2024/07/14 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」にミア・コレットさんが現れました。
■ミア・コレット >
極彩色に狂う街並み。
空をも目指すように伸びる街路樹。
怪異たちの住処、裏常世渋谷。
血まみれになって吹き飛ばされる。
どうしてこんなことになったんだ。
記憶がくるくると回る。ほんの数分前に巻き戻される。
神隠しに遭った人を助けた帰りに。
大型の猫科動物としか言いようのない怪異に襲われたんだった。
ギリギリで久那土会のメンバーに助けた人を逃がしてもらって殿。
ただ……眼の前の敵は強すぎる…!
「あなたは……何者だ…!!」
さっき出したエトランゼはもう消えている。
拳銃をリロードしながら眼の前の怪異に問う。
■トガナシ >
「我はトガナシの神」
「罪もない猫を殺した怨みで発生する神ぞ」
前足を舐めて毛を整える。
トラよりも一回り大きなその怪異は。
まるで猫がそうするかのようにしなやかな所作で毛づくろいをした。
「前から────人間を見たら殺そうと決めていた」
■ミア・コレット >
「神……?」
いよいよもって手に負えない相手が出てきた。
神様か……これは風前の灯というヤツかも知れない。
でも生きることを諦めてはならない。
私が諦めたら、次に神隠しに遭った人が助からないかも知れない。
「荒ぶる神よ、何故そこまで人を憎む!?」
「人はあなたたち猫を愛する側面だって持つはずだ!!」
なんとか二本の足で立つ。
気力を振り絞れ。
戦う精神状態じゃないと強いエトランゼは出ないぞ、ミア!!
■トガナシ >
「その」
前足を向けて女を指す。
「愛が気に食わぬ」
極めて自然にその言葉を口にした。
愛こそ不純なり、と。
「人間はその場限りの愛で生前の我に構い、餌をやった」
「次の日には見向きもせぬ」
「そして街を彷徨う我は車に轢かれて死んだ」
「我の命はなんだ、人間に弄ばれただけではないか」
■ミア・コレット >
出血が激しい。意識が遠のく。
でも、彼の言い分に言い返さなきゃならない。
生きている人間として!!
「貴方はたまさかの善意に傷ついていたのだな…」
「だけど!! それだけが人間じゃない!!」
「人間全てが貴方に無関心な愛を向けていたわけじゃない!!」
拳銃に残された銃弾は7発。
どうすればこの局面を打破できるか、必死に考えながら。
眼の前の神との問答を続けた。
■トガナシ >
「我が感知せぬ真なる感情など知らぬ」
「人間、お前らはいつも綺麗事ばかりだ」
「それももう飽きた、神は許す……ここで死ぬことをな」
大型の猛獣がそうするように。
四足の神は前方の獲物に集中し、構えた。
ご案内:「裏常世渋谷」に崛葺 茉璃さんが現れました。
■崛葺 茉璃 > 匂いがする。
ナニカが、ナニカを呪おうとする匂いが。
怒り、憎しみ、そういった気持ちをないまぜにしたドロドロとした、何かの匂いが。
そして、見えてきたのは虎を超える大きさをもった、猫科のような怪異と。
それに対峙する美しい金色の髪を持った少女。
怪異は、呪詛を吐く。
ドロドロと、ドロドロと。愛を憎み、人を恨み、殺すのだと。
少女は叫ぶ。人の愛が全て憎むべきものではないのだと。
「ええ、はい。
全く以て、その通りでございますね / 全く、そのとおりであるな。」
構える怪異と、問答を図る少女の間に……ふわり、と女は舞い降りた。
白い髪と、赤い目を備えたその女は。
曖昧な声と、曖昧な姿であった。
「すごいお方ですね、貴方は。
このような怪異に立ち向かわれるとは / このような異形と闘うとは」
場に似合わない、のんびりとした雰囲気で少女の闘いをねぎらった。
そうして、怪異の方を見据える。
「怨み、憎しみ、呪い。
そういった類の怪異かと思いますが / そのような怪異だと思うが。
その怨み。この方が元ではありませんでしょう? / この少女が元ではあるまい。
その呪い、その怨み。鎮めることは叶いませんか? / 鎮めることはできぬか?」
恐れることもなく、静かに怪異に問いかける。
「そうですね。せめて、それが叶わないとしても。
この方で晴らすのはおやめいただけますか? / この少女で晴らすのはやめぬか?
