2024/07/04 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」にミア・コレットさんが現れました。
■ミア・コレット >
退院。
そして、溜まっていたメールから久那土会からの着信。
特異な区画が裏渋に発生しているということで、急行する。
パースが狂った極彩色の街並み。
暑いと寒いが交互に来る外気。
長居は難しいくらいに蔓延した瘴気。
額の汗を拭いながら進む。
ここまでに何度か戦闘になり、その都度に銃とエトランゼを使ってきた。
かなり深いところまで来た。
街路樹が空まで突き抜けている区画で一息ついた。
■ミア・ドッペルゲンガー >
「あらあら」
狂ったように横長のビルの影から、姿を見せる。
それはミア・コレットの姿にそっくりな。
ただし、金色の瞳にバトルジャケットを着た少女。
怪異。ミアのドッペルゲンガーだ。
「探したわ、私?」
■ミア・コレット >
「……誰」
不機嫌そうに言い放つ。
ドッペルゲンガー。時折、裏渋に現れる似姿の怪異。
記録では久那土会では高坂綾先輩が自身のドッペルゲンガーと交戦している。
しかし、自分そっくりの存在に自分そっくりの声で喋られると良い気はしない。
「ここの異変はアンタの仕業?」
「私そっくりに化けたところで悪いけど、ここで倒させてもらうから」
■ミア・ドッペルゲンガー >
「つれないなぁ……」
「三…いや四世界ぶりに会ったっていうのに」
「そんな冷たいこと言わないでおくれよ」
クスクスと笑う。
■ミア・コレット >
「ごめんね、覚えてないわ」
「私がどんな世界を巡ってきたのかなんて覚えてない」
拳銃を抜き、銃口を向けて。
「気は乗らないけどこれで終わり」
■ミア・ドッペルゲンガー >
銃口を向けられると肩を揺らして笑い。
「それじゃ私は殺れない……エトランゼはどうしたんだい、私」
「前の世界もエトランゼを忘れていたせいで無様に殺されたじゃないか」
ご案内:「裏常世渋谷」にエルピス・シズメさんが現れました。
■ミア・コレット >
「何を言っている? 私は生きている、ここに」
「殺されたりなんかしていない」
「賢しらに私の心を乱そうとするのはやめてもらう」
しかし、相手が失われた記憶の一部を持っているとしたら?
そう考えると撃てない。
■エルピス・シズメ >
「鉄道じゃなくてこっちに来てみたけど……」
以前裏常世渋谷で拾得した『定期券』を表常世渋谷の改札口に来たらこっちに来れてしまった。
『何も出ない』と思いながら、怪異のいない道を暫く歩んだ所で、2つの影が跳んだり跳ねたりしている場面に出くわす。
「姉妹喧嘩……?」
何やら物騒な音が聞こえる。
息をひそめて、状況を伺う。
■ミア・ドッペルゲンガー >
もう一人の存在に気付いているのかいないのか。
それともミア以外に拘泥していないのか。
両手を広げて見せる。
「アンタは前の世界で戦争に巻き込まれて惨死した」
「前の前の世界では怪物に襲われて死んでいる」
「ここでも『傷ひとつない星』を探して同じことを繰り返す気?」
直後、周囲に青い空が広がった。
風車が回る、牧歌的で。
歪んだ世界になっている。
「哀れで可愛い、必然性の奴隷……ミア・コレット」
■ミア・コレット >
「なッ!」
傷ひとつない星のことは誰にも話してないのに!?
というか、この世界……どうして懐かしい…?
風車と青空だけの蒼い世界。
その時、怒号と銃声が鳴り響く戦争のイメージが脳内に。
続いて怪物に追われて森を駆けていたイメージが溢れる。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
あまりにもリアルな死のイメージ。
これは……一体…………私の、記憶…?
「私がこの世界に来たのは偶然だ!! 必然性の介入する余地なんてない!!」
頭を抱えたまま叫んだ。
■エルピス・シズメ >
話の中身はよく理解が出来ていない。
姉妹喧嘩にしては物騒すぎる。
広がる空間は異様だ。張り付けたような青色。
ただそれ以上に、彼女の会話を聞いて──。
(なんだか分からないけど、あっちの方凄くムカつく……!)
