2025/08/27 のログ
■鶴博 波都 >
「話すなとも言われていません。
バベルの塔はありませんから。」
掴むためのヒントになりそう、と問われれば思案気に首を傾げる。
そして、態度を決めれば何かを覆う様に口を手で覆う。
「……掴んだものを離して、新しいものを掴むという意味ですか?
それとも……掴んだものを見つめ直すという意味でしょうか?」
後ろ手に隠しただけで、握り締めたものはある。
これを認めているかどうかで言えば、認めていないのは確かだが──。
「考えたこともありませんでした。でも、所属は基盤だと思います。世界は五
所属。
自ら属する国を信じないことは、彼女の根幹として考えられないこと。
当たり前の様に見解を告げる。
「そうですよね。大義はそれ位しかありません。
日常の明るい世界の私。昔の暗い世界の私。どちらの私も許さないようなとてもとても悪いこと。
……やりますだなんて、言ってはいけないことですよね。私の回答は……。」
規範に従うのならば自我を出す必要はない。
否定された正しさの私が正しに行く必要はない。
絶対に許されざること。
「やります。
少し、続けますね。話題もちょっと変わります。」
秘密ですよ。左手の人差し指を口にあて、悪戯げに口元を緩めてみせる。
「……この島にひとり、すごく思う所のある先生がいるんですよ。
間違っていると否定されている筈なのに、ずっとずっと自分の正しさを使い続けている先生が。
その先生を見た時から、どうして自分の心に従って執行できるのか、ずっと思ってました。」
本当は。あるいは、一つの側面として。
……鶴博波都は非常に過激な人間だったのではないのだろうか。
それこそ、強い規範とただしさで抑えなければ人を保てない程の。
旧いただしさを、新しいただしさで塗り固めなければならない程の。
性悪説に語られるような、悪を正しさで縛って固めたような。
「今が、それを確かめる時なのかもしれませんね。」
……完全を夢見るような、怪物、だったのではないだろうか。
■ネームレス >
「…………法は、それが敷かれた世界において唯一の正義だぞ」
彼女の言葉を、すべて受け止めて。
ゆっくりと首を傾げて、微笑んだ。切り出し方は、らしからぬ言葉。
「ゆえに、法以外に規範を持つ連中は、軒並み悪なのかも」
くだらない話だと、そう笑った。
「翻る裾くらいは、見えたみたいだね。
……くどいと嫌われたくはないから、キミに求めるコトはあえて重ねないよ?」
止めない。止める筈もない。
善悪や是非で、人間は図らない。
己の餓えを自覚し、欲望を定め、理想を目指して歩む気高き魔獣をこそ、
――この存在は"自分とおなじ人間"と定めている。
悪性というなら、形は違えど、似たようなものだろう。
なあなあでどちらも選ばないよりはずっといいと、この存在は考えていた。
「超自我とは、みずから無自覚に定める規範だ。
鶴博波都との、良き出逢いがあるとイイね、そしたら……」
そして。
その胸ぐらを掴み、強引に立たせる。
「他者に押し付けられた仮面ではなく。
キミ自身が在りたい姿を、ボクに見せてほしいな」
鉄道警備隊の制服。肩出しのワンピース。
そうではなかった。求めたるものは。
他者を――たとえば、誰かはわからずとも、そうわからずとも……。
試すために使おうとする我執に、そそらずにいられない。
蛹から羽化するように、手にする鷹のはばたきのような自我の予兆に。
挑戦的な笑みだった。対等のそれを見た。
自分も否定の対象になるやもしれぬという期待を含めて。
■鶴博 波都 >
「でも、法は完全なただしさではなかったんです。
人の過ちを、悪性を前提とした、生き物です。
高度であればあるほど、あやまちを許容します。」
首を横に振る。
法律的な正義は、彼女にとって不十分なものらしい。
「そうしたいのは山々ですけど、私は超人ではないですからね。
……クラインに会ったその日のうちに、死んでいるかもしれません。」
掴み上げ、立たされる。
文字通りに足が浮いた。
「自分の決定で、世界を変えられるとはあんまり思っていません。
……でも、言った責任と、動いた責任は取る事にしています。」
いちお、いまの鶴博波都にも、芯はある。
その一つは、基盤。それが本来どのようなもので、どのように積み重ねられたものなのか。
もう一つは、責任。行動に対する結果を受け容れ、積み重ねること。
完全ではないものが完全に近付くための、
完全でないことの罪をあがなうためのもの。
「聞いてやっぱなしと言うのも、無徳な超人です。
言って何もしないと言うのも、無責任な民群でしょう。」
■ネームレス >
「キミのいう超人って、なんだろう?
めちゃ強いヒトのこと?それとも賢そうなヒトのことだろうか。
世界がここまで変わって、人間は人間を超えられたのか?」
異能や魔術を得ることは、変革か、進化か、成長か。
世界は問い続けている。人間は問われ続けている。
国家や法より遥かに大きい枠組みにおいて。
……そう感じていた。
「超人とは、みずから成るものだとボクは思う。
自己を変革し、超克し、定義し、意志の光で道を照らすモノのこと」
手を離した。
「そして、誰もがなれるものじゃない。
わかることは、思考を止めてはいけないってコトだ。
毎朝鏡は見ようねって話……さ、行動の時かな?
アイスキャンディはご自由に。なにか訊きたいことがあったら、またいつでも。
事態に進展があれば、ボクからも呼ぼう――このままだと抱きたくなっちゃうから、お開きかな」
定位置に戻る。
少し陽は傾いた。まだ蒸すが、涼しくもなってきているだろう。
「ああ、それと」
そこで、
「ボクは、」
■ネームレス >
「 」
■ネームレス >
伝えた。彼女も伝えたから。
一方的な悪平等を、それでも借りっぱなしはしない。
「これだけじゃ、ボクが何者かを語れはしないだろう?」
大切なのは、
「なにに餓えているか。
ひとことで言い表せる真実のほうが、よほど適している」
だから、そうやってヒトを見定めるのだと。
お返し。
ご案内:「常世渋谷某所」からネームレスさんが去りました。
■鶴博 波都 >
「……」
耳打ちされた事実を反芻し、理解するまでに暫くの時間を要した。
ご案内:「常世渋谷某所」から鶴博 波都さんが去りました。