2024/11/20 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に蘇芳 那由他さんが現れました。
蘇芳 那由他 > 放課後――今日はアルバイトもボランティアも無く、自由な時間帯…普段、あまり足を運ばない常世渋谷。
この常世渋谷にある駅の電車内で自分は『保護』されたと聞いたが…正直、その前の事もその当時の事も何も覚えていない。

「……うーん…苦手…ではないんだけど…。」

それはそれとして、この煌びやかさには中々馴染めないなぁ、というのが正直な感想だ。まぁ地味ボーイだから…。
そんな少年が何故ここに足を運んだかと言えば。

(…流石に、冬服は買っておけと言われたからなんだけど…正直さっぱりわかんないなぁ。)

コート、マフラー、手袋などの防寒着ならまだ何とか分かる。
問題はそれ以外のズボンやらインナーやらの組み合わせ(コーディネート)だ。
正直、そういうファッションセンスみたいなのは全然さっぱり!…なのでアドバイスが欲しい。

「……まぁ、一人で来てるからそれも無理なんだけどね…。」

誰か知人友人を誘えば良かったかもしれない…と、今更ながらに後悔も少々ありつつ、賑やかな雑踏を歩く。
ちなみに服装は何時もの学生服だ。何せ学生服とジャージと寝巻きしかほぼ持ってない少年である。

蘇芳 那由他 > (…考えたら、扶桑百貨店の方に行く選択肢もあったんだよね…。)

あっちの方がまだ落ち着いて買い物とか出来た…かもしれない。
まぁ、どのみち服選びで時間を要する事になるのは変わらないかもしれないが。

「…記憶と一緒に服装センスも吹っ飛んでたりして…。」

いや、記憶喪失前の僕がどれだけファッションセンスあったか知らないけど。
まぁ、過去を振り返ってもしょうがない…もとい、過去が無いのでそれはさて置き。

「…うぅ…どのお店も何か敷居高いな…。」

あくまで少年基準であるのは言うまでもない。
何件か、気になった店が無い訳ではないが、足を止めるものの、中には入れず終いである。

(…そういえば、知り合いや友達とかと服選びとかもした事無いからなぁ…)

そもそも、私服を買いに来るのも今回初めてな気がする。…地味というか無頓着すぎる少年だ。
これ、ただのウィンドウショッピングで終わりそうだなぁ、と薄々感じながらも良い店が無いかとゆっくり歩く。

この場合、良い店というのは多分この少年的に入り易いと感じる店になりそうだが。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にノーフェイスさんが現れました。
ノーフェイス >  
群衆も姦しき若者の街だ。音も気配も溢れている。
無数の声が知る話題と知らぬ話題とであふれる、まさに洪水、坩堝のなかで。

「――あ。 アレにしよーぜ」

ひときわ目立つ声があった。無数の不協和音のなかでも紛れず、輪郭を確かにする音。
それより大きい声がいくつもあるのに、それだけははっきりと。

「キミ」

響く声が、続いた。

「キミだよ、キミ。いまヒマ?」

ぽんぽん、と少年の肩を背後からたたく手がある。
その手の主は、その声の主で、すぐにも後ろから迫っていたらしい。

蘇芳 那由他 > 「――え?」

この雑踏の、多種多様の音と声の洪水の中で…何故か、その声だけがまるで耳元で言われているように”はっきり”感じた…気がする。
思わず足を止めて左右を見渡すが…誰も彼も少年の傍を普通に通り過ぎていく。
…気のせいかな?と、首を傾げて歩き出そうとした矢先、また声を掛けられた。しかも後ろから誰かに肩を叩かれた。

「…え、ハイ?…暇と言えば暇…ではありますが。」

街中で誰かに声を掛けられるのってほぼ初めてじゃないだろうか。
ともあれ、最初聞いた声もどうやらこの女性だったらしい。

まじまじと失礼でない程度に相手を観察する。何か色々な意味で少年と正反対…そんな大まかなイメージ。

少なくとも初対面なのは間違いない。一見すると目に光が無い…死んだ双眸がはっと我に返り。

「えぇと…それで、僕に何か御用でしょうか?」

やたらフレンドリーな『赤』が印象的な女性に、首を緩く傾げて問い掛ける。

ノーフェイス >  
「あれマジでヒマ?委員会帰りとかじゃなかったのか。
 いや、ずいぶん目立つナリしてるからてっきり――」

返答に対して、目を丸くする。いやに整った、整いすぎているほどの顔。
コーデは随分落ち着いた装いではあるが、なにぶん髪色があれで顔もこれだ。
それにしたって華やかではあるが、さて告げた言葉は少年は目立つという。

着慣れた感じの制服姿は――そう。ここでは目立つ。
決していないワケではない。常世渋谷の立地的にもだ。

「ヘイ!ヒマだってー。一名サマ、ご案内~」

と、口の横に手を翳して声をあげる。
なんだなんだと周囲の視線がそこに集まる輝く声に従って、
ぞろぞろと集まってくる、なにやら主張の強い面々。
男女も混交でメイクもコーデもばっちし決まった連中が、
瞬く間に少年を取り囲むと、ぐいぐいと赤い奴が来た方向に押しやっていく。