向き合いたくない既視感。
前は。
前の前は。
そんなことで抉ってどうする。
"そう言うものを掘り返して"高揚している少女に、身勝手ともいえる苛立ちを覚えた。
躍り出る事はしないが、息を潜めることを止める。
まだ何もしないし、言わない。身体が勝手に臨戦態勢を取っている程度。
■ミア・ドッペルゲンガー >
「何を言い出すかと思えば実存主義思想か」
「この世界でサルトルの『嘔吐』は読んだか?」
「冒険小説。そして同じ音を繰り返すレコード……」
「それらは強烈な必然性に支配されているんだよ」
「お前がここで冒険を始め、同じ星を探し求め始めた時に」
高笑いが歪んだ青空に響く。
「お前の運命は残酷な死へと収束していくんだ!!」
「避けるためにはそう……お前自身が星になればいいんだ」
「よだかの星のようにな、ミア・コレット」
「いいや……支配を司る四騎士め」
■ミア・コレット >
嘔吐? よだかの星?
だからなんなんだ。
私のことを……なんだと…
「支配を司る四騎士……? 私が?」
「ふ、ふざけたことを言うな!! 私はミア・コレット!!」
「ただの異邦人、ミアだ!!」
拳銃を撃った。2発、3発と立て続けに。
■エルピス・シズメ >
「サルトルの嘔吐。」
近代地球哲学とか、そんな感じの講義の一環で手に取った覚えがある。
自分自身の存在や周囲の世界の存在が、いまとこの先にあるものが無意味で無目的であると感じ、
その結果が強烈な「嘔吐」として顕れた。
死に向かうすべてを無意味と定義するような、そんな話だった気がする。四騎士は著名な黙示録のそれだろう。
二人?が数奇な運命にあることは分かる。
落ち着いてくれば、多分あのテンションの高い方は怪異だろうと推察が付く。
とは言え苛立ちは消えない。
だが、ただの心の闇を模した怪異であるならば、
変なタイミングで割って入っても、消化不十分な結末になる気がする。
(でも我慢できないからあの子が危なくなったら出る。
それで出るなら機を伺う。"出る必要性がないのなら"あの子の向き合い方はきっと僕にも役立つからちゃんと学ぶ。)
両の腕で標識を構え、第3の腕に瓦礫を持つ。
何時でも出れる体勢だ。
■ミア・ドッペルゲンガー >
「ロォマンチックなことだなぁ!!」
銃口から吐き出された怨恨を最小限の動きで回避しながら接近。
「いつまでも回り続ける風車!! どこまでも飛び続ける紙飛行機!!」
オリジナルの首を掴み、持ち上げる。
ギリギリと締め上げながら、嗤った。
「────傷ひとつない星」
怪異はいつでも相手の生命を奪える状況で。
子供に言って聞かせるように囁いた。
「だがお前を追い回す影の身にもなってくれよ」
「気持ち悪いんだよ、すっごくさ」
さらに力が入る。
■ミア・コレット >
銃弾を回避され、首を締め上げられる。
苦しい。息ができない。
このままではエトランゼを呼べない……
このままこの世界でも何も知ることができずに死ぬのか。
傷ひとつない星を見つけることができないまま異界で朽ちていくのか。
嫌だ。嫌だ……!
■エルピス・シズメ >
『気持ち悪い』の一言で抑えが効かなくなり、身体が跳ぶ。
"それでも精一杯の理性を込めて、落ち着──"
・・・・・・
「気持ち悪いのは……きっとお前のほうだ!」
"──けない!"
見ていられなくなった! そういわんばかりに叫ぶ。
激情と共に割って入り、この気持ち悪い怪異を引き剥がさんと握った標識で怪異の頭めがけて標識を奮った!
