2024/06/11 のログ
ご案内:「歓楽街」に五百森 伽怜さんが現れました。
■五百森 伽怜 >
常世渋谷で新聞記事を配っていた五百森は、
逃げる人々の合間を縫うように逆走し、
身を隠すように歓楽街のビルの角に陣取っていた。
シャッターを切る。画に映るのは、新人の風紀委員。
――葉薊 証。
風紀を追っかけている五百森だ。名前と顔くらいは覚えている。
しかしその戦い方や異能等については、何の情報もなく。
「――大丈夫ッスよね、きっと」
五百森の、風紀への信頼は厚い。
学園の皆を守る為に、戦ってくれるヒーロー。
そんな彼らだからこそ、ここまで追ってきたし、これからも追っていきたい。
その筈、だった。
■五百森 伽怜 >
怪人と風紀の熾烈な交差は、ほんの一瞬にして。
刹那、五百森はカメラから目を離していた。
彼女の目に映っていたのは、宙吊りの葉薊。
触腕に成すすべもなく、まるで玩具の様に。
――流石に、これはまずいッス!
普段であれば、踏み出せた。
憧れの風紀委員。
弱い自分なんかが働ける場所ではないけれど、
それでも。
そんな彼らの活躍を追いかけてやって来た五百森は、
誰かのピンチに立ち上がれる人間であろうとしていた。いつだって。
『おい、聞いたぜ? お前さ……』
あの日、風紀の人達に助けられたから。
『サキュバスなんだろ……?』
沢山の、呪いの声に抗って。
今も、此処に立っていられるから。
だから、今回だって。
あの人達の背中に少しでも近づけるように。
一歩を踏み出――
■五百森 伽怜 >
――刹那、耳をつんざく騒音に、五百森は思わず息を呑んだ。
足は、いとも容易く歩を止めた。
『――いたいいたいいたいいたいいたい!!!!』
心臓がきゅ、と縮んだ。
いや、そんな表現は生ぬるい。
心臓が握り、潰された。
足は、とっくの昔に竦んで、震えていた。
四肢はまるで、自分の身体の一部ではないようで。
カメラを持つ手に、力が入らない。
「うっ……」
拳を握りしめる。
――動け、動け、動け……!
そうして、思い切り叩く。
――助けなきゃいけないのに。
膝小僧を。何度も。
――何度叩いても、足に力が入らない。
太腿を。力を入れて真っ白になった拳で。
――あんな痛々しい絶叫、生まれて初めて聞いた。
ここで逃げ出すようなことはできない。
もちろん、シャッターを切る気なんてとっくの昔に失せていた。
だが、助けに入ることも、助けを呼ぶことさえも、五百森にはできなかった。
自分のようなちっぽけな存在が介入していい聖域では、ないと。
■五百森 伽怜 >
いや、そんなの言い訳だ。
分かってる。
どうしようもなく、身体が震えているんだ。
■五百森 伽怜 >
破壊の連鎖。
具現化する災害。
轟音と共に、周囲のビルが崩れ行く中。
彼女の頭上にあるビルが音を立てて崩れた。
空を、見上げた。
全てが、全てがスローモーションになっていた。
彼女に降り掛かった影は、少女を黒に塗り潰して。
■五百森 伽怜 >
「――あっ」
ご案内:「歓楽街」から五百森 伽怜さんが去りました。