2024/08/10 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」にミア・コレットさんが現れました。
ミア・コレット >  
夏季休講中の常世渋谷で死亡事故。その数、三件。
どれもが『百足の毒に似た神経性の毒物』で死んでいた。

裏渋に原因があると見た私は夕方に裏世界に入る。

本来なら綺麗な夏の夕暮れ。
でも、この世界には綺麗なものはない。
苛烈なまでに歪んだ街並み。
狂ったように空を目指して伸びる街路樹。
眼に痛い色彩に淀んだ空気、飛ぶ鴉はコンドルのように巨大だ。

ミア・コレット >  
異常はすぐに見つかった。
裏世界の常世大ホールになにかの生き物が巻き付いている。
巨大な。そんな言葉ですら足りないくらいに、大きな。

常世大ホールを七巻半したその大百足は。

私の気配を察するととぐろを巻いたまま鎌首をもたげ。
私に視線を向けた。巨大な眼。菊の香り。


間違いない、滋賀で大昔に山を七巻半したと言われる大百足の眷属だ。
彼の者は藤原秀郷に討伐され、眷属は散り散りになったと言われているが。

「少し聞きたいことがある、最近人間を喰らったか?」

大きく声を張り上げた。

ご案内:「裏常世渋谷」にシアさんが現れました。
七巻半の大百足 >  
「人間を食らったらどうだというのだ、黙示録の四騎士よ」
「たかだか三人だ、お前らは増えているのだから問題はあるまい」

ガチガチ、と大きく開いた吻を鳴らし。

()ね、我はまだ魂を消化している最中だ」

シア > 裏常世渋谷

常世渋谷から"迷い込む"ことができるそこは、怪異だけに限らない"なにか"がある場所だという。

それは「異能」だという者。それは「唯一無二道具」だという者。
それは「死者」だという者。それは「願い」だという者。

なんにしても、その正体は気になる。

「……あった、本当に」

そもそも存在を疑っているところはあったのだが、どうにも空気感が変わった場所に入ってきた。

これは……なんだろう。

「……ん」

粘つくような空気。どろどろとした何か。
わからないままに、足を進める。

「……ミア?」

何処かから、大音声が聞こえた。
それも聞き覚えのある声。

人間を喰らったか?

そう、聞こえる。

「……」

何かが起きている。それを確かめるために疾走る少女。
フック付きロープまで駆使して、ビルの森を素早く移動する。

その前に、巨大な百足が見えてくる。そう、巨大な。
大ホールすらを七巻半するだけの、規格外の大きさ。

「……怪物?」

小さく首をかしげたその視線の先に、知り合いの姿も見えてきた。

ミア・コレット >  
フック付きロープで移動する彼女の気配を察することはできず。
ただ、ただ。大百足の言葉に耳を傾けていた。

悔恨に双眸を瞑った。

「あなたが喰らった子の最期を私は見た」
「見つけた友達がすがりついて泣いていた……」

「泣いていたんだよ」

拳銃を抜く。
巨象に蟻が立ち向かうような武器だとしても。
この怪物を倒すためなら何度でも立ち向かってやる。

「何が四騎士だ、私のことを(さか)しらに定義して」
「お前は倒す!! ここで終わらせてやる!!」

拳銃を向けて叫ぶ。
射程外。でも、戦う意志は示して。

こいつを倒さないと死んだ子は転生すら叶わない。
死後の世界があるかはともかく、
死んだ子たちはこいつの餌になっていい存在じゃない!!

七巻半の大百足 >  
「ならば」

体を大きく動かすと、道中のビルをなぎ倒しながらミアに向かう。

「死ね」

圧倒的。圧倒的なる質量差。
破片が舞い散り、轟音が支配する。

シア > 「……」

どうやら、あの百足は人の言葉が話せるらしい。
それと、どうやら"人を食べた"ということだ。

そして

「あ」

ミアに向かって、大きな体を動かす。
巨体が、ビルをなぎ倒し破片と化して蠢く。

「……避ける、ミア?」

すとん、とミアの隣に降りる。

ミア・コレット >  
さすがにサイズ差が厳しい。
どうにかして倒さなければならないけど。

こればっかりはどうしようもならないかな!!

