彼/彼女にはそこがよく分からないらしい。
そんな緊張感の掛ける質問をしながらも、意識は確りと怪異の群れへと向けられている。

「――もっと穏当な声掛けを切に願いたい所です…。」

倫理教師というのは大変そうですね…と、そんな感想をふと思いながら。
彼の言葉に無言で首肯し、吹き飛ばした一体目の影から飛び出てきた二体目の噛み付きを首を捻るようにして回避。
そのまま、櫂――ではなく”蹴り”で鋭く二体目の腹部を蹴り穿つ。

そこから、踏み込んで櫂を突き出して三体目の眼球を潰しつつ、滑り込んで足元を抜ける。
ちらり、とファレーマン氏の様子を確認しながら三体目のがら空きの背後に櫂をトン、と突き立てて。

「――”水滴は岩を穿つ(しずくよつらぬけ)”。」

瞬間、甲虫の内部の”液体”が強制的に操作されて破裂する。
その体液が飛び散る頃には既に四体目、五体目と仕留めており。

ファレーマン >   
「ええ、癖のようなものでもありますがなぁ!」
「何せ、異能からして"おおぐらい"でのぅ」
「痛みもそこに籠る心も全て、味へと変わるのじゃ、彼らの……そう、例えば殺意は…… ぴりっぴりの炭酸が多いかの?」

とびかかる甲虫をスライディングしてスルーし、背後にいた二体目に掴みかかる

「はは、異文化コミュニケーションでそんな事は言ってられない事も多いですぞ、ぉっ!!」

そのまま投げっぱなしジャーマンでスルーした一体目の背中に二体目を投げつけて衝突させ

「はてさて、前菜は何処まで続くのやら!」

続く三体目の体当たりを真正面から受け止めると、ファレーマンの体形が徐々に逞しくなっていく
"おおぐらい"それは三種の性質から成る異能
受ける被害を味に変換し胃を膨らませ、そして、胃が膨らむほどに彼の体を"強化"していく

最初は押されていたファレーマンが、逆に甲虫を押し返し、そのまま持ち上げてぐるぐるとジャイアントスイングと共に甲虫の固まった場所に投げつけて混乱を誘う

カロン > 「――おおぐらい…”大食らい”…?」

成程、変わった…と、いうのは彼に失礼か。個性的な異能だ。
否、異能というものはそれ自体がそもそも個性的なものばかりだけれど。

「…私のコミュニケーションの相手は、基本死者や迷える魂なんですけどね…。」

怪異とこういう対話をする為に【渡し守】をしている訳では決してない。
ただ、自衛が出来なければ話にならないし仕事もままならない。
彼の豪快な戦いっぷりに心の中で感心しつつも、彼の体形が心なしか…いや見間違いではない。

「……もしや、強化されているのですか?」

と、隙だらけのような影に今度は三体同時に三方向から来るが、櫂を地面に突き立て、その勢いで上空に身を翻す。
そのまま、味方同士噛み合う羽目になった三体をまた”破裂”させつつ。

「……いえ、少し層が手薄になりつつあります。
このまま一気に押し切りましょう。時間を掛けると”後”が面倒になりそうですので。」

二人が大立ち回りをしている一角、その方角の部分だけ怪異の数が減りつつある。
とはいえ、包囲された状況は変わらない。四方八方から群れは襲い掛かってくる。

「――仕方ありません。ちょっとだけ強引に行きます。」

空中で身を翻しながら、着地と同時に櫂で地面を思い切り叩いて。

「――”荒れ狂う波濤の如く(おどりくるえつなみよ)”」

瞬間、間欠泉のように地面のあちこちから水流が噴出して、怪異の群れを盛大に吹っ飛ばしていく。
特に、自分や彼が一点突破を狙う方角へ重点的にだ。
それでも、幾らか取りこぼしは否めないが――…

「――ファレーマン氏、今です。」

彼には水流の被害が出ないようにあらかじめ調整はしていた。なので、最後の一押しは彼に任せたい。

ファレーマン >   
「それはそれは、とても立派だ、わしは異種との倫理や道徳の差と向き合い方を主に教えてるのじゃが」
「向き合う相手こそ違えど、その行為そのものが尊ばれるべきと思っておるよ」

カロンの言葉に、感心したように頷き――ながら足をカチ上げ、甲虫をひっくり返し
そのまま足払いの様に掬い上げ、飛び上がり回し蹴りを叩きこんでまた別方向の群れをけん制する『弾』にする

「"満たされるほど強くなる"それはそう、ある種当然でしょう」
「多くの人は満たされるために生きているのですからの、とはいえフォアグラのように肥え太るのは聊か不格好ですが」

