2024/11/04 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」にクロメさんが現れました。
クロメ >  
霊気、妖気、瘴気……そういった類の人ならざる力が漂う土地。
万妖邸も似たような部分はあるが、あれはあれで濃すぎる。
これくらいが、ちょうどいい。

「さて……」

辺りを見回す。
怪異の類の気配はするが、当面問題はない……と思う。

「……」

爪で、手首を切る
ボタボタと、血が垂れ、地面に真紅の水たまりを作り始めた。

「……フ……ト……ダ……」

ポツポツと、何某かの言葉が漏れ出る。


ご案内:「裏常世渋谷」に龍 翠蓮さんが現れました。
クロメ >  
「……この程度が限界か。度し難い」

ややあって、一つ息をついた。
本当に呪わしいことだ。どれもこれも。

「……手法を変えるべき、なのか」

失せ物、というには烏滸がましい。
尋ねもの、というにはまた異なる。

「……ふむ」

流れ出す血はいつの間にか止まった。

「さて、どうするか」

龍 翠蓮 >  
霧深き裏常世渋谷。
長時間の滞在は不調を来たすともいう、異界の如き地。
様々な噂蔓延る場所だが、その噂の幾許が本物である事か。

――少なくとも、「ある噂」は本当であるようで。

かつ、かつ、と、霧の向こうから、ヒール特有の乾いた足音。
そして、霧の向こうから歩みを進めて来る、人影。

「――――おや、おやおやおや。」

霧の中から現れたのは、白地に赤い龍の刺繍が施されたチャイナドレスに、
赤いジャケットを羽織った、やや長身の女性。
後ろ結びにされた白い長髪から、長く尖った耳が先端を覗かせている。

「今日も閑古鳥かと思って、少しばかりの散策を行っておりましたが……
他にご散策の方がおられますとは、思いませんでした。

それとも、もしや間違えて此方まで?」

閉じられたかのような糸目が、金と蒼の瞳の、少女らしい背格好の人物に向けられる。
……何と言うか、胡散臭い。
 

クロメ >  
「……」

異界、異様の地。
人のいるべき場ではない場。
虚無のごとく、何者もないかと思われた。

――そこに響く、硬質の音。

「……ふむ」

見るからに、怪しい空気を纏った存在。
一見しては、人の女、のように見える。
しかし、尖った耳が覗く。それだけではない、何かの匂い。

「……なるほど。私も、思いもよらなかったな。」

端的に、返答する。

「散策、か。こんな場所で、か」

龍 翠蓮 >  
「おやおやおや、散策ではないとなると………
もしや、何某かお探しでございますか、貴石の如き瞳のお嬢様?」

はて、といちいち大げさに首をかしげてみせるチャイナドレスの女。
本人は単純に疑問が来ているようだが、より一層胡散臭い感が否めない。

「まあ、この異界の如き街、様々な噂がございます故。
あるいは願い事、あるいは異能、あるいは死者との対面、
あるいは――――魔術品(アーティファクト)

前3つについては(ワタクシ)も生憎、存じてはおりませぬが…最後については心当たりがございますよ。

小さいながら、ギャラリーを営んでおりまして。
"そういった"品をお求めのお客様が訪れましたら…まあ、事情と
懐具合、後は…ええ、ワタクシの
好みとなりますが、お譲りしている場合もございまして。」

ゆるり、と女の口元が緩む。
穏やかそうな微笑み。

「あるいは、これも何某かのご縁でしょうか。
お嬢様は、そういった代物にご興味はおありで?」

笑顔の儘、そう訊ねる。
 

クロメ >  
「ふん……」

冷たく、鋭い瞳が刺すような視線を相手に向ける。
その表情は微動だにせず、冷えて凍りついたかのようであった。

「そちらに向けて、だったが。
 商人か。こんな場で商いときたか」

ますます胡散臭いことこの上ない。
こんな場所において、売り買いをする、など。
真っ当な品ではないことは容易に想像がつく。

そして、それを商おうとする相手。それ自体も、真っ当な存在ではない、と推測できる。
仮に真っ当であったとしたら、それこそろくでもない。

「それこそ生憎、だな。
 魔具など間に合っている。」

もとより、必要としていたところで他者頼るつもりはない。
他者をアテにする気がしない、ともいえる。

「物知らずに悪の種でも売りに来たか?」

冷めた声で、問う

龍 翠蓮 >  
「あらあら、これは失礼を。

しかし……いやいや、これは困りましたね。
悪の種とはまた――。」

うーん、と困ったような雰囲気で、頬に手を当て、困ったな―という雰囲気の表情。
糸目は相変わらず開かれる事はなく。

「――道具として創り出されたモノに、善も悪も無し。
あるとすれば、それは扱う者次第、でございますよ、お嬢様。
手にした力に驕って悪成すか、分を弁え善成すか、それは押並べて手にした者の責任。