すると、隣に降りた少女。
ジャージに軍手、見間違うはずもない。

「シア!?」
「う、うん! とりあえず避ける!!」

必殺の一撃より前に一撃で粉砕されてはどうしようもない。

七巻半の大百足 >  
「どうした、逃げるだけか」
「痩せた肉が二人分では詮方無し」

二人の頭上からビルが倒れ込んでくる。

シア > 「そう。いくよ、じゃあ。」

迷わずミアの腰に腕を伸ばす。
抵抗されなければ、そのまま腰を掴み
片方の腕で、フックを手近な電灯に投げつける。

うまく引っ掛ければ、力を込めて……
二人の身体が宙に浮く。

ミア・コレット >  
浮いた。これなら逃げながら戦える。
いや、違う……そうじゃないだろう、ミア。

私を助けに来たシアが死ぬかも知れないんだぞ。
力を一滴残らず絞り出せ!!

私が今までいた場所を粉砕するビルのグラインド・ウェポン。
ビルの頂上まで連れていってもらいながら。

「ありがとう、シア……おかげで…」

その両目は金色に染まっていた。

「戦う覚悟が決まった」

ぐ、と拳を握って。
頭上に向けて振り上げる。

「エトランゼーッ!!」

私の影が大きく伸びる。
どこまでも、どこまでも。

そこから這い出てきたのは、巨大なる骨細工。
餓者髑髏。

「やっちゃえ、ガシャドクロ!!」

これならサイズ差で負けたりしない!!
巨大な骸骨が大百足に拳を振るった。

七巻半の大百足 >  
出てきたのは巨大なる、髑髏。
餓者髑髏か。ええい、なんたる召喚術を。
これが支配の四騎士の力か。

「ぐぶっ……」

頭部に拳がめり込み、菊の香りを伴う紫の血が周囲に飛び散る。

「負けぬ!! 我は年経た大百足也!!」

餓者髑髏に巨体で体当たりを仕掛ける。

シア > 二人で助かった。三人だったら少々危なかったかも知れない。
あと、ビルの森があったのもよかった。これなら、まだ……

「覚悟……?」

ミアの言葉に首を傾げ、少女はその顔を見る。
視線の先の少女の瞳が、美しい翠から輝く金色に変わる。

決意を込めた叫び
力強い喚びかけに少女の影が応える!

「……骸骨」

呼び出された巨大骸骨が百足を捉える。

「すごい、ミア。力、あれがミアの?」

その問いを発したときには、しかし、まだ終わっていない百足が骸骨に反撃する。

「……終わらないか、流石に。
 百足……弱点だけど、熱と頭が……でも、通じるかな、アレに」

視線をそちらに向けて、唸る

ミア・コレット >  
「これが私の異能、エトランゼだよ」

相手の体当たりに餓者髑髏が怯むと、体から血が流れた。

「……っ! さすがにこの規模の異能だとダメージフィードバックが大きいか……!」

それでも二本の足で立って、シアに語りかける。

「大百足の弱点は八幡神の加護と人間の唾だ」
「この場所で用意できそうなのは後者だけど……」

「唾を塗った武器を打ち込めるかはかなり厳しいサイズ差だね……」

ビルの上で超巨大ムカデを指さして。

「やっちゃえ、ガシャドクロー!!」

餓者髑髏は鬼火を出し、ホーミング弾として奇妙な軌道で百足に放つ。
その数、8発。

七巻半の大百足 >  
鬼火が体を灼く。
熱で赤く変質した外装甲。
それでも尽きぬ体力。

「ぐええ!!」

後方に倒れ込んで、雑居ビルを崩しながら転倒する。

「ま、まだだ……それほどの力だ、長く維持はできまい!!」

餓者髑髏に巻き付きにかかる。

シア > 「エトランゼ……力、ミアの」

影から何かを呼んだりする、のだろうか。
ただ、それだけではない。骸骨がダメージを受けるたびに、ミアにも衝撃が行っているようにみえる。
単純なものではないのかもしれない。

