2024/06/23 のログ
■武知 一実 >
数分後、男が逃げてきた方からショップの店員と思しき男子生徒と、ひったくり被害者と思しき女子生徒がやって来る。
その二人にショップバッグを渡し、中身を確認して貰ってる間、オレはふと考える。
白昼堂々ひったくりなんざ、とても賢いやり方とは思えねえ。 まだスリの方が成功しそうなもんだが。
……まあ、その辺はっきりさせんのは風紀の仕事か。
「よし、中身は揃ってんな? じゃあ後は風紀が来るまでにこいつをフン縛って……って」
ついさっきまで地面で伸びてた男が消えていた。
一瞬そういう能力者であることも考えたが、辺りを見回せば路地に逃げ込もうとしている後ろ姿を見つける。
さてはあンの野郎、殴られて伸びてたフリしてやがったな……?
「ンの野郎……ッ、上等じゃねえか……!」
確かに全力で殴ったわけじゃないが、それでもやられたフリでやり過ごせると思われたのは癪だ。
オレは店員が止めるよりも早く、ひったくり犯を追って路地へと飛び込んでいた。
■武知 一実 >
路地を逃げるひったくり犯を追いながら、さっきの違和感について考える。
昼間から人通りの多い常渋でひったくりなんざ、思い立っても実行出来るようなもんじゃねえ。
ましてや風紀の警邏が増えてるこの時期に、だ。 それに妨害への対処も何と言うか……こなれてる感じがする。
「計画したって単独じゃ割に合わねえ……つーことは、だ」
奴は末端の実行担当、今回の企てをした奴が他に居る……?
だとしたら……ちょっとは楽しめそうだ。
後ろからオレが追っている事に気付いていても振り返る様子の無いひったくり犯、いよいよ予想は当たりそうだ。
10分ちょっとの追いかけっこを経て、辿り着いたのは袋小路。 ビルに囲まれたちょっとした広場になっている場所だった。
『アニキ、報告した通りアイツに邪魔ァされやした!ッセン!!』
『オウ、まあ予測してなかった訳じゃねえ。 それにここまで連れて来たじゃねえか……奥で休んどけ』
ビンゴ! まあガラの悪いのが揃いも揃ってひぃふぅ……5人か。
ひったくり犯が逃げ込んだ瞬間から、敵意がそりゃもうバンバンにオレへと向けられてる。
■武知 一実 >
『テメェ……よくも邪魔してくれたじゃねえか、ア゛ァ?』
集団のリーダー格であろう、大柄なスキンヘッドの男が一歩、オレへと近づいた。
それを合図に取り巻きたちも鉄パイプやらバットやら、まあありがちな得物を手に睨みつけて来る。
場所が常渋の路地裏でなければ、……慣れ親しんだ光景だ。
『正義の味方気取りが、調子乗ってんじゃねえぞゴラァ!!』
「……正義の味方?」
何言ってんだコイツ。
勘違いするにも限度ってもんがあらぁな、正義の味方が単独で見え見えの誘いに乗るもんかよ。
正義の味方なら今頃、店員から事情を聴いて路地の封鎖をしてるだろうさ。
にしても、どうしたもんかな……単に血気盛んな馬鹿なら、まあ勧誘してみるのもアリかと思ったが、この手の連中は金目当てだろうし……。
………よし。 喧嘩ってから考えよう!
「正義の味方なんて御大層なもんじゃねえ、オレは――」
「オレはただの喧嘩屋さ」
………
……
…
■武知 一実 >
―――数分後、梅雨時の常世渋谷の路地裏に、落雷が発生した。
■武知 一実 >
「はァー……5人居てこの程度かよ」
ぱんぱん、と服の汚れを叩きながらオレは溜息を溢した。
辺りには微かに落雷の余韻が漂い、地面には男たちが倒れ伏している。
さすがに多勢に無勢、一発二発貰うのは甘んじたがそれでも骨のねえ喧嘩だった。
「これならまだ落第街のやつらの方が根性あるぜ?」
うんともすんとも言わねえリーダー格へと声を掛け、オレは額の汗を拭う。
……手の甲にべったりと血が付いた。 やべ、殴られた拍子に額どっか切ってる。
さっさと止血しねえと……と肩を落とすオレの耳に数人分の足音が届いた。
「やべ、もう風紀来た。
……とりあえずオメーら、これに懲りたら二度とこんな真似すんじゃねーぞ!」
この状況、さすがに言い逃れ出来ねえ、さっさとトンズラこいて帰ろう。
ひとまず額に制服の上着を巻き付け、オレはビルの壁をよじ登る。 逃げ道がそこしかねえんだ、クソっ。
■武知 一実 >
こうしてその場から脱したオレだったが、路地から出たところで運悪く風紀委員と鉢合わせ。
現場からの連絡を受けてた連中によって追い回される事になったのだったが――
――ええと、一般生徒諸君は新型生徒手帳を買う時は気を付けよう、な!
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から武知 一実さんが去りました。