――とは、思われませんか?」

くす、と小さく笑顔を浮かべながら、凍るような表情に怯むでもなく真っ向から。

「商人…と言えば、まあ、否定は出来ませんね。
こちらも慈善事業ではございません。

ですが、ワタクシは金銭よりもお客様が「相応しい方か」を重視しておりますので。

そう――例えば、相応しい"罪"を身に秘めておられるか、でしょうか。
己が手掛けた品、渡るならば相応しきモノを相応しき方に。
そう考えるは、制作者たればごく当たり前の願い、ではないでしょうか?」

そう、柔らかい口調で「ただの商人」である事を暗に否定してみせる。
その本質は「制作者」である――という事を。

そして、口に上るは「悪」ではなく「罪」。
似ているようで…何処かが違う、概念。
 

クロメ >  
「一面ではな」

例えば、刃物。
それ単体ではただの道具であり、無害である。
しかし、一度をそれを以て人を刺せば殺害道具と化し
料理をすれば便利な用具と化す。

しかし
仮に、それを手に括り付けて離せなくしたら?
本人の意志に関わらず、人を傷つけることも在るだろう。

それもこれも、"扱い方次第"だ

「罪――か。
 また悪趣味な話だな。」

悪、ならまだ先の論理もまかり通ったかもしれない。
しかし、直接、罪、ともなれば……また違った見え方が在る。
罪、とはすなわちそれ自体が悪に通じるものだ。

「……商人ではなく、作家の類だったか。」

罪。そして、それにふさわしい品。
罪を暴き出すのか、罪と結びつくのか。
いずれにしても、やはりろくなものではなさそうに聞こえる。

「作品を、押し売る類だったか?
 いずれにしても、だいぶいい根性のようだ。」

龍 翠蓮 >  
「押し売りとは、これまた心外でございますね。
貴石の瞳のお嬢様は随分と辛辣でございます事…。」

よよよ、と、芝居がかった雰囲気で、何処からか取り出した扇を広げて顔を隠しての泣き真似。
いちいち芝居がかった仕草である。

「押し売りという程、軽々しく売ったりはしませぬよ。
大小あれど、ワタクシが丹精込めて仕上げた品々。
使い捨てのように扱われるような方や、それを転売なさろうとする方は――」

くすり、とちいさく声を上げ、ぱちんと音を立てて閉じた扇が…ゆるり、と
持つ者自身の首を横切るように動く。
――非常に分かり易い、意思表示。

「と、流石に此処までは致しませんが、そういった考えを持つ不届きなお客様には
流石に幾ら積まれても譲る心算はございませんとも。
折角手掛けた品が相応しからざる方の手に渡るなど、ええ、我慢なりませぬとも。」

たん、と畳んだ扇で掌を打つと、まるで手品のように扇はチャイナドレスの女の手元から消える。

「――悪趣味と、思われますか?
ですが、ヒトは――いいえ、あらゆる者は、罪から逃れ得ぬモノです。

そして、「罪」は「力」となり得るモノ。
「罪」を御せぬ者が「罪」を「悪」と呼び、忌み嫌う。

美徳だけで、世の中は回りませぬ。
謙虚な事は一見良い心がけですが、傲慢とも言える精神を持たねば、時に前に進む事が出来ぬ事もある。
無欲は善良な事ですが、強欲と謗られる程の欲を持たねば、手にする事叶わぬ願いとて存在し得る。

