2024/06/10 のログ
テンタクロウ >  
「お転婆で地獄に来ていれば世話はない」

逆さまになっている女を嘲笑う。

「フッフフ………真逆? 逆さまなのはお前のほうだ」
「昔から言うじゃあないか……」

メインアームが相手の肋骨を折るために鋭く動く!!

恨み骨髄に入る、とな……ハァァ」

その余裕ヅラを痛みに歪めてやる。

黒條 紬 >  
黒條の肋骨は砕かれ、壊れた女が地にばたりと落ちる。

意気揚々と躍り出た彼女の身体もまた、不良生徒と同じように。

いや、それよりも惨たらしく。完全に破壊され。

黒街には、破壊された4体の人間が転がるのみ――

黒條 紬 >  
 
――その筈だった。 
 

黒條 紬 >  
マシンアームが鋭く動く直前。

女は微笑を湛えて、眼前の男に言葉を投げかけた。
とても優しく、それでいて妖艶で、耳がこそばゆくなるようなその言葉は。

小さな小さなその言葉は、眼前の男にしか聞こえないであろう。

「――、―――――――――――――、――?」

彼の眼前で、宙吊りの女の両目が、仄かに輝く――。

テンタクロウ >  
ささやきが聞こえた瞬間。

相手の足を掴んでいるマシンアームが。
解かれた。

何故、僕はこの少女にこんなことをしているんだ?

その場に呆然と立ち尽くしていた。
いや、違う。宙に浮いているのだから、立ち尽くすという言葉は正確ではない。

ただ、ただ。
その場に呆然と居続けた。

黒條 紬 >  
男に囁いた後。
誰にも知られぬほどに小さく、息を吐く。

間一髪だった。
もう少しでも異能の発動(打ち手)が遅れていれば、
そこに転がっている不良生徒よりも惨たらしい末路を迎えていた筈だ。

「……残念。もうちょっとで卒業でしたねぇ」

ぽん、と肋を叩く黒條。

さて、口ではそんなことを言いつつも。

いつまでもこの状況が続く訳ではない。
そして、このまま一対一で戦闘を続ければ、次こそ肋を砕かれかねない。
いや、鋼糸を振り回しているだけでは、いずれ容易く砕かれるだろう。

流石に機械相手、それもあの本数の触腕とあっては、体力が保たない。
黒條は、元より隠密が本業だ。

「それじゃ、後は――」

だが、問題はない。これだけ時間を稼げれば。

先んじて呼んでおいた応援が、そろそろ到着する頃合いだ――。

「――頼れる風紀の皆さんにお任せしましょう」

風紀委員達の靴音が、裏路地からこちらに近付いて来る!
その音が、テンタクロウの耳にも入るであろう。

テンタクロウ >  
「!!」

正常なる自我を取り戻した直後に、風紀委員の足音!!
自分は強いが、複数人の風紀委員相手に正面突破できるほどではない!!

「お前……顔を覚えたぞ…」

それは鴉がそうであるように。
増幅された憎しみは決して忘れられることはない。

マシンアームで構造物を掴み、上空に逃れていく。

「ハァァ……瞬間催眠型の異能か…」
「テンタクロウを出し抜いたことを必ず後悔させてやる」

そのまま摩天楼を巨大な蜘蛛のように這いながら去っていった。

黒條 紬 >  
「流石に、ここで大人しく掴まってくれるほど惰弱でも、愚かでもありませんよねぇ。
 テンタクロウさん?」

不良生徒達には背を向けたまま。
テンタクロウ一人のみに狙いを定めた微笑を向ける。彼を見送るように。

そうして顎に手をやり、黒條は思案する。
今回の戦いで、噂のテンタクロウについて見えてきたことも幾つかあった。
風紀本庁へはこの後、報告をしておくとしよう。

そうして。

「皆さん、後はよろしくお願いしますっ……!」

駆けつけてきてくれた風紀の面々の背中を見つめながら。

汗に濡れて張り付いた髪を人差し指で掬って。

黒條は満足気に笑うのだった。

夜の(ヴェール)に包まれたその表情を見つめるのは、月の光のみ。

ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」からテンタクロウさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から黒條 紬さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に橘壱さんが現れました。
橘壱 >  
『──────それで、まんまと逃げられたワケか。』

凄惨な事件現場を右往左往する風紀委員達を尻目に退屈そうに呟く鉄人。
蒼と白の鋼の体。モノアイが崩れた建物の上から状況を見下ろす。
鉄仮面の奥、モニターに映るそんな風景をつまらそうに見つめるのが装着者の少年、橘壱。
応援に駆けつけた頃にはもう後の祭りだったらしい。面白い敵と戦えると思ったのに、これは気分も上がらない。
一応スキャンモードで周囲を確認したが、敵影無しだ。

『……テンタクロウ、か。』

正面モニターに映し出すのは、敵の検証映像だ。

橘壱 >  
全身を装甲で包んだガスマスクの怪人。
無数のマシンアームに加えて装甲以外にもパルスフィールドが展開されている。
アームによる連携力、攻防隙もない。
何よりも手強いと思ったのは、妙に戦いなれている事
戦闘映像の記録を、それこそ穴が空くように見据えている。

『ただの無頼気取り……ではないか。あのスーツの材質はカーボン……いや、複合系。
 材質からしてエンバーストレンジ社の……いや、違うな。パルス技術なら未来ハーモニクス……』

ぶつぶつと呟くのは各種企業の名前。
今の時代、パワードスーツを初め機械技術も目覚ましく発展している。
それぞれの企業がそれぞれの分野で市場を争っているのが現状だ。
但し、市販品のそれとはどれも当てはまらない。オタク特有の観察眼。

『……まさか、独自開発(じさく)か?へぇ……。』

だとしたら面白いな。自然と口元がにやけてしまう。
その技術力もそうだが、そこまでして大掛かりな装備を用意したことに、だ。
これだけの装備を開発するのには文字通り"骨が折れる"。
それこそ軍用兵器と遜色ない程に強力と見た。
そんなものを用意させるまでのコイツの根底が気になって仕方ない。

橘壱 >  
だからこそ、気になって仕方がない。
"活躍の地味さ"。破壊活動や殺戮に適した兵装だと思っているのに、そうは使わない。
派手に動けばその分目をつけられると言うが、こんな事してれば遅かれ早かれだ。
道具(オモチャ)の使い方も人それぞれだし、ましてや犯罪者の心理に興味はない。

『……にしても……異能者ではないんだな。』

異能者であれば、わざわざ此処までの装備は用意しない。
いや、もしかしたらそうかも知れないがそれにしては大掛かりだ。
用意周到だからこそ、用意したのか。それとも、そうでもしなければ武力がなかったのか
当然、非異能者である壱に相手の心底も、心も見透かす能力はない。
ただ、同じ機械を身に包む者同士、感じるシンパシーはある。
勿論、身勝手なシンパシー。非異能者(もたざるもの)故の、勝手な感想。

『……立場が違えば、話が合ったかもな。』

残念だが、顔を合わせたら向け合うのは銃口になるだ。
ふぅ、嫌に感傷的になってしまった。思わず溜息が漏れた。

橘壱 >  
だが、それはそれ。これはこれ。
コイツは強い、間違いなく。だからこそ、"楽しみで仕方がない"。
コイツはどんな風に、自分のAF(ツバサ)と踊ってくれるのか。

『────…ふ。』

誰かに手柄を立てられる前に、一戦位は交えさせてくれないと。
バーニアのノズルに青白い炎が灯り、爆音とともに鉄人は敵を求めて空へと舞い上がったのだった。

ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から橘壱さんが去りました。