2024/08/17 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」にミア・コレットさんが現れました。
ミア・コレット >  
「エトランゼーッ!!」

大蛇をエトランゼが生み出した女ガンマンの影が撃ち倒す。
今日の調査はここまでか。
法儀礼済みの銃弾も残り少ない。

「戻れ、カラミティジェーン」

そう呼ぶと顔が黒く塗りつぶされた女ガンマンは影に戻っていった。
残ったのは大蛇の死骸のみ。
手に入ったのはそこそこの素材、いわゆるアイテム。

ただ……まだ寒気が消えない。


まだ何かがいて、私を付け狙っているのを感じる。
夜の裏渋だ、何がいてもおかしくはない。
それにしたって異質な気配だが。

ミア・コレット >  
帰り際。何者かが影から尾行してきている。
振り返ると姿を隠すのでよくわからないけれど。
一度、鏡面のようなビルの窓に反射して見えた姿は。

上品な和装の老婆だった。


「今、通じる?」

通信機を取って久那土会のメンバーに連絡を取る。

「老婆の怪異に尾行されてる」
「うん、上品な着物を着たお婆さん」

「そっか、わかった。緊急時の手配はよろしくね、切るよ」

怪異の正体がわかった。
忌み名を持つ怪異は初めて戦う。

さて、どうしたらいいものか。
このままではそう遠くない場所で襲われるだろう。

ミア・コレット >  
開けた空間だ。
ここが戦える最後のポイントかも知れない。
四辻の中央で立ち止まって。

車の走らない交差点のど真ん中で振り向く。

「お婆ちゃん、なにか用?」
「用っていうか、人から“代償”が欲しいんだよね」

「ねぇ──“サンヌキカノ”さん」

老婆の名を呼んだ。
これは忌み名だ、相手が実体化するかも知れないが
一方的に呪詛を受けるよりはマシ。

サンヌキカノ >  
物陰から姿を見せると、上品な笑みを浮かべた。

「ええ、ええ……サンヌキカノと申します」

そして右手を差し出した。
相手の。歯を。いただいていくために。

ミア・コレット >  
「ないよ」
「あなたにあげられるような余分な歯はない」

肩を竦めて答えた。
心臓が暴れている。
ただ、ただ。

いつでも戦えるように精神を高揚させなければならない。

「デンタルクリニックに行ったらどうかな?」
「デイリーで一本は抜いてるでしょ」

「繁盛してるとこなら、だけど」

軽口を叩いて刀を抜いた。
近接するしかない。
呪詛系の怪異と距離を取っていたら命がいくつあっても足りない。

サンヌキカノ >  
ミアの言葉ににっこり笑うと。
すぐに無表情になり。

気がつけば老婆の双眸が真っ黒なウツロの穴に変わっていることだろう。

そして微動だにせずに相手に超重力を仕掛ける。
久那土会の定める危険度Aランク怪異の呪詛に予備動作などない。

ミア・コレット >  
「ッ!!」

世界が表情を変えた。ような気がした。
立っていられないほどの重力に襲われ、その場に両膝を突く。

これがAランクか……!
悠長に構えていたら40秒で骸に変えられそうだ!!

「エ、ト………エトランゼ……ッ!!」

異能の名を叫ぶと影が姿を変える。

「汝の名は……キクリヒメ…!!」

長い裾を引くような着物姿の女性の形になると。
ミアの体にかかる超重力を解除した。


本来なら斥力を生み出して空を短時間浮遊する能力だけど。
ここは防御に使うしかないッ!!

サンヌキカノ >  
そのままの表情を顔に貼り付けたまま、超スピードでミアの左手側に疾駆(はし)り始める。
老婆の。いや、人の速度を大きく超えたそれは。

相手に攻撃の余地を残さない。

まして、相手の利き腕と反対側に回り込めば。
そのまま相手の足元のアスファルトが融解するような熱を地面から放出させた。

ミア・コレット >  
あ、ダメだ勝てない!
そして逃げ切るにしたって相手の足が速い!!

考えている間に円形に熱がじわ、と来て慌てて飛び退いた。
自分がいた場所が漆黒のシチューに変わる。

「どうしよっかなぁ……」

グラグラ煮立つ地面から走って逃げる。
もう戦いやすい場所とか言っている場合ではなくなった。

ギリギリの戦いになる。
そんな予感がして。

サンヌキカノ >  
包丁よりも短い刃物を取り出して。
ミアの首を狙って走る。

両目に空いた穴は、そこだけ世界が切り取られたかのような漆黒。

そして無動作で周囲から生み出した、ツタのような植物を使って相手の足を絡め取りにかかった。
人智を超えた速度で成長し、ミアに向かう謎の植物。

ミア・コレット >  
まずい、詰む!!
この状況で足を止めたら確実に死ぬ!!