「武器を打ち込む、唾を塗った……」

ジャージの下からグルカナイフを取り出す。
物としては大ぶりではあるが、眼の前の百足と比べてしまえば心許なく見える。

「……効く、毒とかは?」

どうなるかはわからないが、唾をナイフに吹きかける。
ついで、小さな杭にも似た金属棒を取り出し、それにも吹きかけた。

やはり、サイズの差が心もとない。

「……まだ保つ、ミア?」

ミア・コレット >  
大百足に餓者髑髏が巻き付かれると、体に痣が浮かび上がる。
このまま締め付けられたら、私ごと粉砕ってわけね。

「ぐっ! うう……!!」

シアに薄く笑って語りかけて。

「どうだろう、飛蜈蚣の血が万病への万能薬に転じた伝承があるから」
「毒は効果がないかも知れない……」

片膝を突きそうになる。
強烈な戦闘の意思だけでその場に立って。

「まだ保つよ、あいつが喰らった魂を解放させてやる!!」

七巻半の大百足 >  
「終わらせてやる、支配の四騎士めッ!!」
「動くこともできずジワジワと絞め殺されるがいい!!」

餓者髑髏に巻き付いたまま、その力を強めた。

シア > 「……」

ミアの体に痣が浮かび上がる。
服の下にほぼ隠れているが、それでも僅かに見えるそれは骸骨のそれと似通って見える。
あまりいい状況には見えない。

「わからない、ボクには。その気持ちは、ミアの。
 でも」

事情を知っているわけでもない。百足に恨みがあるわけでもない。
だが、このままではふたりとも共倒れになるかもしれない。

「手伝うね、ミアを。よろしく、あとは」

餓者髑髏の骨に向けて、ロープを投げる。
綺麗に肋骨に巻き付いたそれを引っ張って飛び出した。

「……これ、まずは」

杭の先をべろ、と舐めあげて百足の目に向けて投げる。

ミア・コレット >  
どうして私は戦っているんだろう。
人間を喰らった怪異を倒すと久那土会から奨励金が出るから?
それとも自分が納得したいから?
わからない。でも。

「ただのお節介だよ、それも要らない類の」

そう言って指先まで戦う意思を充溢させていく。

「シアー!!」

ロープを餓者髑髏に引っ掛けて百足に向かう彼女の名を叫んだ。
戦う気だ、でも……相手の大きさは。

「何を呆けている、餓者髑髏!!」
「百足を一秒でも長く拘束するんだ!!」

餓者髑髏が絞めつけられたまま、相手の足を掴んだ。

七巻半の大百足 >  
「ほぅら、ほぅら、ほぅら!! 死ぬぞ!! 死んでしまうぞ!!」

そう喜悦の言葉を口にした瞬間。
片目に杭が刺さった。

「つ」

その感触に、絶叫を上げる。

「唾ああああああああああああああぁぁ!?」

怯み、悶え苦しむ。
しかし餓者髑髏に掴まれ、大きく逃れることができない!!

シア > 「効いたね、ミア」

刺さった杭に百足が悲鳴をあげ、悶える。
しかし、餓者髑髏がその体を抑え込み、逃げることも許されない。

「……あれ」

百足が苦しむさまを眺めて、ふと思う。
どうして、こんなことをしているのか。
ほんの一瞬だけ、少女もそれを考える。
命の危機だから? そうかもしれない。そうじゃないかもしれない。