「おっと、それでは飛ばしてデザートというわけですなカロンさん」
「―― お見事、パスは受け取りましたぞ」

途中でカロンの意図に気づいたのか、クラウチングスタートのような姿勢をとっていたファレーマン
そのまま、弾丸のように――― いや

貯めに貯めた足を解放した瞬間、周辺のアスファルトが鈍い音をして凹み、文字通り生きた弾丸が生み出される

びりびりと彼の体が軋みを上げながら進行し
水流によって吹き飛ばされた昆虫たちは、今度は肉の塊によって弾き飛ばされることになる

一歩踏みしめるごとにびりびりと空気が揺れ、傍を通るビルのガラスが割れる

「後ろからぁ、ついてきてくだされ!」

背後のカロンに声をかけながら抜けるべき道を一直線に
カロンに一体もよる事がないように念入りにルートを選びながら押し進んでいくだろう

カロン > 「――尊ばれるべきものかどうかは…私には分かりません。
ただ…誰かがやるべき役割だと思っていますので。」

ファレーマン氏へと淡々とした言葉を返すが、己の役割に真摯に向き合っている。
それは何となくでも伝われば幸いか。彼との会話は色々と【渡し守】に響くものはある。

「――満たされる、というその感覚が”今の私”にはさっぱりですけれど…。」

まぁ、肥え太る事は無い影もそんな不格好さは御免ではあるか。
こちらの意図を既に察していてくれていたご老人…流石だ。話が早くて助かる…これも年月を経た経験則というものか。

彼がまさに己の体を弾丸…いや、むしろ砲弾か。駆け抜けるその背後に、流石に走っては追いつけない。

「――えぇ、背後にしっかり付いておりますので思い切りどうぞ。」

なので、素早く櫂へと横座りで飛び乗って彼の背後にぴったり追随する。
追いすがろうとする甲虫には、牽制も兼ねて水流をまた発生させて押し流しなどの足止めに徹し。

「そろそろ抜けま―――…。」

不自然に言葉が止まる。最後の最後、あと一息で抜ける寸前、ひと際この群れでも強い”魂”を感じ取る。
どうやら、統率するボスのような個体が存在したらしい。

豪快に疾駆する老人とぴったり背後に追随する影の前方、一回り大きく逞しい甲虫が既に身構えている。

最後の最後、怪異の群れもただで二人を逃すつもりはないようで。執念というものなのだろうか。

カロン > 「――順番が逆になりましたが、どうやら”メインディッシュ”のようですよ、ファレーマン氏。」
ファレーマン >   
「いや、それは間違いなく尊ばれるべき事じゃよ」

きっぱりと言い切る

「誰かがやるべき事、やって当たり前である事こそ、尊ぶべき事じゃ」
「倫理も道徳も、従うべき、やるべきルール、やって当然の事――じゃが、守らねば世は混沌に落ちる」
「やって当たり前のことをやっている人が褒められてはいけないなど、そんな道理は無いのじゃから」

駆け抜けながら老人は雄弁に語る、そのたびにぴり、ぴりっ、と唇が裂けるような音がするが意に介さず

「ほほ……そのようですなあ」

そして現れた"メインディッシュ"を見て、笑い声を上げた

「ではカロン殿、この老骨でよろしければ、最後は共作料理と行きたいが、如何か!」

両手を前で交差したまま、そのまま歩みを進める、正面からぶつかれば、流石の今の彼でも無事では済まないだろう

"そのまま当たれば、だが"

カロン > 「―――…。」

きっぱりと言い切る老人に、咄嗟に言葉を返せない影。
続く言葉にもただ、聞き入るように沈黙を保っていたが。

「…そう、ですか。」

褒められた事などただの一度も無く、ただ己の役割と任じて淡々とこなしていた。
無論、魂の一つ一つときちんと対話をして。強制的に彼岸に送るのは彼/彼女は断じてしない。
そんな影であるが、己を肯定された気がして少しだけ…気が楽になった、というのはおかしいか。

(…どうも、少し精神的に揺らぎがありますね。)

【渡し守】の特性の一つに精神の異能や魔術をほぼ無効化する特性がある。
つまり、精神に与えられる影響をカットする訳だが、それでも真摯な”言葉”の影響は免れない。
それは言霊のような強制的な力ではなく、その人の生きざまから出る純粋な言葉だから。

「――料理は不得手ではありますがお任せを…思い切りやって下さい。

両腕を交差させて真正面からただ突っ込む彼に対し、影は背後に追随しながら己の特性を再び用いる。

【流動干渉】――特に液体に対し強く作用するが、一言で言えば流れ…流動を操作する特性だ。
河川や海への影響が特に強いが、応用すれば…例えば”空気”にも流動干渉が出来る。

「―――”大気は熱を帯びる(ねっぷうよふきすさべ)”」

そして、ファレーマン氏をガードするように大気の流れが収束していく。
それは、目に見えない空気の壁。しかも圧縮されていて高熱を帯びている。
それは、砲弾の如き彼をガードする盾であり、同時にあの怪異を焼き穿つ武器でもある。