争いは、いいことではありません / 争いは望むところではない」
■ミア・コレット >
トガナシの神と私の間に。
少女が降り立つ。
世界から全てが消えてしまったらこういう色相を持つ。
そんな白い髪。
夕陽よりも紅く、血の流れよりは静かな。
そんな赤い瞳。
「あなたは……?」
幾重にも声が聞こえる。
曖昧な姿、曖昧な声、曖昧な────存在。
出血でブレる視界の中でなお、霞んでいる。
■トガナシ >
「何奴……」
「我が怨恨根深く、鎮まることなどない」
「許すまいぞ、許すまいぞ人間」
「しかし、猫の性質は気まぐれであるがゆえ」
リラックスした様子で表れた白と赤の境を持つ少女に語りかける。
「我に今一度問答をすることを許す」
この世界で一番新しい神は、そう囁いてその場に座った。
■崛葺 茉璃 >
「私は、崛葺 茉璃。祭祀局のものです。
一応、こういうことは慣れているつもりではいますが。 / この手合の相手はしているが。
何が起きるかはわかりませんので、気を付けてはくださいね / 警戒はしておいてくれ」
ミアの疑問に応えた。
手を出すが、すべて賄えるとは限らない、と。
そしてまた、怪異の問に戻る。
「問答……そうですね。
先の貴方の呪詛によれば。愛を憎む、ということでしたね。 / 愛をこそ憎むのだと言ったな?
人のたまさかの愛に弄ばれたのだと / 人の一時の愛に振り回されたのだと。
そうして、死に至ったのだと / 儚くなったのだと
……その時の、貴方の願いは何だったのですか?」
静かに問いかける。
どこか曖昧な言葉が、しかし確実は響きをもって。
「そう。例えば……
貴方は愛され続けたかったのですか? / 汝は愛され続けたかったのか?
一時ではなく、常なる愛を。求めたのですか?」
曖昧な顔が、なぜかはっきりと見据えているように見える。
「違うというのもいいでしょう / 違うというのもいいだろう。
ですが、問答というのならお答えいただければ幸いです / 返答をもらいたいものだ。」
■ミア・コレット >
「ミア・コレット……久那土会の…」
「そっちも気をつけて、相手は……」
強い、と言葉に出す前にその場で咳き込んだ。
創傷にこの街の瘴気は些か堪える。
意識を集中しろ、ミア。
もし、トガナシが彼女を襲ったら。
助けるのは私だ。そう誓って精神力を練る。
■トガナシ >
「神が人の愛を求めるものだと言うのか?」
「生前はどうだったかわからんが、もうそんなものとは縁遠い存在よ」
体の毛並みを舐めて整える。
脱力した状態で四足の神は少女との問答を続ける。
「常なる愛を向けるのであれば、一匹の野良猫にするべきだったのだ」
視線が鋭く、白と赤の少女に向く。
「人の子よ、お前の望みはなんだ?」
「その供物を連れて逃げることであれば叶わぬと知れ」
ミアを見て、視線を戻した。
■崛葺 茉璃 >
「そうですか。生前は、もう関係はないと。/生前など、よいと。
……? 一匹の野良猫に……?