■ミア・ドッペルゲンガー >
不意打ち。エルピスが振るった標識が頭に直撃し。
クラッキング音と共に首が後方に折れ曲がった。
蹈鞴を踏むように後方に2歩、3歩と下がる。
「招かれざる客かな?」
両手で首を元の位置に戻し、強引に接合する。
「いいや、気持ち悪いさ……使命を忘れ、星を探して歩いている存在は特にな」
表情を変えずにそう言い放ち。
頭頂部から滴る真っ黒い体液に顔が染まっていく。
「大切なものが大切なままでいられない世界」
「綺麗なものが綺麗なままでいられない世界」
足元から瘴気が広がっていく。
「摩滅する前に葬ってやるのも慈悲か」
蒼い世界が崩壊し、血のように爛れた星が見下ろす夜の闇が広がる!!
暗がり、だが既にもうただの裏世界だろう。
■ミア・コレット >
ギリギリで入る助け。
その場に放り出され、慌てて息を吸い込む。
「う、あ……」
呻きながら立ち上がり、割って入った彼女?を見る。
ダメだ、今のままじゃ勝てない。
本体が迷ったままじゃ、ドッペルゲンガーには勝てない!!
「助けてくれてありがとう……でも、ここは逃げるしかないみたい」
逃走経路のほうを指して。
「一緒に逃げてくれる?」
■エルピス・シズメ >
「ああもう、やっぱりおまえの言葉はイライラする!
詭弁なのにひび割れを見つけられない、中途半端な正論めいた言い回し……!」
ミアに向けであろう言葉へ、自分のことのように啖呵を切る。
吐き出さなければ気が済まず、落ち着けなかったのだろう。
(何言ってるんだ、僕は……!)
理性を取り戻したところで状況を把握する。
とてもよくないものと、全身が危機を知らせる。
「割って入ってごめんと思ったけど、それならどうしたしまして──行こう!
一呼吸遅れて続くから、全力で走って! 僕もこれは無理!!」
一応の元気を取り戻せば安堵するが、危機感は消えない。
彼女が気を取り戻したとは言え不安はある。ので、先に逃げるようにうながした。
■ミア・ドッペルゲンガー >
「言葉が正しければ正しいのか?」
「詭弁を弄すれば間違っているのか?」
「それは違う……」
口を開くと、その中には赤はなく。
全ての光を飲み下してしまったかのような闇が広がっていた。
そしてその口の中から無数のイナゴや黄金虫が這い出てくる。
そしてそれらはミアとエルピスに向かって襲いかかっていくだろう。
■ミア・コレット >
その言葉に、怒りの感情を見つけて。
私の代わりに怒ってくれているんだと思えば、どこか安心した。
「わかった、絶対についてきてね!!」
そう叫ぶと久那土会の支給品の中でも比較的高級な『久那土御札』を取り出し。
それを握って念じた。
表の世界を想った瞬間、御札は燃え上がり。
眼の前に表の世界に繋がる門が開かれた。
「こっち、急いで!!」
群がる蟲たちを手で払い除けながら、走り出す。
■エルピス・シズメ >
(……我慢ッ! これ以上話すと我慢できなくて戻れない!)
沈黙。
それが正しい答えなんだと判断し、即座に怪異から距離を取った。
「あの門だね、勿論ついてく!」
ミアの声へしっかり応える。
追うように群がる蟲達へは第3の手に残っていた瓦礫の投擲、機械腕による払い、踏み付け。
力業の手段で追い払い、走ってミアの後を追って門を目指す──
■ミア・ドッペルゲンガー >
「逃げるのかい?」
金色の双眸が闇で輝く。
「どこまで逃げたって無駄さ」
「君が必然性に支配されている以上、君は必ず私のところに来る」
「いいかい」
「私は待っているよ」
その声が遠く、後方から聞こえるだろう。
■ミア・コレット >
気がつくと、私は助けてくれた人と一緒に常世渋谷にいた。
あちこち傷だらけで、それでもすぐに治るんだろうな、という予感と。
ドッペルゲンガーを避けては通れない、という想いを抱いて。
私はエルピスに名乗り、彼と連絡先を交換して別れた。
結局、久那土会のことは言えなかったけれど。
ちゃんとお礼を言わなくちゃ。
そんな思考すらも今は心の中に澱のように沈んでいった。
ご案内:「裏常世渋谷」からエルピス・シズメさんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」からミア・コレットさんが去りました。