2024/11/01 のログ
エルピス・シズメ >  
「赤ずきんの童話一つとっても、色んな発想があるんだね。
 こういう視点も大事なのかも……。」

 行進に混ざって楽しく歩きながらも、会話は弾む。
 赤ずきんの童話ひとつとっても、色んな解釈をするものがいる。

 それらはなんとなく、自分の〝まほう〟にとっても大事なもののように思えた。
 ほんの少しの、インスピレーション。
 
「うん。みんなで色んな仮装をして歩いてると、恥ずかしさはあんまりないかも。
 お化けさんや本物さんが、混ざっててもおかしくない位賑やかで、楽しいね。」
 
 ハロウィンのルーツは古の「ケルト」の祭であるサムハイン祭を原型の一つとすると言われている。

 死者の魂が家に帰るとも、秋の収穫を祝う祭りであるとも、悪霊などを追い出す祭りであるなどとも言われ、
 仮装をして行列を作るなどの行為も行われたという。

 キリスト教に取り込まれてからは、ハロウィンは万聖節(諸聖人の日)の前夜として位置づけられ、
 世界に広がってからは子供のための祭りなどに変遷していったとされる。
 現在のような大規模なイベントとして確立したのはアメリカ合衆国においてであったとされる。

 ……そして、新世紀の幕開けの《大変容》を経て、「ケルト」の復古あるいは新生により、
 ハロウィンは古にして新しき祭として「復活」を遂げた。

 秋の収穫を望むもの。
 悪霊などを追い出すもの。
 死者の魂が家に帰るもの(様子を見に来てくれるもの)

(……ヒガサさんも、見ているのかな。)

 エルピスにとっては、イーリスの育ての親であるシスターヒガサの生存は絶望的。
 そう認識しているが故に、このような感想が内心で零れる。

 10年以上の行方不明ともなれば、現実的に考えればどうしても故人として考えてしまう───。
  

Dr.イーリス > 「そうですね。とても多様な赤ずきんちゃんがいます。それはそれとしても、私の、一番素敵な赤ずきんちゃんはえるぴすさんです」

ぎゅっと、エルピスさんの右腕を抱きしめて尻尾を振りながら歩いている。
きっと、今日の出来事もエルピスさんの“まほう”に大きな影響を与えるのだろう。
エルピスさんの“まほう”の事も考えたりして、イーリスはお伽噺の方面の仮装を提案し、今日は赤ずきんちゃんの仮装をする事になった。

「ふふ。それに、さすがに本当に生物的な狼さんのお耳と尻尾を用意できたのは私ぐらいのものでしょう。天才的な発明を持ってすれば、獣人さんと変わらないお耳と尻尾を用意できます」

エルピスさんの右腕を抱きしめながらもどやっと胸を張ってみせた。
そこで、ひとりの狼さんが視界に入る。

「む……。あのお耳と尻尾……。おそらく狼獣人さんそのものですね……。生物的なお耳と尻尾を用意できたのは私だけではなかったみたいです……」

もはや仮装と言っていいのかも不明な、本物が混じっていた。
さすがに、赤ずきんちゃんの物語から飛び出した狼さんではないだろうけど。

「お、お化けさん混ざっているのですか……!? ど、どこにいるのでしょう……」

ちょっと顔を青ざめながらきょろきょろと周囲を見渡している。

イーリスは、シスター・ヒガサ……お義母さんがまだ生きていると信じている。
だからサムハイン祭と紐づけて死者の魂が家に帰るだとか、そういった発想は思い浮かばなかった。
イーリスにとっては今もお義母さんは生き続けていて、いつか帰ってくるものだと信じている。

お義母さんが帰ってきたら、エルピスさんの事をいっぱい話したい。
あの時の正義のロボットさんが、今やイーリスの恋人で、未来から助けにきてくれた救世主で……。

エルピス・シズメ >  
「えへへ……じゃあ、一番素敵な狼さんもいーりすだね。」

 パレードの中で、腕を組んで歩く。
 現状では、教師不在で図書館の資料で手探り状態の〝まほう〟の道。
 
 はじめは新たな手札を求める為だったけど、いつのまにか学ぶことそのものに興味を持つようになった。
 それがささやかなものだったりしても、学ぶことは楽しくて面白い。

 〝まほう〟感情に沿う様に動くものなのに、異能ではなく魔法である理由も、おぼろげながら輪郭が見えてきた。
 ハロウィンも、良いインスピレーションになった。

 それはそれとして、食べられちゃいたい位一番かわいい狼さんはいーりす。

「後から用意できちゃうイーリスの発明はとってもすごくて可愛いけど、元々持っている人は、いるからね……。」

 それはそれ。
 赤ずきんモチーフでなくとも、種族や異能の持ち味を活かした仮装もいくらか視界に入った。
 皆色々考えているんだな、なんて思ったりもした。

「見分けが付かないし、居てもきっと楽しいおばけさんだから大丈夫。
 だって……みんな楽しそうだから。」

 少し怖がるイーリスに笑いかけながら、パレードを進んでゆく。
 ほどなくすれば、常世渋谷のメインストリートが見えてくる。

 出迎えるような、花火や光や音の彩り。
 パレードの終着点はきっとそこだろうと、辿り着くまでのパレードをイーリスとくっついて楽しみ合う。
 

 