複数いた……? それとも……」
小さく、首を傾げた
しかし、そこでさらなる問が来る
「望み、ですか? ええ、勿論その方を護りたいのはありますが。
それは私の本来の役目では在りません / 我が真なる命にはあらず。
私の求めるものは、本当であれば一つ、で済みます。
"貴方を識ること" / "汝を理解すること"」
少しだけ、首を傾げた
「貴方は、人に恨みを晴らしたいのですか? / 人へ怨みを返したいのか。
ただ、贄を求めているのですか? / ただ、無為に贄を求めるだけか。」
そして、言葉を切る
「次第によって、私のすることも変わります。/ 次第で、行動が変わる。」
だらり、と手を垂らしたまま相手を見据える。
「ミカ様、ご忠告ありがとうございます。
そちらもお気をつけて」
皆まで言えなかったことを汲んで、少女に応える。
■ミア・コレット >
彼女の言葉を聞いて頷いた。
拳銃の一発であれば相手の頭蓋を貫けるように。
化身の一撃であれば確実に異形を倒せるように。
集中だ。今はひたすらに集中するしかない。
自分にできることなんてたかが知れている。
ただこの状況を打破できる暴風であれ。
■トガナシ >
「我は神、地上に生きる命の願いの器たれば」
「地上で人の気まぐれによって死んだ命」
「その怨恨の代弁者でもあろう」
神であること。
それは単一でありながら、個を捨てること。
「我は人が恨めしい……憎み、怨み、それを晴らすために動くと決めた」
「贄など最早、どうでもよい」
「人間をこの手で殺さねば我はこの感情、如何とも処理できぬ」
神であること。
それは超越しながら、超克し得ないこと。
理を踏み越えるも、誰よりも理に縛られる。
■崛葺 茉璃 >
「そうですか / そうか
貴方は、貴方をそう定義するのですね / 汝は己をそう定めたか。」
ふぅ、と一つ息をつく。
「確かに、人の愛は気まぐれもありましょう / 気まぐれもあるだろう
愛はあっても注ぎきれなかったこともありましょう / 愛を注ぐこと能わなかったこともあろう
その愛を、最早信じられれぬと。もう求めたくないと。
貴方が、代弁者として間違いなく思うのであれば――」
女はたしかに微笑んだ
「貴方は私の敵ではありません
その呪詛、その猛り。私が畏みて受け取りましょう / 吾が謹んで受け取るとしよう
ただし、後悔も迷いもないように」
白髪、赤眼の女が静かに怪異を見据えていた
■ミア・コレット >
「待て茉璃さん、何を……!?」
それでは茉璃さんが目の前の神に身を捧げるようだ。
それはダメだ、絶対に!!
拳銃を手に前に出るも、獣の瞬発力と手負いの自分では速度に差がありすぎる。
■トガナシ >
「これも一つの終焉のカタチか」
立ち上がり、吠えることすらなく。
瞬断、煌めく剛爪。
茉璃に向けて襲いかかる。
■崛葺 茉璃 >
「ああ、それでいいのです」
どずり、と爪がその身に突き立つ。
肩から……その先へ、進まない。
「そうでしょう? シロ
そうだよね? ミケ
そう、だもんね? にゃんちゃん
そうだろ? みぃこ
……」
微笑んだ女の顔が、様々に移り変わる
白髪、赤眼の女はそこには居なかった
「ごめんなさい、あの日わたしは風邪を引いてしまったの
ごめんね、あの時、ママが許してくれなかったの
僕、僕は……餌を買ってあげられなくて……
悪かった 俺、あん時、喧嘩でパクられてちまって……」
それぞれの顔が、それぞれの言葉を綴る
まるで無数の人間が居るように
『許してなんて 言えないけれど / 言えないが
せめて その呪いを / その怨みを
いただきましょう』
怪異の爪が少しずつ、女の体に溶けていくようにみえる
■ミア・コレット >
「!!」
拳銃を握ったまま止まり、硬直した。
何が。何が起きている。
微笑んだ茉璃の顔が。変わった。
続く言葉は、謝罪の言葉だった。
猫に、対する……
それは幾重にも、無数にも。
限りはあるが果てはなく。
■トガナシ >
「そうか」
溶けた爪を見る。
「お前も“器”か」
トガナシの神の形が。輪郭が。溶けていく。
「全ての猫の怨恨を集めた器である我に」
「全ての人の謝意を集めた器を見せられてはな」
そのままシュルシュルと小さく、小さく。
変わっていく。
「良いか……人間よ」
そのまま小さな猫の姿に変わり果てる。
「我は見ているぞ」
次の瞬間、血が溢れて。
神はただの猫の轢死体へと変じてしまった。
■崛葺 茉璃 >
「……謝意、だなんてそんな。
この身は、もっと、ずっと……貴方には居心地がいいかもしれません」
いつの間にか白い髪と赤い目に戻った女が、困ったような顔をしていた。
そして、視線を猫の死骸に移す。
「ああ――哀しいですね。
これが轢かれた痛みですか。」
ぺろり、と舌が唇を舐めた。
「貴方が、敵でなくてよかったです。
貴方のような相手では、私もどうなるかわかりませんでしたし」
そっと、死骸を持ち上げる。
……さて
「……ええ、と。ミカ様。申し訳ありません、横入りをしてしまいまして。
その申し訳ないついででなんですが……
こちら、埋葬をしてささやかながらでも塚を造りたいのですが……
よろしければ、お手伝い願えますか?」