……命のやり取りには無用な思考だ。
秒でその意識を振り払う。

「唾が毒なんだね、君は」

餓者髑髏に着地し、百足の体に唾を塗った杭を打ち込む。
打ち込んだ杭を足場に、百足の体を駆け上っていく。

「……来たよ、毒が」

ミア・コレット >  
「シアッ! 無茶はしないでね!!」

彼女にそう叫ぶと、再び餓者髑髏を操作する。

「逃・が・す・なァァァァァ!!」

全身全霊の力で餓者髑髏は大百足を抱える。
今度はこっちが絞めつける番だ。

「シア、トドメをー!!」

巨大なエトランゼを呼んだ影響か体のあちこちが痛い。
でも、こいつだけは。

こいつだけは許してはならない。

七巻半の大百足 >  
「ヒッギャアアアアアアアアアアアァァ!!」

体に撃ち込まれる劇毒!!
それは人の唾!!

「やめろこのちっぽけな人間がァァァ!!」

逃れようとしても、餓者髑髏に良いように拘束されて動けない!!

シア > ミアの声が聞こえてくる。
苦しそうなのに、自分を心配する言葉。

「大丈夫だよミア、ボクは」

身を捩る百足。阻まんとする骸骨。
苦しみに耐え力を振り絞る少女。
それを横目にしながら、少女は揺れる百足の体を足場にして駆け上がる。

「助かる」

走り、跳んで、たどり着いた先は百足の頭

「弱点、生き物の。潰すよ、頭を」

自分の体よりも遥かに大きい目と見つめ合う。

「死んでね、理由は知らないけど」

最後の抵抗とばかりに、百足が毒気を吐く
それを乗り越えて、額に体ごと唾という名の毒を塗りつけたグルカナイフを突き立てる。

七巻半の大百足 >  
頭部に突き刺さる、分厚い曲刃!!

「いぎゃああああああああぁぁぁぁ!!」
「この年経た百足がァァァァァ!!」

しゅるしゅると体が小さくなっていく。
それでも、アナコンダほどの巨大な百足となり。

裏世界にその骸を晒した。

その口から3つの光の球体が出てきて。
真っ直ぐに空に昇っていった。

ミア・コレット >  
「シアッ!!」

百足が縮み始めるより早く、餓者髑髏で彼女をキャッチして。
自分の側にゆっくりと降ろさせる。

「戻れ、ガシャドクロ」

そのまま巨大なる骸骨を自分の影に戻すと。
その場に片膝をついて荒い呼吸をした。

「ヤロー……人の魂を消化しようとしやがって…」

蹲ったまま顔を上げる。

「ありがとう、助かったよ」
「今度こそ終わってしまうかと思った」

シア > 「わ」

ナイフを突き立てた百足が、急にしぼむ
倒れるのだったら、それに合わせて跳んだりバランスを取ればいいと思っていた。
これは流石に想定外。

「……」

周りを見回して、どうにかならないか、と考えたその時
ぽすり、と何かに着地する。
どうやら、ミアの出した骸骨が拾ってくれたらしい。

「助かった、また」

そのまま、ミアの眼の前に降り立つ。

「助かったよ、ボクも。
 殺せなかった、ボクだけじゃ」

頭を下げる。

「大きな怪物だった、あれは。
 食べたんだ、人を」

ミア・コレット >  

数度咳き込んで、手に付着した血をハンカチで拭う。

「協力あっての勝利だね」

なんとか立ち上がって、よろめきながら姿勢を戻す。

「うん、三人も食べた……あいつを倒したけど、その生命は帰って来ない」
「顔を上げて、シア。それでも、これ以上の犠牲が出るっていう最悪のケースは避けられたんだから」

ビルの下で子猫ほどのサイズの蟻に毟られていく大百足を見る。

「俵藤太が斃した大百足の眷属……どうして裏世界に来たんだろう」
「なにか厄介なことが起きてないといいんだけど」

そう言って顔を左右に振り。

「帰ろう、帰り道は私が知っているから」

大百足だったものをビルの上から見下ろしながら。
私はどうしてもあいつの言った支配の四騎士がどうという言葉が忘れられずにいた。