『きみィなんかの委員?』『名前は?』『部活とかやってる?』

馴れ馴れしく体や髪にも触れんとする者たちが、蟻の行進よろしく運ぼうとするは、
そう――それなりに格のありそうなAdam et Evaという看板を掲げた部活の店舗だ。
敷居が高いし何より高そう。

蘇芳 那由他 > 「…いえ、僕は無所属ですし……え、目立ちますかね?これ…。」

何かおかしい所が?自分の服装を見下ろす。冬用の男子学生服だ。何の変哲も無いそれ。
少なくとも、目立つナリというなら…今まさにこちらに声を掛けてきたこの赤毛の女性の方では…?
ただ、私服の代わりにほぼ常に制服姿なのもあり、着慣れているというのは間違いない。

「え、ご案内?一体どういう――?」

何が始まるんです?という感じで不思議そうに瞬きを。
…もしかして、僕はとんでもない人に声を掛けられてしまったのか?と、思いつつ。

「……え、何?何なんですか?」

赤毛の女性の声が声を上げれば、周囲の往来の視線も注目もこちらに向けられる。
…それよりも、問題なのは何やらぞろぞろここに集結してくる男女達。…うん、素人でも分かる程にメイクもコーデも凄い。

「…って、えぇぇ!?何なんですか貴方達!?…あ、えぇと常世学園1年生の蘇芳那由他と言います…部活は特には…じゃなくて!!」

あちこち髪やら体やら触れられる…どころか、何かそのまま何処かに運ばれ始める。
え、本当何なの!?どういう事!?と、まさに顔にそんな感情が出ていた。

そして、運ばれる先をちらり、と見れば…うわぁ敷居高そう…僕とは無縁じゃん…と、思わず心の中で呟く。

ノーフェイス >  
倭文(シトリ)とかのブランド制服でキメてるならともかく。
 あえてボクのように、目立たないよう地味ーなセレクトをしている――
 ……そんな変装だったら完璧すぎるくらい自然だったからな、キミ」

こんなの趣味じゃないんだけど、と嘆かわしげに、
白いシックなコートを掴んでくるりと回って。

「那由多ね。スケールが大きい看板背負ってんじゃん。
 デートの約束でもなくってヒマなんだったら、買い物だろ?
 こいつらのお手伝いしてんの、ボク。ちょうどいいヤツを探してて――」

『ウチらさ~、冬物売りの部誌(カタログ)の企画でモデル探してんの』
『手垢がついてない感じの子がよくってえ』
『よかったらちょっと手伝ってよ。宣材にする服あげるからさ』

「そういうワケで、時間くれよ。
 なに、ヘンなことやらせようってワケじゃない。
 顔出したくなかったら、眼鏡(フェイクグラス)もご用意するからさ」

三階建ての店舗へと自動ドアをくぐれば、冬の外気から遮断される。
要するところ、この部活のスタッフたち――らしい。
暖かく、また布地を感じる独特の香りのなかへ。

「それで?あらためてキミはどうして常世渋谷(ココ)に」

先導しながら赤い髪を揺らし、白い肩越しに視線を向けた。

蘇芳 那由他 > 「…残念ながら、変装する程に有名人でもなければお尋ね者でもないので…ただの学生ですよ僕は。」

肩を小さく竦めつつ。過小評価でも過大評価でもなく、客観的に見てまぁ地味だし。
唯一、目を惹くとしたら肌が色白な事だが…まぁ、別に不健康という訳ではなく。

(趣味じゃない、と言いながら着こなせてるんだから多分、そういうファッションとかに精通してるか一家言ある人なのかなぁ)

嘆かわしそうにしながらも、くるんと回っている赤毛の女性の姿にそんな感想を心中で漏らす。
スケールが大きい、と言われれば「名前負けしてますけどねー見事に…。」と、苦笑気味に。
『極めて大きな数』を意味する名前だが、少年にそんなスケールが大きな何かは特に無い。

「そもそもデート相手すら居ませんけど…まぁ、ハイ。買い物なのは間違ってません。…お手伝い、ですか?」

何のだろう?と疑問に思う間も無く、矢継ぎ早に取り囲む男女から言葉が襲い掛かってくる。
何とか聞き取れはするし、何で声を掛けられたのかも理解したが…突発的過ぎる!