四方から襲いかかってくるツタを前に感情を爆発させて叫ぶ。
死にたくない!!

「エトランゼー!!」

山刀を持った老婆が現れ、眼にも止まらぬ速度でツタを切り裂いた。

「ジェットババァ! いける!?」

そのまま走って逃げながら自分の影に聞いた。
相手は自分より強い。だから自分の影に過分な期待をしてはいけないのだけど──

けど、けど!! このままじゃ死ぬ!!

ジェットババァは分厚い刃物でサンヌキカノに袈裟懸けに斬りかかった。

サンヌキカノ >  
襲いかかってきたジェットババァの山刀を短い刃物で切り払う。
耳障りな金属音が連続で鳴り響く。

ジェットババァとサンヌキカノが高速戦闘している。
既に人の踏み入れる領域を超えた速度での剣戟だ。

幾重にも、幾重にも。
老婆たちの競り合いの音が誰もいない街に響く。

ミア・コレット >  
ジェットババァとサンヌキカノは近接戦闘では互角。
あとはサンヌキカノが呪詛を使ってきたら恐らく勝ち目なし!!

「!!」

走っている間に鳥居が見えてきた!!
誰も居ない街の中に鳥居っていうのが違和感!!
違和感の中にゲートあり!!

「戻れ、ジェットババァ!!」

走れ、走れ、走れ!!
なんとか辿り着いて、逃げ切らなければ!!

でもその前に自分の影は回収しないとね……

サンヌキカノ >  
鍔迫り合いの最中に逃げ出し、少女の影に戻るジェットババァ。
そして少女を追って走り出す。

追って、追って、追って。
相手をこの世界で破滅させるために。

ご案内:「裏常世渋谷」にシュエットさんが現れました。
シュエット >  
尋常ではない速度で少女に追い縋る怪異。
老婆の足音は地を滑るように速く、道路のアスファルトの破片を巻き上げながら迫ってくる。

ミアの耳に彼方から届いたのは、女性の声だった。

「奔れ疾風、光の護風(ディバインウィンド)!」

突如として一陣の風が吹いた。
ミアの背後から吹き付けたその風。
それが怪異――サンヌキカノの仕業でないことは、
すぐに理解できるだろう。

その風は、清浄な風。
柔らかなすずらんの香りを纏った、風。

ただ吹き抜けるだけかに思われた風。
しかしそれは、まるで意志を持つかのように、
柔らかく、優しく、そして守るように少女の周りを舞っている。

この地獄を走り抜く力を与えてくれるだけの、追い風だ。

ミア・コレット >  
「!!」

人の声、数年ぶりに聞いたような錯覚すら覚える!!
ただ、助かる!! 多分!! ここから逃げられる!!
その気持ちで懐から久那土会謹製の札を取り出して鳥居に投げつけた。

ゲートができる。
現実世界に戻るためのゲートが!!

「ありが」

その言葉を最後まで言い切ることもできない。
気がつけば疲弊したまま、ビルの間で汗だらけで荒い息を吐いていた。

さっきの女性の声は……?
まさか、サンヌキカノとあっちの世界に!?

慌てて周囲を見渡した。

シュエット >  
現実世界への門をくぐる少女。
周囲を見渡すが、そこに人の姿はない。
声の主は、ゲートの向こうの世界に取り残されているらしかった。

そんな状況を受けて、ミアが何かしら行動を起こそうとした、その頃合いに――
虚空に歪みが発生する。それは、ミアが見慣れた久那土会のゲートとは、似て非なるものである
ように見えるだろうか。

歪みは亀裂となり――そこからヒトが、落ちてきた。
白を基調とした服を身に纏った、長耳の女だ。
その声は、先程ミアの耳に届いたものと同じ。
そうして彼女が纏うのは、清楚なすずらんの香りであった。

「えぇと、貴女は――」

続いて落ちてくる、先端に青いクリスタルのついた大きな杖。
それが落ちてきた女の頭に直撃した。

「――うぐ、痛ったたぁ……」

頭を抑える女。ややあってから、眼前の少女を見上げて震える声でこう口にした。

「だ、だ、大丈夫ですかぁ……」

ミア・コレット >  
亀裂から人が落ちてきた。
答え合わせのように、スズランの香り。

さっき助けてくれた人だ。間違いない。

「え、あ……大丈夫、です…」

ハンカチで汗を拭って。

「おかげさまで……ありがとうございます…」

杖が直撃したのを痛そうだなぁと見ながら。
いや見てる場合じゃないだろ。

「大丈夫ですか!?」

今になって息が整ってそんなことが言えた。

今にも箔切れの音が聞こえそうな眩しい金髪。
清純のイメージを形にしたようなホワイトの衣服。
──暗がりの中でも褪せぬ瞳の蒼。

彼女は一体。

「あー……」

サンヌキカノは忌み名だから言わないほうがいいか。
なんて状況を説明しよう……