「―――焼いても食えない、といった感じですが。」

一息。彼の怪異を見据えて心の中でこう口にする。
『貴方では我々を止める事は不可能です』と。

ファレーマン >   
「うむ」

それだけ伝え、老人は目の前のメインディッシュへと視線を向ける
言葉は伝えた、後は自身がどう咀嚼し、飲みこむかが重要だと老人は考えていた
今此処にいるのは教師としてではないが――それでも、己の信念にそった言葉は伝えるべきだ
それこそが、老人の持つ規範であり、真摯さの表れであった

「成程―――強い空気の膜、之だけ凝縮しているのならば」
殴れますな

盾であり、同時に武器でもある、ならば簡単だ
盾で殴る、その選択を老人は、ファレーマンは行った
すなわち――

「はぁあああああ………」

交差される腕を解きながら片腕を大きく振り上げ――

ダンッッッ!!!!

怪異との会敵直前に地面を大きく踏み砕き、巨大な甲虫の顔面に向かい拳を振るう

甲虫の顔面は圧迫された空気の膜を押し付けられる形で殴られ、仰け反るだろう、が……

「お代わりじゃっ!」

さらに踏み込む  一撃、胴体

「お代わりじゃっ!」

浮き上がった関節部分に一撃、二撃、三撃

「お代わりじゃああああっっ!!!」

連続で関節を叩き折る様に高熱の空気の壁で殴られ宙を舞う怪異
そこに真下に潜り込んだファレーマンからのラッシュのような拳の嵐が襲う

「目いっぱい、喰らっていけいっ!

そしてトドメとばかりに、グロッキー状態の頭を挟むように抱き着き―――

バキィィッ  と乾いた音を出して、抱きこんだ頭部を粉砕するだろう

カロン > 「――その方が都合が良いかと思いまして。」

少なくとも、ここまでの彼の戦いからを見ていると、肉弾戦がメインであろう。
ならば、ガード性能もありつつ、武器にも転化できる効果が良いと判断した。

そして、空気の”盾”で殴りつける…いや、連続の殴打だ。
そのフィジカルの強さに感心しつつ呆れもする。
彼の異能の効果による強化やプロテクター装備もあるとはいえ、豪快過ぎる。

(…まず有り得ないですが、このご老人と戦いたくはないですね…本当に。)

拳のラッシュを見ながらそう思う。そして、フィニッシュにて頭部を挟み込むように抱き着いて粉砕。
…本当に豪快過ぎる。影も怪異を蹴り穿つ程度の筋力はあるが、そもそも出力が違い過ぎる。

「――お見事です。今のうちに離脱しましょう。」

ボス個体を粉砕されたからか、目に見えて統率が無くなりバラバラになりつつある怪異の群れ。
あるものは向かって来ようとするし、あるものは一目散に逃げだす。
それを尻目に、老人と共に影はその場を離脱して行こうと。

とはいえ、あれだけの異能だ…反動も相応にありそうだが。
ただ、この方角には表側の渋谷と同じならばまた別の十字路がある…もしかしたらそこが境界かもしれない。

ファレーマン >   
「いやはや、あれはあずきバーよりも硬そうな甲殻でしたからの」
「カロンさんのおかげで思う存分殴り抜く事が出来ました、感謝しますぞ」

そういいながら、みしみしと音を立ててカロンと共に離脱する
無事を確認すると、老人の移動速度はカロンが並走できるほどに落ちるだろうか

「ふぅ、取りあえず暫く交戦はしないですみそうですじゃ」
「この間に何とか境界を見つけられればよいのですがなぁ」
「そろそろ満腹が近いのじゃが、腹が破裂するまでに帰らねば『吐く』事になってしまうの」

カロンの推定は当たっている、反動というよりも弱点というべきだが
ファレーマンの異能の自己強化は唯一『自身の耐久』だけは強化できないという欠点がある
即ち――全力で動くだけで、体は空気との摩擦で被害を受け、プロテクター無しで殴るだけでも蓄積が発生する
ましてやプロテクターをつけても反動があるだろう先ほどのような相手では……
殴るたびに胃の容量という、彼の限界へと加速度的に近づいていくのだ
カロンの支援は、この弱点に対しての的確な支援だったと言えるだろう

ともあれ、二人は無事十字路へとたどり着く、境界であれば裏から表へと戻れる……果たしてその結果は如何に

カロン > 「…いえいえ。私の特性的に本来は前に出るよりも補助向きですので。」

そもそも、緊急事態だから仕方なく、だ。普段ならこんな白兵戦などはまずしない。
それでも、きっちりとサポート出来たのは及第点だと己に対する評価。
並走するほどに彼の移動速度が落ちるのを一瞥する。矢張り反動が?