「…いや、そもそも…カタログ…モデル!?確かにド素人というかさっぱりですけど!!」

自分みたいな地味な無名学生が、冬物のモデル!?急展開にまだ一部思考が追い付かない!
本当にファッションとかサッパリだから、向こうにお任せするしかないのだけど…。

「…あぁ…いや、まぁ…別に構いませんけど…。」

と、いうかばっちり連行されてしまったので今更拒否権も何も無い気がする。
それに、時間が空いているのは事実だし…誰かの手伝いとかは割と好きだし。
さて、三階建てのその”敷居が高そうな”店舗の中にご案内されつつ…あ、暖かい…学生服だと矢張り肌寒いし。
独特の香りは…自分には馴染みが無い”世界”のそれだ。物珍しそうに視線が泳ぐ。

(…【Adam et Eva】…だっけお店の名前。ここのスタッフさん達みたいで…赤毛の人は常連さんか何かかな?)

そこの背景はさっぱり分からない。分かるのは自分が冬物宣伝の『素人モデル』として抜擢された事くらい。

「…え?…あー…別に大した理由ではないですよ。僕の保護者代わりの人が…
『お前はいい加減に私服とかお洒落しろ。あと冬用の服も揃えてこい』と、煩かったので。」

わざわざ金銭まで持たせてきたので、少年の地味さというか無頓着さに思う所があったのだろう。
肝心の少年はといえば、冬物買い出しどころか何故か宣材モデルになる流れになっていたが。

ノーフェイス >  
「んははは」

なにか面白かったらしい。
"ただの学生"の部分か、"有名人でもなければお尋ね者でも"のところかも。

「今後この部活が取扱う予定のブランドのカラミで、ちょっと縁ができてさ。
 もともと通ってた部活(おみせ)なのもあって――……」

広い中央から壁際に島にと点在するそこかしこのコーナーに、ブランドの看板が掲げてある。
部員それぞれの性別もファッションコンセプトもバラバラ。
店名に偽りなしのユニセックスかつフリースタイルな店舗だが、まあ目に入る値札の数字は大きめ。

『えーっ、彼女さんとかじゃないのお?』
『初々しい!可愛い~!』

背後で黄色い声をあげているのは長身の男性だ。
女性的なメイクの施された、なんとも華美で性別が曖昧な出で立ち。
さてガーリーな少女は少し離れるとカメラを構え、学生服の少年の姿をおさめていく。

「キミってテレビとか観る?
 ファッションとかインテリアのビフォー&アフター、みたいなのあるだろ。
 素体(ビフォー)はむしろまっさらなほうがイイ」

『オマエはてっきり初心そうな女の子捕まえてくると思ってたけど』

「そういうのは個人的に楽しむので。
 ……お洒落しろ、ってのはぶっちゃけ無茶振りだよな。
 言われてはみたものの、どうしたらいいかわからない。
 なんなら、本当に必要?とまで思ってる――違う?」

客である学生もうろついて時折奇異な視線を向けてくる、店舗の中央広場。
適当な椅子に腰掛けながら、そんなことを問うてきた。

蘇芳 那由他 > 赤毛の女性には何かウケたらしい。少年からしたら素で事実を述べただけのつもりだ。
なので、何か変な事を言ったかな?と首を傾げるがそんな事は無い…と、思いたいが。

「…成程、常連さんみたいなものだったんですね。」

やっぱりそうか。親し気、というかお互いそこそこ知った気易い感じだからそんな気はしてた。
とはいえ、それは双方の気質やノリもあるのかもしれないけれど。
さて、視線はコーナーのあちこちに自然と向く。ブランドの看板、商品、そして――値札にも。

(……うわぁ、思っていた通りにお高い…。)

”アルバイト”で割とお給金を雇い主の配慮か頂いているので、実は買おうと思えば買えない事もない。
が、庶民感覚なので迷わず手を出す…なんて事にはならないのであった。

背後から黄色い声が聞こえたので、そちらに視線を向ける。
赤毛の女性とはまた違った方向で少年の地味さと対極的な華美な出で立ち。
性別も曖昧に錯覚しそう。と、カメラを構えられて慌てる…間も無く撮られていく。

「…あぁ、だから僕みたいなファッションにも疎い地味学生をチョイスしたんですね…。
”素材”としては如何様にも出来る…で、どう調理するかはここのスタッフさんの腕の見せ所…と。」

少年なりに納得したらしい。とはいえ、カメラに撮られるとやや所在無さげだが。
赤毛の女性とスタッフのやり取りに、「ああ…」と何か納得したように。
何に納得したのかは兎も角、人様のあれこれに口を挟むつもりもない。

「…まぁ、適当に何着かあればいいかな、くらいで。興味や関心があるかと言えば特には。」

そこは戸惑いや躊躇も思案も無く、割と正直に淡々と答えて頷く。
実際、少しでも関心があるなら流石に自腹で何着か私服は購入して今も私服姿だった筈だ。

「…あと、すいません。僕、両腕に火傷痕あるんですけど冬物なら隠れますし大丈夫ですよね?」

と、己の腕をちょいちょいと指で示して質問を彼女やスタッフさんに。
以前、とある紅い怪異の一部との死闘でつけられた傷跡だ。完全に治せはするが敢えて”残している”傷跡。