全ての罪を切り捨てた者は…それこそ、生きながらに涅槃へと歩み、戻らぬ者でしょうとも。」

そうは思いませんか?と、軽く口元が微笑を浮かべる。
――その瞳は、相変わらず開かれない。
 

クロメ >  
「わざとらしい」

芝居がかった仕草を切って捨てる。
そこには感情も何も籠もっていない。

「邪智のモノにも美学はある、か」

作家。創るもの。
そのように宣言したからには、そういうところに誇りは在るのだろう。
もっとも、巻き込まれた者にとってそれが救いになるかどうかは怪しいところだが。

しかし――
それを憂う理由もない。
そんなものに巻き込まれるようなモノは、放っておけばいい。

「……それもまた、一面だな。
 そして――人がそれを御せぬ度し難い存在ばかりであることも、だ。」

必要悪、という言葉がある。
時として、正論だけでは物事は成り立たないこともまた事実だ。
しかし、それを振りかざすだけで振りかざして堕ちていく者がいるのも事実だ。

「最も――罪ばかりの世になっても成り立たぬ。
 まあ、私には関わりのないことでは在るが」

宙に座り込む

「それはそれとして。
 他所の罪を暴き愉悦するのは悪趣味だとは想うがな」

龍 翠蓮 >  
「これはまた手厳しい。
ただ徒に暴き立てるなど、斯様に恥知らずな真似で終わらせはしませぬとも。」

喉の奥で小さく笑う声。
素敵なものを見つけた子供のようでもあり、獲物を甚振る猛獣にも思える、掴めぬ笑い声。

「瑕疵のない、純粋にして無垢なる美。それは一つの完成でございましょうとも。
では、歪なるものは、歪んだものは、美に値せぬと?

……歪であろうと、歪んでいようと、業と罪咎に塗れようと。
美は、何処にとて、宿るもの。
それを引き出し、表してこその表現者。

はじめから汚点無き美しか許容せぬ事こそ、御せぬ傲慢に呑まれた愚者の所業では?」

口元は相変わらずの微笑。
――だが、紡がれた言葉には、石刻む鋭さと鉄曲げる熱。
少なくとも…「美」に関して、この得体の知れない女は、ひどく真摯であると、
多少は理解できるであろう、強い「意志」が籠っている。

「確かに、並の者では罪を御す事など容易ではありませんでしょうとも。
ですが……それを「可能」にする人間が、未来永劫現れない、とは…聊か早計では?

ですが、あまり人目につくのも好ましくはございませんので…このような場で
ひっそりとギャラリーを営んでおりまして。」

ゆる、と姿勢を正し、やや時代がかったと思えるような一礼。
それを、宙に座り込む少女に向ける。

「興が乗らぬご様子のようですので、本日はここまで。
――貴石の如き美しき瞳の、杭に胸捧げしお嬢様。
もしもまた、ご縁がありますようでしたら――「七つの罪」を掲げたギャラリーにて。

では、これにて暇乞いを。
……ワタクシ個人としましては、またお会いできることを願っております。」

最後に、満面の笑顔を宙に腰掛ける少女に向け。
白いチャイナドレスの女は、ゆるりと踵を返し、霧の中へと歩み去っていく――――。
 

クロメ >
「……ふん」

歪なるもの、歪んだものは、美に値せぬか
業と罪咎に塗れようと
美は、何処にでも宿る

ああ――それはわかってはいても

「認めてやろう。
 どうやら、矜持は本物らしい」

氷の目は、氷の顔は、凍てついたまま。
厳かとも言える声で、告げる。

「可能性、か。ない、とは言わないがな。
 聊か悪例が多すぎる」

長い生の中で見てきたものが多く、
そして、身にしみてきたことも多い。

「『七つの罪』、と来たか。
 汝の抱える罪は、どれほどだろうな。」

全く以て、胡散臭いことこの上ない。
そのうえで……これは人にとってはいい迷惑かも知れないが。
人と共に在ろうとする存在なのだろう。

「……名ぐらい、置いていけ。
 私は、クロメだ」

その声だけが風に乗り……怪異もまた消えていく。

龍 翠蓮 >  
――最後の問い掛けに答えるように、

霧の向こうから、奇妙な響きの声。


『――(ロン) 翠蓮(スイリィエン)と、申します。
此処、裏常世渋谷にてギャラリー「The SEVEN SINS」のオーナーを営む合間に、
アーティファクト制作を営んでいる、しがない工匠(アーティファクター)

お見知り置きを、クロメ様。』


そうして、すべては、霧の中へ――。

ご案内:「裏常世渋谷」から龍 翠蓮さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」からクロメさんが去りました。