「……吐く、ですか?おそらくこの十字路も境界の一つになっているとは思うのですが…。」

いまいち理解出来ていない様子の影だが、ともあれ何かしら反動みたいなものはきっちりあるのだと判断。
そうなると、尚更早く表側へと戻りたいものであるが。さて。

「―――ファレーマン氏…どうやら当たり(ビンゴ)のようです。おそらく帰還できるでしょう。」

らしくない単語を使ったな、と自覚しつつ彼に声を掛けて。
ほんの僅かだが、表側の生命の魂のエネルギーを感じ取れる。
表向きは何もない静まり返った交差点だが、足を踏み入れれば唐突にあちらに戻る形となるだろう。

「…ファレーマン氏の胃袋も心配ですから、早々に離脱しておきましょう。」

と、言いつつ何かあると困るのでまず影が先に交差点の中心へと踏み入れ――その姿が消える。


…同時に、表の渋谷のど真ん中へと黒衣の影が姿を見せる訳だが。
当然、人の目を惹くし何より黒い櫂とかが目立つ。

(……成程、こう戻る可能性を考慮していませんでした。誤算ですね。)

ファレーマン >   
「では丁度良かった、というところじゃのう、即席にしてはいいコンビネーション、という奴じゃったか」

顎髭を撫でながら十字路へとたどり着き

「うむ、まぁ余り見て面白いものでもないから見せたくはないからのぅ」

なお、『吐く』というのは文字通り胃に受けた影響を吐き出すという行為である
胃の容量こそ空くが隙も生じる上、吐いた量に応じた傷が体に生まれるために出来れば行いたくない行為だ

「ふぉっふぉ、いやぁ短い旅行じゃったなぁ」

そしてカロンが踏み込んだのを見て、老人もまた常世渋谷へと帰還するだろう

「っはー、戻ってきましたなぁ……」

そういってカロンの方を見ると、やや浮かない様子

「おや、どうやら人ごみは苦手のようじゃが……もう行かれますかな?」
「わしとしてはファミレスで打ち上げ会などしたい所じゃが、無理にとはいいますまい」

かくいう老人も、異能の影響でローブがはちきれんほどの筋肉と、2mオーバーの体躯へと変貌している
何というか、めちゃくちゃ目立つペアになっているのは言うまでもない

カロン > 「…私もまさか誰かと組んで戦闘行為をする事になるとは思いませんでしたよ。」

【渡し守】には敵は居ないが味方も居ない。ただ一人、黙々と魂や呪いを浄化し対話し彼岸へと連れて行く。
”それだけ”の為にこうして彷徨っているのだから、誰かと組むなどこれが初めてだ。

「……まぁ、何とか切り抜けられて僥倖と言うべきでしょうか。」

彼が『吐く』事にならずに済んだし、お互い無事にこちら側へと帰還できた。
さて、影は人込みなどの喧騒が苦手なので今すぐにでもこの場を離れたいのが本音だ。
けれど、律義に老人が戻ってくるのを見届ける為に好奇の視線をやり過ごしていた。

「…ふぁみれす?……人があまり多く無ければ…まぁ。」

何時もの影なら、きっぱり断りを入れてから立ち去るのだろう。
が、共闘した手前、無碍にも出来ないのか条件付きという形になる。
あと、ファミレスは流石に知らないらしい。知識に微妙に偏りがある可能性。

「…まぁ、取り敢えずこの場は離れましょう。お互い目立つ格好ですし。」

自らの服装もそうだが、ご老人の出で立ちも今はかなり目立つ。…着替えた方がいいのでは?
ともあれ、何だかんだでご老人と共に打ち上げ?をする事になるのだろう。

カロン > 尚、人間の食事を摂るのはこれが初めての経験であったらしく、新鮮だった模様。
ファレーマン >   
「それはそれは、わしも久方ぶりではありますなぁ」

何処か楽し気に髭を撫でながら、ぴん、と指で先を弾く

「世はなべて事も無し… 鍋が食べたくなってきましたな、チゲ鍋うどんがあるあのファミレスにしますか」

「ははは、ご安心くだされ、腹は八分目くらいですからの、少し歩いて、腹を空かせていきましょう」
「この時間帯に人が少ない店の場所は、頭にいれておりますし……」

老人は目の前の存在がどんなものなのか、食べるという行為を行えるのかもわかっていないのだが

「ともあれ、誰かと道行を共にする、というのは存外悪くないものじゃよ」

それだけ言って、カロンと共に少し離れたファミレスまで向かうだろう
そこで食事やあの渋谷について話を交わし、そしてつつがなく分かれることになるはずだ

――なお、歩くくらいでは当然そこまで腹は減らなかったため、がっちり筋肉質の老人が食事の相手になったそうな

ご案内:「裏常世渋谷」からカロンさんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」からファレーマンさんが去りました。