2024/06/22 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に武知 一実さんが現れました。
武知 一実 >  
「……ふぁ……あ。 やっぱ家で昼寝でもしてりゃ良かったかァ……?」

土曜の昼下がり、オレは常渋の雑踏の中に居た。
授業も無いしバイトも無いしで特にやる事も無く
暇を持て余したので何となく出て来ただけだったが、やっぱノープランで外に出ても退屈は紛らわせられない。
しゃーないので新しいパーカーとスニーカーでも買って帰るか。

「なんか……土曜にしたって、やたら人が多いな……?」

梅雨時で天気も良いとは言えず、それなのに蒸し暑い。
だというのに、中央街は普段よりも賑わっていた。
……何か催し物とか、あんのか?

武知 一実 >  
ふと、屋外ビジョンが目に留まる。
新型生徒手帳の発売開始を宣伝する内容に、ああ、と得心が行った。
そういや入学したばかりの頃、そろそろ新しいのが出るとか出ないとかそんな話を聞いた気がする。

「オレには関係ねーやって、スルーしちまってたけど……」

それでこの、人の多さか。
発売開始してから最初の休日。 そりゃあ話のタネにでも売り場に行ってみようか、となるのは納得だ。
……思いの外需要はあるらしい。 オレはプラの学生証カードしか持てねえけど。

武知 一実 >  
不意に先の方が騒がしくなった。
人混みで様子は窺えないが、悲鳴の様な物が聞こえ騒ぎが大きくなる。
確かこの先にあるのは、端末ショップや家電量販……あ。

『ッ、退け!!邪魔だ、退けオラッ!!』

人混みを突き飛ばしながら、正面から男が一人駆け込んで来る。
見るからに一般生徒ではなさそうで、手にはショップの袋。
その後ろから、『誰かソイツ止めて!風紀、風紀委員呼んで!!』と女の声が響いてくる。
なるほど、新型の生徒手帳を狙ったひったくりか何かか。

「まあ、そういう輩も出て来やがるわな」
『テメェッ! そこ退け邪魔だ!!ぶっ殺すぞ!!』

関わり合いを避けて人混みが割れていく中を走って来る男。
そいつと目が合ったかと思えば、真っ直ぐに罵声が飛んでくる。
おーおー、威勢の良いこって。 ……ムカつくわあ。
道を空けようとしないオレを突き飛ばさんと突っ込んで来る男を、ギリギリまで引き付けて、男の体がぶつかる寸前で躱す。
突っ込んできた勢いが殺せず、よろめいた男のがら空き背中目掛けオレは拳を振り抜いた。

武知 一実 >  
『ぐぁっ……!?』

背中を強かに打たれた男が、そのまま路上に倒れていく。
っと、振り抜いた拳で男の手から離れ宙を舞ったショップバッグをキャッチ。
中身はやっぱり新型の生徒手帳みたいだ。 需要があるなら、そりゃそれを狙う奴も出て来るわな。

「この人混みン中、落第街まで逃げれるつもりだったんだろうけど、オレが居合わせたのが運の尽きだったみてえだな」

地面に倒れ伏した男の背中を、追い討ちとばかりに踏み付ける。 短い悲鳴が上がり、男は静かになった。
窃盗はそこそこ慣れてるみたいだが、荒事には不慣れみてえだ……うーん、正直拍子抜けだ。
もっとこう、タックルを避けられた時に追撃も想定して受け身を取るとか、そこから反撃に転じるとか……き、期待したわけじゃねーけど!