Dr.イーリス > 「嬉しいです……えるぴすさん。えへっ。えるぴすさん……また、たべちゃいたくなってしまいますよ……」

尻尾を振りながら、エルピスさんを見上げる。
先程よりは落ち着いたとは言え、胸部が桃色に光ったり、ハートのエフェクトが出てきてしまうのを抑えきれていない。

エルピスさんの“まほう”の成長を応援したい。
だが同時に懸念点もある……。

“まほう”が忘却を呼ぶ点……。
そして、ギフターさんとの戦いで見せた、魔法少年なる姿……。

このまま“まほう”の道を進むのが良き道となるかは見極める必要もあるだろうか……。

(いずれ超自我さんとも相談しなければいけない事色々ありそうです……)

「ありがとうございます。えるぴすさんにそう仰っていただけるなら、このお耳と尻尾を開発した甲斐ありました。お耳や尻尾は、えるぴすさんの生体義手を造り出した技術の応用だったりするのですよ」

中には異能でお耳や尻尾を生やせる人がいたりもする。
ナナさんなら、狼さんのお耳や尻尾を生やせたりするかもしれない。

「それもそうですね。このような楽しいイベントに紛れ込んでいるお化けさんなら、とても愉快な方です」

顔が青ざめていたイーリスだったけど、目を細めて笑顔に戻る。
やがて渋谷常世のメインストリートが見えてくる。

楽しかったパレードも、終わりが見えてくる。

「この楽しい行進も、もう終わりなのですね。しあわせな時間が過ぎ去るのはあっという間です」

名残惜しそうにしつつも、最後まで笑顔で楽しく歩いていく。

エルピス・シズメ >  
「……えっと、おうちにかえってから……」

 ものすごく照れながら、愛らしく頷く。拒む選択肢がなかった。
 夢のようなハロウィンは終わっちゃうけれど、お家に帰ってからもその余韻はつづきそう。

 〝まほう〟を間近で見たイーリスならば、
 そして分析を続けていれば、少なくとも最低限の体系があることが分かる。
 問題は、〝再現性〟にぶれがあること。

 イーリスが〝まほう〟を分析・行使したとするならば、可能だが同じ〝まほう〟のつもりでも差異が出る。
 身も蓋も無く言えば、魔力と解釈によって効果が変わる。エルピスの行使している〝まほう〟はそう言うものらしい。

 忘却は──いまのところ、データとしては出てこない。
 データそのものが記録し続けるものであり、忘却性の薄いものであるとも言える。

「そっか、生体には変わりないから……いーりすなら簡単に出来ちゃいそう。」

 揺れる耳やしっぽを視線で追う。触りたくなるけど、びっくりさせちゃいそうだから今は我慢。

「ふしぎで、夢みたいに楽しいひと時だったね。
 ……これからもいっぱい、いーりすと楽しい思い出を作っていきたいな。」

 しあわせな時間はあっという間。パレードは終わり、現場は解散ムード。
 だけれど、まだまだしあわせな時間は続きそう。

「あと、その……かえったら……今日はよふかししたいな……」

 先の言葉を思い出し、顔を赤らめながらそう告げる。
 家に帰ってから、遠慮なくたべられ──もとい、甘え合ったり、愛し合いたい。
 たのしい気持ちとしあわせな気持ちで、だいすきをいっぱい伝えたい。 
 

Dr.イーリス > 「おうちにかえったら……えるぴすさんをいただきます……しちゃいますね……。私、今日は……赤ずきんちゃんをたべちゃいたくなるわるいおおかみさんになってしまうみたいです」

お顔を赤らめて、そう口にする。
ハロウィンナイトが終わろうとも、しあわせな時間はまだ終わらなさそう。

イーリスは、エルピスさんの“まほう”を普段から分析していた。
“まほう”なだけに、体系自体は最低限ある事は分かっている。
だが、魔力や解釈などが入り混じる事で、その効力はいくらでも変わる。
今のところは、データ上は忘却の兆しがあるわけではない。だから、今のところは純粋にエルピスさんの“まほう”の成長のお手伝いや応援ができる。

「人が本来持たない部位を足しているので難易度自体は腕や足よりは上がったりしますが、ふふ、私にかかれば天才的な発明もこの通りです!」

自慢げに、どやっとした表情でお耳をぴこぴこ動かしている。

「えるぴすさんと一緒に素敵なパレードに参加できてよかったです。えるぴすさんと私のしあわせな想い出は、これからずっと積み重なっていきますよ」

名残惜しかったけど、これから続くエルピスさんとの想い出を思うと、満面な笑みになった。
たのしいこと、これからもいっぱい……。

「はい……。かえったら……朝まで……えるぴすさんを……いただいちゃいますね……」

エルピスさんと同じく、お顔を赤く染める。

「えるぴすさん……すき……」

背伸びをして、エルピスさんの耳元で愛を囁いた。
パレードは終わっても、エルピスさんとイーリスの幸せで甘い時間は終わらない。

この後、引き続きハロウィンナイトをふたりで楽しみ、そして『数ある事務所』に帰れば、おおかみさんが赤ずきんちゃんをたべてしまうかのように、ふたりは甘え合って、愛し合って、だいすきな気持ちを伝えあった。
愛し合っているとしあわせな時間が過ぎ去っていき、朝になっていた。

ご案内:「常世渋谷 /【トコヨ・ハロウィン・ナイト】」からエルピス・シズメさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 /【トコヨ・ハロウィン・ナイト】」からDr.イーリスさんが去りました。